東京喰種√0   作:ウェズン

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#005

 晴人が依頼に向かってから少し時間が経ったその頃、亜蓮は装飾品屋『Carnaval』にてバイトに打ち込んでいた。

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

 亜蓮はとても愛想がいいとは言えない声色で店番をしている。本来ならこの様な店で愛想が無かったら即クビになるが、亜蓮はそれを塗り潰す位顔が整っているため、女性客に人気で、愛想が無いのもクールでかっこいいと評判がよく、仕事ぶりもいいためクビにならずに済んでいる。

 

 

「全部で1580円です(結構買い込んでいるな)」

 

 

 亜蓮は今も女性客が買った商品を袋詰めしながら、女はこんなに買ってどうすんだかとどうでもいい事を考える。

 

 

(しかし、やはり装飾品は女に人気なのか。男がいない訳じゃないが、女と比べたら圧倒的に少ないな。ここには男向けの装飾品も結構あるのだが)

 

 

 何故女性ばかりなのかは、彼がモテるからであって必ずしも男性に人気がない訳ではないが、そうとは一切思わないのが、イケメン系男子らしい彼のクオリティーである。

 

 

「(まあ、だからといって売り上げが下がる訳じゃないから気にしなくていいことか)ありがとうございました」

 

 

 亜蓮はどうでもいいかと、気にするのをやめて仕事に没頭する。だが、その最中に、

 

 

(……それにしても、今日は何か嫌な予感がするな…杞憂であればいいが)

 

 

 と、何かを察し窓から空を見上げる。

 しかし、今はバイト中で手が離せないので、今は気にしないでおこうと見上げた頭を戻し考えない様にしてまた没頭する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、晴人は目的の場所に行く前に、今回の討伐対象がSSレートなので、それに対抗するための晴人や亜蓮が言っていた『アレ』なる物を取りに家に帰っていた。

 

 

「えーっと、確かアレはあそこにあったはずっと、おっ、あったあった」

 

 

 晴人は家に入って、自分の部屋の中にある机の引き出しの中をゴソゴソと昔使っていた物の中身をかき分けていたと思えば、何かを取り出して来た。

 

 

「よし、これがあればどうにかなるだろう」

 

 

 その何かは、少し大きめの三本のナイフだった。中身は鞘に収めていて、どんな刃なのかは分からない。

 晴人はそのナイフを後ろの腰辺りにぶら下げ、また家から出ると、目的の場所に歩いていく。

 

 

 

 

 しばらくして、晴人は目的の場所近くまで来ていた。

 そこまで近づくと奥から血の匂いや、死体の独特な死臭が漂ってくる。その様な所に普通の人がいれば、精神がおかしくなって倒れそうになるだろう、そこまで匂うと言うことは、ここは喰種の狩場ということになる。

 

 

「ここら辺だったよな…(血の匂いもするし、行けば行くほど匂いが濃くなっているし、間違いないだろう)」

 

 

 晴人は周辺の匂いを嗅ぎ、間違えてないか確かめる。それにより、間違いではないと分かるが、肝心の喰種がまだ見当たらないため、もっと奥の方まで行こうと歩く。

 そして、歩いていると何やら奇妙な音が聞こえてくる。その音は何かを食いちぎる様な咀嚼音に、水溜まりの上で暴れた様な水音も聞こえる。

 普通の人ならすぐに逃げ出したくなる様な奇妙な音に向かって、晴人は警戒しながら近づいて行く。

 

 

(……さっきから匂っている血の匂いとこの音からして、絶賛食事中かな)

 

 

 暴食だって言ってたしなと、あの女性と話したことを思い出しながら息を殺し静かに近づく。

 そして、すぐそこの建物の角の曲がる所からその音が聞こえ、晴人はそこで止まり気付かれないようそっと角から顔を出すと、

 

 

「……! あれか、『深窓のご令嬢』っていう嬢ちゃんは」

 

 

 目的の喰種を見つけた。その喰種は後ろ姿しか見れないが、写真の通り、まだ10歳になったばかり、もしくはさらに下か、その様な少女であり、シンプルだがどこか高級感を出すキャミソールを着ている。

 そして、どこかの社員だろうか、制服姿の男性が腹から内臓や血を出しながら死んだ目で倒れているその近くで座り、男性の肉や血を啜り時に噛みちぎっている。

 

 

(やっぱ食事中か。しかし、あの子供本当にSSレートか? どう見ても幼い少女にしか見えない。まあそれはいいとして、どうするか、食事中で少女とはいえSSレート、不意打ちで倒せるとは思えんし、何より情報が少ない。何故かあの人は教えてくれなかったし)

 

 

 晴人は食事中なら今のうちに対策を練ろうとするが、今まで作戦などろくに練ったことがないので何も案が思い浮かばない。故に仕方なしに真正面から出ることにした。

 晴人が建物の影から出て、少女の少し離れた位置で立ち止まると、晴人に気付いていたのか食べるのを止め、ゆっくりと振り向く。振り向いて窺い見る事が出来たその顔は、血がベットリと付いていて無表情だが、幼い顔付きであるも将来は美人になると思われる顔だった。少女は虚ろな目で晴人を見る。

 

 

「おにいちゃん、だれ?」

 

 

 少女は見た目年相応な声を出して、首を傾げながら誰なのか問う。それにより、ますますただの子供の喰種にしか思えなく殺す事に戸惑いを覚える。

 

 

「…俺か? 俺はそうだな、お前を殺しに来た喰種と言えば満足かい?」

 

「…うん、それだけでいいよ。わたしのてきってことだよね?」

 

 

 晴人が少女の質問に答えると、少女は晴人を敵と認識し不気味な笑顔になり少女とは思えない殺気を出し、目を赫眼にする。

 

 

「へえ、敵って分かった瞬間にここまでの殺気を出すとはね。SSレートって言うのはあながち嘘じゃないようだ。来いよ」

 

 

 これほどまで殺気を出せるなら殺してもいいなと、先程の迷いが消え、晴人もそれに応えるように赫眼になり殺気を放つ。そして、二人は同時に赫子を出す。

 

 

「! …甲赫(こうかく)か」

 

 

 少女の赫子はその体に似合わない大きさの甲赫の赫子。広げると大きな竜の牙が取れた様な金属質な赫子で、それが左右揃うとまるで皮のない骨だけの羽のようだった。

 

 

「おにいちゃんはうかくだね、わたしのとあいしょうだめだね」

 

 

 子供らしく緩い喋り方をする少女に、晴人はどうしようもない恐怖を感じるが、そんなことより少女の凶暴そうな赫子を見て思う。

 

 

(あの赫子随分とでかいな。どう見ても自然になったとは思えない…まさかコイツ)

 

 

 そこまで考えてると、少女の赫子がすぐそこまで近づいていたのに気付く。

 

 

「!! うおっ‼︎」

 

 

 晴人は咄嗟に避けて難を逃れるが、避けた跡を見てみると硬いはずの地面が無惨に抉れて、直撃していたら間違いなく死んでいたであろう。晴人はそのことに冷汗を流すが、あくまでも冷静でいるよう努める。

 

 

(危ねぇ…! なんて一撃だ、当たったら確実にヤバイ…!)

 

 

 そう考えていると、また重い一撃を繰り出す。晴人はそれも避けて自分も攻めていこうとするが、何分相性が最悪な相手であるため攻めあぐねる。

 

 

(クソッ、懐ろに入ればコイツ使って一撃お見舞いしてやれるのに…‼︎)

 

 

 こうなりゃもっと動きまわるかと、思っているとまた少女の方に動きがあった。

 

 

「こないなら、もっといくよ?」

 

 

 少女は晴人に向けて出していた赫子を戻す。すると少女は顔を更に歪め、赫子の先を構え自ら飛び出して来た。

 

 

「‼︎?」

 

 

 完全に予想外の動きをされた晴人は避けるが、腕に少し掠る。だが、掠るだけでも、晴人の体の一欠片が無くなる。

 

 

「クッ!(まさか甲赫の奴が自ら飛び出して来るとは…)」

 

「ふふっ」

 

 

 少女は楽しそうに笑いながら壁まで飛び、そこからまた晴人に向けて飛び出す。晴人は避けるがまた掠る。少女はそのまま壁に向かって跳んで行くと壁を蹴って高い所まで跳ぶ。

 

 

「ぐっ‼︎ コイツ…! 甲赫のくせしてなんて速さだ…!」

 

 

 本来なら少女のような赫子は重くそんなに俊敏に動けない。だが、少女はそれが嘘のように壁から壁へと動き回り、晴人を翻弄する。

 そして、晴人の視界から外れると、晴人に向かって跳んで行く。唐突に来られたため今度はもろに食らってしまう。

 

 

「ぐあっ‼︎」

 

 

 食らった晴人は、体の一部に半径5cm程の半円が出来る程抉られ血が噴き出す、その様を見て少女はまた跳ね返りもう一度仕掛ける。

 縦横無尽に飛び回る様はまるでピンボールが跳ねる様で、法則性のない動きで晴人の体を少しずつ抉り蝕んでいく。

 

 

「ぐっ! クソがっ! いつまでもなめてる動きしてんじゃーー」

 

 

 晴人は抉られた箇所を再生するのを待たずに追撃をしてくる少女を迎え撃とうと、息切れしながら痛みをこらえ、足を出せる様に構え、後ろから来る少女に回し蹴りを放つ。

 

 

「ーーねえ‼」

 

「!」

 

 

 少女はその蹴りに瞬時に赫子で防ぐ。すると、鉄板を思い切り殴ったような音が響き、少女は吹き飛ばされ建物の壁に当たる。だが、

 

 

「がっ!」

 

 

 晴人も硬い甲赫に蹴りを入れたことにより足に衝撃が走る。

 

 

「ぐっうぅっ…!(こりゃあ足の骨にひび入ったな)」

 

 

 晴人は直に再生すると痛みには気にせず、しっかりと相手を見る。少女は壁に当たり少しよろめいている。その状態ならば、まだ油断できる程ではないが、

 

 

(よし、ここで一気に攻める!)

 

 

 好機と思い、晴人は腰に下げている三本のナイフの内、真ん中にあるナイフを抜くと、喰種の赫子と同じ赤黒い刃が見えた。ただ、その刃は赤黒いだけではなく、よくよく見ると鱗みたいな模様がある。

 

 

「オラァ‼︎」

 

 

 晴人はそのナイフで少女の体を斬ろうとするが、素早い動きで躱される。

 

 

「…! あれ? おかしいな。なんでおにいちゃんがそれをもっているの?」

 

 

 少女は晴人のナイフを見たことがあるのか、首を傾げて問う。

 

 

「んん? ああ、これか、まあちょっとな」

 

 

 晴人は教える気がないのか、曖昧に答える。

 

 

「そんなことよりも、今はこっちに集中しろ、よっ‼︎」

 

 

 晴人はズキズキと痛みが走るのをこらえ、足に力を入れて一気に少女との距離を詰めてナイフで切りかかる。

 それに、今度は赫子で防ぐが、鉄が切り裂かれる音とともに、赫子が二つに分かれる。

 

 

「…えっ」

 

 

 少女は何が起こったのか分からなく唖然とする。晴人はチャンスだと言わんばかりに、少女の腹にナイフを刺して、さらに刺したナイフをそのままにして一緒に蹴る。

 

 

「うっうぅ…! これってりんかくの?」

 

「ああ、その通り、それに使われているのは鱗赫(りんかく)の赫子だ」

 

 

 晴人はしてやったりと思う。

 少女は相性が悪い赫子のナイフで切られたため腹を抑える。晴人はまた構え、さらに畳み掛けようとする。

 

 

「オラッ! 今度はこっちの番だ!」

 

 

 晴人は今までのお返しだと言わんばかりに攻めて攻めて攻め抜く。少女は先程のナイフで赫子を切り裂かれたため、赫子で防ぐ事が出来ず、上手く見切って躱す。

 

 

「オラオラオラァ‼︎ さあ、もういっちょいく…」

 

 

 これで決着がつくと思っていた。思っていたのだ、だが、その時全く予期せぬことが晴人の身に起こった。

 

 

「がっ、はっ…!!」

 

 

 晴人は更に攻めて行こうとしたら、突然、何かが背中から腹を貫いてきた。

 晴人は何が貫いたのか腹を見ると、そこには、触手のような鱗状の赫子が刺さっていた。




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