(Stage 01 Open 07/31 09:17)
朝食を終えた
「ミサカも一緒に外へ遊びに行きたい!ってミサカはミサカはあなたの心に超重い錨を降ろしてみる。行かないで!!」
「駄目だ」
「なーんーでー!!!!」
「ほら、
「迷子になんかなってなーい、あれは未知への探求だー!ってミサカはミサカは心臓の前に拳を当てて軍人さんみたいに敬礼してみる」
嫌だ嫌だと喚く
目の前にこれほどの玩具が転がっているのに部屋でずっと籠っていろと諭すのは、確かに可哀想ではある。
「遊びじゃねェンだ。新しいアジトを捜しに不動産店を回る。終わったらすぐに帰宅。どこにも寄らねェぞ」
「別にそれでも構わない!ってミサカはミサカは希望の光を絶やさないんだから。だって、トイドリーム35には道のあちこちに屋台があって楽しめるもん!」
「それも寄らないぞ。先生が人混みが嫌いなのは
「大丈夫、そんな人付き合いが苦手なあなたのためにミサカがここにいるんだよ、ってミサカはミサカはあなたにエールを送ってみたり」
頑なに姿勢を崩さない
とはいえ、いつどこで
「……しょうがねェ。いいか、俺より5歩以上離れるな。言う事を守れるならついて来い」
「!?やったー!!ってミサカはミサカは自分の交渉能力に天賦の才能を感じてみる!」
「え、先生、いいんですか?」
「オマエはガキと一緒に手ェ繋いで歩いてろ。俺も念を入れておくが、オマエも周囲の警戒も怠るな」
「分かりました。ほら、
ひゃっほー!と玄関から駆け出していく
彼らの部屋はマンションの7階にある。
「…………」
杖をついて歩く
エレベーターが1階まで下り、再び7階まで上昇してくる。ピンポーンという乾いた電子音と共に、扉が左右に開いた。
中には既に青年が一人乗っていたが、彼がこの階で降りる気配はない。
「押し間違えたか?オマエが先に行って良い」
そう声をかけた
「いや、ここが目的の階だ。そして、目的の人物にも会えた。さあ、乗ってくれ」
「…………」
女性のように長い、腰まで届く長さの金髪。蒼い双眸に、好戦的な笑み。ストールとボトムスは黒く、トップスと靴は黄色。X字に重ね掛けしたベルトと手袋は紫。外見だけみれば女性のような体躯だが、それを払拭するようなぐつぐつと煮える獰猛さが全身から漏れ出している。
「メイドも召使いも頼ンだ憶えはねェな。人違いだ」
「いーや、間違っちゃいないねえ。白髪赤眼の召喚師、『イリーガル』アワード972『
「そりゃ結構。嫌われ者同士、お友達にでもなれると思ってンのか。御託はいい、用件を言え」
ここまで挑発的に構えられれば、気付かない方が難しい。金髪の青年は『ベツレヘム計画』主導者の尖兵と見て間違いない。『ガバメント』に雇われた高アワードの召喚師。見た所
しかし、だとすれば疑問が浮かぶ。
こちらの考えを読むように、金髪の召喚師がニヤリと笑った。
「ここまで用意周到に先回りできた俺が、どうしてエレベーターで
「……善人気取りか。その甘さは嫌いじゃねェが、発言には気を付けた方が良い。返答次第ではオマエをブチ殺す事になる」
「お前のその殺気、俺も嫌いじゃねえよ。まぁ安心しな、俺は『ガバメント』に雇われちゃいるが、所属は『フリーダム』だ。今回の依頼に関して好きなようにやらせてもらう事になってる。何より、女子供を人質に取るのは俺の主義信条に反するんだ」
典型的な『フリーダム』所属の召喚師だ、と
「何より俺は『経験値』が欲しい。金でも善行でも満たされないこの心を、唯一癒してくれるのは『召喚儀礼』の闘争だけだ。そして目の前に立っているのは、『ガバメント』を半壊させたあの『0930事件』を引き起こした張本人、『蟻塚計画』の生存者だって言うじゃねえか……ゾクゾクが止まらないねえ」
そう言って、金髪の召喚師はエレベーターの『開』のボタンから指を離した。
「アンタには召喚師として勝負を挑んでから依頼をこなす。人質なんてセコイ真似せず、堂々と殺らなきゃ楽しめないってモンだろう!―――――なぁ、フロイライン!!」
金髪の召喚師の声に、反射的に後ろを振り向いた。
マンションの外、柵を乗り越えるかのように、長い銀髪でワンピースを着た少女が彼の首を背後から締め落としにかかった。
(クソが―――――1階からよじ登って来やがったってのか)
このマンションは直方体の中心に縦に穴を空けたような「ロ」の字のような構造になっている。その中央の空間からの攻撃だった。見れば、マンションの柵の傍らには屋上の貯水槽から伸びる水道管のパイプが続いている。これを伝って登ってきたのだろう。何者か分からないが、状況から考えて金髪の召喚師と契約を交わした依代と見て間違いないだろう。
少女の腕力に負ける訳ではないが、不運にも
なにより、
「――――死ぬ気で避けないと死んじまうぜ?」
エレベーターから降りて走り込んできた金髪の召喚師が、軸足を中心に回し蹴りを放つ。首を刈り取るようなハイキック。フロイラインに背後から纏わりつかれたこの状況では身動きが取れない。喉を潰されてそのまま絶命しかねない。
「チッ―――――」
だからこそ、
パァン!!と、蹴りの衝撃に押され、
流石に予想外だったのだろう。金髪の召喚師の表情が驚きに染まるが、そんな相手を待ってやる義理は
『召喚儀礼』には様々な法則があるが、中でも
"―――――
つまり、重力や空力を無視して瞬間移動ができるのだ。昨晩、不良共の前から消えてみせたのもこの原理のためである。
マンションから落下しようが、墜落前にワープしてしまえばいい。それを見越して
しかし、
「無駄です。炸裂に、3秒は、かかります。間に合いません」
背中に纏わりついたまま一緒に落下しているフロイラインが耳元でそう呟いた。
彼女の言う通りだ。7階という高さなら、2秒程度で地面に墜落してしまう。
そして、
現代的なデザインの杖を握りしめ、外から見えない持ち手内部のトリガーを指でスライドする。
直後、杖が2メートル大へと一気に伸長した。マンションの柵へ物干し竿を引っかけるような要領で、3階の柵に
同時、ぐん、と落下の慣性がかかり、彼の背中にしがみついていたフロイラインが振り落とされた。ギシギシと杖が不気味にしなったが、この杖はダークマター製なので硬度や柔軟性に問題はない。
「へっ―――――やるな。そうでなきゃ困るが」
7階から見下ろしていた金髪の召喚師が不敵に笑ったのと同時、8階の壁面で
一辺が20メートル大の『人工霊場』が発生する。直後、不可視の引力に導かれて
マンションの外から不可視の引力に引き寄せられたエステルが、訳が分からないといった表情をしながらも臨戦態勢を取った。
「せっ、先生!?これって、一体、」
「寝ぼけてンな。『ガバメント』の召喚師だ」
二人はマンションの柵に垂直に立っていた。そう、『人工霊場』の床からは疑似重力が発生する。この空間では、本来の重力とは異なる重力で全てが支配されるのだ。
対して、重力が変更された今、『人工霊場』の天井側から金髪の青年が
「依代の女の子とはさっきエレベーターを乗り降りする際にすれ違ったかな?」
「き、君は……!?」
『人工霊場』の奥から、金髪の召喚師の依代、フロイラインもやって来た。
二組の召喚師達が、ブラッドサインを構えて対峙する。
「自己紹介から始めようか。俺は『フリーダム』アワード901『広く
【Facts】
◆一方通行はかつて『0930事件』という大事件を招き、『ガバメント』を半壊させた過去がある。
◆励起手榴弾によって人工霊場を展開される。炸裂時、召喚師と依代は人工霊場の中心に引き寄せられる。人工霊場の床からは疑似重力が働き、壁の側面に立つ事もできる。
◆『ダークマター』という未知の物質が発見され、『垣根コーポレーション』によって家電から小道具、軍事兵器に至るまで様々な技術に応用されている。その詳しい原理は不明だが、従来の物理法則に捉われない不思議な性質を示す。
◆雷神トールには様々な呼び名があり、「広く流離う者」もその一つ。