ハイスクール・フリート ―霧の行く先― 作:銀河野郎のBOB
皆様こんにちは。
第二十二話でございます。
本日5月1日はシロちゃんのお姉さん、真霜さんの誕生日でございます。
いつもならこの流れだと誕生日作品、ということになるのですが今回は誕生日作品はなしですorz
(昨日の昼に真霜さんの誕生日を知った……
なので今回は、前書きでのお祝いとなります。
晴風キャラの誕生日は引き続き頑張ります!
さて前回、ヤマトから突如シュペー救出作戦の立案を任されてしまったムサシ。
果たしてムサシはこの試練を乗り越えられるのか!?
それでは、どうぞ!
2016年4月26日午後9時30分
-ムサシside.-
ムサシ
「……夜風が気持ちいいわ」
アケノやヤマトたちとシュペー奪還作戦の会議をしていた私は、演算能力がパンクしそうな頭を少し冷やすために海図室から甲板に出てきた。外に出ると周囲はすでに暗くなっており、夜空には満点の星空が広がっていた。私は後部煙突付近に設置されている機銃台座に昇り、足を宙に投げ出すようにして座った。
ムサシ
≪今夜は本当に星がよく見えるわ。とても綺麗≫
私はかつて自分が拠点としていた北極海の星空のことを思い出していた。あの時は星に対して興味などなく、ただ時間の経過を知る手段程度にしか見ていなかった。しかし今こうして美しい満天の星空を見ていると、先ほどまで悶々と悩んでいた心がスーッと晴れていくような開放感を感じていた。
ムサシ
≪それにしても私に作戦を考えさせるって、おねえちゃんは何を考えているのかしら≫
私は今この場にいない霧の艦隊総旗艦に少し悪態をつく
私が先ほどまで悶々としていた理由、それは少し前にヤマトから突然言い渡されたシュペー奪還作戦第二プラン立案のことである。何も聞かされていなかった私は驚きの余りヤマトに訳を聞こうとしたが、結局ヤマトに上手いことはぐらかされてしまい、仕方なく私の主導で第二案を考えることになった。しかし私にとって初めての作戦立案、しかも出来る限りシュペーを傷つけることなく船員の生命第一にするというと大きな制約があるため、当然の如く作業は難航。さらにヤマトやアケノたちは第一プランの方の詰めの協議で忙しく、私が入り込む余地がないときたものだ。私は一人で一時間近く様々なシミュレーションを行ってみたが、結局何もいい考えが浮かばずこうして外へ出て気分転換をしにきたというわけだ。
ムサシ
≪でもあまり時間をかけていられないのよね。日付が変わる前には大筋を考えないと≫
晴風が今の速度で進めば、明日の朝にはシュペーの目撃情報があったアドミラルティ諸島に到着する。それまでには作戦をまとめてアケノたちと詰めの協議を済まさなければならない。しかし時間がないから焦ってもいい案が浮かぶわけもない。
ムサシ
≪あぁ、私はなんて浅はかだったのかしら……。メンタルモデルを獲得したら人類から学ぶことはないとか、少し人類と交流したらそんなわけないって気づくものなのに≫
私はかつて自分が出した人類に対する認識を大きく後悔している。私とヤマトがこの世界に来てまだ一月足らずしか経っていない。しかしその間に晴風クラスたちを中心に多くの人と出会い、交流していくことで私は「人間」という生き物を少しずつ理解しようとしていたのかもしれない。だからこそ、今ここで悩んでしまっているのだと思う。
しかしそれを今考えても仕方がない。私は再び作戦立案に集中するため少し気合を入れ直す。
ムサシ
≪ちょっと余計なことを考えすぎたわね。さて、もう一度シミュレーションを――≫
その時だった。私が先ほど昇ってきた機銃台座への梯子を誰かが上がってくる音に気が付いた。私がそちらの方へ視線を向けると、丁度その人物の頭が昇降口から姿を現していた。
黒木
「やっぱり、ムサシだ」
ムサシ
「クロ?」
その人物、クロは梯子を昇りきると後ろから私を抱きかかえるような姿勢で腰掛けた。背中越しにクロの体温を感じる。彼女に抱きつかれると不思議と安心感に包まれたような感覚になる。それはクロも同じように感じているらしく、嬉しそうな表情を私に向けてくれていた。
黒木
「甲板に上がったら綺麗な銀髪が風に流れているのが見えたから、きっとムサシだと思ってからきちゃった」
ムサシ
「そうだったの。私はさっきまで海図室で作戦会議をしていたんだけど、疲れちゃったからちょっと夜風にあたりに来たの」
黒木
「作戦会議? もしかしてこれから向かうところでまた何かするの?」
クロは事情を呑み込めず戸惑った表情になってしまった。私は彼女がずっと機関室にいて、晴風が今どこへ向かっているのか、そこで何をしようとしているのか把握していないことに気が付いた。私はクロに今の状況について簡単に説明してあげた。
黒木
「そう、目撃情報にあった不明艦がミーナさんの艦だったのね」
ムサシ
「それでシュペーをどうやって救出するかの作戦会議を今海図室でやっているというわけなのよ」
黒木
「なるほどね。ところで……」
一通り話し終えたところで、クロは抱きかかえたまま私の顔を覗き込んできた。彼女の綺麗な茶色の瞳に吸い込まれそうになる。
黒木
「疲れたというのはウソでしょ? なんか悩んでるって顔してるわよ。」
ムサシ
「う……」
どうやら私は誤魔化すのは苦手なようだ。するとクロは私の手をそっと握ってきた。
黒木
「この前言ったよね。私たちはムサシの友達だって。友達っていうのはただ仲良くしている人ってだけじゃない、辛いことや悩んでることがあったら、その辛さを分かち合って一緒に解決することができる人でもあるんだよ。もしムサシが今悩んでいるなら私に話してくれない? きっと力になるから」
クロの言葉に私は抜けていた歯車がピタリと嚙み合ったような感じを覚えた。
クロは私の大切な人で、初めてできた人間の「友達」。「友達」という言葉は今まで何度も聞いてきたし、知っていた。でも私はまだ本当の意味の「友達」というのを知らなかったのだろう。やはり私はまだまだ経験不足だ。それは戦術においても、人間との付き合い方についてもだ。でもそれはこれからもっと学べばいい。
きっとこれからも何度も悩み、辛い思いすることがあるのだろう。その時、隣にヤマトやクロ、晴風のみんながいれば一緒に乗り越えることができる。
ムサシ
「……そうね。私たちは友達、よね。それじゃウソはいけないわね」
私は素直に自分がヤマトから出された課題で悩んでいることをクロに明かした。全てを話した後、クロは少し難しそうな顔をしていた。
黒木
「ヤマトさんもなかなか難しい課題を出してきたわね。ムサシってそういう経験はなかったの?」
ムサシ
「全くの経験無しってわけじゃないけど、今まではただ相手を殲滅することだけを念頭に置いていたからね。相手を生かして、安全に保護なんて考えたこともなかったわ」
黒木
「そっか……。私一人じゃいい考えは出ないかも。ゴメンね」
ムサシ
「いいえ。こうやって一緒に悩んでくれるだけでとても嬉しいわ」
私とクロは二人して頭を抱えてしまった。クロも力になると言った手前、なかなかいい案が浮かばなくて申し訳なさそうにしていた。
するとクロは突然ハッと何かに気が付いた表情をして立ち上がった。
黒木
「そうだ。ムサシ、今からちょっと私に付き合ってくれる?」
ムサシ
「え? まぁヤマトに連絡入れれば大丈夫だけど。どこに行くの?」
黒木
「ええ。きっとムサシにもいいことあるはずだから。ほら、行こう」
クロは私の手を引いて立ち上がらせる。私はただクロに引っ張られていくしかなかった。
クロに連れられてきたのは先ほどまでいた機銃台座のほど近く、晴風の二番主砲直下にある部屋だった。ちなみにヤマトたちへの連絡はここに来るまでに量子通信で済ませて、ちゃんと許可は取ってある。
ムサシ
「ここって、お風呂?」
黒木
「そうよ。丁度今は機関科の入浴時間なの」
クロ曰く、お風呂に入るためにマロンたち機関室組と一緒に甲板に出てきたところで私が機銃台座に座っていることに気づき、他の五人を先に行かせて私の所にきたのだという。クロは自分の手荷物をロッカーに入れると、身にまとっていた制服を脱ぎ始める。晴風クラスの中で一番背が高く体型も申し分ないクロの姿を見て、私は自分の身体に目を向ける。
ムサシ
≪……もう少し背を高くして、出るとこ出る体型にできないかしら……≫
今ほど自分のメンタルモデルに不満を持ったことはないだろう。姉のヤマトがあれだけスタイルの良いのだから、私もそうすればよかったと後悔してしまった。
黒木
「ムサシ? 服脱がないの?」
ムサシ
「あ、そうね。私、お風呂って初めてだから戸惑っちゃって」
黒木
「え!? ムサシって今までお風呂入ったことないの? 身体汚れたりするんじゃ」
ムサシ
「霧は戦闘時以外でも常に弱めのフィールドを展開しているのよ。そのおかげで汚れとかは滅多につかないのよ。温水洗浄って形で入浴するメンタルモデルも存在していたけど、私は全然やったことないのよ」
黒木
「そ、そうなんだ。でもせっかくなんだから、ここで初めて経験してみようよ。何事も経験することって大事だよ」
ムサシ
「そうね。経験は大事よね」
私は衣服を構成していたナノマテリアルを操作し、元の銀砂の状態へと戻して体内に収めた。だが今まで服を脱いだことがなかった私は急に恥ずかしくなってしまい、身体を両腕で隠すように覆った。すると服を脱ぎ終えたクロが私にタオルを一枚差し出してくれた。
黒木
「ほら、これ貸してあげるから身体に巻いて」
ムサシ
「ありがとう」
私は急いでタオルを巻き、クロと一緒に浴室の扉を開いた。中から暖かい湯気があふれ出し、少しくすぐったい感じがした。浴室にはクロと一緒にお風呂に入りにきたマロンたち機関室組の五人に加え、応急員のヒメとモモの姿もあった。丁度機関科全員がそろったということになった。
柳原
「クロちゃん、遅かったじゃねぇか。待ちくたびれて先に風呂入っちまったよ」
黒木
「マロン、ごめん待たせっちゃった」
駿河
「あれ? ムサシちゃんもいるよー?」
若狭
「ホントだ。なんか珍しいね」
みんなからの視線に私は再び恥ずかしくなってしまう。
黒木
「こらこら。ムサシは初めてのお風呂なんだから、あんまりジロジロ見ないの。ムサシ、入る前に身体洗おう」
ムサシ
「う、うん」
自分でも情けないと思うくらい弱弱しい声で返事をする。クロは私を前に座らせると、後ろからシャワーで頭からお湯をかけてきた。突然のお湯にビックリしたが、少し経つとその温かさがだんだん気持ちよくなってきた。
黒木
「ムサシの髪、すごく綺麗。透き通るような銀髪でとても滑らかね。いいなぁ、憧れちゃうわ。それじゃ髪洗うわね」
私はクロに目の前にあったシャンプーと書かれたボトルを渡した。クロは私の顔にシャンプー液がかからないように丁寧に私の髪を洗っていく。
ムサシ
「く、クロ。ちょっとくすぐったいわ」
黒木
「もう少しだから我慢して。でもほんとにサラサラね。私の髪って結構ウェーブがかかってるからこんな風にならないのよねぇ」
クロが手で私の髪を梳く度にくすぐったいような不思議な感覚が走り、思わず声が出てしまう。そんな私とクロの様子を浴槽から他の機関科メンバーが眺めていた。
伊勢
「なんかあの二人ってすごく絵になるわね。なんだろう、ちょっとエロい?」
広田
「え? それサクラが言うの?」
青木
「いやーいいっすね。クロちゃんとムサシちゃんのカップリングはありっすよ。ここにスケブがあれば今すぐ描きたいっすよ!」
和住
「モモー、心の声がダダ漏れだよ」
クロはその後も私の身体を隅々まで綺麗に洗ってくれた。今まで自分のメンタルモデルを温水洗浄したことがなかった私にとって、それはとても新鮮なことだった。
それと同時に今までヤマトの課題のことでモヤモヤしていた心の方もいつの間にか晴れていることに気が付いた。理由をクロに聞いてみたところ、お風呂というのは心の汚れも落としてくれるものだと教えてくれた。ただ身体を洗うだけの行為にそんな効果があるのかと私は疑問に思った。でも実際にこうやって楽になったのだから、効果があったのは間違いない。私はまた一つ、人間の不思議を知ることになった。
私の身体を洗い終えたクロが自分の身体を洗い終えると髪をタオルで纏め、皆の待つ浴槽に入ることになった。クロは慣れた足取りで浴槽に足を入れると、ゆっくりとその身を湯船へ沈めた。私もそれに続こうと足を浴槽に足を入れたが。思わぬ熱さにびっくりしてしまった。
ムサシ
「熱っ。意外と温度が高いのね」
黒木
「大丈夫? ほら、ゆっくり慣らしながら入ってみて」
クロに言われた通り、今度はゆっくりと足を湯の中へ入れた。先ほどのような熱さは感じず、無事に入ることができた。そして身体も徐々に湯船の中へ沈め、なんとか座ることができた。
ムサシ
「ふぅ。なんとか入れたわ」
黒木
「ふふっ。どうムサシ、気持ちいい?」
ムサシ
「そうね。ただお湯に入っているだけなのに不思議と気持ちがいいわ」
柳原
「晴風6万馬力の機関で炊き上げた自慢の風呂だからな。気持ちいいに決まってらぁな」
ムサシ
「なるほどね。今度ヤマトも誘ってみようかしら。それとも、自分の艦にお風呂を作ってみるのも悪くないわね」
あまりの湯の気持ちよさに虜になってしまいそうだった。私はしばらくの間、じっくりと湯に身体を沈めて楽しむことにした。
ひとしきりお風呂を楽しんだ後、私はこの場にいる皆に自分の悩みを相談することにした。
ムサシ
「あのね、皆に少し聞きたいことがあるの」
柳原
「ん? なんでぃ改まってよ。ムサシちゃんなんか悩んでるのか?」
ムサシ
「そうね。実は――」
私はクロに説明した時と同じように、今晴風が置かれている状況とこれからの行動方針について説明した。
柳原
「なるほどなぁ。そいつは緊急事態だな」
青木
「シュペーってミーナさんが乗ってた艦っすよね?」
和住
「あの時は大変だったよね」
ムサシ
「それで、アケノやヤマトたちとシュペー救出の作戦会議をしていたんだけど、霧側の作戦行動について私に一任されちゃったのよ。でもなかなかいい案が浮かばなくて」
広田
「それで私たちに相談しに来たってわけね」
ソラの言葉に私は首を縦に振った。
若狭
「でもさ、私たちって機関科だから作戦とか戦術とかってあんまり得意じゃないよ。そういう相談って航海科とかの方がいいんじゃない?」
駿河
「私頭使うのにがてー」
確かにレオの言う通り、こういう相談に適しているのは航海科の人の方かもしれない。でも私にはここにいる皆からも意見が欲しいと思っていた。そのことを伝えようとした時、私より先にクロが口を開いていた。
黒木
「たしかにレオの言う通りかもしれない。でも私はムサシの力になりたいと思うの。でも私一人じゃ上手くできなかった。だけど皆と一緒ならきっと出来ると思うの。お願い、ムサシを助けてあげて」
クロの言葉に皆は少し困惑した表情をしていた。しかしマロンだけは目を閉じて何か考えているようだった。そして再び目を開くと、裸体のまま立ち上がって仁王立ちになった。
柳原
「よぉし、やってやろうってんでぃ! 大切な親友が困ってるんなら助けてやるのが江戸っ子の粋ってもんよ」
広田
「いや、機関長殿は千葉出身でしょ?」
和住
「あ、うちの両親は江戸っ子だよー」
青木
「いやいやヒメちゃん。今それ関係ないっす」
マロンの言葉に他の皆は様々な反応を示す。しかし全員のの目には何かを成そうとする決意が感じ取れた。
若狭
「でもさ、ムサシちゃんの為になりたいってのは賛成かな」
伊勢
「そうね。どこまで出来るかわからないけど、ムサシちゃんのために頑張っちゃおうかな」
駿河
「はーい。私も頑張るよー」
他の三人もその気なってくれたようだ。機関科全員の視線が私に向けられていた。私は皆の顔を一瞥して、頭を下げた。
ムサシ
「皆、ありがとう。感謝するわ」
黒木
「感謝は作戦を立てた後よ。とりあえず一旦お風呂出て、機関室で作戦会議よ」
お風呂を出た私たちは一度それぞれの部屋で荷物を置いた後、機関室に集まって作戦会議を始めることにした。私も一度海図室に戻って、今の段階での晴風の行動方針を確認してきたので、私はそれを皆に説明した。
ムサシ
「――こんな感じで、晴風の行動方針はシュペーの死角から近づいて隙を見て魚雷を発射、シュペーが回避行動を取って速度が落ちたところを主砲で弱点を突いて艦の動きを止める。その後接舷して艦内に突入するってことになっているわ」
黒木
「ありがとうムサシ。それじゃ、これを踏まえて皆で意見を出し合っていきましょう」
誰が言うでもなく仕切り役になっていたクロの言葉を皮切りに、皆から様々な意見が交わされていく。
若狭
「シュペーの隙を作るっていうならさ、ムサシちゃんから攻撃してみるのはどうかな?」
伊勢
「確かに。いっそムサシちゃんで止めちゃった方が早い気がするわね」
広田
「いやいや。シュペーをあまり傷つけないって話だったじゃん。ムサシの火力じゃ強すぎて艦も乗員も危ないんだって」
青木
「なんか閃光弾みたいなので注意を引き付ける、というのはどうっすか?」
和住
「うーん。夜だったら有効そうだねぇ。昼間に戦闘になったらあんまり意味なさそう」
みんなの口からどんどんアイデアが湧き出てくる。私も積極的に自分の考えを述べていく。クロは意見を出しつつ、海図室から借りてきたホワイトボードに皆の案をどんどん書いていった。
しばらく論議を繰り返していくうちに、いつの間にかホワイトボードはビッシリ文字で埋め尽くされていた。
黒木
「だいぶ案が出てきたわね。それじゃアイデア出しはこの辺にして、今まで出てきたものを整理してみましょう」
柳原
「はぁー。最初は不安だったけど、案外なんとかなるもんだなぁ」
私とクロの指揮の元、みんなから出た案を大まかな戦術毎にグループ分けしてまとめていく。そうしてまとめたものの中から、今回の作戦で使えそうなものを一つ選ぼうとしていた。
するとマロンが一つのグループに目をつけていた。そして徐に手を挙げた。
柳原
「なぁ。シュペーの注意の引き付けって、何もムサシちゃんだけでやる必要ってないんだよな?」
ムサシ
「そうね。目的は晴風への注意を逸らして隙を作ることが主目的だから、私の艦に限定することはないわね……」
柳原
「それじゃ、他の何かで注意を引き付ければいいんじゃねぇか? 例えばスキッパーとかでよ」
マロンの言葉に私を含め他の皆もハッとした様子だった。
駿河
「でも、スキッパーって晴風にある二隻しかないよ? それだけじゃ足りなくない?」
柳原
「そこはよ、ヤマトさんにお願いして作ってもらうんだよ。ナノなんとかってやつで」
黒木
「ナノマテリアルでしょ。でも、スキッパーだと装甲がないからちょっとしたことで転覆しちゃうわよ。もっと安全な方法じゃないと」
マロンの考えは確かによかったが、クロの指摘はもっともだ。ナノマテリアルでスキッパーを量産しても個々でフィールドを張ることはできない。そうなると安全性に問題がでてきてしまう。私たちは再び頭を抱えてしまった。
その時だった。これまであまり喋っていなかったルナが何か言いたそうな顔をしていることに私は気が付いた。
ムサシ
「ルナ、何か言いたそうね。よかったら話してくれないかしら?」
駿河
「え? でも出来るかどうかわかんないよ? 私おバカだから」
ムサシ
「いいのよ。今は一つでも多くの意見が欲しいの。だからお願い」
私が頼むと、ルナはわかってくれたようで自分の考えを述べ始めた。
駿河
「えっとね。スキッパーが危ないのって水上で動いているからだよね? だったら水中から近づいてみるのはどうかなーって思ったんだけど」
若狭
「水中から近づくって、それって伊201みたいな潜水艦みたいなやつでってこと?」
駿河
「そうそう、潜水艦だよ潜水艦!」
ムサシ
「潜水、艦……」
私はルナの意見に何か引っかかりを感じていた。私は昔の記憶を思い起こしていく。
ムサシ
≪たしか前に潜水艦で何かしている艦隊があったわね。どこだったかしら……≫
広田
「でもさ、潜水艦って水中だと全然スピード出ないんだよ? 速いって言われてる伊201ですら最高で20ノットくらい。注意を引き付けるどころか、どんどん置いていかれちゃうんじゃない?」
駿河
「あ、そっか。そうなんだね……」
ソラに指摘されて少しショボンとした表情になるルナ。しかし私はそのやり取りであることに気が付いた。そして同時に、引っかかていた過去のことを思い出していた。気が付くと私は無意識に立ち上がっていた。
黒木
「ムサシ? どうしたの」
心配そうにクロが覗き込んでいる。私はそのままルナの側に詰め寄り、そして彼女の手を取った。
ムサシ
「ルナ! 今のあなたの言葉で一ついい案が出てきたわ。ルナのおかげよ、ありがとう」
駿河
「え? え? えと、私のおかげ?」
少し混乱しているルナを横目に私は皆に宣言した。
ムサシ
「皆、おかげで作戦立案はなんとかなりそうよ。これから詰めていきたいから、続けて協力お願いできるかしら?」
柳原
「お、どうやらいいアイデアが出たみてぇだな! もちろん最後まで付き合うぞ」
マロンをはじめ、皆は嬉しそうな顔をしていた。そして私はクロに笑顔を向けた。
ムサシ
「クロ、私ね、皆と相談できてよかった。クロがきっかけをくれたおかげよ」
黒木
「どういたしまして。でもまだ終わっていないんでしょ? さぁ皆、続きを始めましょう」
その後も私たちは協議を重ね、作戦をまとめていった。それは消灯時間を過ぎても続き、最終的な案をまとめることができたのは日付をまたいだ午前0時半ごろだった。
色々悩んだりもしたが、こうして私が初めて考えた作戦が出来上がったのであった。
第二十二話、いかがだったでしょうか?
今回は初めてのお風呂シーンに挑戦してみました。
映像ならわかりやすいですが、文章でお風呂シーンを書くって想像以上に難しいですね。視覚の情報って素晴らしいですね。
それでも少しはお風呂シーンを楽しんでいただければ幸いです。
次回、第二十三話は
いよいよシュペー救出作戦が幕を開ける。
ムサシが皆と考えた作戦とは?
晴風とムサシは暴走するシュペーを助け出すことができるのか?
次回も読んでいただけるとありがたいです。