東京喰種√0   作:ウェズン

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久々に投稿。なんだか他の作者様方の作品を見ると本当に自分の作品に自信を持てなくなる。なんでこうもいいのが書けるんだろ。羨ましい。


#017

「…そうですか、『アオギリの樹』が活動を見せたと。はい、分かりました」

 

 

 服部と咲原が『深窓のご令嬢』について話していた頃、二人とは違う14区で喰種が徘徊している地帯にて、先程まで電話をしていたクインケが入ったアタッシュケースを持っている見た目まだ二十代の若そうな男性捜査官がいた。

 

 

「ふぅ。アオギリか。厄介な奴らが動き出したな。ここに来ることは無いだろうけど、警戒に越したことはない。

 はぁ、『覇王(オーバーロード)』といい、なんでこれまで余り活動が見えなかった奴らが動き出したんだろ。片方だけでも大変だっていうのに」

 

 

 彼の名は如月 恭弥(キサラギ キョウヤ)、上等捜査官にして『第二の死神』と呼ばれている捜査官の相方だ。そんな彼は独り言を言っているつもりだったが、

 

 

「仕方ないよ、それがアイツら喰種なんだし」

 

 

 その場に別の人物が現れ、その人に独り言を聞かれていた。

 

 

「…独り言だったんで別に聞かなくてよろしかったんですが」

 

 

 独り言を聞かれたのが嫌なのかしかめっ面でそのもう一人の人物に抗議する。

 

 

「いいじゃない。さ、そんなことはどうでもいいから早く『黒鬼(クロオニ)』を見つけるよ、如月」

 

「はぁ、また『黒鬼(クロオニ)』ですか。本当貴女は飽きませんね、排瞳(ハイドウ)さん」

 

 

 話し方からして、彼の上司であろうその人は、短髪でスラッとした体型の長身美人だが、光が消えた目からは感情が読めない薄気味悪くも感じる女性捜査官。

 そして、この人こそが彼の通称『第二の死神』と呼ばれているその人。その名も排瞳 (ホノカ)

 

 

「当然。あの喰種は絶対に私が、絶対に私が殺す。そして、殺してクインケにして、この子と一緒に使う。それが私の夢」

 

 

 そう言って仄はアタッシュケースに入っているクインケをとても大切に持つ。

 

 

「本当、好きですね、そのクインケ」

 

 

 見慣れているのか恭弥は飽き飽きしたような目で見る。

 

 

「うん、この人は私の最愛の人。私だけのクインケ」

 

 

 さも当然と、このクインケは自分の一部というように言ってのける仄は無表情なのにその言葉だけでどれだけ大切なのかはっきりとわかってしまう。

 

 

「そうですか。…そう言えば、そのクインケ名前何て言いましたっけ」

 

 

 ふと、恭弥は仄の持つクインケの名前が気になり聞く。

 

 

「ん、この人の名前は、『オーガハイド』、私しか使うのを赦さない私だけのクインケ」

 

 

 うっとりとクインケの名を呼ぶその姿はとても艶めかしいが、その目もあり怖くも見える。

 

 

(なんと言うか相変わらずだなこの人。なんでこの人の部下になったんだろ僕。

 僕はただ自分の家族の仇を取りたい、そのために捜査官になったのに、これじゃあいつまで経っても取れる気がしないよ)

 

 

 恭弥は自分の目的が達成するのがまだまだ大分先だと思うと溜息しか出ない。

 

 

「溜息なんて吐いてどうしたの?」

 

「なんでもないです(でも、こんな人でも実際に凄い所がある)」

 

 

 恭弥は今まで聞いた彼女が『第二の死神』と呼ばれるまでの経緯を思い出す。

 

 

(本当にそんな人なら喰種をこの世から全て駆逐することも夢じゃない。そう思っていたのに)

 

 

 だが、実際はどうか。彼女は確かな実力を持っておきながらそれを奮うことは滅多に無い、というより彼女が剣を取るときは『黒鬼(クロオニ)』討伐以外では基本ない。

 

 

(それで、普段は老人でなければ障害者でもないのにヘルパーを呼んで家事は全て任せて自分はあれこれ好き勝手ばかり)

 

 

 さらに、人間としても絵に描いたようなダメ人間だ。

 だが、そんな彼女にも『黒鬼(クロオニ)』以外でその実力を発揮した時があった。

 それは、『白鬼(シロオニ)』掃討戦。

 つまり、晴人達の父親の討伐作戦だった。

 

 

(…どうしてその時は本気を出したんだろう。その理由は未だにわからない)

 

 

 何故彼女がこの仕事だけ目に見えてやる気になったのか、それは相方を務めて長い恭弥にもわからない。見た限りでは『白鬼(シロオニ)』に何かしらの思い入れがあるらしいが、その思い入れは見ての通り怨みや怒りという訳ではなくむしろ愛情に近い。行き過ぎ感を否めないが。

 

 

(それだからかどうかわからないが、現在『白鬼(シロオニ)』と血縁関係の可能性が出た『黒鬼(クロオニ)』をいつまでも追っている。神出鬼没と言われる程遭遇率が低いのにだ。それだけなら捜査官らしく尊敬できるんだけど、それ以外の凶悪な喰種を見つけても基本無視なのは流石にどうなんだろう)

 

 

 今までここ14区で様々な喰種を見かけた。その中には凶悪な喰種も大勢いた。しかし、仄はその全てを『黒鬼(クロオニ)』ではないからと、たとえその喰種が人を襲っていても意中にも留めずに去り、その喰種の駆逐は全て恭弥に丸投げ。

 そして、そのような事をする度、上から仄共々恭弥もお叱りを受けている。その上、仄は全くと言っていい程反省の色を見せないので、ほとんど、というより実質恭弥だけが怒られているようなもの。なので、毎回恭弥が頭を下げてる日々が続いてる。

 そして、彼の心労はこれだけではない。彼女の仕事の書類を断りもなく押し付けられ、自分はサボってばかり。

 

 

「(それで実力だけは良すぎる訳だから、階級を下げる訳にもクビにするにもいかない訳で尚性質が悪い)本当、どうにかならないもんかな」

 

「何が?」

 

 

 等と呟いていると、その呟きが聞こえたのか仄が首を傾げて何の事を言っているのか聞く。

 

 

「いえ、何でもないです」

 

「そう…」

 

 

 何でもないと言えば興味を無くしたのかもう聞かなくなる。聞かなくなった仄を見て、恭弥は先程の電話を思い出し、その内容を伝えようとするが、

 

 

「それで、排瞳さん、先程本局から『アオギリの樹』の情報が…「『黒鬼(クロオニ)』じゃないならいい」……」

 

 

 本当身勝手な人だ、誰しもがそう思わずにはいられない、そんな拒否の仕方をされた。

 

 

(……もう、誰でもいいからパートナー替えてくれないかな…)

 

 

 酷い目にあってばかりな彼故にそう願う。しかし、その願いに応えれる者は、誰もいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 場所は戻り『Helter Skelter』にて、晴人は同じくして情報屋の喰種から七実の過去を聞き色々な意味で驚き、開いた口が塞がらなくなっていた。

 

 

「…なんて言うか、そんな過去なんて日常茶飯事な事だけどさ、元とはいえアイツ、ガチなお嬢様だったのね」

 

「んふふ~、驚いた?」

 

 

 晴人が彼女の話を聞いて驚いたことは七実が本当にお嬢様だった事だけではなく、自分よりも年上だった事やその頃から共喰いをしていた事だった。

 

 

「ああ、というか驚きを通り越して驚愕しているよ」

 

 

 あのなりで俺より年上なんだもんな~と、そのことが何よりも驚きの事実らしい晴人。

 

 

「しっかし、アイツが俺より年上なのにお兄ちゃん呼ばわりだったのは、精神が壊れていたから、か」

 

 

 晴人は自分よりも年上であると聞いた祭に、まるで自分より年上だと言う七実に何故そう呼ばれるのか疑問を抱いていた。だが、七実の過去を知りその理由がだいたい想像できた。

 

 

「うん、悲しいよね~こんなにも不幸にまみれた過去なんてね~」

 

 

 他人事のように言う彼女は、まるでその不幸に悦を感じているようで感じが悪い。

 

 

「…あんた、趣味悪そうだな」

 

 

 晴人が軽蔑の入った目で睨むが「そんなことないよ~」と、彼女はまるで意に介していないように言う。

 

 

「……そうかよ(本当に得体の知れない人だ。いや、喰種か)」

 

 

 晴人はそんな彼女に自分とは違う狂気を感じる。故に恐怖してしまうが、ここで怖れを見せては手のひらに乗せられそうなので、冷や汗だけに止めてしっかりと意識を保つ。

 

 

「さ~て、この話はここまでにして、頼みたいことの方なんだけど」

 

「…何だ」

 

 

 七実の過去話が終わり、次は先程も言った頼み事について話し始める。

 

 

「それはねー、また喰種討伐♪」

 

「…またSSレートの大物とか、もう勘弁願うぞ」

 

 

 暗に受けると言った晴人に嬉しそうに話し始める情報屋の喰種。

 

 

「大丈夫大丈夫~♪今度のはそんなに強くないから~、ほらっ♪」

 

 

 そう言って見せてきたのは、とある喰種の情報が書かれた書類。そこにはSレート『ヘッド』、赫子のタイプは尾赫、人間を捕食する祭に老若男女問わず頭部だけを喰らう変わり者と、そう書かれていた。

 

 

「ふむ、確かにその様だな。しかし、頭だけ喰うなんて、また随分な変質者だな。まあ、別に珍しい訳じゃないけどさ」

 

 

 確かにそこまで強くはなく、晴人は前のと比べればたいして大変じゃないだろう、そう高を括るが少し問題がある。

 

 

「しっかし、写真が無いのは痛いな。これじゃ探しようがねえな。なんか無かったのかよ」

 

「あー、ゴメンね~生憎、写真を撮るのは無理だったのよ」

 

 

 そう言う情報屋の喰種は手を合わせて謝る。晴人は何故撮れなかったのかを聞くが、

 

 

「あ~、それはね、あの子結構神出鬼没なところがあるのよ。だから、撮ろうと思ってももういなかったり、そんなことばかりでね」

 

 

 「あっ、でも場所は特定できたから」と言うものの、晴人はこの人相手によく撮られず逃げてきたな、と驚く。情報屋の喰種はこうして見るだけでも相当経験を積んでいるのがわかる。

 故に、そんな彼女から逃げおおせたこの喰種はどれだけ強いのか気になるのと同時にまさかSレートなんてのは名だけで実際はもっと強いんじゃないか、とめんどくさそうに思う。

 

 

「後、一応言っとくけど、」

 

 

 と、少しやる気が削がれた晴人に更に追い討ちをかけるように不穏な空気が漂い始める。

 まさか、本当にこの情報に悪い意味で変更点が出来たのかと、そう思ってしまう晴人。

 

 

「いや、別にその情報に変更点とか誤りがある訳じゃないんだけどね」

 

「…んじゃなんだよ」

 

 

 晴人の表情から察した彼女はすぐにそれを否定する。だったらなんなのか、気になる晴人はその事を聞くが、

 

 

「うん、まあ、行ってみれば分かると思うよ。ただまあ、大変なのは覚悟してね♪」

 

 

 と、誤魔化す様にウィンクをして、結局肝心な事は教えてくれなかった。そのため、晴人は仕方なく自分の目で見に行くことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ようやく知ることになる。彼女が言った意味を、何がどれ程過酷な事なのかを。

 

 

「はぁ…はぁ…っ! クッソがぁ!!」




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