ハイスクール・フリート ―霧の行く先― 作:銀河野郎のBOB
第十九話でございます。
少し調子が戻ってきたのか、なんとか2月中にもう一本投稿できました。
やはり期間をあけすぎると色々ダメになっちゃうものですね。
今回は比叡戦の後半、いよいよムサシ初陣です。
ムサシは劇場版Cadenzaではほぼ超重力砲しか使っていなかったので、それ以外の兵装をメインにするって結構新鮮でした。
果たしてムサシはどのような戦いを見せてくれるのか、その結末はいかに?
それでは、どうぞ!
2016年4月26日午後1時30分
-ムサシside.-
ヤマト
「皆さん、比叡の誘導ありがとうございます。ここからは」
ムサシ
「私たちが引き継ぐわ!」
比叡からの攻撃を直撃しそうになっていた晴風に対し、私は艦底部魚雷発射管より迎撃用誘導弾とスモーク弾を同時に発射、比叡の主砲弾を撃ち落としつつ晴風と比叡の間にスモークによる壁を作り、晴風の姿を隠した。
宗谷
[ムサシさん! 水中にいたんですか。まだ到着していないものだと]
ヤマト
「ごめんなさい。ギリギリまで比叡の目を誤魔化すためだったのですけど。逆に不安にさせてしまいましたね」
宗谷
[い、いえ。とにかく無事に合流できてよかったです]
ムサシ
「煙幕で比叡の目は一時的に潰したわ。今のうちに離脱しなさい」
すでにヤマトから晴風に離脱の航路は送ってある。後はそれに従って、安全な海域へ退避すればよかった。
しかし、指示を出すべきアケノから中々言葉が出てこない。画像越しの様子を伺うと、アケノは心ここにあらずという様子であった。その表情にはこれまで見たこともない何かに怯えているような雰囲気さえ感じた。
ムサシ
≪アケノ?≫
宗谷
[艦長! 聞いているんですか、艦長!]
動こうとしないアケノにしびれを切らしたのか、マシロが大きな声で呼びかけた。マシロの呼びかけにアケノはようやく我に返り、周囲をキョロキョロと見渡す。
岬
[え? シロちゃん?]
宗谷
[しっかりしてください。我々は安全域まで退避して、ムサシさんの戦闘記録取りですよ]
岬
[そ、そうだね。リンちゃん、画面に出ている航路に従って第三戦速で離脱して]
マシロに指摘されて思い出したのか、アケノは少し慌てた様子でリンに指示を出した。それを終えると、私たちの方に顔を向けた。
岬
[ムサシちゃん! ヤマトさん!]
先ほどの怯えた表情はだいぶ治まったようだが、それでも不安な様子はぬぐい切れないといった具合だった。それでも、アケノは強い気持ちを込めて私たちにこう言った。
岬
[絶対、無事に帰ってきてね]
その一言に、私は嬉しさがこみ上げてきた。それはヤマトも同じようだ。
ムサシ
「ええ、必ず。むしろ比叡の方を心配した方がいいんじゃないかしら?」
ヤマト
「明乃さんの言葉、確かに受け取りました。必ず戻ると約束します」
私とヤマトはアケノにそれぞれ返答し、映像接続による通信を切った。
ヤマト
「明乃さんたちにああ言ったからには、しっかり頑張らないとね」
ムサシ
「そうね。おねえちゃん、作戦の指揮は任せたわ」
ヤマト
「ええ。これより超戦艦ムサシは比叡停止作戦、フェーズ2へ移行します。ムサシ、概念伝達通信を開いて。以後、指示は概念伝達にて行います」
ヤマトの言葉に従い、私はヤマトのユニオンコアと概念伝達通信を接続した。これにより、ヤマトから指示される膨大な情報を一切のラグなしに受信することが可能となった。
ヤマト
【それじゃ、かかるわよ!】
ムサシ
【ええ!】
こうして、私たちがこの世界に来て初の、そして私にとって戦術という概念の下で行う初めての戦闘が始まった。
-明乃side.-
ムサシちゃんのおかげで最大のピンチを乗り切った晴風は、当初の手筈通り安全域へ退避しムサシと比叡の戦闘を記録することになった。私は主計科、砲雷科を中心とする記録班に最上甲板に上がって準備をするよう指示を出した。さらに艦橋の空中ディスプレイにはムサシと比叡の戦闘の様子がリアルタイムで映るようになっており、様々な方向から今回の戦闘の様子を見ることができるようになっている。
しかし艦橋メンバーのみんなが危機を脱して一安心している中、私の心中は未だ穏やかになることはなかった。寸前までの光景を思い出し、思わず耳を塞ぎたくなる。
岬
≪もしムサシちゃんの助けがなかったら、今頃晴風は……≫
その時だった。シロちゃんが私の肩に手を置き、ムッとした表情で私を見てきた。
宗谷
「しっかりしてください艦長! 先ほどから様子が変ですよ」
私が不安になっていることに気づかれてしまったようだ。私は心の中で慌てつつも、なんとか平静を装おうと試みる。
岬
「あ、ごめんね。でも大丈夫。ほら、元気元気!」
宗谷
「……まぁいいでしょう。まったくもう」
シロちゃんは渋々ながら納得してくれたようだ。私は一度深呼吸をして心を落ち着かせた。これ以上シロちゃんや他のみんなに心配をかけるわけにはいかない。
和住
「艦長、主計科と砲雷科記録班の配置、完了しました」
そこへヒメちゃんから配置完了の報告が入ってきた。私は艦橋の右舷側の窓から外の様子を覗き込む。ムサシと比叡から砲撃音はまだ聞こえてこないが、スモークの壁はそのほとんどが風に流され、お互いの姿が見えるくらいまで薄れていた。
宗谷
「ほとんど煙幕の煙が晴れていますね。ではそろそろ?」
岬
「うん、戦闘が始まるよ。記録班、用意を――」
私とシロちゃんがそう言った時だった。
ドォン! ドォン!
大きな砲撃音が海の向こうから鳴り響いた。ついに戦闘が始まったようだ。
野間
「比叡、三番四番主砲より発砲! さらに副砲からも発砲を確認!」
先に仕掛けたのは比叡だった。どうやら比叡は攻撃目標を晴風からムサシに切り替えたようで、こちらに向かって飛んでくる弾はない。しかもスモークによる妨害や海中から出現したムサシに動揺する様子もなく、ムサシに同航戦を仕掛けて主砲と副砲を惜しみなく発砲してきた。
宇田
「比叡主砲弾、および副砲弾、かなり正確にムサシを補足しています」
先ほどまでの時間を利用して距離を測ったのか、弾のいくつかはムサシへの直撃弾となっていた。
ムサシへと向かう砲弾。しかし、直撃する直前にそれは何かに阻まれてしまった。
野間
「ムサシへの直撃弾および至近弾、直前で赤い壁のようなものにぶつかりました」
野間さんからの報告で、私たちはそれが何であるのかを確信していた。
岬
「あれが、クラインフィールド……」
ムサシちゃんやヤマトさんたち、霧の艦隊が持つ最強の盾「クラインフィールド」。外部からのエネルギーのベクトルを任意に変換し攻撃を無効化するこの盾は、比叡の強力な35.6cm砲の主砲弾すらいとも簡単に防いでしまった。
西崎
「すっご……。あれじゃどんなに撃っても攻撃が通らないじゃん」
立石
「う、うぃ」
実際のクラインフィールドの凄まじさに、私たちは圧倒されていた。
しかし比叡は動じる様子を見せることなく、すかさず一番二番主砲もムサシへと指向、連続で攻撃を仕掛けていく。しかしそれもムサシのクラインフィールドの前には全くの無力で、またもやあっけなく攻撃は防がれてしまった。
すると、これまで守りに徹していたムサシが新たな動きを見せ始めた。
内田
「ムサシの艦首側に動きあり。あ、垂直に上がる噴進魚雷らしき飛翔体を確認。数は……20です!」
右舷で監視していたまゆちゃんの報告通り、ムサシの艦首から真上に向かって何かが発射されていた。その飛翔体は空中で方向を変え、比叡の方へと向かっていく。
納沙
「おそらくミサイルという兵器でしょう。この前の調査で教えてもらいました。噴進魚雷のように着水することなく、飛行したまま目標を攻撃する誘導式の弾頭ですね」
ココちゃんの解説通り、ミサイルと呼ばれる飛翔体20機は空中で向きを微妙に変えながら比叡へと迫っていく。狙いは正確で全弾が直撃コースだ。
しかし、ミサイルは比叡に直撃することなく直前で一斉に爆発した。爆風による風圧を受けて比叡は大きく右へと傾いた。その様子は遠くから見ている私たちにもはっきりとわかるくらいだった。
知床
「も、もしかして、わざと当てなかった、のかな?」
ミーナ
「じゃろうな。今回の作戦は比叡の生徒の安全を確保しつつ艦を止めること。直撃させては生徒の安全は保証できん。だとしても、凄まじい精度と威力だ」
ムサシの攻撃は止まらなかった。私たちがミサイルの動向に気を取られている間に、ムサシの46cm三連装主砲3基はすでに比叡を捉えていた。
西崎
「お、おぉ! 撃っちゃう? 撃っちゃうの?」
メイちゃんが期待に胸膨らませる中、ムサシの一番主砲から比叡に向けて攻撃が放たれた。それは、船体に彩られたバイナルパターンと同じオレンジ色の光の帯だった。
小笠原、武田、日置
「び、ビームだー!!」
立石
「おおおお」
西崎
「すっごーい! ほんとにビーム撃っちゃったよ!」
射撃指揮所から戦闘の記録を行っていたひかりちゃん、みっちん、じゅんちゃんの三人にタマちゃん、メイちゃんは興奮を隠しきれず大きな声を上げた。まさかSF作品でしか存在しないビーム兵器をこの目で見ることになるとは思わなかった。一応、さらに威力の高い超重力砲は一度見たはずなのだが、そんなことは関係ないようだ。
放たれた3本のビームはまたもや狙いを外すことなく比叡へと向かっていった。しかし直撃することはなく、比叡の一番二番主砲の真上ギリギリのところを通過し、そのまま真っ直ぐ進んで遥か向こうへと消えていった。
しかし呆気に囚われている暇もなく、今度は水測室の万里小路さんから艦橋に報告が入ってきた。
万里小路
「ムサシさんの艦首より魚雷発射音を確認しました。数は10、大きく旋回して比叡の右舷側を攻撃するようですわ」
まだまだ止まらないムサシからの波状攻撃。今度は魚雷だ。本来、大型直教艦クラスには一部を除き、魚雷は搭載されていない。しかし全身に武装を施している霧の艦には、戦艦クラスであっても当然のように魚雷発射管が搭載されているらしい。それも潜水艦のように注水して発射するタイプのものだ。
魚雷は大きく弧を描いて比叡の右舷艦底部に命中した。しかしこちらは爆発することなく、船体を大きく揺らすに留まった。
比叡もなんとか応戦しようとするが、もはや火力も装甲も違いすぎた。次第に比叡の攻撃の手がどんどん弱まっていくのが目に見えてわかった。
宗谷
「……もはや、圧倒的すぎる。私たちの心配なんて全く必要ないじゃないか」
岬
「そ、そうだね」
私たちはずっと驚きっぱなしだった。かつてムサシちゃんたちから艦に関する情報提供を受け、超重力砲さえも見せてもらったのにも関わらずだ。しかし、こうして実戦という極度の緊張感の中で、実際にその常軌を逸した力が発揮されるのを目の当たりにすると、もはや言葉が出なくなってしまった。
私たちはただ、その圧倒的な戦闘の様子を見たままの通り記録していくしかなかった。
-ムサシside.-
私はヤマトの指示に従って艦を進めながら、比叡へ攻撃を仕掛けていく。ヤマトからの指示は非常に細かく、言われた通りに諸元を計算、入力して攻撃するだけで私が思った通りに比叡への攻撃が途切れることなく続いていく。私は自分自身が行っていることにすごく驚いていた。
ムサシ
≪これが、戦術。おねえちゃんが千早群像から学んだ人類の力、なのね≫
私はこれまでメンタルモデルを得たと同時に人間の戦術を自然と手に入れられるものだと思っていた。しかし、人間が長い年月をかけて作り上げ、そして磨き上げてきた本当の戦術は私たちとて一朝一夕で得られるものではないのだと、今ようやく思い知った。ヤマトは401の中で約2年間、千早群像から戦術を学び、それをこうして駆使している。やはり私の姉は霧の総旗艦に相応しい存在だった。
ムサシ
≪しかし、それにしてもこれは……≫
しかし同時に、私は今のヤマトの戦術に一つ疑問を抱いていた。そこで私は思い切って問い掛けてみることにした。
ムサシ
【ねぇ、おねえちゃん。ちょっといい?】
ヤマト
【あら? どうしたの? もしかして何か不具合? それとも私の戦術が何かまずかったかしら?】
ムサシ
【いえ、そうじゃないわ。むしろおねえちゃんの戦術は完璧よ。でも、ここまで過剰に武装を使う必要はあったのかしら? 比叡の動きを封じるだけならここまでする必要はなかったのではなくて?】
そう、ヤマトの攻撃指示はどう見ても比叡相手には過剰すぎた。ミサイルに主砲、さらには魚雷と私が持つ主要兵装を惜しみなく使っている。これではあまりにも一方的だった。
ヤマト
【そうね。ムサシの言う通り、私が指示しているものは比叡に対してかなり過剰な攻撃よ。でもねムサシ、この戦闘の意味を考えてみて?】
ヤマトは私の疑問に是と答えた後、逆に私に問いを投げかけてきた。私は暫しこの戦闘の意味について考えてみた。そして、一つの予測を立てた。
ムサシ
【……なるほど。この戦いはこの世界の人類が初めて目撃する霧の戦い。そして、この戦闘の記録は横須賀女子海洋学校を経由してブルーマーメイドに引き渡される。つまり、この戦いは私たちの未来を左右する戦い、というわけね】
ヤマト
【その通りよ。この戦いの記録は今後人類が私たち霧の力を知るための重要な資料になるわ。私がここで手を抜くと私たちの存在が軽んじられるし、さらに無様な姿を晒すわけにはいかない。だから私は、ここで私たちの力を存分に示すべきだと判断したの。例えそれで私たちが恐怖の対象となったとしても。それでも先に進むためにね】
ヤマトは私たちの未来を見据えていた。この過剰なまでの攻撃にはそんな大きな展望が込められていたのだ。戦術というのは今この時を生き抜くためだけでなく、先の未来すらも左右する重要なものだった。私は戦術の奥深さというものをさらに知ることとなった。
その後も私たちはひたすら比叡を圧倒し続けた。
ある時には持ち前の速力で比叡の最大船速よりも早く動いて攻撃をかわした。またある時には比叡の主砲と副砲の一斉射をミサイルで全弾撃ち落としたりもした。
こうして攻撃手段をことごとく潰された比叡は最初の勇猛さはどこへいったのか、完全に逃げの態勢に入り始めていた。しかしここで逃がすわけにはいかない。私たちは当初の予定通り比叡に対して適度に攻撃をしつつ、ある場所へと誘導していく。
ヤマト
【ムサシ、あと5分ほどで作戦海域よ。いよいよ大詰め、準備はできているわね?】
ムサシ
【フェーズ3ね。もちろん準備は万端よ。おねえちゃんこそ、最後にヘマしないようにね】
ヤマト
【言ったわね。それじゃあ、いくわよ】
いよいよ戦いも終わりが見てきた。
-明乃side.-
私たちはずっと圧倒され続けていた。その圧倒ぶりは好戦的なネズミもどきさんすら震え上がらせ、逃げという手段を選ばざるをえないほど追いつめていた。しかしムサシはそれを許さず攻撃を行いながら比叡を例の作戦海域まで誘導していった。
納沙
「艦長、まもなく比叡が作戦海域に入ります」
ココちゃんの報告を聞き、私は空中ディスプレイの海図を確認する。比叡はすでに作戦海域の目前まで迫っていた。
すると、戦闘中のヤマトさんから通信が入った。
ヤマト
[明乃さん、聞こえていますね? もうすぐ作戦をフェーズ3に移行します。晴風は作戦海域の外にいますか?]
岬
「はい。ヤマトさんに指示された場所で記録の任についています」
ヤマト
[ありがとうございます。間違っても作戦海域内には入らないでください。そうなれば晴風の安全は保障できなくなります。それでは、通信を切りますね]
ヤマトさんは最後に私たちに注意を促して通信を切った。
宗谷
「艦長、いよいよですね」
岬
「うん。これで終わるんだ。私たちは自分たちの仕事をきっちりやろう」
私たちは最後まで見届けなければならない。霧の艦隊、超戦艦ムサシの戦いを。
-ムサシside.-
ヤマトは晴風への通信を切ると、概念伝達で私に話しかけてきた。
ヤマト
【これより作戦をフェーズ3に移行する。ムサシ、あの兵装を垂直発射管11番から32番に装填。私は先に設置しておいたアレの起動準備に入る】
ムサシ
【了解よ】
いよいよ最終のフェーズ3突入の宣言がなされた。比叡はすでに作戦海域内に入っている。あとはヤマトの指示さえあればいつでも動ける状態になっていた。
そして、ヤマトは機を見てすかさず動いた。
ヤマト
【ムサシ、防護フィールドを展開する。状況確認を】
ムサシ
【了解。作戦海域外縁の海底に設置したキャニスターよりフィールド展開開始を確認。完了まで5秒】
私たちが晴風に囮役を頼み、その間に準備していたのは「キャニスター」と呼ばれる兵器を作戦海域内に展開することだった。「キャニスター」はかつて401が横須賀でハルナ・キリシマの大戦艦二隻を迎え撃つために使用した半自律型魚雷発射装置だ。簡易な構造ではあるが、単独で指定された地点まで移動でき、指示一つで短魚雷を最大8発まで発射することができる。今回はそれにヤマト独自でアレンジが加えられ、あるものを展開領域内から出さないための防護フィールド発生装置が搭載されていた。
ヤマト
【フィールド展開完了。続けて、ムサシはミサイル発射準備、私は海底のキャニスターの発射準備。諸元データ送る】
ムサシ
【データ受領。諸元をミサイル22発に入力、完了。11番から32番までセル解放、発射準備完了。発射タイミングをヤマトに委譲する】
ヤマト
【発射権限、受け取った。全弾、一斉射はじめ!】
私の垂直発射管から、そして海底に設置した通常タイプのキャニスターからある弾頭が搭載されたミサイルおよび魚雷が一斉に発射された。その数は62発。
私から発射されたミサイルは比叡の直上に到達すると弾頭が分離し、比叡の甲板構造物のあらゆる場所に着弾、そのまま固定された。キャニスターから発射された魚雷も同様に比叡の艦底部に固定された。
ムサシ
【比叡への着弾数、水上で22発中20発、水中で40発中32発。目標数到達を確認】
そして、最後の指令が総旗艦ヤマトから下される。
ヤマト
【EMP弾頭、全機起動開始!】
今回の作戦最大の要となる兵器、それがEMP弾頭だ。
EMPとは「electromagnetic pulse」の略、日本語にすると「電磁パルス」という意味になる。電磁パルスとは自然界では雷によって発生するパルス状の電磁波のことで、人工的にはこの世界には存在しない核兵器を高高度(高度100km以上)で爆発させることで発生させることが可能となっている。
そんな電磁パルスだが、あるものに絶大なまでの影響を与える。それが電子機器だ。電磁パルスによってケーブルに高エネルギーのサージ電流が発生し、ケーブルに接続された半導体や電子回路といった電子機器に大きな損傷を与えてしまうのだ。しかも電磁パルスは人体への影響は極端に少ない。このことから、元いた世界では非破壊・非殺傷の兵器として研究が進められていた時期があった。ヤマトはこの電磁パルスの特性に着目し、独自の発想から今回のEMP弾頭を作り上げた。元々、大戦艦キリシマが使用していた雷撃ユニットの存在もあり、作ることはそこまで難しいものではなかった。
そして、このEMP弾頭が今の比叡に有効な理由は二つ存在する。
一つは、比叡の多くの装置が自動化されていること。
この世界の旧式の艦船、晴風や武蔵たちはわずか30名程度の少人数で動かすことを可能にするため、砲弾の装填などの様々な機構が自動化されている。それはつまり艦の大半の箇所に電子機器が使用されていることに他ならない。しかしそれが仇となることもある。あのネズミもどきが発する電磁波で晴風の電子機器が一時使用不能になったことがその事例だ。今回のEMP弾頭はさらに強力な電磁パルスを発生させるため、使用不能を通り越して艦内のあらゆる電子機器を破壊することになる。こうなれば心臓部である機関部を始めとする艦の機能は完全に失われ、やがて航行不能となる。しかしその効果範囲は広域に及ぶため、万が一に備えて事前に防護フィールドを展開して電磁パルスの拡散を防いだというわけだ。
そしてもう一つが、元凶であるネズミもどきへの有効打となること。
ネズミもどきの持つウイルスに感染した者は、ネズミもどき本体から発生する電磁波によって一次感染者がその支配下に置かれ、さらに操られた一次感染者がハブとなり二次、三次と連鎖的に電磁波による支配が広がっていくというものだ。しかし、ここでも電磁パルスが有効な手段となる。ネズミもどきが放つ電磁波よりも強い電磁波である電磁パルスの影響を受けると、電磁波による支配ネットワーク全体に大きな乱れが生じて崩壊する。すると、支配下に置かれていた感染者はネズミの支配から解放され、一時的に意識を失うことになる。さらに支配主であるネズミもどき自身にもその影響を受けて無力化することができる。これはヤマトとミナミの検証により証明されている。
これこそがヤマトが自ら考案し、そして実行した対ネズミもどき感染艦の手段だった。
ヤマトの命令によって起動したEMP弾頭は、その狙い通り比叡艦内のあらゆる電子機器を破壊しつくした。さらに支配下にあった比叡クラスの生徒たちも次々と無力化されていった。
やがて機関部も電磁パルスの影響を受けて機能を停止、推力とコントールを失った比叡は徐々に減速し、やがて停止した。
ムサシ
【比叡の完全停止を確認。機関部の再起動の気配なし】
ヤマト
【……作戦、終了】
ヤマトによって作戦終了の宣言がされた。
こうして、私たちの世界での初めての戦闘は幕を閉じたのだった。
第十九話、いかがだったでしょうか?
結果はムサシの完全勝利。言うまでもなく無双ってやつです。
開始当初に霧無双みたいなのは極力避けると言っていましたが、それでも一度くらいはやってみたかったですし、そういうことを望む読者様の声もありましたので、今回やってみました。
まぁ、まともに戦闘した時点でこうなるのは目に見えていたわけですがw
そして比叡停止の鍵となったのは、電磁パルス兵器による電子機器破壊でした。
はいふり世界の教育艦が自動化されていること、RATtの電磁波による支配と電子機器に異常を引き起こすこと、こういう設定に対して「より強力な電磁波を浴びせれば有効打になるんじゃないか?」という考えに至り、結果EMP兵器というものを取り入れてみました。
現実でも研究が進められているものだということで、割と現実的だけど霧らしい超兵器の一面も持たせられたのではないかと、私は思っています。
にわか知識のアイデアですので、もし詳しい方がいらっしゃったら感想で教えていただけると嬉しいです。
次回、第二十話は
比叡との戦闘を終えたムサシ、ヤマト、晴風クラス。
そこへ謎の黒い艦が現れる。
その艦に乗る黒い人影の魔の手が晴風クラスに迫る!?
イッタイダレダトイウノダー?(棒
次回も読んでいただけるとありがたいです。