ハイスクール・フリート ―霧の行く先― 作:銀河野郎のBOB
第五話でございます。
投稿を開始して早2週間、多くの方に読んでいただけて感謝感謝の日々が続いています。
そして、お気に入り登録数がついに50となりました。
初作品でこんなこと、すごく嬉しいです。
今後も応援よろしくお願いします。
今回は前回に引き続きアニメ4話のエピソードになります。
前回最後のムサシが通信を受け取る少し前からスタートします。
それでは、どうぞ!
2016年4月13日午後4時
-ヤマトside.-
私は今、明乃さんたちと晴風の備品を買うため、オーシャンモール四国沖店にきている。
ここは円形のメガフロートの上に数多くの店舗が立ち並ぶ大型の商業施設で、多くの人が目的のものを求めて訪れている。
これだけ多くの人がいる場所を訪れたことのない私にとって、ここは実に新鮮な場所だ。
本当はムサシと一緒に来たかったけど、あの子はまだ人間を苦手としているから、今回は泣く泣く諦めた。
でも、いつかムサシと楽しくお買い物してみたいわね。
実はショッピングモールに行く前に、晴風艦内でちょっと一悶着あったのだ。
それは、私の服装のことだ。
私が普段している服装は出かけるにはあまりにも目立ちすぎるし、そもそもあの服装は特別な時以外は着るものではないということだ。
そこで明乃さん達に促されて、私は服装の参考となる書籍を見せてもらい、その中で気に入ったものをナノマテリアルで構築してみた。
選んだのは、白のワンピースと呼ばれる服装と、淡い青色の上着だ。
岬
「やっぱりヤマトさん、何を着てもすごく気品あふれているよ」
伊良子
「うん! まさに大人の女性って感じだよね」
明乃さんや美甘さんたちにすごく褒められて嬉しくなり、私は服装に関してすごく興味を持ってしまった。
ショッピングモールでの買い物の途中でも、周りにいる人や店で売られているものを観察して、良さそうなものをデータとして共同戦術ネットワークにアップデートしていた。
もちろん、ムサシに似合いそうなものも探しておいた。
晴風に戻ったら、ムサシにお願いして着てもらおうかしら。
そして、楽しかった買い物も残るはトイレットペーパーのみになったところで、明乃さんが福引きなるものでトイレットペーパー一年分を引き当てるということをやってのけた。
どうやらとても運が良いことだったみたいで、媛萌さんや美甘さんからすごいと称賛を受けていた。
その時、私は妙な視線を感じた。
私は周辺の防犯カメラに密かにハッキングして状況を確認すると、制服を着た三人組の女性が私たちに視線を向けていることがわかった。
その服装は、ブルーマーメイドのものだった。
もしかしたら、未だ晴風に撃沈許可を出している海上安全委員会からの差し金である可能性もある。
その三人組に注意を向けていると、まだ彼女たちに気づいていない明乃さん達が私に話しかけてきた。
岬
「ヤマトさん、トイレットペーパーいっぱいもらっちゃったので、少し持ってくれませんか?」
ヤマト
「えぇ、わかったわ」
明乃さんからトイレットペーパーを受け取ると、晴風に戻るため移動を開始した。
同時に、三人組も動き出した。
どうやら先回りして私たちの行き先を抑えるようだ。
私は三人組を追跡しつつ、明乃さん達の後を追った。
しばらく歩くと、三人組が私たちの前に姿を現した。
明乃さん達は不安そうに三人組を見ていた。
???
「あなたたち、晴風の乗員ね」
ずばり言い当てられたみんなに動揺が走った。
ここで下手に逃げたりすると、あらぬ疑いをかけられてしまうかもしれない。
私は一歩前に出て、四人に語りかける。
ヤマト
「みんな、落ち着いて。大丈夫、私が話をしてみるわ」
岬
「ヤマトさん……」
私は三人組の前に立った。
すると、真ん中に立っていた短い黒髪の女性が一歩前に出てきた。
ヤマト
「先ほどから、あなた方が私たちを追跡していたことには気づいていました。一体どういう理由で私たちを追っていたのですか? ブルーマーメイドのみなさん」
???
「あなたは? 晴風の乗員リストの中にあなたの顔と一致する人物はいなかったはずですが」
ヤマト
「私は三日前から晴風で厄介になっている者です。リストにないのは当然だと思います。それよりも、私の質問に答えていただけませんか?」
まずは彼女たちの目的を確認しなければならない。
問答無用で拘束しにくる可能性もあるため、いつでも対応できるよう身構えた。
平賀
「失礼しました。私は、海上安全整備局 安全監督室 情報調査隊所属の平賀二等監察官と申します。私たちは、安全監督室長の宗谷一等監察官の命を受け、晴風の乗員から事情確認するために、あなた方に接触しました」
その後、平賀監察官からは語られたことはこうだ。
彼女たちの属する安全監督室は、海上安全委員会の晴風が反乱しているという判断に疑問を抱いており、その実情を知るために独自に晴風の位置を補足し、調査に来ていた。
その背景には、明乃さん達の属する横須賀女子海洋学校の校長である宗谷真雪からの依頼があったようだ。
どうやらましろさんのお母様とお姉様に救われた形となったようね。
ヤマト
「事情はわかりました。では、私たちはこれからどうしたらよいでしょう? そろそろ晴風と合流しないといけないのですが」
平賀
「あなた方には、晴風に戻る道中で簡単にですが聴取を行います。現在、晴風に修理と補給を行うため、明石と間宮の二隻を向かわせています。私たちが晴風に到着する頃には、合流できていると思います」
晴風への支援の話を聞いた明乃さん達に喜びの表情が戻っていた。
ようやく自分たちの事情を理解してもらえるのだから、嬉しいのは当然ね。
さて、補給と修理のために来てくれるとはいえ、事情を知らない晴風が明石と間宮に遭遇すると、警戒心で何か起きてしまう可能性がある。
でも、晴風は現在通信規制を行っているから、通常の方法は使えない。
私は概念伝達で通信を開いてムサシに語りかけた。
-ムサシside.-
ヤマトからの通信で、私は現在のアケノ達の状況を知ることとなった。
ヤマト
【というわけで、ましろさんに明石と間宮が晴風の支援のためにきていることを伝えておいて。みんな他の艦にはすごく警戒しているだろうから、何か手違いがないようにね】
ムサシ
【わかったわ。あなたたちの到着が少し遅れることも一緒に伝えておくわ】
ヤマト
【よろしくね】
通信を終了させると、私は甲板から艦橋に上がった。
艦橋にはマシロ、コウコ、リン、メイ、シマのいつもの艦橋組が待機していた。
ムサシ
「マシロ、ちょっといいかしら?」
宗谷
「ムサシさん、どうしたんですか? 艦長達が戻ってきましたか?」
ムサシ
「そのことなんだけど、さっきヤマトから通信が入ったの。 今アケノ達はブルーマーメイドの人と一緒にいるみたいよ」
私の報告に艦橋内がざわついた。
リンに至っては今にも泣きそうな顔をしている。
もちろん、この反応は予測済みだ。
知床
「ブルーマーメイドって、私たちを捕まえに来たの!?」
西崎
「ちょっと、艦長達やばいんじゃないの?」
そんな中、マシロだけは手を顎に当てて何か考えているようだった。
そして、私に話しかけてきた。
宗谷
「ムサシさん、ヤマトさんは何と言ってきたんですか?」
さすがマシロ、冷静に報告の続きを求めてきたわね。
ムサシ
「どうやらブルーマーメイドは私たちの実情を確認するために接触してきたみたいよ。少し遅れてしまうけど、アケノ達も今一緒に戻ってきているって。だから心配はいらないわ」
私の言葉に艦橋組は少し落ち着きを取り戻したようだ。
ムサシ
「それと、向こうからの要請で明石と間宮の二隻が晴風の修理と補給のためにこちらに向かっているみたいよ。だから、間違ってもこちらから攻撃はするなって」
宗谷
「わかりました。とりあえず一安心ですね。今から明石と間宮の受け入れ態勢に入るように準備します」
話し終わると、マシロはてきぱきと各部署に指示を飛ばしている。
さすがは晴風の副長といったところかしら。
すると、私の横でシマが手の上に乗せた生き物を見せてきた。
ムサシ
「シマ、その生き物は何?」
立石
「さっき、五十六が、捕まえたの……。かわ、いい」
その生き物に私は妙な違和感を覚えたが、害はなさそうだったのでとりあえずシマに任せることにした。
しばらくすると、マチコから明石と間宮の姿を確認したという報告が届いた。
事情を理解しているみんなは一息ついた表情だ。
宗谷
「これでようやく艦も修理できる。横須賀まで無事に帰れる目途がついたな」
ミーナ
「そうじゃな。後は艦長達が戻ってきたら万事解決だ」
自室から艦橋に戻ってきたミーナを含め、みんなが安心した表情だった。
しかし、その雰囲気は突然やぶられた。
立石
「カレーなんか食ってる場合じゃねー!!」
私を含め、艦橋にいたみんなが一斉にシマに目を向けた。
普段こんな大きな声を発したことのないシマが突如叫び出したことで、圧倒されていた。
シマは唸るような声をあげ、身体を震わせていた。
さらに、瞳孔は普段の紫色から赤色に染まっている。
これは一体……
ミーナ
「な、なんだ、カレーって?」
納沙
「立石さん?」
みんながシマの突然の変貌に心配する声をあげている。
立石
「何こんなところで突っ立ってんだ! さっさと攻撃すんだよ!!」
シマはいきなり明石と間宮に攻撃すると言い出した。
先ほどの報告を聞いていたはずなのに、なぜ?
宗谷
「立石さん、何を言っているんだ。明石と間宮は私たちを助けに来たんだぞ」
西崎
「そうだよ、タマ。私も何か撃ちたい気持ちはあるけど、今はダメだって」
立石
「だまれ!」
知床
「タマちゃん、どうしちゃったのー!?」
明らかにシマの身に何かが起こっている。
このままだと、シマがヤマトの危惧していたことを引き起こしかねない。
すると、マシロとメイが二人がかりでシマを取り押さえにかかった。
宗谷
「おとなしくしろ!」
立石
「はなせー!!」
シマは体を捻らせて、二人からの拘束を無理やり引きはがす。
マシロとメイは吹き飛ばされてしまい、背中から壁にぶつかる。
ムサシ
「二人とも、大丈夫!?」
宗谷
「えぇ、大丈夫です」
西崎
「それよりも、タマが!」
シマの方に目を向けると、四つん這いになって艦橋から飛び出していた。
私とミーナは慌てて彼女の後を追った。
私はミーナを追い越して一気に跳躍、シマが陣取った煙突後部の機銃台座へ向かう。
すでにシマは明石に機銃を向けており、今にも発砲しそうな勢いだ。
ムサシ
「シマ!! やめなさい!」
私はシマを機銃から引き離し、彼女を仰向けにして取り押さえた。
立石
「クソ!! 離しやがれー!!」
シマは必死に抵抗するが、私は強く押さえつけているため拘束は解かれない。
メンタルモデルの身体能力は人間のそれを大きく上回るため、彼女一人程度の力では私の拘束を解くことは不可能だ。
それでもなお激しく抵抗するシマ。
その時、私は彼女の異常に気付いた。
ムサシ
≪シマから異常な大きさの生体電流を検知!? これは、脳の思考に影響を与えている?≫
シマが突如異常な行動をするようになったのは、この生体電流による影響か。
だとすれば原因は?
それを探ろうとした、その時だった。
ミーナ
「この、ド阿呆の、ドまぬけがー!!」
後から追ってきたミーナが私からシマを奪い、勢いのままシマを投げ飛ばした。
シマはそのまま晴風の船外へと放り出されてしまった。
ムサシ
「ちょっと、ミーナ!」
ミーナ
「しまった!?」
ミーナは自分の失敗に気づいたがすでに時遅し、シマは海に落ちてしまった。
私は急遽メンタルモデル内に蓄積していたナノマテリアルを使い、六角形の足場を形成、シマを海から救出した。
ムサシ
「シマ!」
晴風の甲板にシマをそっと降ろすと、私とミーナは急いで機銃台座から降りてシマの元へ駆けつける。
艦橋の方からもマシロたちがシマを心配して降りてきていた。
みんながシマを心配する声をかけている。
ミーナ
「よくぞド無事で!」
西崎
「いや、それを言うならご無事だって……」
ミーナは投げ飛ばしてしまった責任からか、シマを抱き寄せている。
シマの様子を見ると、先ほどの興奮状態は収まり、普段と変わらない様子だ。
私はふと彼女スカートに目をやった。
ムサシ
「これは……」
スカートの中に入っていたのは、先ほどシマが私に見せてくれた生き物だった。
私はそっとその生き物を取り上げた。
海水を浴びたせいか、ぐったりした様子だ。
私は手に持って生き物を確認する。
ムサシ
≪まさか、この生き物が……≫
私はこの生き物の持つ微弱な生体電流を計測した。
ムサシ
≪この生き物の生体電流の波長、さっき暴れていた時のシマの生体電流と完全に一致しているわね≫
念のため、今のシマの生体電流を確認すると、この生き物の持つ波長とは一致していなかった。
通常、生体電流とはその個体に固有の波長となっているため、他の個体と全く同じ波長になることはあり得ない。
しかし、先ほどの暴走していたシマはこの生き物と同じ波長の生体電流を発していた。
それも、人間の思考に影響を及ぼすレベルの強大な生体電流だ。
つまりこれは、
ムサシ
≪この生き物が原因の可能性が高いわね。さらに詳しく調べる必要があるようね≫
岬
「みんなー! 大丈夫?」
海の方から声がするので、視線を向けると、いつの間にかアケノ達が戻ってきていた。
後ろに哨戒艇らしき船の姿も見える。
そこからヤマトが顔を出していた。
これが話にあったブルーマーメイドの船ということだろう。
スキッパーを回収し、晴風に戻ってきたアケノは一緒に連れてきた平賀監察官をマシロ達に紹介している。
明石と間宮は晴風の両舷に接舷し、修理と補給の作業の準備に取り掛かっていた。
両船の艦長も晴風に降りてきている。
そんな中、ヤマトが私に歩み寄ってきた。
ムサシ
「おかえりなさい、お、おねえちゃん……」
ヤマト
「ただいま、ムサシ」
ヤマトは続けて私に話しかけてくる。
ヤマト
「さっきずぶ濡れになった志摩さんを見たのだけど、何かあったの」
ムサシ
「そのことなんだけど、これを見てくれる?」
私はシマから取り上げた生き物をヤマトに見せる。
そして、先ほど起こった事をヤマトに報告した。
ヤマト
「なるほどね。話を聞く限りだと、志摩さんが暴れたのはその生き物が原因と見て間違いなさそうね」
ムサシ
「ええ。だから、より詳しくこの生き物を調べたいと思うの。どうすればいい?」
鏑木
「なら、私のいる医務室を使うといい」
突如、私たちの会話に割り込んできた小さな少女が現れた。
晴風の衛生長であるミナミだった。
鏑木
「その生物、見た限りだとネズミかハムスターの類のようだが、少しばかり特徴が違うようだ。砲術長が暴れた原因がその生物なのだとしたら、私も調べてみたい」
ミナミは意欲満々な様子だ。
彼女はまだ12歳という若さでありながら、すでに海洋医大へ飛び級をしており、学士資格も得ているほどの天才だ。
そんな彼女の協力を得られるのなら、こちらも願ってもないことだ。
鏑木
「それと、先ほど平賀監察官がヤマトさんとムサシさんを呼んでいたぞ。二人のことで聞きたいことがあるそうだ」
おそらく私たちの身分の事だろう。
ヤマトに概念伝達でどうするのかと聞いてみると、すべてではないがある程度正体を明かす方針だということだ。
ヤマト
「ありがとう、美波さん。それでは、この生き物は美波さんに預かっていてもらいましょうか」
ムサシ
「そうね。ミナミ、お願いね。後で私たちもそちらに伺うわ」
鏑木
「心得た」
私から生き物を受け取ると、ミナミは医務室へと戻っていった。
先ほどの生き物の件、調べてみないことにはわからないがあの一匹だけで終わりなのだろうか。
一抹の不安を持ちながら、私たちは平賀監察官の元へ急ぐのだった
第五話でした。
いかがだったでしょうか。
はい、ほぼアニメ4話の流れに乗っかったまま進めました。^^;
でも、タマちゃんは発砲未遂で済んだぜ!
しかし、自分で決めたこととはいえ、タマちゃんを志摩さん(シマ)ってそのまま名前で書くとなんか違和感がありますね。
やっぱタマちゃんはタマちゃんがいいかもしれない。
例の黒幕ネズミも登場、霧の力で生体電流も余裕で解析できちゃいます。
ほんと、霧って何でもできるから、謎解きが加速しちゃいますね。
ここから私事
最近、小説の今後の展開をちゃんと整えるため、話ごとの大筋をチャート形式であらかじめ書いておいて、執筆に臨むことを始めてみました。
この五話もそれを作っておいたおかげで、本文を執筆する時にスムーズに書くことができました。
そして会社の昼休みとかでちょこちょこネタを書いてるおかげで、現在七話までは話がまとまっています。
自分には結構いい感じにしっくりきているので、今後も継続していこうかなと思います。
次回の第六話は、アニメ5話の武蔵遭遇戦を予定。
ミケちゃんはアニメ通り飛び出してしまうのか!?
そして、ムサシたちはどう動くのか!?
次回も読んでいただけると嬉しいです。