東京喰種√0   作:ウェズン

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#004

「…おい、なんだ、ここは」

 

「私が経営しているお店♪」

 

 

 晴人と女性が歩き出してから少し経った頃、二人は『Helter Skelter』と書かれた看板が掛かっている怪しい雰囲気を出しているバーの前にいた。

 

 

「…言っておくが、俺は未成年だからな」

 

「別に酒に付き合え、って訳じゃないんだから~安心しなって」

 

 

 それなら別の所でもいいだろと、思うが口には出さず黙って店に入る。

 店の中はやはり怪しい雰囲気を出していて、直ぐ前にあるカウンター席の奥には様々な種類の酒があった。

 

 

「それでっ、早速殺しの依頼についてなんだけど…」

 

 

 カウンターの席に晴人が座り女性がカウンターの奥に行ってコーヒーを出したら、早速と女性が話始めようとした時、晴人が、

 

 

「その前に聞かせろ。アンタのその依頼には何の意味がある」

 

 

 そう言って遮る。

 

 

「意味?」

 

「そうだ。なんでアンタはそいつを殺して欲しいのか。そいつを殺したところで何か起こるのか。まずはそれを聞きたい。そんで、その内容次第では悪いが断らせてもらう」

 

 

 と、警戒たっぷりの目で睨み付けて言うが、女性は笑みを崩す事はなく、ただ楽しんでいるという風な目で返す。

 

 

「意味ねえ。有るといえば有るけど、無いといえば無いかな」

 

 

 そして、そんな女性から返ってきた返事はどこか釈然としないようなことで、晴人を苛立たせる。

 

 

「アンタな、もう少しハッキリ言いやがれよ」

 

「じゃあ、言わせてもらうけどね、その意味は教えられないんだ」

 

 

 そう言われた晴人は「はあ?」と、眉目を萎め訝しげな顔になる。

 

 

「言えないって、なんでだよ」

 

「ごめんね~。それも言えないんだ」

 

 

 それすらも言えないと彼女は言い、晴人は更に訝しげな顔になる。

 

 

(はぁ、訳分からん。そもそもだ、今思えばこの区域なら俺くらい強い奴なんてまだまだいるじゃねえか。そうだとすると俺の闘いを見たから強いと断定してきたのもなんか怪しいな)

 

 

 ここに来て、様々な疑問が湧き上がってくる。取り敢えずと、晴人はそのなかでも一番聞きたい事から聞く。

 

 

「まあ、この際、それはいいんだけどよ。二つ聞きたい。一つ目は、アンタは俺にその依頼を頼みたいようだけど、それは何でだ?」

 

「? 言ったでしょ、貴方ならできると思ったから」

 

 

 晴人の質問に女性は然も当然と言うように言う。

 

 

「あーいや、言い方が悪かった。なんで俺なんだ? 俺くらい強い奴なんて他にもまだまだいるだろ? なんでその中から俺を選んだのかだ」

 

 

 と、改めて質問する晴人に、女性は少しだけ考える素振りを見せる。

 

 

「貴方を選んだ理由ね。そうだなぁ〜、まあ言っちゃえば君の事は何でも知っているからかなー」

 

「…何でも知っている?」

 

 

 女性がそう応えれば、晴人は一瞬険しい顔つきになる。

 

 

「そっ、何でも。そうね、まず君の名前は桐崎 晴人、Sレート喰種で通称『(キャット)』と呼ばれている。中学一年生まで学校に通っていたけど途中でやめて、その後は学校には通ってない。他にも双子の兄がいて、その兄は今も学校に通っている。そして、少し前にここ14区を騒がせたSSレート喰種『白鬼(シロオニ)』の息子である。こんなとこね」

 

 

 次々と述べた内容は、どれも外しておらずそれを聞いた晴人は驚き、そして、「アンタ何者なんだ」と、問う。

 

 

「私? 私の事なんてどうでもいいでしょ。まあ強いて言えば殺戮より情報を愛する喰種、そんなとこかな」

 

 

 晴人はますます怪しく思うが、これ以上何を言っても無駄だろうと思い、この質問はやめて次に入る。

 

 

「で、その情報屋さんが俺の事をよく知ってるってのは分かった。それならいくらでも脅せる情報があると。なら、次だけど、」

 

 

 と、そこで切って、一旦コーヒーを飲んでから質問する。

 

 

「こいつは依頼と言ったな? ならば、報酬も出るんだろうな?」

 

「モチロン♪」

 

 

 ウィンクして言う彼女に、晴人は目を細めて真意を探るように見るが、

 

 

「そんなに警戒しなくていいって。別に望んだのとは別の形で報酬を出すなんてしないからさ」

 

 

 と、こちらが探りたいことはばれている。そのため探っても無駄かと思い、取り敢えずのところは信用するかと、決めて、コーヒーをまた一口飲む。

 

 

「さて、質問は以上かな? それじゃ、ようやく本題に入れるね」

 

 

 そう言って彼女は店の奥に行ってしまったと思ったら二枚の紙を持って出てくる。

 

 

「こっちは今回の標的の居場所についてだけど〜」

 

(今"今回の"って、言わなかったか? まだこれからあるのかよ)

 

 

 晴人はそんなことを思うが、そんなのはお構い無しに話を進める。

 彼女が見せたのはここ14区の地図である。一見すれば市販で売っている一般的な地図だが、細かな所で自筆と見られる文字が書かれており、一般では知り得ない場所や誰かの隠れ家と思われる場所を書いているのだろう。

 その地図の一部分が丸く赤いマーカーで囲まれている。

 

 

「ほう。ここか」

 

 

 晴人はその場所と今自分がいる場所を交互に見る。

 

 

(距離はそこそこ。これなら今日からでも行けるな)

 

「場所は分かった? それじゃ、次だけど」

 

 

 そう言ってもう一枚の紙を見せてくる。しかし、それは紙ではなく、一枚の写真であった。その写真の中にはまだ十歳に成ったばかりと思われる背丈の後ろ姿の少女が写っている。それも、食事中の様子でだ。

 

 

(…こんな時を写すとはね。単にコイツの悪趣味かもしくは日頃からこの状態ばかりなのか)

 

「どう? 写真から見ての貴方の感想は」

 

 

 写真を手に持ちながら問う彼女に晴人は、「悪趣味だな」と、素直な感想を出す。

 

 

「アッハハ! やっぱりそう思う? でも、仕方ないのよ、この子を写すチャンスなんてこの時しかなかったの」

 

「それって、つまり普段は姿を現さないっていうことか?」

 

 

 この時しかなかったと聞いた晴人はどういうことかを聞こうとそんなことを言う。

 

 

「ええ。この子を撮るチャンスって食事中の時のみなのよね」

 

 

 それなら仕方ないか、と思った晴人は写真を自分の手で持って観る。

 

 

「(…正直、いくら相手が凶悪な喰種とはいえ子供は相手にしたくねえな)そういや、コイツのレートとかはどのくらいなんだ?」

 

 

 そう聞かれた女性はいつの間に出したのか、ワインー正確には腐った血ーを出してワイングラスに注いで飲んでいたのを止めて晴人の質問に答える。

 

 

「ん~? その子のレート? それなら確か~」

 

 

 晴人がコーヒーを飲みながら答えるのを待っていると、

 

 

「SSレートだったな~」

 

 

 それを聞いて、晴人は飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになる。

 

 

「ちょっと待て! なんだよそりゃ! 俺より上じゃねえか!」

 

 

 晴人は慌て気味に先ほどの言葉に食い付く。

 

 

「確かにそうだけど、君なら大丈夫でしょ」

 

 

 だが、女性は大丈夫と軽く言う。これに晴人はイライラが溜まり爆発しそうになる。

 

 

「軽く言ってんじゃねえよ! レートが一つ違うだけでらどれだけ違うか分かってんのか! ったく、いくら強い奴と戦いたいって言ったってこうまで高いとなぁ」

 

 

 晴人は頭を押さえ苛つきを抑えて冷静に、静かな怒りを女性へ向ける。

 

 

「ンフフ♪それは分かっているよ。でも、君は例外でしょ?」

 

 

 その言葉の意味を察する事が出来た晴人は苛つきが消え、本当に何でも知っているんだなと思う。

 

 

「アンタ『アレ』の事も知ってんだな? 確かに『アレ』を使えば相手がSSレートでも対応出来る。だが、相手によるが正直勝てるか分からんぞ」

 

「そんなの分かってるよ〜、でも君なら本当に大丈夫だと思うよ」

 

 

 何でそんなことを平然と言えるのか疑問に思うが、そこで新たに疑問が浮かんだのでそちらを聞いてみる。

 

 

「そういえば、さっきも言ったが、何でその喰種を殺してほしいんだ? 食料でも奪って来るのか?」

 

「ん〜、いやそういう訳じゃないんだけどね…ただあの子を野放しにしとくとヤバいと思ったのよ」

 

 

 一瞬考える素振りを見せ、すぐに答える。

 晴人は、ヤバいと言うが何がヤバいのか分からない。そのため聞いてみると、

 

 

「何がヤバいって、そりゃあ決まってるでしょ、白鳩だよ白鳩」

 

 

 そこで何故白鳩が出てくるのか考えてみるも分からず、どういう事なのか再度聞く。

 

 

「ん〜とね、あの子ってさ、かなり暴食でしょ? このままだと白鳩が強力な捜査官を送りかねないのよね〜」

 

 

 それを聞いた晴人はようやく納得がいった。

 

 

(なるほど…つまりはこうだ、その喰種をこのままにしとくと、ここらを担当している捜査官を喰ってしまいかねない。もしそんな事をしたらもっと強力な捜査官を出して来るかもしれないから、という事か)

 

 

 理解することが出来た晴人は本当にヤバいと思った。

 

 

(だとするなら確かにヤバいな、ここは荒れているからただでさえ強力な捜査官がいるのに、更に強いのが来るとか洒落にならん)

 

 

 晴人はそう思うのと同時にまあ、そんな簡単に殺られる程ここの捜査官は弱くはないだろうが、とも思う。それでも万が一の可能性があるので、それなら受けざるを得ないかと、考えを巡らす。しかし、それでも自分の命は優先したく悩む。

 

 

「そんなに悩むなら、報酬で決めようか?」

 

「…そうだな、それ次第で決めるか」

 

 

 そう決めた晴人は早速、「それで、なにまでなら出せる?」と聞く。

 

 

「なんでもいいよ~、巨万の富とか、世界中の財宝とか」

 

 

 一部一部を強調して言った内容は、どれも現実的ではなく、「冗談はよせ」と、晴人は呆れたように溜め息をつく。

 

 

「ふざけたことぬかしてんじゃねえよ。真面目に応えやがれ」

 

「フフ、冗談だと思う?」

 

 

 その瞬間、女性の雰囲気が変わる。その様子を見て晴人は、まさか本気じゃないだろなと、思うも、

 

 

「アッハハハハ! 冗~談だから! そんな本気にしないでよ」

 

 

 結局のところ冗談らしく、笑い飛ばす。それに晴人は呆れ顔になる。

 

 

「はぁ~。ったく、なんなんだよ」

 

「ウッフフ♪ゴメーンゴメン♪」

 

 

 女性はまるで詫びる様子も無く謝る。

 

 

「それじゃ、真面目に言うけどね、こちらからは数百万が限度かな~」

 

 

 数百万、普通に考えればよっぽどでもないとすぐには手に入らない巨額の数値だ。だが、この手の依頼において、その値段はある程度凶悪な犯罪者、実力者であればつけることもできる現実的な値段だ。

 

 

「数百万か、現実的といえばそうだな」

 

「ありゃ? 驚くかと思えば案外冷静だね? よっぽどこっちの世界に詳しいんだね」

 

 

 そう言ってくる女性に晴人は短く返事をして続ける。

 

 

「それで、具体的な金額だが…500万でいいか?」

 

「500万ね、いいよ〜用意してあげる」

 

 

 500万という金額に女性はあっさりと了承した。正直、晴人はもう少し悩む素振りを見せるかと思ったため、「いいのか?」と聞いてみるが、「それくらい大丈夫だよ」と言ってくる。

 

 

「(…なら、いいんだけどな)それじゃ、交渉成立って事で」

 

 

 そう言って、晴人は席から立って店から出て行こうとしたら、

 

 

「ああ、そうそう、聞いてなかったけど、そいつってなんか白鳩から呼ばれている名前とかある?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、よしっ! それじゃ行くか」

 

 

 外は太陽がもう高い所を登っていく少し前だった。あの後、依頼を引き受けた後、その喰種の通称を聞いて、店から出た晴人は、早速その喰種がいると思われる場所へ行こうとしていた。

 

 

(さて、急がんでもすぐに着ける距離だから少し家に寄って行くか。…そういや、何でアイツ自分で倒そうとしなかったんだ? …あの雰囲気、とても弱いとは思えない…が、それとも本当に弱いから?)

 

 

 晴人は疑問に思いながら、急がずに店の前から歩いて行く。

 そして、晴人がその場から見えなくなった後、そこにグラサンを付け、片面を刈り上げたお洒落な髪型に少しだらけた服装の男性がやって来た。

 その人は店の前に来たら周りを見回し誰もいないのを確認してからグラサンを取る。するとグラサンで隠れていた赫眼が見えた、つまり彼は喰種のようだ。その喰種はそのまま店に入る。

 

 

「おや? いらっしゃーい。久しぶりじゃない。どうしたの?」

 

「ねぇ、さっきの彼、ここから出て来たけど何か話していたの?」

 

 

 男性は店に入って、すぐ近くにいた女性に話しかける。

 

 

「うん、あの喰種を倒してきて貰おうかな〜と思って」

 

 

 男性は「へぇ、そっか」とさして興味がないように答え、カウンター席に座り女性に注文する。

 

 

「ねぇ、何で人任せにするの?」

 

「ん〜? 何でって? そりゃあ面倒くさいからに決まってるでしょ」

 

 

 と女性は当然と言うように答え男性は「ふーん、そっか」と注文した血酒を飲みながら興味なく言う。

 

 

「…まあ、嘘だけど。本当の理由は…あるには有るんだけどね、それ以前にあの子知り合いの子でね。なるべく自分の手で殺りたくないのよ」

 

 

 女性は自分の心情を暴露し、理由を言う。

 

 

「へぇ、それで頼んだんだ」

 

「そっ。でも、大丈夫かな〜。あの子思いのほか強いからね〜、どうなるやら」

 

 

 と、女性が言った言葉に男性は「仕方ないよ、あの子本当に強いからね」と以前戦ったことがあるのか、その時の事を話すように言う。

 

 

「うん、仕方ないよね」

 

 

 女性は、あの子は果たしてどれくらいいけるかなと、ワイングラスを掲げてその中の紅い血のワインに自分を映す。

 

 

「さてっ、こんなくよくよしても仕方ないっ! 今回はまけてあげるから、じゃんじゃん頼んでね〜!」

 

 

 先程の雰囲気を壊して、女性は気前よく店からどんどん赤い血のワインが入った酒瓶を出す。それを男性は「うん、そうだね」とその勢いについていく。

 




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