ある日、晴人は昔会ったきりで長らく出会う事がなかった初恋相手こと唯奈と偶然にも公園で出会った。
二人は再会を機に晴人の服を買いに行っていたが、その帰りに唯奈が謎の黒い仮面を被った喰種に襲われてしまう。晴人は唯奈を助けるべく駆け抜けて行った。
「…何者だテメェ」
もう夜遅く人通りが一切無い街灯だけが点いている路地で、晴人は目の前にいる目の部分だけがくり貫かれた黒い仮面の喰種に殺気がたっぷり込った赫眼を向ける。
「…もしかして、この子キミの獲物? だったらごめんね。先に捕らえたのボクだから」
その黒い仮面を着けた喰種の身長は晴人と対して変わらなく、声的にも若そうな男性の声である。
その喰種はそう言って側に倒れている唯奈に止めを刺そうと手を振りかざし、下した。が、
「……そんなに獲物が盗られるのが嫌なのかい?」
その手は晴人によって止められる。
「そんな事よりちゃんと答えろ、テメェは誰だ…!」
晴人は静かに、されど確かな怒気を含んだ声で獣の如く牙を見せて威嚇する様に言う。
「…ボクに名前は無い」
だが、それでも名乗ろうとはしない。その事に苛立ち晴人はさらに問い詰めるが、
「テメェ…! ふざけた事ぬかしてんじゃ「本当に無いんだよ。昔からね」
どうも、その喰種には本当に名前が無い様で、晴人は一旦手を離して再度問う。
「なら、白鳩どもから何て呼ばれている。それ位はあるだろ、お前程の強さなら」
「…………」
晴人はその喰種がすでに強者とわかっていた様だ。そう聞かれたその喰種は少しの間黙り込むが、
「ボクは一応こう呼ばれているよ…『
「!!(『
晴人は『
大胆に人間を襲っているようで、その実慎重に人目のつかないように攫い、数分で一片も残さずに大量に喰う厄介者だと。
晴人はこんな時に会うとは思ってなかったため、武器は持ってきておらず、前回の反省からか、捜査官に会った時のために顔を隠す仮面しか持ってきてない。
(クソッ、どうする、相手はSSレート…武器無しで勝てるか?)
「…? もしかしてキミ、ボクと戦おうとしてる? なら後でね。今はこの子を喰べたいんだ」
そう言ってまた唯奈に手を出そうとすれば、晴人は羽赫の射撃で邪魔をする。
「させると思ってんのか…!」
『
「はあ、わかったよ。全く、何でそんなに取られたく無いなら先に喰わなかったんだい?」
「テメェ、さっきから聞いてればそいつが食料みたいに言いやがって…! そいつは食いもんじゃねえ‼︎」
唯奈を食料扱いされることが癪に障った晴人はまた赫子の射撃をする。
「食い物じゃ、ない…? 何を言っているんだキミは。人間なんて皆ボクらの食料に過ぎないじゃないか。…もしかして、キミはそんな食料に情が湧いたのかい? だったらキミはなんて可愛そう」
『
「…結構好戦的なんだねキミ」
「ああ。だから一々べらべらと喋ってたら、体真っ二つになるぞ、この…! クッソ野郎がぁ‼︎」
晴人は完全に切れたらしく、青筋を浮かべ唯奈には当たらないよう赫子を乱射する。
「おっと、なかなかに危ない事をするね。なら、ボクも赫子を出すかな」
『
「鱗赫…」
「ああ、そうだよ。わかると思うけどボクの攻撃を一回でも食らったらキミの体、微塵に吹っ飛ぶから」
『
「オラァッ‼︎」
晴人はその追撃を赫子を硬化させて弾き返す。弾き返したら、今度は硬化した四本の赫子をまとめて伸ばして『
「ほらほら、当たらないよ」
だが、『
「この野郎がぁっ!」
また同じように仕掛けるが当たらない。一撃目、二撃目と赫子を突き刺すも、当たらずイラつき歯軋りする。
「クッフフ、次は、こっちから行くよ」
『
晴人は咄嗟に拳を避け、こちらも負けじと赫子をしまい格闘戦で応戦する。
格闘戦が得意なのか、『
「フッ」
「オラッ!」
喰種の中でもSレートの羽赫とSSレートの鱗赫による格闘戦は凄まじい。蹴りを入れてはそれを飛んで避け、拳が来たら横にギリギリ避けてそこからカウンターで拳を返す。時には人間ではありえない方向に飛んで避け、時には人間の体ではとっくに壊れているであろう、そんな音を出しながら攻撃を受け止めるては返す。
それを物凄い速さでやっているため、最早二人は周りの者たちからは残像しか見えない。
「……スゴイねキミ。ここまでボクの攻撃を捌ける喰種はなかなかいないよ」
「お褒めに預かりありがとさん、よっ‼︎」
晴人は大きく拳を振りかざすと、『
「どうした? こんなもんじゃないだろ『
「いや、キミがこんなに強いのが以外でね、少し驚いていたんだ。それで、ボクはキミに少し興味が湧いた。ボクが誰かに興味を持つなんて珍しいよ? …いや、キミが初めてじゃないかな?」
こんなに強いと聞き、晴人はその事に確かにと、自分の手を見て握ったり離したりして前と違う感覚になっているのを感じる。
(前ならあんなに速い格闘は無理だった筈なんだがな。アイツとの戦いの影響か?)
そう、晴人は前に七実と戦った時よりも格段に強くなっているのだ。晴人は今までもこのようにいきなり強くなっている感覚があった。何故このようになるのかは、晴人自身よくわかっていない未知の力だ。だが、それでも今はこの強さはありがたく、存分にその力を発揮する。
「(まあ、いい)テメェが俺に興味を持とうが持たなかろうが、どうでもいいんだよ。とにかくだ、お前は唯奈を襲った。それだけで死確定なんだからな」
「やれやれ、やっぱりキミはあの
芝居の様にわざとらしく黒い仮面の上から手を当て首を振るその様はどこかの御曹司を思い浮かべる。
そして、喰種らしくないと言われた晴人は確かにと思う。
(……確かにそうだ、俺は何故こうも初恋相手とはいえ唯奈を…人間を守ろうとしているんだろうな。別に喰種であることが苦痛って訳じゃない、人間になりたい訳でもない、それなのに何でだろ…)
晴人は自問自答をして答えを見つけようとするが、
「(考えてもわかんねえな。まあ、今はそれでいいか…)確かに俺がやっていることは喰種としては理解不能なんだろうな。だけどよ…」
結局は見つからず後回しになるが、今はただ唯奈を助けたいと思うことにした。
「それがどうしたってんだよ。んなもんお前らが勝手に定義付けているだけじゃねえか! 俺はそんなことには縛られねえ、俺は俺で好きにやる! ただそれだけだ!!」
とりあえず、今はその雑念を全て捨てて、戦いに集中する。
「ほぉ、実に面白いことを言うね」
『
「ますます、キミに興味が湧くよ。でも、そんなことでボクに勝てると思っているのかい? もし、そうならば、自惚れるのも大概にしなよ」
そう、忠告する様に声を低くして言った瞬間、また赫子を出して晴人に襲いかかる。
「…ハル…くん」
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