大召喚祭-辰の大魔導士の一番弟子と受け継がれる遺志- 【六野】 作:Game Holic
<エイボンが頑張っている間、他のメンバーは何をしていたか>
目の前では、片方で餓鬼達が氷漬けにされ、片方でゴーレムに薙ぎ払われている。護衛と云えど、遣る事の無い面々が壁の花になっていた。モーデルはまるでその場の装飾品の様な佇まいで壁際に立ち、その横ではひっそりと状況を見守るアリエス、壁に凭れ腰の剣を弄るルディに、旦那の活躍を余り熱心に見ていないモニークと、本を齧られないように必死なユリアン。ローブの男たちは部屋の隅で固まっている。ゴーバッシュはというと、デュマの方を手伝っている様だった。
「ルディ、楽が出来るな」
「ま、そいつは嬉しい事だけどな」
気心の知れた仲故に、モニークの夫たるエイボンよりも気安い声がルディにかかる。楽が出来るのは良いことだが、完全に手持ち無沙汰だった。普段であれば、後衛である魔法使いの前に立ち、前線で背中を守る立場である二人だが、今日に限っては其の剣を振るう先が無い。なんせ数が多すぎるのである。細々削るより、一度に薙ぎ払うのが楽だろう。適材適所と、流石に何時でも対応できるようにはしているが、観戦の体勢で状況を見守っていたのだが。
「……なあ、私と踊ろうぜ、ルディ。彼奴が外すとか無いだろ」
言うとモニークは壁より離れて、ルディに己の得物であるメイスの先を向ける。退屈がモニークの悪戯好きを刺激した様だ。誘い文句と相まった挙動に、瞬きを繰り返すルディだが、彼とて退屈を持て余して居たのは事実。
「俺に間違ってブリザード飛んでこないか?」
年上であるモニークの行動に、呆れた様な口ぶりだが、その口元は笑っており、先程仕舞ったばかりの双剣を引き抜く動作に遠慮は無い。成人している上に大人びて見えるとは云え、未だ十六の少年も、退屈は余り好きでは無かった。
「そうしたら、間違って私のメイスが彼奴の膀胱に行く」
「なら安心か」
「怖い事言ってんなよ!」
詠唱の最中、ちっとも安心できない言葉を嫁から言われた旦那の悲鳴のような抗議が聞こえてくるが、二人は聞こえない振りをした。あの魔法使いは今は取り込み中なのだ。
「ほれ、来いルディ!」
「あいよ」
シャドウボクシングの様に武器を振るうモニークへ、ルディは身を躍らせた。
「嗚呼……まったく、怪我してもしりませんよ」
「……」
アリエスの心配そうな声も余所に、エイボンが最後の餓鬼を消し去る時まで、モニークとルディのじゃれ合いの様な手合わせは続いた。
遊んでました。