晴人がSSレート喰種『深層のご令嬢』と死闘を繰り広げた次の日の朝、この日も晴人は早めに起きてしまい寝間着姿から私服に着替えてこの日もバイトがある亜蓮を見送ってから外に出て行く。
(はあ〜あ、今日はどうしようかな、あの嬢ちゃん…塔信だったか、にリベンジでもしようかね。次はもうアイツの攻撃を全て…とは言えないけど見切る自信があるし)
それにしてもと、晴人は歩きながら辺りを見回し、息を漏らす。
(大分暑さも無くなってきたな〜…冬はやっぱりさびいな〜ってか)
つーか、まだ冬じゃねえしと、自分で自分をツッコミながら晴人はもう一回見回す。
(木も大分枯れてきているな、まあ、とは言ってもまだ元気な木の方が多いけど)
都会であるここ東京で数が少なくなっている木を晴人はどこか鬱な気分で見ている。
そんな晴人は自然と、ある場所に向かって足が進んでいた。そして、着いた場所は、
「………(なんで、ここに来たんだろ)」
最早誰の影も無く遊具は錆びて、崩壊寸前な寂れた公園だった。
「…懐かしいなぁ、ここ。亜蓮や親父と行った以来もう来なくなったんだっけか…」
この公園には何かしらの思入れがあるのかどこか悲しそうな嬉しそうな表情になる晴人。
(そして、アイツと遊んだ場所でもある…)
と、そこで晴人は亜蓮とも父親とも違う、夢でも見たあの昔馴染みを思い出す。
「……(アイツ、今頃どうしてっかな…俺は小卒で学校辞めたからもうあれ以来一回も会ってないんだよなぁ)」
晴人は感傷に浸りながら昔のことを思い返す。
(…俺がまだ5歳の頃、俺は親父に亜蓮と一緒に小学校に入れられた。そんで、俺はその日にやったレクレーション的なので一人孤立していた彼女に出会ったんだったな)
◇
~11年前~
この日は俺らの初めての小学校デビュー、要は入学式だったな。
「おーい、晴人ー、そろそろ行く時間だよー」
朝、俺は親父に起こされて目覚めた。
「ん~、後100ねん…」
「そんなに寝てたら死んでるわ! ってそんなことはいいから早く起きなさい、遅刻するよ」
ツッコミを入れつつ布団をひん剥かれた俺は仕方なくベッドから起きて着替える。そして、もうすでに起きて支度がとっくに終わっていた亜蓮と一緒に親父の車に乗って登校する。
「遅いぞ、晴人。もうしょうがくせいになるんだから、自分で起きれるようにしろ」
「ははっ、亜蓮の言う通りだぞー晴人。少しは早く起きれるようにしなきゃな」
その頃の俺はよく天才的な亜蓮と比べられていていじけていたな。
「ム〜ふんっ! いいもん、僕は亜蓮と違っててんさいじゃないもん、そんなこと出来なくたっていいんだ」
こうやって俺はガキらしく拗ねて親父や亜蓮を困らせることがよくあったな。今も亜蓮に迷惑かけているけど、本当ガキっぽくて自分が嫌になるよ。でも、
「あはは、そっか。でもね晴人、これは覚えておいてね」
そう言う親父は雰囲気を少し変えて自分の経験を語る様にこう言った。
「決して天才じゃないからと言って出来ることを出来ないままにしちゃダメだよ」
親父はどんなに俺が屁理屈ごねても怒鳴る事も無く怒りもせず、ただ静かに凛と俺を叱ってくれた。
「…わかってるよ」
俺はそれでもまだ突っ撥ねるように言っちまって、「本当かー?」ってさっきの雰囲気から戻して親父は言う。
「ならいいんだけどね。…まあ、そんなことより二人共、初めての学校だけど、どうだい? 緊張するかい?」
親父はよくそうやって話を逸らして、これ以上叱らないようにしてくれたな。そして、俺らはその質問に、
「楽しそう…」
と、妙にキラキラした目で亜蓮が言い、
「…つまんなそう」
と、俺はそっぽを向きながら対極な答えを出すっていうのがいつものことだったな。
「そっかー、それは良いな」
俺の話を聞いていたか、って感じに俺は突っ込んだけど親父は笑って誤魔化してばっかで、俺は呆れて弁論する気が失せたっけな。俺たちはその後も他愛ない話をしながら車に乗っていると、ようやく学校に着いた。
「よし、着いたな。どうだい、ここがこれからお前達が通う小学校だ」
俺らが来た学校はここら辺でもそこそこ大きい小学校だった。そして、入学式というだけあっていろんな子連れの親子が多かったな。大半以上が人間だったが中には俺らと同じ喰種の親子も何組かいた。それだけ知名度が高い学校らしい。
「うん、色んな人がいるね。…よーし、それじゃあもう一度確認だけど」
周りに知っている人はいない。まあ当たり前だ、俺ら双子はどちらも幼稚園にも通ってない。それで小学校に入れたのは親父が裏で色々工作したかららしい。それに近所に子供もいないからな。
親父が辺りを感づかれない様隙なく見回して、人に余り見られてないか確認してから俺らにそっと前々から言っていることをもう一度言う。
「いいかい、ここにいる子とそのお母さんお父さんは俺たちの食べ物じゃないからね。あの子達はこれからお前達と一緒に勉強するお友達だということを絶対に忘れないでね」
俺らにしか聞こえないように言う親父に俺らは、
「うん、わかってるよ、お父さん」
「僕だってわかってる」
って返した。そして、ようやく学校に入ったら、早速喰種の親に話しかけられた。
「おはようございます」
「あっ、おはようございます」
その喰種は一人の娘を連れている母親だった。まだ一児の親としては若そうな人だったな。まあ内の親父も人のこと言えないけど。
「あの、あなた方も喰種…ですか?」
あの母親はどうやら俺らが喰種だったから話しかけてきたようだったな。
「はい、そうですよ」
相手は喰種だとわかりきっているため、親父は普通に肯定する。
「そうですか、良かったです。実は私達は喰種ですからこの子に人間のお友達ができるか心配だったんですけど、他にも喰種の方がいらしたならその子とお友達になれるのではと、思いまして」
つまりは、その母親が連れている子供は喰種であるが故に、人間と友達にはなれないかもと思ったから喰種である俺らと友達になってくれないか、と言うことらしい。
「ああ、そういうことでしたら全く構わないですよ。その方が私達にとっても都合がいいですから」
親父はあっさりと承諾する。まあ、俺的にもつるめる奴は欲しかったし、こうやってすぐに仲良くなれるなら歓迎するな。
「そうですかっ、それは良かったです。ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。良かったなお前ら、早速お友達ができたな。それもとても可愛い子だぞ〜」
と、親父はニヤニヤ笑いながら俺らの頭を撫でる。親父の野郎、絶対に楽しんでいるなこれは。きっと、あわよくば俺らの内どっちかがソイツとくっついたら、とでも思ったんだろう。
ま、とにかくだ、こうして俺らは入学式から女の友達ができた。その時はほとんど喋っちゃいないけど。
「いや〜、入学式ってあんなにワクワクさせるんだなあ」
「僕は話ばっか聞いてて疲れたよ」
入学式で新入生として迎えられ、校長からありがたくも退屈な長話を聞き終わった後、ぐったりした俺を他所に親父はその身長が無かったら小学生に間違われるんじゃないかと思う程のキラキラした顔で教室に向かっていた。
「みんな、おはようございます」
「おはようございまーすっ!」
教室に着いた俺達は、親父は教室の後ろで他の親御さんと並び、俺は席に座る。亜蓮は別の教室に行った様だった。そして、この学校の先生が入ってきて笑顔で教壇の前に立ち挨拶をする。それに俺らも元気に挨拶を返す。
「みんな元気だねー。それでは、今からお勉強のしかたの説明をするから、みんなよ〜く聞いててね」
「はーいっ!」
あの先生、結構美人な女の人だったな、というのはどうでもいいか。
「それでは、まずはこの教科書だけどね〜」
そう先生が説明をしている途中で親父は教室から出て行く。亜蓮の様子を見に行ったのだろう。
「〜ということで以上だけど、わかったかな? それじゃあ今日はお終いです、お疲れ様でした」
先生の説明を一通り聞き終わり、俺はもらった教科書などをmしまい、親父のところに行くが、
(あれ? お父さんどこだろう?)
隣の教室を探しても居なく、俺はちょろちょろと動いて親父を探す。すると、後ろから肩を叩かれ誰だと、俺は振り向く。すると、そこには亜蓮がいた。
「お父さんなら向こうで親どうし何か話してたよ」
亜蓮は親父がどこにいるのか教えてくれたから、仕方なく俺はその場で待つことにした。
「二人とも、待たしてごめんね」
待つことしばらく、ようやく親父は親会議が終わったのか戻ってくる。
「お父さん遅い」
「ゴメンゴメン。それで、さっき他の親御さん方と話したんだけど、知らない人とか結構いるからこれからの学校生活のため公園で交流会を開くんだ。それで、二人はどうだい?」
お互いをよく知るために親は親同士で、子供は子供同士でと、そんな話しになったようだ。しかし、正直に言って俺は行く気にはなれなかった。何故なら、俺が行ってもどうせ亜蓮と双子なのに非才だの劣っているだのと比べられるだけだろうと思ったからだ。だけど、亜蓮は行くみたいだし、ここで行かなかったらなんだか負けた気分になるから俺は行くことにした。
「ここで交流会を開くようだね」
そして、行き着いたのが今俺がいるこの公園だった。公園に着いたら早速仲間を作って遊ぶ奴、少人数で話す奴と色々だった。俺はどこに行くこともなくただ見ていた。ついでに亜蓮は最初に会った喰種の親子の子と一緒に皆と遊んでいる。
「ほら、行っておいで」
「………」
いつまでも行こうとしない俺に親父が背中を押して行かせようとするが、やっぱり俺は行く気になれなかった。
「どうしたの? 行かないのかい?」
「…いきたくない」
俺は行きたくないと言い、幾ら押されようとも動きたがらない。
「そんなこと言わないで。ほら、亜蓮は行ったよ」
だが、俺は頑固に行かないでいる。
「いいもん。行ったってアイツと違うっていじめるもん」
こう言うと親父は本格的に困った顔になる。本当困らせてばかりだ。
「う~ん、困ったなぁ……! なら、あの子はどうだい」
そう言って親父は遠くを指差す。でも、俺は何を指したのかわからず首を傾げる。
「………?」
俺がわかってないのを見て親父は今度は何を指したのか詳しく言う。
「ほら、あの子だよ、あそこにいる女の子」
よくよく見れば遠くに女の子が一人でいるのを見かけた。確か、一人で砂遊びをしていたかな。
「…女となんて遊びたくない」
だけど、また俺は突っぱねる。すると親父は懇願する。
「そんな言葉使いはよしなさい。いいじゃないか、恥ずかしいのかい? でも、あの子ひとりぼっちみたいだし、ね? ダメかい?」
こうまで言われたら流石に折れるしかなく、
「…わかった」
と、俺はしぶしぶ頷く。
「うん! それじゃ、行っておいで」
すると、親父は嬉しそうに頷いて、彼女の所へ行くように手招きする。
「……………ねぇ」
俺は早速そいつに話しかけた。話しかけられて驚いたのか、ばっ、と下に向けていた顔を上げた。俺はその時その子が可愛いらしい顔をしていたから、なんて話そうか考えてしまって口ごもる。
「………?」
当の彼女は何故話しかけられたのかわかってないらしくその首を傾げる。
「…遊ぼ…」
そして、ようやく言えたのは遊ぼって言葉にすればたった三文字、でも俺が言えたのはここまでだった。
「…! うん! 遊ぼっ!」
でも、その子は遊んでくれるのが嬉しかったのか元気に返事を返してくれた。
「……僕」
「?」
そんな彼女を見て、つい俺も笑顔になり、自分の名前を言う。
「僕、晴人」
「! はるとくん? そっか! いい名前だねっ!」
俺が名乗ればこちらもと言うように彼女も名前を言ってくれる。
「私は」
そして、それは今もなお忘れることのない、喰種にとって禁断の人間への恋心を芽吹かせた女の名前。
「
メインヒロイン(?)の名前ついに登場。まあ、まだ想像の中だけですが。
それではご感想お待ちしております。