東京喰種√0   作:ウェズン

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#015

 あれからしばらく経った後、晴人は殆ど太陽が登り始めた頃に自宅に帰った。すると、

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 自宅の玄関で亜蓮が制服姿で晴人を待ち構えていた。

 

 

「今回は随分と遅かったな」

 

 

 入ってすぐの沈黙に耐えられず晴人が何か言いかけたが、遮る亜蓮。

 

 

「俺が何を言いたいか分かるな」

 

「…ああ、元々言うつもりだったしな」

 

 

 一瞬考えてから言った晴人に「ならばいい」と、亜蓮が返してから二人はリビングに移動し、そこで話をする。

 

 

「さて、早速聞くが今日…いや昨日は何をしていた」

 

 

 リビングのソファーに対面して座り早速予想通りの質問をしてくる亜蓮。

 

 

「昨日は……」

 

 

 晴人は昨日あった事を全て伝える。唯奈に会ったこと、『暴食の悪魔(グラトニー)』と戦ったこと等を。

 亜蓮はそれを無表情のまま、黙って聞いていた。

 

 

「…っと、こんなとこかな」

 

「そうか…」

 

 

 言い終わった晴人は亜蓮にどのような変化があるか伺ってみるも、大して変化はない無表情のまま目をつぶっているだけだ。

 

 

「…彼女に…唯奈に会ったか…」

 

「…ああ」

 

 

 唯奈の事は勿論亜蓮も知っていた、晴人の初恋の相手と。故に亜蓮は晴人が唯奈と再会できた事に嬉しく思う。何故なら、晴人が学校を辞めた理由は既に筒抜けだからだ。

 

 

「晴人…お前は今も彼女が好きか?」

 

「……ああ」

 

 

 亜蓮の質問に晴人は応えずらそうに俯いて肯定する。

 晴人はあの喰種としての生き方に厳しい亜蓮に何て言われるか想像するのが恐ろしいのだ。だが、

 

 

「そうか。ならば晴人、俺はお前の恋を応援しよう」

 

 

 そう亜蓮が言った言葉に晴人は弾ける様に驚いた顔を上げる。

 

 

「確かに相手は人間だ、いつか敵対するだろう。だが、それでもお前はそいつが好きなのだろう? ならば告白でも何でもするといい、別に俺は怒らない。むしろそうやって諦める方が怒るべき所だな」

 

 

 亜蓮はいつにもましていい笑顔で言う。

 

 

「…驚いたな、亜蓮がその事を言うなんて」

 

「そんなに驚く事ではない。そもそも俺が言いたいのは人間と馴れ合うな、という訳ではなく、ただ人間と馴れ合うならいずれそうなるという事を肝に銘じておけ、覚悟しておけという事だ。

 それが分かっている、理解している、ならば、俺は人間と恋人同士になろうと何も言わない」

 

 

 亜蓮は静かに優しく言う。その姿は顔の良さもあってか神の如く感じる。そのため、晴人は少し悩みが晴れた気がした…晴人だけに…。

 

 

「それじゃ、行ってくる」

 

「ああ、じゃあな」

 

 

 今日は学校があるため、亜蓮は朝早くから登校していく。晴人は登校していく亜蓮に手を振って見送る。

 

 

「…さて、今日はっと」

 

 

 見送り終わった晴人は一旦自室に入り昨日寝れなかった分少しの間寝ておく。これからに備えて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よお、二日ぶりだな、塔信」

 

「うん、そうだね、はるとおにいちゃん♪」

 

 

 しばらく眠っていた晴人は、昼少し前に起きてクインケと仮面を持って七実に前回のリベンジを果たすべく彼女の狩場に来ていた。

 

 

「あれからまだ二日しか経ってないが、テメエにリベンジしに来たぜ」

 

 

 晴人は早速と目を赫眼にして戦闘態勢に入る。

 

 

「そっか、ならこんかいは、はじめからほんきでいくね」

 

 

 七実も目を赫眼にして赫子を纏い赫者…正確には半赫者になる。ただ、よく見たらその赫子が纏う面積は前より少し広くなっている。

 

 

「…纏う量が前より多くなっているな。さらに共喰いしてきたか」

 

「うん、またおにいちゃんとたたかうとおもったから、もっとつよくなろうとおもったんだよ」

 

 

 七実は不気味な笑顔になると、早速鱗赫の赫子で音速の攻撃を仕掛ける。

 

 

「…ッ!」

 

 

 だが、晴人はその一撃を見切り尾赫のナイフを瞬時に抜き取りそれで弾く。

 

 

「!」

 

「ヘッ、もうそんなのでやられるかよ」

 

 

 得意げに言う晴人に驚いた表情をする七実。

 

 

「へぇ、まえよりつよくなっているね。なら」

 

 

 すると、今度は腕に纏わりついている甲赫の赫子を刃に変形して突っ込んでくる。

 

 

「! 来るかっ!」

 

 

 晴人は突撃してきた七実に、尾赫と鱗赫のナイフをそれぞれ片手に持って防御の構えで待ち構える。

 ギィンッ! と、鉄と鉄がぶつかり弾き会う音が鳴り響き交差する二人。七実は跳んで行った先の壁を蹴ってまた交差する。

 防御の構えのまましばらくその場に止まっていようとする晴人だが、勢いが強く徐々に動かされていく。

 晴人は体制を保ちながらぶつかっていく際にあの纏っている甲赫の鎧を鱗赫のナイフで斬り裂いていこうとするが、

 

 

「チィッ!(前より甲赫の硬さが上がってやがる…! なかなか斬り裂けねえ…!)」

 

 

 と、前回の様にバッサリとは斬れない。だが、浅くはないキズが入るため全く斬れない訳ではない。

 七実も少しずつ斬れていっているのを見て突撃するのを止める。

 

 

「やっぱりすごいね、その"くいんけ"。わたしのかぐねってけっこうかたいほうなんだけどなぁ」

 

 

 七実はずっと疑問に思っていた部分があった。それは晴人が持つナイフのことだ。七実の甲赫の赫子はSSレートと言うだけあって、そこら辺にいる甲赫の喰種と比べたらかなり硬い方なのであるにもかかわらず、晴人のナイフはそれを斬り裂いていく。

 

 

「まあな、元々このナイフに使っている赫胞はお前と同じSSレートの喰種から採ったもので出来ているからな。幾ら出来はおざなりでも性能面はかなりすごいと思うぞ」

 

 

 晴人のナイフはSSレート喰種から採った、クインケで言うならば高級品で出来ているため、出来はいまいちでもその性能は一等捜査官が持つクインケよりは良い性能と言えるだろう。

 ただ、そういう事ならば疑問がもう一つ湧く。それは、

 

 

「…なんでわたしのかぐねがきられるのかわかったけど、おにいちゃんはそんなにいいものをどこで、てにいれたの?」

 

 

 入手方法だ。晴人は知っての通りSレートだ。そのSレート喰種である晴人がどうやって三種のSSレート喰種の赫胞を手に入れたのか。倒すにしても、三体のSSレートを狩るにはSレート一人ではとてもではないが、ほぼ不可能だ。

 七実は晴人の実力を戦っている内にある程度測っていたため、その事を疑問に思っていた。

 

 

「ああ、このナイフの材料は亜蓮…内の兄貴が手に入れたんだよ。次いでにナイフにしたのも亜蓮だ」

 

 

 晴人のナイフは亜蓮が造ったものらしい。

 が、その亜蓮がどうやってその赫胞を集め造ったのかは晴人も知らない。と言うより弟である晴人自身も疑問に思っている事だ。

 

 

(……思えば、亜蓮は昔から色んな謎がある)

 

 

 晴人も疑問に思っている事とは、まず実力。強いのは分かってはいるが、実際にはどれくらいなのかは分からない。それどころか、レートも分からなければ別名も分からない。

 次に行動、亜蓮は時々どこかに行っては、いい情報を持ってくる。それは身に降りかかる災いを事前に回避できるよう捜査官の足取りなどだ。晴人はその情報源はどこからなのか調べようと何度か亜蓮を尾行したことがあるが、毎回気づかれ、すぐに撒かれているためどこに行っているのか検討もつかない。

 

 

「(ま、俺にはどうでもいいな…)さて」

 

 

 気になる事は沢山あるもの、自分に危害がある所か自分を助けてくれるため、取り敢えず今は気にしないでおく。

 

 

「聞きたい事は以上か? なら今度は、こっちから行かせて貰うぜっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………(さて、金も貯まった。そろそろ"奴"と会うか)」

 

 

 晴人が七実と戦い始めた頃、いつも通り亜蓮は昼休みに智明と弁当を食べてトイレで吐いてから、智明と別れてとある人物に会いに校舎の裏へと周っていた。

 

 

「…ようゥ、お前ェと話すなんて久しぶりじゃねェか、ええェ? そうだろォ? 桐崎ィ」

 

 

 薄暗い校舎の裏にいたのは、これでもかというほど服を乱した着方をして、黒いロングコートの袖を通さずに着ている髪を染めてオールバックにしたいで立ちの所謂不良がいた。それも目は赫眼のままで顔の下半分程が隠れるマスクを着けて、だ。

 

 

「ああ、そうだな。それで、成果は?」

 

 

 亜蓮はその不良が何者か知っているのか財布を取り出し数十枚以上はある万札を手に何かと交換しようとしていた。

 

 

「ああ、最高だぜェ、今回はかなり耳打ちがいい情報が手に入ったからなァ」

 

「ほぅ、流石Sレート喰種『盗賊』と言われるだけあるな。諜報も完璧か」

 

 

 それだけ聞いた亜蓮はその金を不良…『盗賊』に渡す。

 

 

「へっ、これ位楽勝だァ。ふむ…毎度ありィ〜、そんじゃあ教えようゥ」

 

 

 亜蓮から貰った万札の枚数を数えた後懐にしまい、調べた情報を教える『盗賊』。亜蓮は彼が教えてくれる情報を頷きながら聞く。

 

 

「成る程な。わかったありがとう。また情報頼んだぞ」

 

 

 聞き終わった亜蓮は礼を言ってさっさと学校に戻ろうとすると、

 

 

「おおォっと、そうだ桐崎ィ」

 

 

 『盗賊』は「これは忠告だァ」と言って呼び止める。

 

 

「最近『覇王(オーバーロード)』の野郎、動き始めたぜェ。なんでかはわからんがなァ」

 

「何…? 本当かそれは」

 

 

 亜蓮はあの凶悪で有名な喰種『覇王(オーバーロード)』が動き出した事に眉間をしぼめる。

 

 

「あァ、間違いねェと思うぜェ。なんせ、白鳩どもの会話を盗み聞きして聞いた話だからなァ」

 

 

 それならば信用できると思う亜蓮は『盗賊』に礼を言って去っていく。

 

 

「忠告ありがとう。気をつけておく」

 

「あァ。知る限りの奴の性格を考えれば、恐らくお前ェは奴に狙われるだろう。精々殺られねえよォ気ィ付けろォ」

 

 

 背中を向けながら「ああ、分かっている」と言って亜蓮は完全に去って行った。

 

 

「…まァ、あいつがそうそう殺られるわけねェか。なんせあの『黒鬼(クロオニ)』だしなァ」

 

 

 『盗賊』は余計なお世話だったか、と思いながら暗闇へと消える。

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