東京喰種√0   作:ウェズン

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 どうも、初めましての方が多いと思われます。ウェズンです。これは前回書いて途中で諦めてしまったものを少しだけ書き直してきたものです。
 もし、前作を読んでくださった方は最新話まで読まなくても大丈夫ですが、展開が若干変わってもいるので読んでくだされば幸いです。
 では始めます。


#001

  〜十年前〜

 

「…見つけた。SSレート白鬼(シロオニ)

 

 

 冬に近づいているこの頃、夜の町外れの一軒家。

 その一室の中は、タンスの中身や置物といった物が空き巣にでもあったかの様に乱雑としており電気すらついてない。故に頼りになるのは外から差す月明かりのみ。

 そんな部屋の中では白いスーツを着た赤黒い太刀を持っている高校生位の女性と、

 

 

「…っ!」

 

 

 シンプルな色合いの私服を着た一人の男性がいた。

 一つ屋根の下に女性と男性、そう聞いたら普通に考えればこれから夜の営みでもするのかと思うが、その空気が違うと言う。これから血の匂いを出しそうな空気である。

 

 

「観念してね。後、さっさと殺したいからじっとしてね」

 

 

 女性は凛とした澄んだ感情が無い声で言うと太刀を男性へと一直線に突き付けて、今にも斬り殺そうとする殺気を出す。だが、その時、

 

 

「…ふふ」

 

 

 男性はすぐにでも殺されかねんとしているこの状況で何故か笑いだす。何故笑っていられるのか、女性は首を傾げる。

 今までで女性は様々な喰種を葬っていた。そして、どの喰種も最初こそ強がった顔をしていたもの、死の直面となれば必ず怯えた表情になっていた。故に、わからない。何故笑っていられるのか。

 

 

「まさか、君が俺を殺しに来るなんてね…運命っていうのはわからんもんだ」

 

 

 男性は若そうな容姿とは裏腹にニヒルな笑みが似合う。男性はそのまま女性に向かって言った。

 

 

「…だったら、なに」

 

 

 女性は男性が何を言いたいのかわからず、姿勢はそのまま聞く。

 

 

「別にどうという事は無い。ただの戯言だとでも思ってくれ。…さて」

 

 

 男性は言いたい事は言い終わったのか、彼は背中から何かを出そうとする構えになる。

 

 

「お喋りはここまで。それと、君は大人しく俺を殺したいようだけどね、俺はね生憎今ここで殺られる訳には--」

 

 

 男性の背中から何か赤黒い色の霧の様な、刃の様なものが血が噴き出る様に出して、

 

 

「--いかないんだよ‼︎」

 

 

 女性へ襲い掛かる。女性はそれを平然と見つめ一言。

 

 

「そう。それじゃあ、また後でね。愛しい人」

 

 

 

 

 

 寒くなってきた静かな夜空に血が飛び散る音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  〜現在〜

 

 

「おいテメェ今何て言いやがったゴラァ‼︎」

「あァん!? テメェいきなり何意味ワカンねェこと言ってんですかー? えェ‼︎」

「んだとこの野郎‼︎」

 

 

 ここは東京14区。その中で喰種が住んでいるこの地域。

 ここでは、治安が良くなく粗暴な喰種や気性の荒い喰種がのさばり騒ぎ立てている。そのため、辺りには喰種同士の争いが頻繁に起こり、それを利用して人間の頸を賭けていたり、ストレス発散のために弱そうな喰種を引きずって腕や足を切断するなどの暴行を平然とどころか愉快そうに行う。そして、それを周りの者たちは誰も一切咎める者がいない。

 

 

「はぁ〜。毎度毎度うるせーなぁ、ここはよ」

 

 

 そんな血生臭い中、黒色のパーカーを着て中は赤い色のTシャツを着、白いズボンを履いているアンバランスな格好の青年位の無気力そうな喰種が溜め息を吐きながら歩いていた。

 

 

(さっさとコーヒー買って帰ろ)

 

 

 その青年…桐崎 晴人(キリザキ ハルト)は早く帰りたいと思い、首を左右に振りながら近くにある自動販売機を探す。

 

 

「ここらだと、あそこにあったよな〜(それにしても、今朝は昔の夢を見て覚めちまったな)」

 

 

 晴人はフラフラと自由に歩きながら自動販売機を探す。

 

 

「(もうあれから十年か……あの時はまだまだ幼い子供だったな)……」

 

 

 今朝夢で見たと言うのは幼い頃の記憶。とても良い記憶とは言えない物だったので寝起きは気分が悪かった。

 その夢はもう十年も昔の記憶であり、またそれだけの時間が過ぎたことを早いなぁと、感傷に浸っていると、彼の前から、体格の良い強面の喰種が歩いて来る。

 晴人はその事に気付かず、ボーっと歩いていると、肩と肩がぶつかってしまう。それでようやく気付いた晴人はぶつかった喰種に、おっとすまないと、簡単に謝ってそのまま過ぎ去ろうとするが、

 

 

「おいガキ、ぶつかっておいてそれだけかぁ?」

 

 

 え? と思って振り向いた瞬間、胸倉を掴まれる。あっちゃ〜まずったなぁと、捕まった晴人は大して慌てもせず面倒くさそうに思う。

 先程も言った様に、ここは気性の荒い喰種ばかりなので、この程度で喧嘩を売る輩が非常に多い。

 ぶつかった喰種は晴人に怒気が篭った声で言う。

 

 

「オイ。テメェ、このオレにぶつかったんだ。しっかりと謝りやがれよ、えぇ?」

 

「いや、すまんってば。たまたまぶつかっただけでしょ? その位許してくれよ。なっ?」

 

 

 凄んだ顔で言ってくる相手に晴人は表情を変えず、掴まれながらも穏便に済まそうとする。しかし、それが逆に癪に障ったのか、先程から元の強面の顔も手伝って怒りの籠った恐ろしい顔だったが、それがさらに激怒した顔になる。

 

 

「あぁ⁉︎ そんなんで許されるとでも思ったのかぁ⁉︎ もっと土下座くらいしようとしやがれぇ‼︎」

 

「なんでそんなことで一々土下座せにゃあかんのよ」

 

 

 誰しもが理不尽だと思う事だが、同時にここの喰種はそういう奴ばかりだったなと、思い出す。晴人は、少し考えてから相手の手を襟から離し「あーわかったわかった」と、少し距離を取って提案する。

 

 

「こんな所で言い争っても仕方ないから、こいつでちゃっちゃっと済まそうぜ」

 

 

 晴人は握り拳を手のひらに当てるポーズをとる。それを見た強面の喰種はニヤリと口の端を曲げる。

 今晴人がやろうとしている事はなんてことはない。単なる闘いだ。ただ、14区において闘いは倒した相手の絶対的支配権を得る事が出来る。つまりは力が全ての治安の悪い地域ではお約束のルールなのだ。今回晴人はそれに勝って穏便に終わらせようと思い、これを提案した。

 

 

(あんましたく無いけど、仕方ないな…まあそれに久々に闘えるんだし楽しむか)

 

 

 晴人は闘いこそ好きではあれど、正直乗り気では無い。何故ならば、この勝負は下手をすれば一生を賭ける事になりかねんからだ。実際にこれで永遠に奴隷となった者は数知れない。

 無論のこと晴人は負ける気は無いもの、勝った所で奴隷にする様な事をする気は無い。というよりも、晴人は奴隷が単なる主従関係だけで済めばいいが、それが差別的な意味で称すのは最も嫌いであり、奴隷を持とうともなりたいとも絶対に思わない。

 

 

「ハッ‼︎ いいじゃねぇか、丁度誰かぶっ飛ばしてぇと思っていたところだ」

 

 

 強面の喰種は丁度良いカモが見つかったとでも思ったのか、乗り気で今にも襲い掛かりそうな雰囲気である。

 晴人はその言葉を聞いた途端、口を曲げて八重歯を見せる。そして思う、自分の性質を。自分は何と言おうとどうしようもない戦闘狂だと言うことに。

 

 

「へー。そいつは残念な事だ」

 

 

 晴人は本当に残念そうに言う。しかしその顔は楽しそうに歪みな笑顔で笑ってる。

 

 

「あぁ? 何が残念なんだ」

 

 

 相手の喰種は表情を崩して疑問符を浮かべながら聞く。

 

 

「何が残念かって? そんなん、決まっている」

 

 

 そう言いながら、お互い眼の白い部分が黒く染まった赫眼になる。喰種が戦闘態勢に入った証拠だ。

 

 

「俺が勝つからだ」

 

 

 自信たっぷりに言い、すぐに動けるよう構える。それを見た強面の喰種は再び口端を曲げた歪みな笑顔になる。

 

 

「ほう。随分と自信がある様だな。ククッ。イイぜ、イイぜイイぜぇ‼︎ そうでなきゃ面白くない!」

 

「へー。わかってんじゃん。流石だなオッサン」

 

 

 晴人は彼の言う事に共感を示す。

 

 

「ああ‼︎ だが、残念なのは貴様の方だ。オレは白鳩(ハト)からAレート認定された喰種…! (フォックス)だ‼︎」

 

 

 そう言ったのと同時に背後から喰種の武器となる赫子(かぐね)を出して襲い掛かって来る。その赫子はまるで獣の尻尾を模したような形だ。

 (フォックス)はAレートと言うだけあってなかなか速い。通常の人間が見れば瞬間移動でもしたのかと思う速さだが、

 

 

「Aレートね、そっかそっか。俺は…」

 

 

 晴人は微動だにせずそれを"見ている"。

 見ている。そう、見えているのだ。常人を超えた速さを彼は余裕で見えていた。

 

 

「Sレートだ」

 

 

 いつの間にか彼らの周りに集まった喰種達は、その闘いで賭け事をしている様で、最早勝負が決すると思い、拳を握って喜ぶ者落胆している者といたが、その瞬間、周りの喰種達は息を飲む。

 

 

「……!?」

 

 

 突如、襲い掛かっていた筈の(フォックス)の両脚が切り落とされた。

 一体何が起こったのか、それは当事者である(フォックス)ですらわからない。しかし、すぐにわかった事がある。それは、自分は喧嘩を売ってはいけない相手に売ってしまったという事に。

 いつの間にか晴人の背中からも赫子が出てきていた。但し、(フォックス)の赫子とはまるで違うフォルムで、こちらは鳥の羽を模した様で、赤黒く輝く煌びやかな小さな宝石がガス状に噴き出ている様に見える。そして、更に特徴的な部分がある。通常、鳥は一対の翼を持つが、晴人の場合、赫子は確かに両方ともあるが、左側の赫子は小さくとても使い物にならなさそうだった。そして、右側は四本で構成されてる。

 

 

「がああああぁぁあっ‼︎ お、オレの…! オレの足がぁっ‼︎」

 

 

 (フォックス)は襲い掛かった勢いで晴人の後ろに転がる。それと同時に(フォックス)は切り落とされた足の激痛に悶絶する。晴人はその(フォックス)に近づいて、歪めていた口をさらに不気味に歪めて眼を見開いて言う。

 

 

「さて、どうする? Aレートの狐さん…だっけ? まあいいや、言っとくけどさ、さっきのまだ本気じゃねえから」

 

 

 恐怖を植え付ける様に殺気を出して言う晴人に、言われた(フォックス)は勿論、周りの喰種達も皆怯えて後退りしている。(フォックス)だけは足が切り落とされたので後退りもなかなかできず、より怯えた表情になっている。最早勝負が決したも同然だが、

 

 

「はぁっ、はぁっ…っ! クッソがぁっ‼︎」

 

 

 (フォックス)は恐怖で動かない体を無理矢理動かし、渾身の力でもって赫子を振り回す。突然の攻撃に少々驚くが、晴人は反射的に体を仰け反らして、初撃を躱し、続けて襲ってくる赫子をしっかり見切って的確に躱す。

 

 

「おいおいどうしたぁ? 自棄(やけ)にでもなったかぁ?」

 

「ぐっ…! この…!」

 

 

 (フォックス)は歯軋りをしながら、縦横無尽に赫子を振り回すが、やはり掠りもせず簡単に避けられる。

 

 

「はぁあ。ああ、もう飽きた。もう終わりにしようぜ」

 

 

 しばらくの間それが続いていたが、晴人はいい加減飽き、隙を見て(フォックス)の腹を狙ってガス状から固形にした事により刃となった赫子を突き刺す。

 

 

「ごあっ‼︎ がっ、はっ…!」

 

 

 (フォックス)は足が無く動けない状態であるため、避ける事は叶わず無防備なまま突き刺され、口から血を吐き出し、振り回していた赫子は崩れ落ちる。

 

 

「ぐっ、ふっ」

 

 

 (フォックス)はまだ死んでないようではあるが今にも死にそうな位に体が痙攣している。実に、ここまでで数分しか経たずに倒された。

 晴人は赫子を抜いて見下ろして言う。

 

 

「あーあ、つまんねえの。ま、所詮はAレートなんかで強そうに振る舞っているだけの奴か」

 

 

 晴人は興が削がれたと言う様に頭を掻いて不気味な笑顔からつまらなさそうな顔になり赫眼も戻り、背中を向けてまた自販機を探し出す。

 

 

「一応、殺しはしねえし、なんも命令もしねえからもう俺の前に出んなよ」

 

 

 最後にそう言い残した晴人は完全に立ち去った。

 そして、周りの喰種達は晴人に賭けていた者が(フォックス)に賭けていた者から賭け金を毟り取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぅ。あったあった。ようやく見つけたぜ」

 

 

 あれから、晴人は人通りの少ない路地で自販機を探して、ようやく見つけた彼はポケットから小銭入れを出し自販機に入れる。

 目的のコーヒー缶のボタンを押して中から落ちる音が聞こえれば取り出そうと屈み、晴人が今正に取り出そうと手を伸ばす。瞬間、不意にその手を止める。

 

 

「…そこだっ‼」

 

 

 突然、何かあったのか晴人は赫子を出して、誰もいないと思われたところに射撃を行う。

 銃撃のような轟音が立ち込め、砂煙が舞いそこにあったゴミ溜まりには水晶のような赫子の一部が突き刺さっている。

 

 

「…出てこい。そこにいるのは分かってる」

 

 

 屈んだ状態から立ち上がり、晴人は赫眼で先程射撃を行った場所を睨む。少しの間その状態が続くが、何も音沙汰無く、気のせいか? と思ったその時、

 

 

「へー。よく気づいたねえ。結構隠れるのには自信があったのになぁ」

 

「!? なっ…! (後ろだと!?)」

 

 

 気配は突然後ろからになり、声も後ろから聞こえてきて、咄嗟に振り向く。すると、そこには、

 

 

「…なに者だ、アンタ」

 

 

 朱色の髪の色をした黒く艶めかしい格好の女性がいた。

 

 

「ンフフ。こんにちは♪」

 

 

 女性はゆったりとした余裕の姿勢で晴人を見据える。

 晴人は先程からその女性に向けて殺気を放っているが、まるで動じない彼女に、ただ者ではないという雰囲気が伝わる。晴人は自然と臨戦態勢に入る。

 

 

「誰だ、アンタは。俺になんかようか? さっきからつけていたようだけど」

 

 

 警戒心が剥き出しな晴人。だが、対する女性は警戒心は愚か、戦おうとする気配が一切無い。これでは晴人が一方的に挑発してまるで相手にされない可哀想な人みたいだ。

 

 

「私が貴方に用があるか、だって? あるよ。アンタの実力を見越してね」

 

「……さっきの観ていたのか」

 

 

 彼女は自分の実力を知っている様な事を言い、なんで知っているのか考えて、晴人は先程の(フォックス)との闘いを見ていたのだろうかと推測し、答えはどうか女性に聞けば、「うん。観ていたよ」と怪しい笑顔を一切変えず簡単に応える。それを聞いた晴人は目が鋭くなる。

 

 

「さっきの観ておきながら、アンタは俺に用があると? ハッ! それはつまり、俺に向いている用事とみていいのか?」

 

 

 晴人は小馬鹿にするように挑発的な笑顔を見せる。だが、それでも女性はその表情を一切変えることがない。

 晴人は不気味な女だと思うが、それと同時に興味も沸いてくる。最近は刺激的な事がなく退屈で暇だったからだ。この女ならその刺激をくれるかもしれないと思い、女性に耳を傾ける。

 

 

「うーん。そうだねー。向いていると思うよ? 何せ、殺し合いだもの」

 

 

 殺し合い。そう聞いた晴人はにわかに興奮を覚える。

 殺し合いと言うことは、つまりは戦いだ。闘いではなく、戦い。今まで14区でやってた賭け事とは違う賭け事の無い、いや、あえて言うなれば、勝者だけが生き残り敗者は無惨に死にゆく、そういう命を賭けた闘い。晴人が今まで求めていたもの。

 

 

「へー。いいじゃねえか。ようやく退屈なジンセイから抜け出せそうだ」

 

 

 晴人は今までで、闘いをしたことは幾度かあったが、それに命を賭けた事は無かった。奪おうにも、奪うだけの価値がある命も無く、ただ相手を痛め付けるだけでとてもつまらない闘いばかりであった。

 だが、この女性は自分の実力を観て殺し合いの用事があるといった。それはつまり、自分でないと殺せない、互角かまたはそれ以上の実力者かそのどちらかということ。故に殺す価値がある。命の賭け合いが出来る。

 

 

「それで? 俺は何をすればいい。相手は誰だ」

 

「まあまあ。そう焦らさんな。今日のところはここまで♪ 詳しい話はまた明日~」

 

 

 晴人早速殺し合う相手は誰かを聞こうとしたら、唐突に女性はここまでといい話を切り上げる。

 

 

「おいおい、ここまで言っておいて…!「それじゃ、またね♪」

 

 

 サッと背中を向けていなくなろうとする女性に「はぁっ!? ちょ、おい! 待て…!」とそう言って晴人が引き留めようとしたが、フッと霧のように消え去ってしまい、伸ばした手は空を切ってしまう。

 

 

「…クソッ。さっさと消えやがって」

 

 

 舌打ちをして悪態を付くも仕方ないので、晴人はまだ取ってなかった缶コーヒーを取りだし、一旦自宅に帰る事にし、歩き出す。

 




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