ハイスクール・フリート ―霧の行く先― 作:銀河野郎のBOB
レオちゃんに続きて2連続の誕生日作品投稿です。
6月1日のモモちゃん&めぐちゃんまでは誕生日作品連投の予定です。
いい加減本編進めなくては、と思っているんですが筆進まずorz
本編はもう暫しお待ち願います。
さて、本日5月27日はシロちゃんこと宗谷ましろちゃんのお誕生日!
はいふり誕生日作品をミケちゃんからスタートさせた自分にとって、ようやくシロちゃんきたか!という思いです。
ミケちゃん書いたらやっぱりシロちゃん書きたくなっちゃうものです。
それから約10か月、巡り巡ってようやくやってきました。
嬉しさにあまり、文字数が本編並みになってしまいましたw。
今回はそんな想いの通り、ミケシロなお話になっています。
ミケちゃんは主人公だけあってカップリングが沢山ありますけど、自分はやはり相手はシロちゃんこそ至高だと思っています。
そんなミケシロを楽しんでいただければ嬉しいです。
それでは、どうぞ!
2017年5月27日午前10時
-ましろside.-
ここは横須賀市内にある私の自宅。
私、宗谷ましろは玄関の前で実に1時間以上ずっとソワソワしていた。それはある人の到着を待ち続けていたからだ。
宗谷
≪そ、そろそろかな?≫
ピンポーン
すると玄関の扉の向こう側に人影が現れ、呼び鈴の音が鳴り響いた。私はサンダルを履くことも忘れて、玄関の扉を開いた。
扉を開くと、そこには私より背が低い女の子が立っていた。来ている服装は私が通う横須賀女子海洋学校の制服、その左肩につけられたワッペンには私の乗る艦「晴風」の紋章、そして頭に帽子を被っている。これは彼女が晴風の艦長であることの証だ。
岬
「シロちゃん、おはよう!」
宗谷
「岬さん、いらっしゃい」
彼女、岬明乃さんは元気いっぱいの笑顔で挨拶してくれた。彼女の笑顔を見ているだけで私の心は満たされていく。
宗谷
「玄関で立ち話もなんだし、上がってよ」
岬
「そうだね。シロちゃん、今日は一日よろしくね」
私は岬さんを家へと招き入れる。岬さんは靴を脱ぎ、用意していたスリッパに履き替える。
岬
「わー、ここがシロちゃんのおうちかー」
宗谷
「私の部屋はこっちだから、ついてきてくれ」
岬さんとはすでに1年以上の付き合いになるが、実は私が彼女を自宅に招き入れたのは今回が初めてだった。今まで何度も私の家に遊びに行きたいと岬さんからお願いされていたのだが、去年は例の海洋実習の後処理などでなかなか二人の時間が合わず、結局1年生の間は一度もお招きすることができないまま進級してしまった。
なので今回は、ついに念願叶ったりというわけだ。
私の部屋は2階にあるので、上に上がる階段を通る必要がある。その階段に差し掛かった時、すぐ隣にあるリビングから二人の人物が私たちに話しかけてきた。
真冬
「お、ようやく来たのか。久しぶりだな」
真霜
「いらっしゃい、岬さん」
岬
「あ、えと、真冬さん、真霜さん、お邪魔しています」
話しかけてきたのは私の二人の姉、真霜姉さんと真冬姉さんだ。二人はともに現役のブルーマーメイドで、真霜姉さんは指揮官、真冬姉さんは艦長として日夜海の安全のために頑張っている。今日はたまたま二人の休みが重なったため、揃って家でのんびりしている。
真冬
「どうだ? お招きの印に一発根性を注入してやろうか?」
真霜
「何言ってるのよ、もう。ましろ、後で部屋に珈琲持っていくわね」
宗谷
「ありがとう。助かるよ」
私と岬さんは二人に一礼すると階段を上がり、私の部屋へと辿り着いた。今朝起きてすぐに部屋の掃除をしておいたので、清潔感はバッチリだ。
岬
「うわー、ここがシロちゃんのお部屋かー」
宗谷
「あ、あまりジロジロ見ないでくれ。恥ずかしいから……」
しかし岬さんは私の言葉など聞きもせず部屋のあちこちを見て回っていた。するとベッドの上でもぞもぞと動く何かに岬さんが気づいたようだ。
多聞丸
「みゃー」
岬
「あ、多聞丸! 久しぶりだね」
一年前から私の家にやってきた猫の多聞丸。短い間だったが晴風に乗っていたため、岬さんも知っている子だ。多聞丸は久しぶりに岬さんに会えて嬉しかったのか、ベッドからジャンプして彼女に胸に飛び込んだ。岬さんはそれを優しく受け止めた。
岬
「うわっと。大きくなったね。一年前の時は本当に小さかったのに」
宗谷
「毎日よく食べるからどんどん大きくなっていったんだ。普段はこの家に住んでいるから、寮にいる間は会えないけど、月に3回くらいは帰ってきて様子を見ている。いつの間にか私のベッドがこの子の寝床になってたよ」
岬
「そっか。もう多聞丸もこんなに大きくなるくらい時間が経ったんだねー」
岬さんは優しい手つきで多聞丸を撫でている。その表情は懐かしいものを見るような表情だった。
このまま岬さんと多聞丸のことを語り合うのも悪くないが、今日はとある目的のためにここに彼女を呼んだのだ。それを果たすため、私は岬さんに副長モードで話しかける。
宗谷
「ところで、艦長。今日は何のために私のうちに来たのか、忘れてないだろうな?」
岬
「う、ソウデシタ」
岬さんは多聞丸をベッドに戻すと、部屋の真ん中に用意した机の上に持ってきたバッグの中身を広げた。バッグの中には数学や英語などの教科書、ノートなどで溢れていた。
宗谷
「さて、今日は火曜からの中間考査に向けて勉強会をやるぞ。私の方でも準備しておいたから、早速始めようか」
岬
「よ、よろしくお願いします」
今日岬さんをここへ呼んだ理由、それはもうすぐ始まる中間考査に向けての試験勉強を二人でするためだ。一昨日、学校で勉強を教えてほしいと泣きつかれた私は彼女に一緒に試験勉強をすることを提案した。その時、どこでやるのかを決める時に私の家で泊りがけやりたいと岬さんがお願いしてきた。私は岬さんを家に招きたかったこともあり、それを了承した。
私は普段から勉強をしているので、全科目なんとか教えられるレベルにはなっている。岬さんは航海科、私は砲雷科であるため専門科目は教えることはできないが、共通科目ならば問題はない。今回は共通科目を一緒に勉強することになっている。
宗谷
「よし、それじゃあ最初は数学からだな。教科書とノートを出してくれ」
岬
「はーい」
こうして私と岬さん、二人きりの勉強会が始まった。
そして時は経って昼の12時。時々岬さんからの質問を受けながら、私たちは順調に試験勉強を続けていた。その時だった。
ぐぅ~
どこからか腹の虫の鳴き声が聞こえてきた。私がその主であろう人へ視線を向けると、少し恥ずかしそうに顔を赤く染めていた岬さんの姿があった。
岬
「えへへ、ちょっとお腹すいちゃった」
宗谷
「もうお昼か。そろそろ一度休憩してご飯に――」
真冬
「おーい! そろそろ昼飯にするぞ。降りてこーい」
タイミングを見計らったかのように下から真冬姉さんの呼ぶ声が聞こえてきた。私たちは部屋を出て1階のリビングへ向かった。リビングのテーブルにはすでに四人分のお昼御飯が用意されていた。
岬
「カレーとヨーグルトだ。おいしそう!」
真冬
「私が作った特製カレーだ。とくと味わいな」
岬さんは驚いた表情で真冬姉さんを見ていた。真冬姉さんは普段はさっぱりしていてあまり女性っぽい雰囲気を出していないが、実は料理がすごく上手い。職場でも時々彼女が艦長を務める『べんてん』の乗員たちに料理を振る舞うことがあるらしく、評判も上々とのことだ。
岬さんは早速カレーを一口ほおばっていた。私もそれに続いてカレーを口にする。真冬姉さんらしい辛口の味付け、だけど絶妙に混ざる甘さ、そそしてコクが口いっぱいに広がっていく。
岬
「んー! すっごくおいしいです!」
真冬
「そう言ってもらえると作った甲斐があったもんだ」
真霜
「お代わりも用意できるから、どんどん食べていってね」
うちの砲術長、立石さんほどではないが岬さんも大のカレー好きだ。真冬姉さんのカレーをものすごい勢いで食べていく。カレーを一口食べるたびにとても幸せそうな表情をするのを、私たち三姉妹は眺めていた。
真霜
「岬さん、とってもいい顔で食べてくれるのね。私もお料理して出してみようかしら」
真冬
「いや、やめてくれ。真霜姉の料理はとても人様に出せるようなもんじゃない」
宗谷
「そ、そうだね。真霜姉さんのはちょっと……」
真霜
「な、なによ! そんなに酷いものじゃないわよ!」
岬
「?」
その後、岬さんはカレーを3皿食べて、今はお腹いっぱいという表情になっていた。
岬
「ふー。お腹いっぱいだよー」
宗谷
「少し休んだら、また勉強を再開しよう」
岬
「はーい」
すると、リビングのソファーに座っていた私たちの下へ姉さんたちがやってきた。
真冬
「なぁなぁ、岬艦長。ちょいといいか?」
岬
「はい、何ですか?」
真冬
「せっかくいい機会だ。これからお前のことを「明乃」って呼びたいんだ。いいよな?」
真霜
「私も「明乃ちゃん」って呼んでもいいかしら?」
宗谷
「んなっ!?」
姉さんたちの提案に私は驚きを隠せなかった。私は今まで一度も彼女を名前の「明乃」と呼んだことはなかった。「艦長」か「岬さん」のどちらかだ。それなのに姉さんたちは私より先に名前で呼ぼうとしている。何だか少し胸のあたりがモヤモヤする。
岬
「はい! お二人ともそう呼んでくれたら嬉しいです」
真冬
「そうか! それじゃ明乃、これからもシロをよろしくな」
岬さんと真冬姉さんの間であれよと話は進んでいく。私は置いてけぼりになった気分になっていた。するとそんな私に真霜姉さんが声をかけてきた。
真霜
「あらあら。じゃあ、ましろも名前で呼んじゃえばいいじゃない」
宗谷
「ね、姉さん!? そ、それは……」
真霜姉さんからのいきなりの提案に戸惑う私。その様子を心配したのか、岬さんがこちらに近づいてきた。
岬
「どうしたの、シロちゃん?」
真霜
「ほら、明乃ちゃん待っているわよ」
宗谷
「う、あ、えと、あ、あけ……あけ」
岬
「ん?」
頑張って口に出そうとするがなかなかできず、その間ずっと岬さんの綺麗な青色の瞳に見つめられていた私は、ついに恥ずかしさの余りリビングの出口に向かって走り出してしまった。
宗谷
「そ、そろそろ勉強を再開しよう。いや、するぞ! するぞー!」
岬
「あ、シロちゃん待ってよー」
私は岬さんを連れて急いで自分の部屋へ戻っていった。
真霜
「あらあら。少しからかいすぎたかしら?」
真冬
「なんだよ。あそこでヘタれちまうなんてよぉ。根性が足りねぇぞ、根性が」
残された姉二人は、私の様子を見て楽しげに話していたのだった。
部屋に戻ってきた私たちはそのまま試験勉強を再開した。私も岬さんも順調に勉強を進めていき、もうすぐ終わりが見えてきた。
そんな時、私は岬さんに対してあることに疑問を持った。
宗谷
「ねぇ岬さん。ちょっと聞いていいか?」
岬
「んー? なぁにシロちゃん?」
宗谷
「どうして今日は私と一緒に試験勉強をしようと思ったんだ? 勉強なら知名艦長とだって出来たんじゃ。ほら、彼女は同じ航海科だから専門科目も一緒に勉強できるし」
岬さんはエリート揃いの武藏で艦長を務める知名もえかさんという幼馴染がいる。学校でもよく二人で一緒にいる姿を私はよく目撃している。彼女は座学の成績は常にトップを争い、実技も隙がなく、人柄も申し分ない、まさに完璧超人と言える人だ。
そんな人がいるのならわざわざ私に頼る必要なんてないのでは、と私は思ってしまった。
そんな不安を持っていた私を岬さんはじっと見つめていた。その表情はとても真剣なものだった。
岬
「確かに、私はもかちゃんによく勉強教えてもらってるよ。今回だって専門科目はもかちゃんに教えてもらおうって思ってた。でもね、それでシロちゃんから教えてもらう必要がないってことはないんだよ。私はシロちゃんに教えてもらいたかったから、今こうしているの。だから、そんな不安そうな顔をしないでほしいな」
岬さんの言葉が胸に大きく突き刺さる。同時に私が抱えていた不安が粉々に砕けたような気がした。
私はなんて小さいことで悩んでいたんだろう。岬さんの言葉を聞いて、私は安心できた。
宗谷
「そうだな。ありがとう岬さん」
私は岬さんの頭をそっと撫でた。
岬
「えへへ。どういたしまして~」
岬さんは私に甘えるように寄り添って撫でられていた。その可愛らしい表情がとてもいとおしく思えた。
宗谷
「つまらないことで中断してしまったな。それじゃ、ラストスパート頑張りましょう!」
岬
「おー!」
それから2時間ほどたった午後6時。
ついに私たちは共通科目すべての試験勉強を終えることができた。岬さんはベッドに寄りかかって身体を思いっきり伸ばしている。
岬
「んー! やっと終わったね。これで中間考査もバッチリだよ」
宗谷
「そうだな。これなら二人とも問題なく切り抜けられそうだ」
そんな勉強からの解放感を味わっている時だった。ノックの音が聞こえ、扉から真霜姉さんが顔を出してきた。
真霜
「丁度終わったみたいね。お疲れのところ悪いんだけど、明乃ちゃん、ちょっと下に来てもらえるかしら?」
岬
「え? 私だけですか? シロちゃんは……」
真霜
「ちょっと明乃ちゃんと内緒のお話。ましろは呼ばれるまで待っててもらえる?」
宗谷
「え、別に構わないけど」
真霜
「それじゃ、明乃ちゃん借りていきまーす」
そういうと真霜姉さんは岬さんを連れて下へ降りていった。
岬さんだけに何の話だろうか? そう疑問に思ったが、とりあえず呼び出しがくるまで待つことにした。
それから20分ほど多聞丸と一緒に待っていると、再び扉をノックする音が聞こえた。扉を開けるとそこには岬さんが立っていた。
岬
「シロちゃんお待たせ。これからリビングにきてもらる?」
宗谷
「わかった。今行くよ」
私は岬さんに続いて階段を降り、リビングの前までやってきた。そしてリビングの入口をくぐる。すると――
パン! パン!
宗谷
「うわっ!?」
「シロちゃん(ましろ、シロ)、お誕生日おめでとう!!」
入ると同時に鳴り響いたクラッカーの音、そして私をお祝いする声。
そうか、今日は確か……。
宗谷
「私の誕生日、だったな」
真冬
「そうだよ。いい驚きっぷりだったな、シロ」
真霜
「うふふ、サプライズ成功ね、明乃ちゃん」
岬
「はい!」
先ほど岬さんが呼ばれたのはこのためだったのか。これを企画したのはおそらく姉さんたちだろう。真霜姉さんも真冬姉さんも意外とこういうことが昔から好きだったからな。
真雪
「どうやら上手くいったようね。さぁ、座って頂戴。みんなで晩御飯にしましょう」
台所から顔を出してきたのは私の母、宗谷真雪。私たちが勉強している間に学校から帰ってきたのだろう。普段ならもっと遅い時間に帰ってくるのだが、今日は私のために早めに帰ってきてくれたようだ。
テーブルには私の好物のヒラメの刺身をはじめ、たくさんの料理が並んでいた。真ん中にはロウソクが立てられたバースデーケーキが置かれていた。全員が座り終えると母さんはリビングの照明を落とした。同時にみんなが一斉にバースデーソングを歌ってくれた。
真雪
「それじゃあましろ、ロウソクの火を消してちょうだい」
歌が終わり母さんから促されると、私はロウソクの火に向かってふぅっと息を吹きかける。17本の炎はその一息で全て一斉に消えた。
真雪
「それじゃあ皆、ご飯にしましょうか」
岬
「あ、校長先生。ちょっと待ってください」
電気をつけ直し、これから夕飯にしようとした時、岬さんがそれに待ったをかけた。すると岬さんはリビングのソファーの裏から何か袋を持ち出してきた。そしてその袋を私に差し出した。
岬
「シロちゃん、お誕生日おめでとう! はい、私からのプレゼントだよ」
宗谷
「あ、ありがとう」
私は岬さんからプレゼントを受け取った。岬さんが、開けてみて、と促してきたので早速封を切ってみた。中に入っていたのは、約20cmくらいの艦長帽を被った三毛猫のぬいぐるみだった。その姿はどことなく岬さんに似ていた。
岬
「どうかな? 気に入ってくれたかな?」
岬さんは心配そうに私を見ていた。その姿はいつも以上にとても可愛らしいものだった。
宗谷
「すっごく可愛い! 嬉しい! ありがとう、゛明乃さん“!」
岬
「あ、今私の名前――」
私は嬉しさの余り、明乃さんと名前で呼んでいた。私は少し恥ずかしくなってしまったが、明乃さんを見ると彼女も恥ずかしそうにしながら笑顔を浮かべていた。
岬
「シロちゃん……」
宗谷
「明乃さん……」
明乃さんと私はしばらくお互いを見つめあっていた。
真冬
「あー、お二人さん。母と姉の目の前でそういちゃつくのはどうなのかね?」
真霜
「あら、いいじゃない。こんなに仲良しなんだもの。ねぇ、お母さん?」
真雪
「うふふ。ましろも良いパートナーを見つけられたみたいね。岬さん、ましろ、そろそろ食べないとお料理が冷めてしまうわよ」
私はようやく皆に見られていることに気が付き、思わず明乃さんから視線をそらしてしまった。チラッと明乃さんを見ると、耳まで顔が真っ赤になっていた。きっと私もそうなのだろう。
岬
「えへへ。それじゃご飯食べようか」
宗谷
「そ、そうだね」
私は明乃さんと共にテーブルに戻っていった。
それから私たちは母さんや姉さんたちから明乃さんのことでたくさん質問攻めにあい、ちょっとだけだが大変な目に合ってしまった。それでも、今こうして明乃さんと一緒にいられることの幸せをずっと感じることができた。
きっと今日は忘れられない誕生日になっただろう。
これからも私は明乃さんと一緒に歩んでいこう。
だって、彼女は私の艦長で、とてもとても大切な人だから……。