ハイスクール・フリート ―霧の行く先― 作:銀河野郎のBOB
今週3度目の投稿です。
いよいよ10月はいふりキャラ誕生日ラッシュもラスト!
本日10月29日は、リンちゃんこと知床鈴ちゃんの誕生日です!
登場当初はずっと怯えてて頼りない感じでしたが、話が進むにつれてどんどん強くなって、最後はミケちゃんに次ぐ成長キャラになりましたね。
頑張っている印象が強い子だと自分は思います。
そして今回のお話は、いんたーばるっで仲の良さを見せたレオちゃんこと若狭麗緒ちゃんとのお話になります。
実は最近、レオ×リンにハマってしまいまして、その勢いで書きました。
それでは、どうぞ!
2016年10月29日午前11時30分
-鈴side.-
古庄
「では、これで本日の習熟度確認試験を終了します。みんな、お疲れ様でした」
古庄教官がそう言い終わると教室から退出していった。
晴風クラスのみんなは、今日の授業が終わったので思い思いに過ごしている。
今日は午前中だけの授業だったが、これまでの習熟度を確認する試験が1年生全クラスで実施された。
私は航海科と機関科で行われる操艦実習に参加、指定された場所へ安全確実に素早く到達するという内容で試験を行った。
私たち晴風クラスは途中で発生する様々なトラブルをなんとか切り抜け、無事に最後までやりきることができた。
そして総合成績は、最優秀の武蔵クラスに次ぐ2番目の成績となった。
試験を終えて少し疲れてしまった私は一度寮に戻ろうと、荷物を片づけていた。
その時、一人の女の子に声をかけられた。
若狭
「リンちゃん、おつかれー! 今日の試験、操艦バッチリだったね!」
知床
「あ、レオちゃん。お疲れ様」
制服の上にピンクのカーディガン、そして綺麗な金髪に四つ葉のクローバーの飾りのついたヘアバンドをした少女、若狭麗緒ちゃんだ。
レオちゃんは機関科であるため、私と一緒に今回の試験を受けた。
若狭
「今回は晴風が使えないせいで別の艦にされちゃったから、機関の調整が大変だったよー」
知床
「でも、本番の時は機関室のみんながすごく頑張ってくれたおかげで、操艦しやすかったよ」
若狭
「いやいや、これも機関長と航海長のリンちゃんのおかげだよ。ありがとね」
私たち晴風クラスは航洋艦「晴風」が諸事情で使用できないことから、代わりに同じ高圧缶を持つ航洋艦「島風」に乗艦して実習に臨んだ。
普段乗っている晴風とは勝手が違うことから、私は実習が始まる前のブリーフィングの時間を使って機関室を訪ね、機関の状態をいつも以上に念入りに確認させてもらった。
そうすることで、操艦の際の微妙なコントロールをしやすくなり、結果として気難しい高圧缶をうまく動かすことができた。
私にとっては普段からやっていることなので、特に感謝されるようなことではないと思っているが、レオちゃんにはありがたいことであったようだ。
柳原
「おーい、レオちゃん! 突然行っちまったと思ったら、航海長と何を話してんだぃ?」
黒木
「知床さん、今日はお疲れ様」
すると、機関長のマロンちゃんをはじめとした機関室組の皆が私の元にやってきた。
どうやらレオちゃんを探しにきたようだ。
伊勢
「終わったらみんなでお昼しようって言ってたのに、急にいなくなっちゃうんだもん」
若狭
「ゴメンゴメン。ちょっとリンちゃんに用があって」
すると、広田さんが獲物を見つけたような目でレオちゃんと私を見つめる。
広田
「ほうほう。知床さんに一体何の用事かなぁ、レオ?」
知床
「ふぇっ!? ナ、ナニって……」
駿河
「ねぇねぇ、ナニってなにー?」
広田さんの言葉に変な想像を浮かべてしまい、思わず変な声が出てしまった。
それにしても、レオちゃんの用事って一体何だろう?
その時、教室に一際大きい声が響いた。
岬
「みんな! 今日は夜にリンちゃんとクロちゃんの誕生日パーティやるから、忘れずに寮の食堂にきてね!」
声の主は晴風クラスのリーダー、艦長の岬さんだった。
岬さんの言った通り、今日が誕生日である私と3日後の11月1日に誕生日を迎える黒木さんの誕生日パーティが今夜開催される予定となっている。
そのことをみんなに伝えると、岬さんは足早に教室から出て行ってしまった。
きっと誕生日パーティの準備をしにいったのだろう。
黒木
「もう、相変わらず慌ただしいんだから。祝ってもらうこっちが心配しちゃうよ」
知床
「でもそこが岬さんのいいところだよね。私たちのために一生懸命になってくれるのは嬉しいな」
黒木
「まぁ、そうだけどね」
そう言いつつも、黒木さんはちょっと照れくさそうにしている。
きっと本音はすごく嬉しいと思っているんだろうな。
柳原
「なんでぃクロちゃん、随分嬉しそうなかおしてんじゃねぇか」
黒木
「な!? べ、別にそんなことないってば!」
柳原さんに痛いところを突かれて顔を真っ赤にして慌てる黒木さん。
私や他の機関室組のみんなはそんな様子を見て思わず笑っていた。
黒木
「あ、知床さんまで。マロン、変なこと言わないでよ」
柳原
「別に変なことじゃねぇやぃ。クロちゃんを見て正直に言ったまででぃ」
柳原さんと黒木さんの仲睦まじい様子を見て、私はすごく羨ましいと思っていた。
横須賀女子海洋学校に入ってから、晴風クラスの皆はもちろん、最近では武蔵クラスなどの他の同級生の友達も増えてきて、今の学校生活に特に不満があるわけではない。
だけど、少し何かが物足りないと感じているところがあるのも確かだった。
今、柳原さんと黒木さんの様子を見ていると物足りなさをより強く感じている。
でもそれをハッキリと言葉にすることはできずにいた。
黒木
「ほら、はやくお昼食べに行こうよ。いつまでもここにいても仕方ないでしょ」
広田
「あ、クロちゃんが逃げた」
黒木
「こらそこ! 駄弁ってないで早く行くわよ!」
からかわれることに耐えられなくなったのか、黒木さんがみんなを食堂へ連れて行こうとしていた。
私も誕生日会まで特に予定もないので、一緒にお昼ご飯を食べようと思って席を立った。
その時、突然レオちゃんが私の手を掴んできた。
知床
「ふぇ!? れ、レオちゃん!!??」
若狭
「ゴメンみんな。ちょっとリンちゃんと二人きりで用があるから、先に食堂行ってて」
そういうとレオちゃんは私の手を引っ張って教室を出ようとする。
私は何が起きているのかわからず、ただレオちゃんに従うしかなかった。
知床
「あ、だ、誰かたすけて~……」
柳原
「え? ちょっと航海長? レオちゃん?」
広田
「おーおー、二人きりとはお熱いことで」
黒木
「何言ってんのよ。知床さんに限ってそんなことないでしょ」
伊勢
「それ、レオちゃんにはあるってことなのかな……」
駿河
「レオちゃんだけいいなー。私もリンちゃんと仲良くしたーい」
残された5人が何か言っているようだったが、レオちゃんに引っ張られていったため、最後まで聞き取ることはできなかった。
レオちゃんが私を連れて向かった先は、誰もいない校舎裏だった。
そこで立ち止ったレオちゃんは私を校舎の壁にもたれかからせるようにして、私の正面に立ち、左手を校舎の壁について息を整えていた。
その様子は傍から見るとまさに「壁ドン」そのものだった。
知床
≪ええー! これって、まさか!!??≫
私の混乱度合はさらに増していった。
教室から連れ出され、校舎裏で壁ドンされているシチュエーション。
私の頭には、恋愛ドラマのワンシーンを思い浮かべること以外できなかった。
若狭
「リンちゃん……」
息を整え終えたレオちゃんが私をじっと見つめて呟いた。
暗くてよく見えないが、少し顔が赤くなっているように見えた。
知床
「レ、レオちゃん……?」
私、これから本当にレオちゃんに……。
心臓に心拍数がどんどん上がっているのを感じる。
あまりの緊張に、今すぐに逃げたいという考えが頭をよぎる。
だが、私は逃げなかった。 いや、逃げられなかった。
若狭
「……えと、その、ね……」
いよいよその時がくるのか。
私はそう覚悟した。
若狭
「お、お誕生日おめでとう!!」
知床
「……へ?」
私は思わず呆然としてしまった。
レオちゃんの口から飛び出したのは、私への告白の言葉ではなく、誕生日をおいわいするものだった。
若狭
「あとこれ、私からの誕生日プレゼントね」
レオちゃんはカバンの中から袋を取り出し、私に差し出した。
私はその袋を受け取る。
若狭
「どうしても誕生日会よりも先に渡したくって、でも教室だとみんなに見られちゃうから、こんなとこに連れてきちゃった。ゴメンね、リンちゃん」
知床
「う、ううん。私は大丈夫だよ」
知床
≪言えない、さっきまで告白されるって思っていたなんて、絶対言えないよぉ≫
言葉では平静を装いつつも、心の中ではすごく動揺していた。
レオちゃんは私の言葉を聞いて安心したのか、いつもの明るい笑顔に戻っていた。
若狭
「よかったぁ。それじゃ私、先に行くね。誕生日会、楽しみにしててよね!」
知床
「あ、レオちゃん!」
食堂へと向かおうとするレオちゃんを私は呼び止める。
知床
「プレゼントありがとう! 誕生日会でまたね!」
若狭
「うん! それじゃーねー!」
レオちゃんは私の言葉を聞いて笑顔を向けた後、足早に食堂へと向かっていった。
一人残った私は、レオちゃんから貰ったプレゼントを早速開けてみることにした。
可愛いラッピングが施された袋を開けてみると、そこには意外なものが入っていた。
知床
「あ、これ。四つ葉の髪留めだ」
中に入っていたのはレオちゃんのヘアバンドと同じ四つ葉のクローバーの意匠のついた髪留めだった。
四葉のクローバーは校舎裏にわずかに入ってくる陽光に反射してキラキラと輝いていた。
知床
「綺麗……」
髪留めの美しさに見とれていると、髪留めが入っていた袋から何かが零れ落ちた。
私はそれを拾い上げる。
知床
「これって、手紙?」
どうやらレオちゃんが私に宛てた手紙のようだ。
私は早速読んでみることにした。
そこには、こう書かれていた。
リンちゃん、お誕生日おめでとう!
これを読んでいるってことは、私は無事にプレゼントを渡せたってことだね。
実はリンちゃんにずっと伝えたかったことがあります。
横須賀女子に入学してすぐの航海演習のあの時、リンちゃんに私のヘアバンドを助けてくれて、本当にありがとう!
思い返せばあの時、お礼を言った気はするんだけど嬉しさのあまりに泣いちゃったからよく覚えていなんだ。
そして直後にあの事件があって、ちゃんとお礼を言うタイミングを今までずっと失ってしまったんだよね。
だから、この手紙でちゃんと伝えます。
私のヘアバンドを助けてくれて、ありがとう!
これからもずっと大切な友達でいてね! 約束だよ!!
レオより
手紙を読み終えた私は、嬉しさで涙を流していた。
今まで満たされなかった思いが、一気に満ち溢れる感覚を感じていた。
私は気づいていなかったんだ。
大切な友達はすぐ傍にいたということに。
それはレオちゃんだけじゃない、岬さん、副長、ココちゃん、メイちゃん、タマちゃん、ミーナさん、ヤマトさん、ムサシちゃん、そして晴風のみんな。
私の傍にいる人みんなが私にとって大切な友達だった。
知床
「ありがとう、レオちゃん」
私は自分がしていた髪留めを外した。
そして、レオちゃんがくれた四つ葉の髪留めでいつものツインテールを形作った。
知床
「よし! 私も行かなきゃ」
そう言って、私は校舎裏を後にした。
さぁ、はじめよう。
大切な友達と一緒に、新しい航路を進もう。
きっとどんな海でも越えられる。
私はもう逃げない。
だって、大切な友達に背中を押してもらっているから。