東京喰種√0   作:ウェズン

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久々に投稿。こんな調子で終われるのか不安になってきた。


#016

「オォラァァ‼︎」

 

 

 晴人は防御の構えを崩しいつにも増して狂気を含んだ笑顔で自ら突進して行く。

 そして、七実も不気味な笑顔を始終崩さずに戦っている。そんな二人はさながら狂戦士同士が戦っているように見える。いや、最早狂戦士同士にしか見えない。

 

 

「ふふっ、ふふふっ」

 

 

 前より格段に強くなっている晴人に七実は徐々に追い詰められているのを感じる。だが、逆にそれが楽しく思っているようだ。

 

 

「まえよりも、つよくなっているね。おにいちゃんもともぐいしたの?」

 

「はっ! んなちゃちなことすっかよ! 俺は俺らしく鍛えてきただけだ!」

 

 

 戦いの最中、言葉を交わす二人。だが、その動きを止めることは無い。

 

 

「そうなの?」

 

「ああ! そうだ!!」

 

 

 そう言いつつ、徐々に戦いの速さを上げていく。

 

 

「だったら、すこしつよくなりすぎじゃないかな?」

 

 

 そう言われた。が、表情は多少変えてもスピードを維持する晴人。

 

 

「…確かにそうかもな」

 

 

 晴人は相手には聞こえないようボソリと言う。

 

 

「…………(なんだろうな。コイツも強くなっている筈なのに、前よりもコイツの動きが視える)」

 

 

 一体自分の身体に何が起こっているのか、そう思う晴人。

 

 

「(…って、そんなこと考えている暇は無えな)オラァ!!」

 

 

 また交差する二人。お互いが傷ついていくが、速度は失われるどころか、ますます速くなっていく。片方が一撃を入れればまた片方は咄嗟に反撃する。それが途切れることはない。

 だが、そんな永遠に続くようなこの戦いにも終止符が打たれる時が来る。

 

 

「ぐっうっ!! ああああぁぁ!!」

 

「うぎゅ!!」

 

 

 既に満身創痍状態の晴人は更に七実の一撃を食らい一瞬動きが止まるが、無理矢理身体を動かし七実が離れる前にその首を掴む。

 

 

「っ!! これで…」

 

 

 そのままもがいて逃げられる前にとナイフを構える。

 

 

「終わりだああぁぁぁっ!!」

 

「あああああぁぁ!!」

 

 

 七実も首を掴まれながらも最期までもがこうと赫子を動かそうとしても、その前に晴人のナイフが先に七実の身体を切り裂く。

 

 

「…! あっ…! あぁ………」

 

 

 切り裂かれた七実は体が死んでいく感覚を覚えていく。

 

 

「くっうっ…! はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

 ふらふらになりながらも晴人は七実を離し距離を取る。

 

 

「…わたしのまけ、かぁ。…ふふっ、たのしかったよ、はると、おにい、ちゃ…」

 

 

 最後まで言えずに七実は切り裂かれたところから大量に血を流し出し倒れて絶命する。

 

 

「はぁ、はぁ…ようやく、倒れたか」

 

 

 晴人は倒れた七実に近寄って息を確かめる。

 

 

「…完全に死んでいるな…ふぅ、(まだ依頼受けてからたったの二日しか経ってないってのに随分長く感じたな)」

 

 

 晴人はようやく依頼が終わったことに安心して座り込み一息つく。

 

 

「ま、何にせよ依頼完了っと。まだ明るいし、早速知らせに行くか」

 

 

 まだどこかに行く時間があると言うことで、晴人は立ち上がって情報屋の喰種の店に行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁお♪本当に討伐してきてくれたんだ! スゴいじゃない‼︎」

 

 

 14区『Helter Skelter』にて、晴人は妙にテンションの高い情報屋の喰種に七実を討伐したことの報告をしていた。

 

 

「別に。二日も経ってようやく殺れたんだから大したことじゃねえよ」

 

 

 晴人は大したことないと言うが、SレートがSSレートを二日で倒すというのはそうそうできるようなことではない。

 

 

「そんな謙遜しなくたっていいって~♪君の事はよく知っていたけど、まさか本当にあの子を倒すなんてね~」

 

「…その感じからして、やっぱり知っていたな。アイツが赫者だって事とか」

 

 

 「まあね~」と、晴人が少し怒り気味に言っているのを軽く返す彼女に、この女ズタズタに切り裂いてやろうかと、怒りを露にして赫子を出しかけるが、「おっと、ここは戦闘禁止だよ♪」と、言って戦闘禁止と書かれた看板を指差す。少し見えずらい所にあるが、確かにそう書いてあるのを見受ける。仕方ないと晴人は舌打ちして出しかけた赫子をしまう。

 

 

「それじゃ、これ約束の」

 

 

 そう言って差し出してきたのは薄茶色の封筒。中身は分からないが、長方形に厚めに膨らんでいるため紙類が入っているのが何となく分かる。

 晴人はそれを手にとって中身を確認する。

 

 

「…しっかり要求通りのようだな(よし、これで家の家計も潤って亜蓮も楽になるだろ)」

 

「そりゃあ当然でしょ? 詐欺師じゃあるまいし」

 

 

 晴人は「そりゃそうか」と言いつつ、どの口がそんなこと言うんだと、心の中で思う。

 その封筒を懐にしまったらもうここには用がないな、と出ていこうとするが、

 

 

「ちょ~っと待ちなさ~い、ハルキチ~」

 

「何だよ? ってか何だ、ハルキチって」

 

 

 「そんなことはいいから~」と言って晴人を呼び止めた情報屋はコーヒーを出してカウンター席に座るように奨める。

 

 

「それで、用は何だ」

 

 

 カウンター席に座った晴人は警戒しながらコーヒーを飲み、今度無茶な依頼出してきたら即断ってやると、そんな様で話を聞く。

 

 

「ん~っとねえ、聞いてほしい事とまた頼みたい事二つあるんだけど、」

 

 

 「どっちからがいい?」と聞いてきた情報屋。言い方からしてどちらも結果的に話すつもりらしく、それを感じ取った晴人は「どっちからでもいい」と適当に返す。

 

 

「それじゃ聞いてほしい方からね」

 

 

 そう言うと何時もの軽い雰囲気から一転、どこか真剣な表情になる情報屋の喰種。

 

 

「…これはね、あの子…七実のことなんだけどね」

 

「ん? 七実ってあの?」

 

 

 情報屋の喰種が言う七実は晴人が倒した七実のことで、それを聞いた晴人は面識があったのかと、思い聞いてみれば「うん、そうだよー」とあっさりと言った後、晴人が遮った話をもう一度話し始める。

 

 

「あれはー、そうだな~、今から数十年前のことなんだけどね--」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、少しよろしいですか? 服部准特等」

 

 

 14区を巡回している時、咲原は前で辺りを警戒して歩いている服部に話しかける。

 

 

「ん? 何だ、咲原」

 

 

 話しかけられた服部は一旦足を止めて咲原の話に耳を傾ける。

 

 

「はい、こんな時にすみませんが、『深窓のご令嬢』について少しお伺いしたい事があるのですが」

 

 

 『深窓のご令嬢』と聞いて、服部は何の事が聞きたいのか返事をして聞く姿勢になる。

 

 

「その、彼女…は確か私と同じ位の年齢、ですよね?」

 

「ああ、正確には分からないが、少なくとも二十代に近い筈なのは確かだ」

 

 

 「それなら」と続ける咲原はあのドジっ子なところがあるとは思えない程真剣な顔だ。

 

 

「何故彼女はあのような幼いまま何ですか? 肉体は別にあり得ない訳ではないにしても精神的には成長すると思います。喰種が本性を隠さないと教育を受けれないのは知っています。ですが、だからといってあんなに幼い性格のままでいられるものなんですか?」

 

 

 喰種の大半は義務教育を受けてないのは誰しもが想像できる。だが、それでも回りの人と接する機会は幾らでもあるため、ある程度の成長はする筈だ。だが、七実はあの通り精神的にまるで成長を見せてない。

 

 

「あ~、それについては調査済みなんだが~なぁ」

 

 

 どうも歯切れが悪い。あまり言いたく無い内容のようだが、咲原の顔が真剣なのを見た服部は「聞いて後悔すんなよ」と前置きをしてから仕方なくといった様子で話し始める。

 

 

「少し憶測があるからな、鵜呑みにするなよ。

 これは奴がまだ見つかる前の話だがな--」

 

 

 

 

 

 

 

 

 今から十数年前の話だ。奴はかなり裕福な家で暮らしていた。恵まれた家庭、大勢の使用人、尽きることの無い資産、普通の奴らなら誰しもが憧れ、尊敬し、また妬む、そんな資産家のお嬢様だった。

 

 

「…『深窓のご令嬢』って名前は、ただ単にそれっぽいからその名前にしたって訳ではなかったんですか…」

 

 

 そんな驚いたようなしょんぼりしたような顔すんな。

 で、そんな絵に描いたようなお嬢様である奴だが、産まれた間もない頃は母親や父親に大切に育てられてたらしい。だが、ある日から少しづつ変わっていく。

 

 

「漫画とかでありそうな話ですね」

 

 

 余計なチャチャ入れんな。

 とにかくだ、『深窓のご令嬢』が産まれた時から数年経ったとこまで飛ぶが、奴が歩ける程度になったころから様々な不幸が奴の家に降り注いだ。

 父親の仕事の失敗、何者かからによる母親の暗殺、使用人の死去、挙げ句CCGに喰種だと暴露る、そんな不幸の連鎖だった。

 

 

「CCGに見つかるのって喰種達で言えば不幸な事ですよね。私達には幸運な事ですが」

 

 

 少し黙ってろ。「はい…」えー、それでだ、そんな事が続き、ついに残った父親は精神的に狂い自分の娘を殺そうとした。

 

 

「………!」

 

 

 だが、知っての通り奴は生きてる。何故生きることができたか、それはだな、

 

 

「『深窓のご令嬢』が返り討ちにした?」

 

 

 よく分かったな、その通りだ。その頃から先天的な殺戮意欲があった奴は殺気を感じた瞬間に初めて赫子を出し、父親を自らの手で殺した。

 

 

「…なんと言いますか、自分には想像できない事ですね」

 

 

 できねえ方が幸なんだよ。それで、奴は父親を殺害した後、本能的にその死体を喰った。そして、共喰いをした奴は力が増幅する感覚があった。奴はその感覚に溺れ更に共喰いをした。

 

 

「…確か、子供が共喰いなんてしたら精神がすぐに崩壊して死に至るのではなかったのではないですか?」

 

 

 そうなんだがな、奴は父親を殺した時よりも前に精神がおかしくなっていたんだ。家庭の環境によってな。だから、どれだけ精神を蝕んでもその精神はとっくに崩壊している。だから今更壊れるもなにもない、むしろ強くなる事に溺れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと、こんな事があって、奴は精神崩壊し、その成長は閉ざされていたんだ」

 

 

 言い終わった服部は咲原の様子を見ると、

 

 

「もう…なんて言いますか、経験不足な自分には何も言えませんね」

 

 

 後悔したといった顔で肩をしぼめていた。その様子を見て服部はそらみたことかと呆れる。

 

 

「まあ、なんだ、お前はそれでいいさ。こうやって何も知らず普通に生きていられる、それが一番の幸せなんだよ」

 

 

 咲原は暗く沈んだ顔をしており、服部もどこか悲しげな表情になっていた。

 

 

「それにしても、喰種達にも過去とかがあるんですね」

 

「当然だ。前にも言った筈だ、俺らと喰種の精神は同じだって」

 

 

 咲原は、喰種と人間の精神面は変わらない、服部にそう言われても分からないというのが正直な感想だった。だが、先程の七実の話を聞き何となくだが分かってきた。

 

 

「なんだか、人間…みたいですね、正直認めたくはないですが」

 

 

 だがそう思わずにはいられない。喰種達にも過去があり築き上げたものがある。故に咲原は二つの感情で板挟みになっている。似た存在でありながらその存在を喰らうことへの怒りと、似た存在なら生きるためにこうするのは仕方ないというそんな気持ちに。

 

 

「まあ、あんまり難しく考えんな。たとえ、どれだけ似ていようが俺らの敵であることに変わりはないんだからな。いや、元より敵対する運命なのかもな」

 

「? …どういう事ですか?」

 

 

 敵対する運命とは一体どういうことなのか咲原は疑問に思い、聞いてみれば、

 

 

「俺ら人間ってのは昔から同じ人間とばかり争っているだろ。生きるためにな」

 

 

 そう言われてようやく気づく、服部が何を言わんとしているのかを。

 

 

「つまり、昔から人間は生きるために自分たちと同じ存在とばかり戦っていると。そういうことですか?」

 

 

 咲原が服部が言いたいことを言えば「ああ、そうだ」と肯定する。

 

 

「…なんだかすごく皮肉な事ですね。生きるためには自分と同じ存在と争わなければいけないなんて」

 

「本当にな、だがそれがこの世の摂理なのかもしれないな」

 

 

 悲哀を漂わせながらそう言う二人は表情に影が指す。

 

 

「さて、休憩は終わりだ。次はこっちを回るぞ」

 

 

 服部のその言葉を最後に、二人はまた巡回を再開する。




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