ハイスクール・フリート ―霧の行く先―   作:銀河野郎のBOB

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大変、大変おまたせいたしました。
第十話でございます。
本編は前回九話から11日ぶりの投稿です。

正直、今回の話は苦労しました。
自分でも書いてて、これ面白いか?、と首をかしげるばかり。
でも、書きたいという気持ちで書き続けて何とか形にすることができました。

時系列的にはアニメ6話と7話の間、オリジナルストーリーになります。

それでは、どうぞ!


第十回 超兵器でピンチ!

 2016年4月17日午前10時

 

 -ムサシside.-

 

 ムサシ

≪重力子エンジンのナノマテリアル損耗率5%未満、主砲、副砲、高角砲の光学兵装に異常なし、センサー感度にわずかな誤差あり、修正実施……完了≫

 

 私は自分の艦、超戦艦ムサシの甲板上で艦の状態を確認している。

 現在、私と晴風はグアム島にほど近いある島に停泊している。

 ここに行くよう進言したのは、他でもない私だ。

 

 一昨日のネズミもどきの報告会の後、私は今後晴風の手助けをするため、自分の艦を使いたいとヤマトに伝えた。

 ヤマトは最初こそダメだと言ってきたが、私が「みんなのためにできることをやりたい」と伝えると、表情を一変させた。

 しばらく考え込んだヤマトは、私の願いを聞き入れてくれた。

 その後、ヤマトが一度艦の状態を見ておく必要があるだろうと言ってくれたので、アケノに頼んで今いる島まで移動してもらった。

 ここには硫黄島ほどではないがナノマテリアル鉱床が点在しており、艦の修復と備蓄の追加を行うことができるのだ。

 到着とともに、私は久しぶりに艦を海面に浮上させた。

 

 ムサシ

≪不慣れな長期間の潜航だったけど、思ったほど損傷はなかったわね。潜航中も常に操艦プログラムをアップデートしていたおかげかしら≫

 

 私がそんなことを考えていると、突然晴風から通常回線で通信が入ってきた。

 

 ムサシ

「はい、こちらムサシ」

 

 岬

「あ、ムサシちゃん。突然ごめんね」

 

 通信してきたのはアケノだった。

 アケノたち晴風のみんなには、事前に艦のチェックをすることを伝えてある。

 

 ムサシ

「大丈夫よ。今大体の確認と補修が終わったところなの。それで、何の用かしら?」

 

 岬

「うん、ちょっと今から晴風の艦長室に来てくれないかな?」

 

 ムサシ

「別にかまわないけど、何か大切な話?」

 

 岬

「うん、ムサシちゃんに話しておきたいことなの」

 

 ムサシ

「わかったわ。それじゃあすぐにそちらに伺うわ」

 

 岬

「待ってるね」

 

 通信を終えて、私は回線を閉じた。

 さて、アケノの話はなんだろうか?

 

 

 

 10分後、私は晴風艦内の艦長室の扉の前に到着した。

 私は扉を二回ノックした。

 

 ムサシ

「アケノ、ムサシよ」

 

 すると、扉が開いて中からアケノが出てきた。

 

 岬

「ムサシちゃん、いらっしゃい。とりあえず中に入って」

 

 私は艦長室へ足を踏み入れた。

 中にはアケノ以外に、マシロとヤマトが部屋のベッドに座っていた。

 

 ムサシ

「あら? 二人も一緒なの?」

 

 ヤマト

「ええ、私も明乃さんに呼び出されたの」

 

 宗谷

「私は艦長と同じく説明する立場ですね」

 

 つまり、晴風の艦長と副長から霧の艦隊に何か話があるというわけね。

 アケノは扉を閉じて、伝声管がと開いていないことを確認すると、私とヤマトの前に座った。

 

 岬

「それじゃ、二人に説明するね。さっき、校長先生から晴風に直接連絡があったの」

 

 アケノから語られたことは二つ。

 

 一つ目は、晴風に対して武蔵探索を正式に依頼する、ということだ。

 現在、横須賀女子海洋学校はブルーマーメイドに対して武蔵を含む所在不明の艦の捜索を依頼しているが、現状ではまだ準備が不十分という状態らしい。

 そこで、現在動ける学校の艦に対しても捜索を依頼することになった。

 そして、晴風は最後に武蔵を目撃しており、近海で動くことができる艦が他にいないという理由から、武蔵探索の白羽の矢が立ったというわけだ。

 こちらに関しては私とヤマトもすぐに了承した。

 ネズミもどきの報告会で決めた晴風の行動方針とも一致することでもある。

 問題はもう一つの話だ。

 

 ムサシ

「霧の艦隊所属、超戦艦ムサシについて調査し報告せよ、ね……」

 

 私は正直、どうするべきか少し悩んでいた。

 

 まず、この話を依頼してきたのは校長の宗谷真雪ではなく、安全監督室の宗谷真霜一等監察官だ。

 現在、海上安全委員会では叛乱の疑いのある武蔵に対して、同じ大和型をぶつけて食い止めようというプランが上がっているらしい。

 だが、ブルーマーメイド旗艦で呉所属の大和および舞鶴所属の信濃は現在ドック入りで半年は動けず、佐世保所属の紀伊に至っては遠洋航海で地球の反対側にいると、まさに手詰まりの状態。

 その話を聞いた宗谷監察官は委員会には秘密で、超戦艦ムサシと連携して武蔵を止めることを考えているようだ。

 そこで委員会に情報が洩れない連絡ルートを持ち、かつ確実に信頼できる人物である宗谷校長を経由して依頼がきたということだ。

 

 ヤマト

「非常に難しい話ね。いずれは直面する話だったけど、こんなに急を要する展開になってしまうなんてね」

 

 宗谷

「我々としても心苦しいのですが、どうかご協力願いたいのです」

 

 すると、ヤマトが私を見つめてきた。

 何も言ってこないが、私がどうしたいのか尋ねてきているのだろう。

 まず情報管理に関しては、マシロのお母様とお姉さんが主体ということで、十分信頼に値するとは思う。

 それに、私自身は晴風と連携して武蔵を救うことを考えていたため、ブルーマーメイドとの協力を得られるのは悪くない。

 しばらく考えて、私は意を決した。

 

 ムサシ

「ヤマト、私はこの話受けようと思うわ」

 

 ヤマト

「ムサシ、本当にいいの?」

 

 ムサシ

「ええ、遅かれ早かれ私の情報は開示しなければいけなかったわけだし、情報提供によって得られるメリットもあるわ。そして何より、他でもないマシロのお母様とお姉さんの頼みだものね」

 

 宗谷

「ムサシさん……、ありがとうございます!」

 

 マシロが私に対して深々と頭を下げて、私の手を握ってきた。

 ヤマトも私の言葉に対して反論せず、受け入れてくれているようだ。

 そんな様子を静かに見守っていたアケノが私たちに向かって話しかけてきた。

 

 岬

「それじゃ、早速ムサシちゃん調査の準備に取り掛かるね。シロちゃん、手伝って」

 

 宗谷

「わかりました。お二人は、準備が整うまで少し待っていただけますか」

 

 ムサシ

「ええ、わかったわ。じゃあ一度私は艦に戻って準備をしておくわ」

 

 ヤマト

「ムサシ、私も手伝うわ」

 

 私とヤマトは艦長室を出て、私の艦へと戻ることにした。

 さて、今日は少し忙しくなりそうね。

 そんなことを考え、私は準備に取り掛かるのであった。

 

 

 

 -幸子side.-

 

 みなさん、私は納沙幸子です。

 私達晴風クラスのみんなは現在、超戦艦ムサシの甲板の上に立っています。

 この度、学校からの依頼で超戦艦ムサシを調査することになり、艦長から書記係である私に調査の指揮と取りまとめ、つまりリーダーに抜擢されました!

 学校への報告も大事ですが、出会ってからずっと気になっていたムサシちゃんの艦を調べられる絶好の機会が訪れたことに、すでに私の心はフルスロットルですよ!

 

 ムサシの調査方法は、航海科、機関科、砲雷科の専攻科ごとにチームを組み、それぞれで担当する箇所を調査して、それを基に報告書を作成します。

 特に調査対象のない主計科は、情報量の多い砲雷科の助っ人として参加しますよ。

 そして私は取りまとめ役として、ムサシちゃんと一緒に行動して彼女の説明を記録、報告書ではみんなの分を一つにまとめて、最終的な形に仕上げます。

 調査の名目でムサシを隅から隅まで見渡せるのは、まさに書記の特権!

 

 すると、ムサシちゃんが私に話しかけてきました。

 

 ムサシ

「コウコ、今から私が作った艦のスペックデータをあなたの端末に渡すわ。フォーマットはあなたのデータベースを参考にしてるけど、変なところがあったら言ってちょうだい」

 

 話しが終わると、私のタブレットに新しいデータを受信されていました。

 早速開いてみると、そこには私が今までSF小説やアニメなんかでしか見たことがないような兵装や機能がズラリと記載されていた。

 すごい、すごすぎます!

 このスペックデータだけでも、私の妄想は止まらなくなりそうです!!

 

 ムサシ

「……コウコ?」

 

 ハッ!? 私としたことが、興奮しすぎてムサシちゃんに心配をかけてしまいました。

 

 納沙

「ご、ごめんなさいムサシちゃん。でも、このスペックデータすごいですね」

 

 ムサシ

「まぁ、私には普通のことなんだけどね。それじゃ、早速説明に入りましょうか。どこのグループから始めるのかしら?」

 

 ムサシちゃんの質問に私は事前に用意した割り振り表を確認して答えた。

 

 納沙

「まずは航海科と万里小路さんからですね。それじゃ、よろしくお願いします」

 

 ムサシ

「ええ、よろしくね」

 

 いよいよ艦内に入れるんですね。

 超戦艦ムサシの全貌、見せてもらいましょう!

 

 

 

 航海科と万里小路さんたちと合流した私達一行は、甲板から艦橋の最上階へと移動してきた。

 そこに広がっていたのは意外な光景だった。

 

 勝田

「なーんもないぞな」

 

 勝田さんの言う通り、そこは計器類どころか人がいた痕跡すらない何もない空間でした。

 

 ムサシ

「それはそうよ。あなた達が普段扱っているような情報は自分のコア内で処理しているから、艦橋内で機器類という形で設置する必要がないもの」

 

 確かにムサシちゃんの言う通りですけど、これでは何も調査できないですよ?

 すると突如ムサシちゃんは上に向かって両手を広げた。

 それに呼応するように、艦橋内に大小様々な大きさの空中ディスプレイが出現した。

 同時にムサシちゃんを中心に光るリングも現れた。

 

 ムサシ

「だから、今回はみんなにわかってもらえるようにデータを可視化してみたわ」

 

 ムサシちゃん、もしかしてわざとやったのかな?

 他のみんなはムサシちゃんの思惑通り、ディスプレイに夢中になっている。

 すると、電探員のめぐちゃんが手を挙げて質問してきた。

 

 宇田

「はーい、ムサシちゃんの電探ってどれくらいの性能なの?」

 

 まずはムサシちゃんの索敵能力から攻めようというわけですね。

 私はタブレットの記録用アプリを起動し、記録の準備を整えた。

 ムサシちゃんは空中ディスプレイの中からいくつかの画面を前面に出して、説明を始めた。

 

 ムサシ

「今前に出した画面がレーダー関係のものね。私のレーダーはフェーズドアレイレーダーシステムを中心にした複合式になっているわ。有効索敵範囲はざっと半径1500kmってところね」

 

 宇田

「い、1500km!? 本土のほぼ全部おさまっちゃうじゃん!」

 

 内田

「うわぁ、もう桁が違うよ」

 

 ムサシ

「単純に対象物の存在を知るだけじゃなくて、大きさや形状、さらには生命反応や対象の状態も確認することができるの。この前の武蔵のスキャンはこれの応用ね。あとは、光学式のカメラも複数搭載しているわ。これはマチコやマユミ、ヒデコのような目視観測の役割をしているわね。もちろん、人類のものよりもはるかに高い解像度を持っているわ」

 

 野間

「そうか、人がいないからカメラで代用しているんですね」

 

 次々と飛び出すムサシのとんでも性能メカたち。

 みんなが圧倒される中、ムサシちゃんは次々とディスプレイを動かしながら説明を続けていく。

 

 ムサシ

「カエデの担当する水測については音響、アクティブ、パッシブの各種ソナーを艦底に装備しているわ。他にも海中や海底を解析するセンサーを搭載しているから、データを合わせることで潜水艦の位置を三次元的に捉えることも可能ね」

 

 万里小路

「まぁ、それは便利ですわね」

 

 万里小路さん、さらっと流してますけど、潜水艦の位置が丸裸ってとんでもないですよ。

 

 八木

「あ、あのー、通信担当としては、霧の艦の通信手段が気になるんだけどー」

 

 すると、ここまであまり言葉のなかった八木さんが質問をしてきた。

 

 ムサシ

「通信には、量子通信と呼ばれる手法を用いているわ。人類の使う電波通信に比べて傍受もされないし、距離による減衰が少ないのが特徴ね。あと、霧独自の通信手段として、概念伝達があるわ。概念伝達は距離や遮蔽物に関係なく通信ができるし、ほぼタイムラグなしで大量のデータをやり取りできるの。まぁこの世界では現状、私とおねえちゃんとの間でしか使えないけどね」

 

 八木

「へー、電波以外の通信手段ってなんだか面白そう」

 

 通信も私たちが使っているものと随分違うんですね。

 それにしても、航海科の担当箇所だけでもとんでもない情報量になりそうです。

 これは私もしっかり取り組まなくては。

 

 ムサシ

「センサーや通信についてはこんなところね。今出している画面は自由に閲覧してもらっていいわ。それじゃコウコ、私たちは次に移動しましょうか」

 

 納沙

「そうですね、次は機関科の方へ行きましょう」

 

 私とムサシちゃんは航海科のみんなと別れ、艦橋を降りて機関室へ向かった。

 

 

 

 機関室への扉が開くと、すでに機関長の柳原さんと助手の黒木さんが室内の調査を行っていた。

 私たちに気が付いた黒木さんが近づいてくる。

 

 黒木

「ムサシ! それに納沙さんも、こっちにきてくれたのね」

 

 その黒木さんの後ろから柳原さんが顔をのぞかせる。

 

 柳原

「お、ムサシちゃん待ってたよ! どれがエンジンだか何だかさっぱりわかんなくってよぉ。こいつはどういう機関なんでぃ?」

 

 晴風の誇る機関長の柳原さんも、さすがにこの不思議な機関室にはお手上げのようだ。

 ムサシの機関室は、クジラのあばら骨の中のようなトンネル状の部屋が4つ並列で並んでおり、その中にまるでフジツボのような無数の白い突起物が見えている。

 すると、その突起物が回転しながら動き始めた。

 

 柳原

「さっきからこのイボイボが出たり引っ込んだりしてんだけど、これ一体なんなんだ?」

 

 ムサシ

「あら、それがまさにエンジンよ」

 

 柳原、黒木

「……え?」

 

 意外な返答に柳原さんも黒木さんも困惑の表情を隠せないようだ。

 すると、奥の方で調査をしていた機関科4人組がこちらに歩いてきた。

 

 若狭

「あ、ムサシちゃんきてたんだ……って、機関長殿とクロちゃんはどしたの?」

 

 戻ってきていきなり機関長と機関助手が固まっている光景を見て、若狭さんも状況がつかめていないようです。

 

 ムサシ

「丁度みんな揃ったし、説明するわね。この白い突起物が私達霧の艦隊の動力源である重力子エンジンよ。簡単に言えば重力子と呼ばれる素粒子を制御して推進力、砲撃、装甲のエネルギーを生み出しているの。艦によって様々なタイプの重力子エンジンを搭載しているけど、私のは全部がタイプGと呼ばれるものね。これを合計720基積んでいるわ」

 

 広田

「720って、それってどのくらいの馬力なの?」

 

 ムサシ

「そうね、タイプG一基の出力が4000馬力だから、720機分で合計288万馬力になるわ」

 

 伊勢

「に、288万馬力……」

 

 駿河

「おー、すごいパワーだねぇ」

 

 もはや桁が違うとかいう次元ではありませんね。

 晴風は6万馬力ですから、晴風48隻分のパワーってことですよ。

 すると、いつのまにか正気に戻っていた柳原さんがムサシちゃんの前に出てきた。

 

 柳原

「ムサシちゃん、ちょっとこのエンジン、あたしが動かしてみていいかい?」

 

 黒木

「え!? マロン本気なの?」

 

 柳原

「あたぼぅよ! こんなすごいもん見せられて何もしねぇんじゃ、機関長の名が泣くってもんよ。だからよ、お願いムサシちゃん!」

 

 どうやら柳原さんの機関士魂に火をつけてしまったようです。

 すると、ムサシちゃんが先ほど艦橋で見せた光のリングを展開した。

 どこからか銀色の粒子が現れ、それが機関室の一角に集約すると、パソコンのディスプレイとキーボードのようなものを乗せた机とイスが出来上がった。

 

 納沙

「え!? すごい、どうなってるんですか、これ!?」

 

 ムサシ

「さっきの銀色の粒子がこの艦を構成するナノマテリアルと呼ばれる物質よ。私達はナノマテリアルをコントロールすることで、船体やメンタルモデルはもちろん、消耗品である魚雷なんかも作り出しているわ」

 

 黒木

「じゃあ、この艦にあるもの全部、そのナノマテリアルでできているってことなの?」

 

 ムサシ

「そうね、そう考えてもらっていいわ。マロン、そこのコンソールでエンジンコントロールができるようにしたわ。マニュアルも画面に出しておいたし、動かしていきなり壊れるなんてことはないから、自分の好きなようにやってみて」

 

 柳原

「おぅ、ありがとうなムサシちゃん。よっしゃ、やるぞー!」

 

 黒木

「マロン、私も一緒にやるわ」

 

 椅子に座った柳原さんは早速キーボードを叩きながら、機関を動かし始めた。

 黒木さんは隣でマニュアルを読みながら、柳原さんをサポートしている。

 柳原さんの操作に合わせて、重力子エンジンも活発に動き始めている。

 

 ムサシ

「マロンとクロは夢中になっているみたいだし、その間にこの艦の速力について話しておきましょうか。霧の艦は高出力の重力子エンジンと水の抵抗を減らすフィールドのおかげで人類艦とは一線を画す速力を出すことができるの。この艦の場合だと、水上で最大速力75ノット、水中でも最大38ノットで航行可能よ」

 

 またもやとんでもない数値が出てきました。

 水中時ですら晴風の最大船速超えてるし、水上だとスキッパー並の早さですよ。

 

 伊勢

「もうすごすぎて、なんて言っていいかわからないね」

 

 若狭

「なんかもー、すべてがオバテクって感じ?」

 

 広田

「ほんと、ムサシちゃんが敵にならなくてよかったよ」

 

 駿河

「だねー」

 

 機関科4人組もあまりのスケールの違いに呆然としている。

 

 すると、先ほどまで不規則だった重力子エンジンの動きが規則的な音を立てて動き始めていた。

 

 黒木

「マロン、あとはそれを入力したら起動できるわ」

 

 柳原

「合点クロちゃん! 重力子エンジン全基オンライン、起動だってんだ!」

 

 柳原さんが勢いよくキーボードを叩くと、重力子エンジンが音を立てて動き始めた。

 

 駿河

「すっごーい。エンジン動き出したよ」

 

 広田

「さっすが、我らが機関長殿!」

 

 4人組が柳原さんたちを称える中、当のムサシちゃんは驚いた表情をしていた。

 

 ムサシ

「すごいわ、まさかこんな短時間で全エンジンを動かせるなんて。しかも、今までより駆動効率が10%もよくなっている。マロン、あなた本当に素晴らしいわ」

 

 柳原

「へへ、ムサシちゃん本人に褒められると照れるなぁ。クロちゃんと一緒だったからできたんだよ」

 

 黒木

「そんなこと……。でもこれでエンジンの調査が捗りそうね」

 

 柳原

「そうだな。ムサシちゃん、ここはあたしたちで何とかなりそうだから、書記と一緒に他のとこの説明に行ってきてやんな」

 

 ムサシ

「わかったわ。そこのコンソールは自由に使っていいから、何かあったら画面にある通信アプリを開いて連絡してね」

 

 こうして、私とムサシちゃんは機関室を後にした。

 

 

 

 さて、残るは砲雷科と主計科が調査している兵装と装甲に関する内容ですね。

 こちらは特に情報量が多いということで、同型艦であるヤマトさんに事前に説明をしてもらう手はずになっている。

 

 ヤマト

「あ、ムサシ、おかえりなさい」

 

 ムサシ

「お待たせ、おねえちゃん」

 

 ヤマトさんを見つけると、ムサシちゃんは駆け足で彼女の元へ向かっていく。

 本当に見ていて微笑ましいくらい仲がいいですね。

 それに、いつの間にかおねえちゃん呼びも定着していますし。

 

 ムサシ

「おねえちゃん、どのあたりまで説明したの?」

 

 ヤマト

「ちょうど、あの二つを除いて兵装の説明は終わっているわ。でも、まだ聞き足りないみたいだから装甲の説明の前に質問に答えてあげて」

 

 ヤマトさんがそういうと早速、砲術委員の小笠原さんが手を挙げていた。

 

 小笠原

「はいはーい、ムサシちゃんのこの主砲ってどのくらいの射程距離なんですかー?」

 

 指さした方向にあるのは、大和型の象徴とも言える46cm三連装主砲。

 しかもただの実弾だけでなく、荷電粒子砲によるビーム兵器を備えた複合兵器であると、スペックデータには記載されている。

 

 ムサシ

「有効射程距離は実弾だと半径35km、レーザーだと80kmね。まぁ、普通はそんな長距離射撃なんてしないけどね」

 

 小笠原

「おおおおお! みっちん、じゅんちゃん、聞いた? ビーム80kmだって」

 

 武田

「いや、もうわけわかんないから」

 

 興奮する小笠原さんと日置さんに対して、武田さんだけは冷静な突っ込みを入れていた。

 うちの学校の武蔵の主砲で有効射程距離20km程度ですから、余裕でアウトレンジ戦法とれちゃいますね。

 すると今度は水雷組からメイちゃんと姫路さんが名乗りをあげてきた。

 

 西崎

「私からも質問! ムサシちゃんの魚雷が撃ちたいです!」

 

 みんなが一斉にずっこけた。

 メイちゃん、それ質問じゃないですよ……。

 

 姫路

「水雷長~違うでしょ。えーと、侵蝕魚雷? について聞くんでしょ~」

 

 西崎

「そうだった、侵蝕魚雷ってどんな魚雷なの?」

 

 そう、このムサシには砲だけでなく魚雷も搭載されている。

 まずは艦底部の魚雷発射管。

 これを艦首方向に16門、艦尾方向に4門の計20門装備している。

 それだけでもすごいんですけど、さらに甲板上には垂直発射装置と呼ばれる噴進魚雷のような兵器を発射する装置を72門も搭載している。

 一体この艦一隻で何と戦うのかというくらい、全身武器庫のような装備っぷりだ。

 

 ムサシ

「侵蝕魚雷、つまり侵蝕弾頭兵器というのは私達霧の艦隊の主力兵装と呼べるものね。起爆すると、重力波が周囲を巻き込んで空間を侵蝕して、物質の構成因子の活動を停止させて崩壊させるの。小さなブラックホールのようなものね」

 

 西崎

「おお! なんかよくわからないけど、すっごい兵器なんだね!」

 

 姫路

「ぶらっくほーる? それってどんなものなの?」

 

 ムサシ

「簡単に言うと、どんな物質も飲み込んで消滅させてしまう星ね」

 

 姫路

「お~、それはすごいわ~」

 

 ブラックホール! またもや妄想力を増長する単語が飛び出しましたね。

 とことんSFを現実にしたような性能っぷり。

 はたしてこの事実を知った学校やブルーマーメイドはどうするんでしょうか?

 

 ムサシ

「じゃあ、最後に装甲の話だったわね。説明をはじめましょう」

 

 以前ヤマトさんが見せてくれた映像では、人類側の総攻撃を受けても傷一つないほど強力な装甲でした。

 はたしてどんな秘密があるのでしょう?

 

 ムサシ

「霧の艦隊の装甲は、船体の強制波動装甲とそこから発生するクラインフィールドによって構成されているの。クラインフィールドは通常兵器による攻撃をエネルギーを任意の方向に逸らすことで無力化できるバリアね。そしてフィールドで完全に無力化できなかったエネルギーは、強制波動装甲に吸収させることができるって仕組み。でも攻撃を受け続けて装甲に蓄積できる限界量を超えてしまうと、強制波動装甲は崩壊、同時にクラインフィールドも消失するわ。そうなると、人類の兵器でもダメージが通るようになるわね」

 

 意外なことに破る手段のある装甲だという話が出てきました。

 すると、美波さんがムサシちゃんに尋ねてきた。

 

 鏑木

「装甲は一定のエネルギーを貯めこむと崩壊すると言ったが、どのくらいの火力で崩壊させられるんだ?」

 

 すると、ムサシちゃんはまた光のリングを出して少し黙りこんでしまった。

 しかし数秒後にはリングは消滅し、再び私達に向き合った。

 

 ムサシ

「今、こちらの世界の人類が持つ兵器のデータから計算してみたわ。はっきり言うわね、現状全世界のブルーマーメイドの持つ全火力を馬鹿正直に私の装甲にぶつけても、装甲の稼働率はせいぜい25%くらいが関の山ね。つまり、どうあがいてもフィールドを抜くことは不可能ってことね」

 

 ムサシちゃんの言葉にこの場にいる人のほとんどが、口を開けて唖然としている。

 人類の持つ全火力をぶつけても、たった1隻の艦の装甲すら抜くことができないなんて、そんなこと誰が予想しただろうか。

 さすがの私もこればかりは、驚愕せざるを得なかった。

 

 鏑木

「だが、ムサシさんは前の世界で一度消えてこの世界にきた。つまり、一度その装甲は破られたということだ。その無敵に近い装甲にも有効な手段があるということだな?」

 

 だが、美波さんだけは冷静にムサシちゃんに指摘を入れてきた。

 

 ムサシ

「さすがミナミね。クラインフィールドだって絶対じゃないわ。有効な手段はこの世界だと二つ。一つは先ほど説明した侵蝕魚雷ね。装甲に直撃すると一応無力化はできるけど、かなりの量のエネルギーを装甲にため込むことになるわ。だからそう何発も喰らうことはできないわね」

 

 霧の主兵装というだけあって、侵蝕魚雷は霧の艦に対しても強力な武器になりえるようです。

 

 ムサシ

「そして、もう一つが……」

 

 すると、ムサシちゃんが途中で言葉を止めてしまった。

 その表情を見ると、少し悩んだような顔をしている。

 そんなムサシちゃんにヤマトさんが近づき、二人で何かを話し合っているようだ。

 

 私はタブレットにある超戦艦ムサシのスペックデータから兵装一覧を確認してみた。

 その中に、まだ語られていない二つの兵器の名前が記されていた。

 

 

 「超重力砲」

 

 

 

 「次元空間曲率変位(ミラーリング)システム」

 

 

 この二つの兵器は一体何なのか。

 私は二人の言葉を待つしかなかった。




第十話、いかがだったでしょうか?

本編で霧の兵器たちを出す、ということを実現したかった今回。
正直、上手く表現できたか自分でも判断が難しいところです。

ちなみに、性能で具体的な数値を出しているところは、ほとんどが私の独自設定です。
正確に判明しているのは、最大速力くらいです。
霧ならこんくらいいけるだろうという私の妄想全開仕様となってしまいました。

次回、第十一話は、
いよいよ姿を現す霧最強の兵器「超重力砲」
その実力やいかに!?

次回も読んでいただけるとありがたいです。

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