ハイスクール・フリート ―霧の行く先― 作:銀河野郎のBOB
8月誕生日ラッシュもついにラスト一人。
本日8月8日は晴風の江戸っ子機関長、柳原麻侖ちゃんの誕生日!
今回は今までの誕生日エピソードとは違うアプローチで書いてみました。
そして特別編では珍しく、霧の人も登場します!
あと、ちょっとですがこの先の本編の展開に関わる内容が含まれてます。
それでは、どうぞ!
2016年8月8日午前9時
-麻侖side.-
柳原
「んー!! 今日もいい天気だなぁ! お天道様もマロンの誕生日を祝ってくれてんのかねぇ」
私、柳原麻侖は今日も絶好調だ。
今朝も朝5時に起きておじいちゃんの漁の手伝いをして、さっき朝ごはんを食べたばかりだ。
夏休みに入ってから漁のある日は毎日手伝っているけど、マロンにとっては楽しみの一つだから、早起きも楽勝なんでぃ!
そして今日はあたしの誕生日。
この後、マロンの大好きな想い人と一緒に出掛ける予定になっている。
待ち合わせはここ、あたしの家なので庭先で今か今かと待っているってわけだ。
黒木
「マロン、お待たせー」
おっ、噂をすればなんとやらだ。
待ち人のクロちゃんが到着したようだ。
柳原
「おっはよー、クロちゃん。私も今庭に出てきたところだよ」
黒木
「そうなの? 今朝も漁に出てたんでしょ? 大丈夫なの?」
柳原
「平気平気。おじいちゃんが気ぃきかせて、早めに上がらせてくれたんでぃ」
まぁ実際は、あたしがおじいちゃんにせがんで早めに帰らせてくれるように頼んだんだけどな。
そういう細けぇ話はいちいち話すもんでもないだろう。
柳原
「クロちゃん、もう向こうから連絡きたのかい?」
黒木
「えぇ、もうすぐ到着するみたい。そろそろ港に行かない?」
柳原
「おぅ! いつでも合点でぃ!」
私は勝手口から外に出て、クロちゃんと一緒に港へ向かうことにした。
柳原
「ところでクロちゃん、マロンに何か一言いうことがあるんじゃないかい?」
黒木
「えー? なんかあったかしら?」
柳原
「えーい! もったいぶらなくてもいいじゃねぇかよー!」
黒木
「ふふ、お誕生日おめでとう、マロン」
柳原
「おぅ!」
最初に誕生日を祝ってもらうのはクロちゃんって決めてたからな。
ちゃんと祝ってもらえて嬉しいよ、クロちゃん。
銚子の港に到着した私たちは、横須賀方面からの定期船が到着する船着き場にやってきた。
すでに定期船は港に到着しており、まもなく乗客が降りてくるころだ。
柳原
「お? お客さん降りてきたな」
黒木
「えーと、どこにいるのかしら?」
私とクロちゃんは降りてくるお客さんを一人ずつ確認していく。
黒木
「あ、いたいた! おーい、こっちこっち」
どうやらクロちゃんが先に見つけたようだ。
クロちゃんの視線の先を見ると、私もようやくその人を見つけることができた。
そして、私たちの前に待ち人である銀髪の小さな女の子が駆け寄ってきた。
ムサシ
「マロン! クロ! ひさしぶりね」
黒木
「いらっしゃい、ムサシ」
柳原
「あたしたちの地元、銚子へようこそなんでぃ! きてくれてありがとな、ムサシちゃん」
もう一人の待ち人、それは私たちが入学早々に巻き込まれたRATt騒動の時に偶然出会い、そして大切な仲間となった霧の艦隊の超戦艦、ムサシちゃんだ。
黒木
「でも横須賀から朝イチの便で来たんでしょ? 疲れてない?」
ムサシ
「平気よ。でも、心配してくれてありがとう、クロ」
ムサシちゃんは元気いっぱいな様子だ。
それにしても、クロちゃんは心配性だからなー。
マロンもちょっとしたことで、よく心配してもらったな。
でも、そこがクロちゃんのいいところなんだけどな。
ムサシ
「それに、横須賀から出たの久しぶりだから、柄にもなく興奮してしまったわ」
黒木
「あ……」
柳原
「そうか、ムサシちゃん今は大変だもんな……」
ムサシちゃんたち霧の艦隊は、現在学校と安全監督室の庇護の元で日本政府と今後の共存について協議をしている真っ最中だ。
それゆえ、気軽に外出すらできないという状況だ。
あたしたちも横須賀に帰ってきてからは、ムサシちゃんとヤマトさんに会える機会は少なかった。
ムサシちゃんと特に仲が良かったクロちゃんはなかなか会えなくてちょっと落ち込んでいた時期もあった。
ムサシ
「まぁ、そんなことはいいのよ。それより、マロン、誕生日おめでとう。これ、ヤマトと私、そしてあの子からのプレゼントよ」
あたしはムサシちゃんから小さなプレゼントの入った袋を受け取った。
柳原
「おぅ、ムサシちゃんありがとうな! よーし、今日はまずムサシちゃんにあたしらの育った町を紹介してあげようじゃねぇか。なぁ、クロちゃん」
黒木
「そうね。じゃあ早速行きましょうか」
ムサシ
「ええ、よろしくね」
私たちは三人横並びになって港から歩き出した。
あたしらは一度家にムサシちゃんからのプレゼントを置いてきて、それから町の散策を始めた。
なお家ではあたしの家族がムサシちゃんを可愛がりまくって、本人はちょっと困惑気味だった。
隣を歩くムサシちゃんはちょっと疲れた感じになっている。
ムサシ
「マロンの家族は、本当にマロンとおんなじね。みんな元気すぎるわ」
柳原
「まぁうちは元気なのがモットーであり、それが取り柄だからなぁ」
黒木
「おじいさんとかほんとすごいわよ。この町で一番の漁師なんて言われてるんだから」
ムサシ
「へー、結構ご高齢に見えたけど、すごいわね」
なんか二人におじいちゃんのことを褒められると、ちょっと照れちまうな。
あたしは恥ずかしさで、話題を変えようとした。
柳原
「それよりムサシちゃんよ。今日は随分と可愛らしい格好してるんだな」
ムサシ
「あ、この格好? 昨夜ヤマトとマシモに散々着せ替え人形にされて選んだのよ。せっかくお出かけするなら可愛くしなくちゃ、ってね。それで、どうかしら?」
ムサシちゃんの格好は、白のロングスカートに水色のノースリーブ、靴は赤色のサンダル、そして頭にちょっと大き目な麦わら帽子という感じだ。
普段黒い服を着ていることが多いから、だいぶイメージが違う感じがするねぇ。
ちなみに真霜さんの名前が出てきたのは、現在ムサシちゃんが宗谷副長の家でご厄介になっているからだ。
黒木
「いい! とっても似合ってる! こういうムサシもありだわ! そうだよね、マロン?」
柳原
「お、おぅ。普段と違ってすっごく可愛らしくていいと思うな」
ムサシ
「そ、そう? ありがとう///」
クロちゃんの勢いにちょっと押され気味になったが、あたしは素直な感想を言った。
ムサシちゃんは少し恥ずかしげだったが、嬉しそうな表情をしていた。
それにしても、クロちゃんはムサシちゃんといつからか仲良くなってて、それからベッタリなんだよなー。
正直ちょっと嫉妬しちまいそうだが、ムサシちゃんのことを知った後ではそんな気もなくなっちまったんだよな。
すると、今度はムサシちゃんから話題を変えてきた。
ムサシ
「それにしても、ここは不思議な町ね。人の数はそこまで多くないのに、なんだか活気に溢れてるって雰囲気がするわ」
柳原
「そうだろ? 銚子は昔から漁港として有名な町だからな。そして漁師ってのは、おじいちゃんみたいに元気に溢れてる人が多いときたもんだ。そうなると自然と活気あふれる町にもなるもんでぃ」
黒木
「うちは漁師の家じゃないけど、両親も少なからず影響を受けているわね」
ムサシ
「ふーん。やっぱり人間って面白いわね。データじゃ測りきれないって改めて思ったわ」
ムサシちゃんも銚子の町を気に入ってくれた様子だ。
少しでもあたしらの地元を気に入ってもらえるよう考えた企画だったが、大成功なんでぃ!
一通りの散策を終えたあたしたちは、再び港に戻ってきた。
その目的は、
ムサシ
「へー、二人とも自分の釣り具を持っているのね」
柳原
「おぅ、クロちゃんとは小さい頃からよくやってたんだよ」
黒木
「まぁ、釣り目的というよりおしゃべりがメインだけどね」
そう、釣りをしにきたのだ。
久しぶりに地元に帰ってきたのに、全然釣りやってなかったからな。
せっかくの機会だから、ムサシちゃんも連れて三人で楽しもうって算段だ。
そして、お互いに準備ができたので釣りを始めた。
あたしもクロちゃんも順調に成果を出して、三人でおしゃべりしながら楽しんでいた。
しかし、あたしには一つだけ気になっていることがあった。
柳原
「ところでよ、クロちゃん?」
黒木
「なに、マロン?」
柳原
「なーんでムサシちゃんとそんな状態で一緒に釣りしてるんだよ?」
クロちゃんはムサシちゃんを抱きかかえた状態で座って、釣竿を持っている。
さっきは嫉妬なんてしないって思ったけど、一言くらい言ってもいいよな?
ムサシ
「? 何か変なことなのかしら?」
ムサシちゃんもムサシちゃんでそういうところが意外と無頓着なんだよなぁ。
黒木
「べ、別に深い意味はないのよ? ただ、いつもと違う格好でかわいいなぁ、って思ったら、ついね」
柳原
「むー、かわいいのは認めるけどよぉ、なんか納得いかねぇな」
あたしはわざとムスっとした表情をして、クロちゃんにアピールしてみた。
クロちゃんは、私の様子を見てちょっと困った表情になっていた。
へへ、うまいこと狙い通りにできたなぁ。
私はクロちゃんの困り顔を十分に堪能したので、そろそろ許してあげようと思った。
その時、ムサシちゃんからとんでもない言葉が飛び出してきた。
ムサシ
「じゃあ、マロンもクロにこうしてもらえばいいじゃない?」
柳原
「んなっ!?」
黒木
「え!?」
あたしもクロちゃんも突然のことで顔が真っ赤になっちまった。
柳原
「い、いや、さすがにそれは……。クロちゃん、ごめん、悪ふざけが過ぎちまったよ……」
黒木
「う、ううん。大丈夫、よ///」
ムサシ
「?」
思いがけないことに、あたしもクロちゃんも何も言えなくなってしまった。
しばらく沈黙が続いた。
すると、突然ムサシちゃんがクロちゃんの腕の中から立ち上がった。
ムサシ
「あ、ごめんなさい。ちょっと待ってて」
ムサシちゃんは駆け足で少し離れた場所へと移動した。
どうやら誰かからの通信が入ったようだ。
もしかして、すぐに横須賀に戻らなきゃいけないという話だろうか。
まだ全然遊び足りないってのによ。
話はすぐに終わったようで、ムサシちゃんが戻ってきた。
黒木
「ムサシ、大丈夫だったの? ヤマトさんからの通信だったんじゃ。」
ムサシ
「いえ、おねえちゃんからじゃないわ。でも、ちょっとね」
柳原
「じゃあ、いったい誰からだったんだ?」
あたしもクロちゃんも皆目見当がつかない状態だ。
ムサシ
「そうね、その答えは沖の方を見ていればわかるわ」
ムサシちゃんに言われるまま、あたしとクロちゃんは指差された港の沖の方を見ることにした。
すると、一台の二人乗りスキッパーがこっちに接近してくるのが見えた。
岬
「おーい、マロンちゃーん! クロちゃーん!」
柳原
「え! か、艦長!?」
スキッパーを操縦しているのは、あたしらの乗る晴風の艦長、岬明乃さんだった。
なんで、こんなところに艦長が?
すると、クロちゃんは何かに気づいたようだ。
黒木
「マロン、ほら岬さんの後ろに」
あたしはクロちゃんの言った艦長の後ろの席を見てみた。
知名
「お二人ともー、お久しぶりです!」
そこにいたのは、大型直教艦武蔵の艦長である知名もえかさんであった。
柳原
「む、武蔵の艦長さんまで」
岬
「あ! とりあえずスキッパーの係留所にこれ留めてくるから、そこで待ってて!」
そういうと、二人は係留所の方へ向かっていった。
黒木
「もしかして、ムサシがさっき連絡してたのって」
ムサシ
「そう、一昨日に私がアケノを誘ったの。モエカが一緒なのはさっき通信で知ったわ。マロンのお誕生日祝いでちょっと驚かせようと思ったの」
柳原
「そ、そうだったんか」
しばらくすると、係留所の方から艦長と知名さんが二人揃ってやってきた。
二人の手にはあたしへのプレゼントが握られていた。
岬
「マロンちゃん、お誕生日おめでとう! これ、クラスのみんなからのプレゼントだよ!」
知名
「私からも、お誕生日おめでとう。私のはミケちゃんと一緒に買ったものだよ」
柳原
「二人とも、ありがとうな! わざわざこっちまで来てくれるなんてよぉ」
黒木
「それにしても、岬さんはわかるんだけど、知名さんはどうして一緒にきたの?」
知名
「柳原さんが私のとこの機関長と仲良くしているんだけど、柳原さんの整備知識がすごく勉強になるっていつも感謝してたの。だから、そのお礼も兼ねてお誕生日をお祝いしたいなーって思って、ミケちゃんと一緒にきたの」
確かに、最近は武蔵の他にも比叡や、晴風と同じ高圧缶持ちの天津風の機関科の連中と一緒に勉強会みたいなのをやったりしている。
あたしが一人突っ走ってどんどんしゃべっちゃうもんだから、迷惑になってないか不安だったんだけど、喜んでもらえてるなら悪くねぇな。
岬
「それから、ほっちゃんとあっちゃんのお店の船が後でこっちに来てくれるよ。船でお誕生日会やるんだって。あと、ルナちゃん達機関科4人組とミカンちゃんも合流するって」
柳原
「な、なんだよ。みんな来てくれんのかぃ」
元々はクロちゃんとムサシちゃんの三人だけでやる予定だった誕生日会が、いつの間にか大事になっちまっていた。
でも、みんなあたしのために集まってくれたんだよなぁ。
そう思うと、嬉しさで泣いてしまいそうじゃねぇか。
柳原
「みんな、マロンのためにこんなに、ありがとうな」
ムサシ
「マロン、私たちはみんなマロンが好きだから、お祝いしたいって思っているだけよ」
岬
「そうだよ! マロンちゃんの元気の良さに私も晴風のみんなもすごく助けられているんだよ。だから、みんなで精一杯お祝いしたいって思ったの」
知名
「私は直接関係があったわけじゃないけど、これから柳原さんともっと仲良くなりたいな」
黒木
「だから、これからも今まで通り元気なマロンでいてよね」
みんなの想いが口から伝えられた。
ほんとに、みんなして嬉しいこと言ってくれるじゃないの。
なら、この柳原麻侖、みんなの期待に応えてやらにゃあ、女が廃るってもんだ!
柳原
「みんな、今日はあたしのためにありがとな! 今日は思いっきりあたしも祝われてやるから、みんなも盛り上がっていこうってんだ!!」
その後、合流した杵崎屋の船で誕生日会が開かれ、大いに盛り上がった。
ほんとに、ほんとうにありがとうな!
これからも、あたしはあたしのやり方で頑張っていくんでぃ!
みんな、これからもあたしのこと、よろしくな!!
いかがでしたでしょうか?
今回のマロンちゃんので8月の誕生日ラッシュは一旦お終いです。
次ヤバそうなのは10月ですかね……
そして、本編放置気味で申し訳ないです。orz
ただいま第十話執筆の真っ最中です。
出来る限り早めにあげたいと思っていますので、もう少しお待ちくださいm(_ _)m