ハイスクール・フリート ―霧の行く先―   作:銀河野郎のBOB

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Happy Birthday! ミカンちゃん!

誕生日記念20作目です。
もうそんなに書いていたのかと、振り返って少し驚いてます。
本編より本編らしく書いてるし、こっちの方が性に合うのか……。
もちろん、本編も頑張りますよ。

本日、2月14日はミカンちゃんこと伊良子美甘ちゃんの誕生日です!
ミカンちゃんと言えば、やはり美味しいご飯ですよね。
アニメでもほっちゃん&あっちゃんの双子とともに、色んな料理を作って振る舞っていました。
そしてなかなかの負けず嫌い。ミーナさんを喜ばせようと慣れないドイツ料理にチャレンジして、結局双子に腕で負けちゃってショックを受けていたのは可愛らしかったです。

今回は誕生日がバレンタインデーと同じということで、存分にネタにしました。
あと、とあるはいふり絵師さんの影響をモロに受けたカップリングがあります。

それでは、どうぞ!


特別編⑳ バレンタインデーでハッピー!

 2017年2月14日午後3時

 

 -美甘side.-

 

 バレンタインデー

 

 それは女の子にとって特別な日。

 

 全国の恋する女の子たちはこの日に全てをかけていると言っても過言ではない。好きな男の子へ告白、お付き合いしている人への結婚申込、といった人生の大勝負をする日にする人も多いだろう。

 一方最近では、男性女性問わず日頃お世話になっている人たちに感謝を込めてチョコレートを渡すという一種の感謝デーという意味合いもある。

 

 そして私、伊良子美甘が通う横須賀女子海洋学校もそんなバレンタインデーの甘い雰囲気に包まれていた。

 

 等松

「マッチー! 私のチョコ、受け取ってー!」

 

 野間

「あ、あぁ。ありがとう……」

 

 岬

「シロちゃーん! はいこれ、いつもありがとう!」

 

 宗谷

「あ、ありがとう、岬さん。これ、私からもなんだけど」

 

 岬

「ほんと! シロちゃんありがとう!」

 

 今日の授業が終わり、クラスメイトの女の子たちは早速仲の良い友達同士でチョコの交換が行われている。

 

 しかし、今の私にはみんなのようにチョコの交換を楽しむ余裕はなかった。

 なぜなら……

 

 伊良子

「さてと、そろそろ行こうかな……、勝負に」

 

 これから、私にとって大事な、とても大事な勝負があるからだ。

 

 

 

 クラス教室を出て私が向かったのは、学校内にある家庭科室。普段は主計科の調理実習や家庭科部の活動場所などで使われている。

 ここが今日の私の戦場だ。

 

 私は家庭科室の扉を開いた。そこには二人の人影があった。私はその二人に挑発的な視線を向けて話しかける。

 

 伊良子

「お待たせ、ほっちゃん、あっちゃん」

 

 杵崎ほ、杵崎あ

「ミカンちゃん、待ってたよ!」

 

 私と同じ主計科で、高校入学前から色々お世話になっている双子のお友達、杵崎ほまれちゃんとあかねちゃんが私と同じように挑発的な視線をこちらに向けている。

 

 伊良子

「さて、それじゃあ早速始めようか」

 

 杵崎ほ

「うん、私はもう準備万端だよ」

 

 杵崎あ

「私も。早く始めたくてうずうずしてるよ」

 

 家庭科室内にピリピリした空気が漂い、緊張感が高まっていくのが肌で感じ取れる。

 これから私たち三人が始めること、それは。

 

 伊良子、杵崎ほ、杵崎あ

「始めよう! バレンタイン恒例、チョコレート対決!」

 

 

 

 私たち三人は昔から事あるごとによく料理対決をしていた。時にはカレー対決だったり、またある時にはケーキ対決だったりと、料理のジャンルを問わず様々なものを作っては競い合い、お互いに料理の腕前を高めていった。そして、毎年2月14日、バレンタインデーの日には決まってチョコレート作りで対決をしていた。

 

 伊良子

「今年こそ、今年こそは、二人に勝つんだから!」

 

 杵崎あ

「ミカンちゃん、去年も同じこと言ってたよね?」

 

 杵崎ほ

「和菓子屋の娘としては、簡単には負けられないよ」

 

 杵崎姉妹の実家は横須賀で古くから続く伝統和菓子店の系列店「杵崎屋」。その腕前は全国区のテレビ番組でも時々取り上げられ、日本どころか横須賀に寄港するブルマーや船乗りさんたちからも愛されている有名店だ。そして、ほっちゃんとあっちゃんはそんな和菓子屋で小さい頃からお手伝いをしており、お菓子作りに関してはプロにも引けを取らない腕前を持っている。

 そして、このチョコレートを含めお菓子の対決で私は一度も二人に勝ったことがなかった。

 

 伊良子

「それでも、それでも私は、二人に勝ちたい!」

 

 だけど、二人に負けっぱなしでいるのはとても悔しい。たとえ今まで勝てたことがなかったとしても、諦めず腕を磨き続ければいつか届くと信じている。

 

 杵崎ほ

「それじゃ、ルールはいつも通り」

 

 杵崎あ

「今回はもう料理し終わってるけど、材料は自分たちで調達したもののみを使用」

 

 伊良子

「そして今日は、クラスメイトの誰かを捕まえて審査をやってもらう、だね」

 

 三人でルールを確認し、それぞれの手には今回の対決のために作ってきたチョコレートが握られている

 

 伊良子

「それじゃ、チョコレート披露だよ!」

 

 

 

 調理台の上に三つのチョコレートが並べられた。同じチョコレートなのに見た目も香りもそれぞれ違っていて、三人の個性が出ていた。

 

 伊良子

「わー、あっちゃんのチョコすごくいい香りがするよ」

 

 杵崎あ

「えへへ、ありがとう。ほまれはビターな感じで攻めてきたみたいね」

 

 杵崎ほ

「あ、わかる? ミカンちゃんのはホワイトチョコだね。甘くて美味しそう」

 

 私たちはそれぞれのチョコを見て評価をし合う。先ほどまでのピリピリした空気はすでになく、三人とも笑顔で話し合っていた。

 

 杵崎ほ

「それじゃ、審査してくれる人を探しに行こうよ」

 

 杵崎あ

「そうだね。鉄板どころなら艦長とか副長だけど、二人とも忙しいかな?」

 

 伊良子

「万里小路さんとかはどうかな? おいしいものいっぱい知っているから、厳しめに評価してくれそうだよ」

 

 そんな話をしていると、突然入り口の扉が開く音がした。話に夢中になっていたせいで、音にびっくりした私たちは入り口の方を見ると、そこには横須賀女子の制服とは違う黒を基調とした士官服を着た金髪の女性が立っていた。

 

 ミーナ

「おぉ! ここにおったのか。探したぞ」

 

 伊良子

「え! ミーナさん?」

 

 私たちより一つ年上で、アドミラル・グラーフ・シュペーで副長を務めるミーナさんだった。さらにミーナさんの後ろを見ると、同じく黒い士官服を着た小さな銀髪の髪の女の子がいた。

 

 テア

「すまないな。突然押しかけてしまって」

 

 杵崎ほ

「シュペーの艦長さんもいらしてたんですね。いつ日本に?」

 

 テア

「昨日だ。すぐ挨拶しに行こうと思ったんだが、時間が合わなくてな」

 

 ミーナ

「それでさっき、教室に行ってアケノたちに会ってきたんじゃ。それでミカンがここにおると聞いて飛んできたんだ」

 

 伊良子

「え? 私に?」

 

 どうやらミーナは私に用事があるようだ。一体何の用事だろう?

 

 その時、隣であっちゃんがほっちゃんに何か話し合っていた。

 

 杵崎あ

「ねぇ、せっかくだから二人に審査してもらおうよ」

 

 杵崎ほ

「あ、それいいね。ドイツのチョコレートおいしいから、二人ともいい審査してくれそう」

 

 どうやらミーナさんとテアさんに今回の対決の審査員をしてもらうようだ。丁度同じタイミングでミーナさんたちが調理台の上のチョコに気が付いた。

 

 ミーナ

「お、これはSchokoladeか? ええ香りがするのぅ」

 

 テア

「そのようだな。もしかして三人が作ったのか?」

 

 杵崎ほ

「そうだよ。これから誰かに食べてもらって一番おいしいのを決めてもらうんだ」

 

 杵崎あ

「それで、お二人に審査してもらいたいんだけど、いいかな?」

 

 ミーナ

「ええのか! それなら喜んで引き受けるぞ!」

 

 テア

「私もいいぞ。三人の料理の腕は本物だ。期待しているぞ」

 

 こうして、思わぬ形で見つかった二人の審査員によるチョコレートの審査が始まった。

 

 

 

 一番手はあっちゃんのチョコレート。香りがすごく印象的な一品だ。

 ミーナさんとテアさんは一口ずつ口に含んで、しっかり味わっている。

 

 杵崎あ

「今回はフルーツジャムを混ぜ込んで香りも楽しめるようにしてみたの」

 

 ミーナ

「ふむ、ほのかに甘い香りが口の中に広がって、とても不思議な味がするのぅ」

 

 テア

「チョコレート自体は少し苦めにして、フルーツの甘さを際立たせている。うまい」

 

 

 

 続いてはほっちゃん。これは大人なビターチョコレートだ。

 

 杵崎ほ

「チョコは甘いだけが取り柄じゃない。苦さこそがチョコの本質だよ」

 

 ミーナ

「確かに。この苦さ、最初はきついかと思ったは意外にもしつこくなくて食べやすいぞ」

 

 テア

「程よく甘さを出すことでチョコの特徴を上手く引き出しているな。さすがだ」

 

 

 

 そして最後は私。色々勉強して作った渾身のホワイトチョコレートだ。

 

 伊良子

「隠し味で少しハチミツを入れてみたんだ。これが結構合うんだよ」

 

 ミーナ

「ほー。もっと甘いかと思ったが、そんなにではないんだな。いや、むしろすごくいいぞ」

 

 テア

「絶妙なバランスで調和していて、優しいな味がする。伊良子らしいな」

 

 

 

 三人のチョコの実食は完了した。後は二人の審査結果を残すのみ。

 

 伊良子

≪今回こそ、今回こそ二人に勝ちたい! 勝ちたいよ!!≫

 

 私は心の中で強く念じた。今回はいっぱい試作して、やっとの思いで完成させた自信作だ。だからこそ、絶対勝ちたいという想いはとても強かった。

 

 ミーナ

「テア、どれにするか決めたか?」

 

 テア

「ああ、もう決めたぞ」

 

 どうやら二人の審査が終わったようだ。緊張の一瞬、私の心臓の鼓動はとても速くなっていく。

 

 杵崎あ

「それじゃ、一番おいしいと思ったチョコを指差してください!」

 

 私は目を閉じて祈るように結果を待った。

 

 しばしの静寂が流れた後、私は恐る恐る目を開けた。

 

 二人の指先を見ると、両方の指が私たちから見て右側の皿を指していた。そこに乗っていたのは、雪のように白いホワイトチョコレートだった。

 

 伊良子

「……え?」

 

 ミーナ

「一番うまかったのは、ミカンのじゃ」

 

 テア

「私も、伊良子のSchokoladeが一番だと思ったぞ」

 

 二人から賞賛の言葉が言葉が贈られる。私の両隣では、ほっちゃんとあっちゃんが拍手で私の勝利を祝福してくれていた。

 

 杵崎ほ

「ついにミカンちゃんにお菓子対決で負けちゃったかー」

 

 杵崎あ

「ミカンちゃんすごく頑張ってたもん。おめでとう!」

 

 私はようやく、自分が勝利したことを実感していた。今まで一度も勝てなかったチョコレート対決で、ついに念願の初勝利を成し遂げた。

 

 伊良子

「やった……、やったー!!」

 

 私は嬉しさの余りに両手でガッツポーズを取った。それでも興奮は収まらず、何度も何度もガッツポーズをしてしまった。

 すると、ミーナさんがそばに近づいてきて、私の頭を優しく撫でてくれた。

 

 ミーナ

「ミカンはすごいのぅ。きっとすごく頑張ったんじゃな。その喜び様でよくわかる。えらいのぅ」

 

 伊良子

「えへへ。ありがとう、ミーナさん」

 

 私は幸せな気持ちで満たされていった。ほっちゃん、あっちゃん、テアさんは私たちを嬉しそうな表情で見守ってくれていた。

 

 

 

 杵崎あ

「そういえばミーナさん、ミカンちゃんに用があったみたいだけど、何だったの?」

 

 ミーナ

「おお、そうじゃそうじゃ。忘れるところじゃった」

 

 しばらくしてあっちゃんが思い出したようにミーナさんに私のところに来た理由を尋ねてきた。すると、ミーナさんは手にしていた紙袋を私に差し出してきた。

 

 ミーナ

「ミカン、Alles Gute zum Geburtstag! お誕生日おめでとうじゃ!」

 

 伊良子

「え? それじゃあ、これって」

 

 テア

「伊良子は今日が誕生日だろう? だから、誕生日プレゼントを持ってきたんだ」

 

 私はミーナさんから紙袋を受け取った。袋の中を覗くと、多種多様な調理器具が入っていた。

 

 ミーナ

「シュペーのみんなでお金を出し合って用意したんだ。うちのリーデが厳選した調理器具じゃから、品質は保証するぞ」

 

 テア

「これを使って、ぜひまた美味しい料理を食べさせてくれ」

 

 ミーナさんたちが私のためにこんなプレゼントを用意してくれるとは思ってもいなかった。突然のサプライズに驚いたが、同時に先ほどの勝利の時とはまた違う喜びが湧き上がってきていた。

 

 伊良子

「ありがとう! ミーナさん、テアさん。大事に使うよ!」

 

 二人は私のお礼の言葉に笑顔を返してくれた。

 

 杵崎ほ

「こりゃ一本取られたね。誕生日プレゼントを先取りされちゃうとはね」

 

 杵崎あ

「それじゃ、このまま寮に戻ってミカンちゃんのお祝いはじめちゃおっか!」

 

 ミーナ

「お、これからやるのか? わしらも同席してええか?」

 

 杵崎ほ

「もちろんです。テアさんもご一緒にどうですか?」

 

 テア

「そうだな。ならば、私も行くとしよう」

 

 ミーナ

「よし! そうと決まれば、早速行くぞー!」

 

 ほっちゃんたちはすでに家庭科室を出ようとしていた。私は急いで片づけをして、帰る身支度を整えた。すると、ミーナさんが再び私のそばに戻ってきて、手を差し出してくれていた。

 

 ミーナ

「ほれ、ミカン。早く行くぞ」

 

 その表情は満面の笑顔だった。

 

 伊良子

「うん!」

 

 私はギュッと、その手を握り返した。

 そして、ミーナさんと手をつないだまま一緒に家庭科室を飛び出していった。

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