ハイスクール・フリート ―霧の行く先― 作:銀河野郎のBOB
みなさま、はいふりOVAの放映はもうご覧になりましたでしょうか?
この作品が投稿される頃にはTV放映が丁度終わっていることでしょう。
筆者も大興奮していると思います。傍から見たらドン引きされるレベルでw
さて、OVAの興奮も冷めていないであろう
今日4月1日はヒメちゃんこと和住媛萌ちゃんのお誕生日です!
ヒメちゃんは機関科所属、応急長という立場で幼馴染のモモちゃんと二人で晴風のあちこちに赴いて頑張っていました。
戦時は艦のダメージコントロールを担当、平時では備品の管理や修繕など多岐に渡っている印象があります。
格好も上はジャージ、下はスパッツと制服姿だらけの周囲と比較して全然違うので、そういう意味でもよく目立っていました。
そんなヒメちゃん、4月1日生まれということで晴風クラスの中で一番お誕生日が遅いです。
つまり一番の年下っこ、かと思ったらみなみさん(12歳)という存在がw
今回はそんなヒメちゃんの春休みの一幕を作品にしてみました。
それでは、どうぞ!
2017年4月1日午前11時30分
-媛萌side.-
和住
「よーし完成! うん、今回は我ながらいい出来だね」
私は春休みの貴重な休みにとある場所で趣味の模型作りを満喫していた。
季節は春、横須賀は少し前までは肌寒さは残っていたが、衣笠山の桜が五分咲きとなり、ようやく春を感じられるようになってきた。
私が横須賀女子海洋学校に入学してもうすぐ丸一年になる。入学早々とんでもないトラブルに巻き込まれたことも、今では大切な思い出の一つになっている。あの時の経験は一生忘れることはないだろう。その後、騒動の後処理や楽しい学校生活を過ごしているうちにあっという間に一年という時間が経過していた。来週からは私たちも二年生、勉強も実習も今までよりもっと大変になるけど、また一歩ブルーマーメイドへ近づくことになるだろう。
だけど今は春休みの真っ最中。思いっきり楽しまなくちゃもったいない。ということで私はほぼ毎日のように模型を作り続けていた。
和住
「やっとできたよー。普段だとここまで作りこめないからね。作れるときに作らなきゃ」
青木
「そうっすよね! 私も新刊の作業が捗りまくりっす」
私の隣で漫画の執筆をしていたモモもこの数日ですごく作業が進んだらしく、とても満足した表情をしている。
青木
「いやー、ここいいっすね。作業するには最高の環境っす」
和住
「そうでしょ? ある時ふと気が付いたんだよね。ここって滅多に人が入ってくることもなくて、寮の自室より広くて、静かな場所なんじゃないかって。そう考えれば、まさに理想的な場所ってわけよ」
私とモモが作業している「ある場所」は私が最近入り浸るようになった場所で、春休み期間中の今なら「ある場所の主」以外はほとんど人の出入りもない、まさに最高の場所だった。私は正面の机で黙々と作業をしている部屋の「主」に話しかけた。
和住
「ごめんね、いつもこの場所借りちゃって。今度おいしいものご馳走するね、みなみさん」
鏑木
「別に構わないさ。うるさくなければ私は問題ない」
ここはみなみさんが海洋大学のキャンパス内に与えられた研究室。最初の海洋実習の時にRATtのウイルス抗体を作ったことが評価されて、この個室を与えられたのだそうだ。海洋実習の時、彼女が自分より年下だと知ってから私には親近感のようなものが芽生え、それからよく晴風の医務室を訪れてお話しするようになり、その関係は横須賀に戻って彼女が晴風クラスから離れてからも続いていた。
青木
「でもよかったんすか? 高校生の私たちが大学の研究室が入り浸っているんすけど」
鏑木
「別に大学の研究室だからって高校生が入ってはいけないって決まりはない。部屋の主である私がいいと言ったなら別に問題ないと思うぞ」
青木
「みなみさんがそう言ってくれるなら、お言葉に甘えさせてもらうっす」
鏑木
「そ、それにだな……」
すると、みなみさんが少し俯き気味になってモジモジしていた。
和住
「それに?」
鏑木
「さ、最近、一人だと少し、寂しいんだ……。だから、二人がここにいてくれると、嬉しい……」
恥ずかしそうな顔で小さく呟くみなみさんが、私とモモにはすごく可愛らしく見えた。普段は私たちよりも大人びていて頼もしい彼女だが、年齢はまだ13歳。きっと一人でいるのは寂しいのだろう。私はみなみさんの側まで近づいて、そっと彼女の頭を撫でてあげた。
和住
「私たちでよければいつでも話し相手になってあげるよ。だよね、モモ?」
青木
「もちろんっす。みなみさん、今は晴風クラスじゃないっすけど私たちにとって大切な家族の一人っすからね」
鏑木
「……あぁ」
私に撫でられて嬉しそうな顔をするみなみさん。こういう姿を見ると年相応の女の子なのだと改めて気づかされる。
するとみなみさんが私を見上げるように見つめ、何か聞きたそうにしていた。
鏑木
「ところで、和住は先ほど完成したと言っていたが、何を作っていたんだ?」
和住
「ん? あぁ、あれね」
私は作業をしていた机まで戻って、完成させた模型をみなみさんとモモに見せた。
和住
「じゃーん! これだよ!」
青木
「おぉ! これってもしや?」
鏑木
「あぁ、超戦艦ムサシ、だな」
私が春休みの多くの時間を使って製作していたのは、1/700サイズの超戦艦ムサシのプラモデルだ。市販で販売されている直教艦武蔵のスケールキットをベースに、艦橋横の高射砲や機銃の追加、オリジナルと大きく構造の異なるスラスター周りの部品作成、忠実に再現したバイナルパターンなど、これでもかとこだわりぬいた渾身の作品に仕上げた。
青木
「ヒメちゃんのモデラ―としての腕前は知ってたけど、今回はいつも以上に気合入ってるっすね」
和住
「そりゃ、当然よ。何度もムサシちゃんの映像見返して、細部まで調べ尽くしたんだもん」
鏑木
「なるほどな。しかし本当に見事なものだな」
みなみさんが関心深く私の作品を見てくれていた。モデラ―というのは自分の作品を見てもらえることに喜びを感じるものだと私は思っている。だから、今こうして二人に見てもらえているこの時こそが私にとってとても幸せなのだ。
鏑木
「それにしても、なぜここまでこだわって作ったのだ? 展示会か何かに出品するのか?」
青木
「でもヒメちゃん、展示会とかには作品出さないっすよね?」
二人がこだわりのわけを尋ねてきた。もちろんここまでこだわっていたのには理由があった。私はそれを二人に話すことにした。
和住
「あぁ、それはね、プレゼントするために作ったんだ。ヤマトさんとムサシちゃんに」
青木
「え? お二人へのプレゼントっすか? なんでこのタイミングで?」
鏑木
「……あぁ。なるほど。そういうことか」
和住
「ほら、二人がこの世界にやってきてもうすぐ一年が経つじゃない? つまり、もうすぐ二人の誕生日ってことよ。だから、二人への誕生日プレゼントってことで作ってみたんだ」
初めて二人に出会った時、彼女たちがこの世界へやってきたのが一年前の4月7日だと言っていた。そこで二人に何か私らしいプレゼントを用意できないかと考え、この超戦艦ムサシの製作を決めたのだった。
和住
「本当はヤマトさんの方も作りたかったんだけどね。いかんせん資料が少なくって」
青木
「なるほど。そういうことだったんすね。それにしてもよくお二人のお誕生日を覚えていたっすね」
和住
「それはね、春休み前に艦長が二人のお誕生日に何かしてあげられないかなって話していたのを偶然聞いたからだよ。すっかり忘れてて正直焦っちゃったよ」
鏑木
「さすが艦長。覚えることは誰よりも得意だからな」
艦長のもの覚えの良さにはクラスの全員が関心している。入学初日にクラスメイト全員の顔と名前を一致させるほどだ。私も正直驚いたことを今でも覚えている。そのおかげであの航海実習を乗り越えることができたのかもしれない。
鏑木
「ところで、だ」
艦長のことで盛り上がっていたなか、みなみさんがスッと立ち上がって私を見てきた。
鏑木
「二人の誕生日を祝う前に、和住にはやるべきことがあるんじゃないのか?」
和住
「え? 何かあったっけ?」
みなみさんに言われたことにすぐ思い当たることが私にはなかった。そんな私の様子を見てか、モモも突如立ち上がって私に向かってきた。
青木
「何言ってるんすか! 今日はヒメちゃんの誕生日っすよ!」
和住
「あ、あーそのことねー」
確かに今日は私の誕生日だ。もちろん忘れていたわけではない。だが、私がやるべきことと言われるとピンとこなかった。
青木
「ヒメちゃん、ずいぶんとアッサリしてるっすね」
和住
「いや、忘れてたわけじゃないけど、何かすることってあったかなーって」
あまり感情の起伏のない反応をしたせいか、モモは少し呆れている様子になっている。そんな中、みなみさんが座っている私に手を差し伸べてきた。
鏑木
「お前がやるべきことは、みんなから誕生日を沢山祝ってもらうことだ。ほら、いくぞ」
和住
「え? 行くってどこに?」
青木
「そりゃもちろん、お誕生日パーティの会場っすよ。たった今、艦長から準備できたって連絡がきたっすよ」
鏑木
「というわけだ」
私はみなみさんの手をとった。誰よりも小さいはずのみなみさんの手が、今この時はすごく大きく感じた。
和住
「そんじゃ、主役様はいっぱい祝ってもらわなくちゃね!」
みなみさんとモモに導かれるように、私は立ち上がった。
さぁ、せっかくのお誕生日パーティ、楽しまなきゃ損だよ!
今日は思いっきり楽しんじゃおう!