ハイスクール・フリート ―霧の行く先―   作:銀河野郎のBOB

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Happy Birthday!! マッチ&ミケちゃん

第六話でございます。

6/19はマッチこと野間マチコちゃん、そして6/20は我らが晴風の艦長、岬明乃ちゃんの誕生日!
本作を書き始めて初めて迎える、はいふりキャラの誕生日、しかも主人公のミケちゃんということで、今日アップするために三連休頑張って書きましたよ。
で、その結果はいかに?

今回、同時にミケちゃんの誕生日記念の特別編もアップさせていただいていますので、そちらも是非ご覧ください。

第六話はアニメ5話の武蔵遭遇戦を描きます。
今回文章のボリュームがいつもよりすごいことになっています。
長いので休憩をはさみながらでも読んでいただければと思います。

それでは、どうぞ!


第六話 焦燥でピンチ!

 2016年4月14日午後3時

 

 -ムサシside.-

 

 私たちは横須賀への航路から外れ、マリアナ諸島北部のアスンシオン島近海に向け進路を取っている。

 

 数時間前、明石と間宮からの修理と補給を受けた晴風は、暴走で発砲未遂を起こしたシマの聴取、そして私とヤマトの事情説明のために、とある小島で停船していた。

 シマの件に関しては、未遂で済んだこともあって特にお咎めもなく、すぐに話は終わった。

 問題だったのは、私とヤマト、霧の艦隊のことだった。

 ヤマトは平賀監察官たちに対して、私たちが異世界からきた存在であること、人間ではないこと、超戦艦ムサシという艦を所有していることを明かした。

 当然、こんな突拍子もない話を信じてもらえるはずもなかったため、私たちはやむを得ず、海中に隠していた私の艦を浮上させて彼女たちに見せることにした。

 実際に超戦艦を見せられた平賀監察官は、その後は私たちの話を信じるようになり、聴取実施後に上官である宗谷真霜安全監督室長、マシロのお姉さんに報告を上げた。

 すると宗谷室長が直接私たちと話がしたいということになり、電話越しでの会談となった。

 会談の結果、私たちは晴風とともに横須賀に入港した後、改めて詳しい話を聞かせてほしいということになった。

 

 その後、平賀監察官たちは横須賀へ戻り、晴風のみんなと私たちは停船した小島でしばし羽を伸ばしていた。

 そんな中、突然横須賀女子海洋学校から緊急入電が舞い込んできた。

 行方不明だった超大型直教艦「武蔵」を捜索していた東舞鶴男子海洋学校の教員艦との連絡が途絶えたため、現在最も近い場所にいる晴風に対して現場に行って状況確認を行え、という内容だった。

 その命を受けて、私たちは急遽武蔵の元へ向かうことになった。

 

 現在、私はヤマトと共に晴風の艦橋に上がっているが、アケノやマシロ達の邪魔にならないよう隅の方で待機している。

 艦橋メンバーがそれぞれ慌ただしく動いている中、私はアケノの様子が普段とは違うことが気になっていた。

 先ほどリンに少し聞いた話だと、武蔵の艦長はアケノの幼馴染なのだという。

 戦術ネットワークにある情報を確認したところ、名前は「知名もえか」、今年の横須賀女子海洋学校の入学試験で主席となった秀才だ。

 そもそも武蔵は、ブルーマーメイドの旗艦である「大和」に乗艦するクルーの育成を目的とした、まさにエリートの乗る艦である。

 そんな艦にアケノの幼馴染が乗っているせいで、アケノは落ち着かない様子なのだろう。

 私はヤマトに概念伝達で語りかけた。

 

 ムサシ

【ねぇ、ヤマ、おねえちゃん、ちょっといい?】

 

 ヤマト

【今くらいはヤマトでもいいわよ。それで、どうしたの?】

 

 ムサシ

【私、アケノのことが心配なの。武蔵に幼馴染が乗っているせいか、全然落ち着きがないみたい】

 

 ヤマト

【そうね。なんだかすごく焦っているようね】

 

 ヤマトもアケノのことに気づいていたようだ。

 そして、私はヤマトに思い切って切り出してみた。

 

 ムサシ

【ねぇ、私の艦でなにか手伝えることってない? そうしたらアケノを少しでも楽にできると思うの】

 

 しかし、ヤマトの表情は険しい。

 

 ヤマト

【ムサシ、学校から来た命令は現状確認よ。戦闘禁止命令も出ている。あなたの艦を出したところで、何をするというの?】

 

 ムサシ

【そ、それは……】

 

 ヤマト

【それに、私たちの存在は一部とはいえすでにブルーマーメイドに知られている。ここで下手にあなたが艦で何かをしたら、私たちの居場所を失うことになるわ】

 

 やむを得ない状況だったとはいえ、今や霧のことはすでに人類に明かされているのだ。

 ここで私が先走ったことをしてしまったら、ヤマトが願った夢が水泡に帰することになってしまう。

 それは、私も望むことではない。

 

 ヤマト

【あなたの気持ちを無碍にするわけではないわ。でも、現状あなたの艦でできることは何もないわ】

 

 ムサシ

【……わかったわ】

 

 私は引き下がるしかなかった。

 でも私は、それでも何かできることはないかと考えていた。

 少しでもアケノの、晴風のために何かをしてやりたいという、この気持ちを抑えることができない。

 かつての私にはなかった焦りという感情が私の中からあふれ出そうになっていた。

 

 

 

 3時間後、晴風は指定された海域に到着した。

 そこには、武蔵が東舞校の教員艦を攻撃している光景が広がっていた。

 いくつかの教員艦は武蔵の攻撃を受けて、航行不能になっているようだ。

 その様子を見た艦橋メンバーは、凄惨な状況に圧倒されていた。

 

 納沙

「すごい……、すごすぎます」

 

 いつもは小芝居をして場を和ませて?いるコウコですら、そんな余裕はないようだ。

 

 そんな中、私は自分と同じ姿をしている武蔵の様子を見て非常に違和感を覚えていた。

 

 ムサシ

≪艦の動きに、人間が動かしている雰囲気を感じない。そう、まるで私たち霧のような……≫

 

 私が感じている違和感は、武蔵の教員艦への攻撃があまりにも正確すぎることだ。

 

 西崎

「夾叉もなしにいきなり命中させるなんて……」

 

 メイの言う通りだ。

 いくら優秀な人材が集められた艦とはいえ、これは明らかに人間が操艦している動きではない。

 それこそ、霧の艦のように人間個体では不可能な計算を瞬時に行い、確実に攻撃を命中させるようなことでもない限りだ。

 その時、私の中に一つの仮説が浮かんできた。

 

 ムサシ

≪人間でないなら、何かに人間が操られているとか。そして、その可能性があるとすれば……あの生き物ね≫

 

 シマが暴走するきっかけとなったと思われる例の生き物。

 現在、ミナミが主体となって私やヤマトも協力して調べている最中だ。

 ただ、あくまで生体電流による思考への影響を確認しただけなので、確証は全くない。

 

 ムサシ

≪なんとかして、武蔵艦内の状況を確認できればいいんだけど……≫

 

 その時、艦橋内に大きな声が響いた。

 

 岬

「もかちゃん!!」

 

 声の主はアケノだった。

 モカちゃんとは、幼馴染の知名もえかのことだろうか。

 すると突然アケノは持ち場を離れ、スキッパーの方へと向かおうとしていた。

 まさか、スキッパーで武蔵に乗りこむつもりなの!?

 誰もがアケノの行動に混乱する中、艦橋内に怒声があがった。

 

 宗谷

「いい加減にしろ!!」

 

 アケノに対してマシロが彼女の肩に掴み掛かって叫んだのだ。

 マシロの言葉はまだ止まらない。

 

 宗谷

「毎度毎度、自分の艦をほったらかして飛び出す艦長がどこの世界にいる!!

 海の仲間は家族じゃないのか!! この艦の乗組員は家族じゃないのか!!」

 

 まさに必死の訴えだった。

 前にアケノが一人で飛び出して苦労しているとは聞いていたが、さすがのマシロも今回の事は耐えられなかったのだろう。

 マシロの突然の行動に、アケノも圧倒された様子だった。

 しかし、それでもアケノは止まらなかった。

 

 岬

「もかちゃんが、私の幼馴染があそこにいるの。大切な、親友なの」

 

 そういうと、艦橋組にわずかな指示を出して飛び出そうとしていた。

 その時、私は自然と体が動いていた。

 今、アケノを止めないといけない気がしていた。

 何と思われてもいい、とにかく止めなければ。

 アケノの進路を塞ぐ形で、私は彼女の前に立っていた。

 

 ムサシ

「待ちなさい、アケノ」

 

 

 

 -明乃side.-

 

 武蔵の元へ向かおうとしていた私の前に、突然ムサシちゃんが立ち塞がった。

 早くいかないともかちゃんが危ないかもしれないのに。

 私は思わず怒鳴ってしまった。

 

 岬

「どいて、ムサシちゃん!! 早く行かないと、もかちゃんが!!」

 

 それでも動こうとしないムサシちゃん。

 その顔を見ると、ムサシちゃんは普段は大きく開いていないまぶたが開いていた。

 とても綺麗で飲み込まれてしまいそうな真っ赤な瞳が私をじっと見つめる。

 そこから発せられる雰囲気に、私は少しひるんでしまった。

 

 ムサシ

「アケノ、あなた一人でもかちゃんって人を助ける、なんて思っていないでしょうね?」

 

 岬

「それは……」

 

 私の考えていることをずばり言い当ててきた。

 それに、今のムサシちゃんは普段と喋り方も違うように感じる。

 私はムサシちゃんが少し怖いと思ってしまった。

 

 岬

「でも、行かないと、もかちゃんが……」

 

 それでも、私は行かなければならない、急いで武蔵に向かいたいと、焦っていた。

 すると、ムサシちゃんが切り出した。

 

 ムサシ

「……そう。ならば、あなたはここを飛び出して何とか武蔵に到着、そして幼馴染の子を助けだすことに成功する」

 

 ムサシちゃんは何が言いたいんだろう?

 武蔵を、もかちゃんを助け出せれば、別に悪いことは何もないんじゃ……。

 しかし、ムサシちゃんの言葉はまだ終わっていなかった。

 

 ムサシ

「しかし、艦長がいなくなった晴風は、艦長を回収するためにこの海域に留まるも、武蔵からの砲撃に耐えられず沈没、乗組員は全員死亡。それがあなたの望むことだというのね?」

 

 岬

「!?」

 

 そのムサシちゃんの言葉に、私は強い衝撃を受けた。

 晴風が沈没?

 みんな死んじゃうって?

 なんで、なんでそんなこと言うの!?

 

 ヤマト

「ムサシ! あなた何を?」

 

 ムサシ

「お願い、ヤマト。今は何も言わずに聞いていて」

 

 ヤマトさんがムサシちゃんに問いただそうとするが、ムサシちゃんはそれを制した。

 私は突然の話で混乱してしまった。

 

 岬

「どうして? どうして晴風が沈んじゃうの!? みんな死んじゃうって!? そんなこと、言わないでよ!!」

 

 私は普段出さないような大きな声でムサシちゃんの言葉を否定した。

 しかし、私の必死の訴えにもムサシちゃんは動じることなく、淡々と私に話しかけてくる。

 

 ムサシ

「あなたがここを離れることで起きる可能性の一つを示したまでよ。今あなたがしようとしていることは、それを引き起こすことになるのよ? もしそうなった時、アケノは後悔しないの?」

 

 そんなことは、嫌だ!

 シロちゃんも、メイちゃんも、タマちゃんも、ココちゃんも、リンちゃんも、ミーちゃんも、晴風のみんなを失うなんて、私には絶対耐えられない。

 私はもう誰も失いたくない。

 お父さんとお母さんが海難事故で死んでしまって、その時に自分のせいだと後悔してしまったことを私は思い出していた。

 もう、あの時と同じ後悔はしたくない。

 するとムサシちゃんが、私の顔を覗き込んできた。

 

 ムサシ

「いい、アケノ? 人間が一人でできることなんてたかが知れてるの。そして、何かを成そうと思えば、何かを犠牲にしなければならない。そのことはずっと一人でやってきた霧である私なんかより、人間であるあなたの方がもっとわかっているはずよ」

 

 岬

「あ……」

 

 確かにそうだ。

 私がここで飛び出していったら、晴風を、みんなを危険にさらしてしまう。

 それに、私一人が飛び出していったところで、モカちゃんを助けられるなんて保証は全くない。

 いつのまにか私の中の焦りは収まり、冷静に考える余裕が出てきていた。

 

 ムサシ

「アケノ、私が前の世界にいた時、ある人から教えてもらった言葉があるの。「人間は互いを想い合い、守るもの」だって。初めて教えてもらった時はよくわからなかったわ。でも、今アケノとマシロのやり取りを見て思ったの。マシロはあなたのことを想って、あなたと晴風を守りたくて、あんなに大きな声で言ったのではないかしら?」

 

 宗谷

「ムサシさん……」

 

 シロちゃんがムサシちゃんを驚いた表情で見ていた。

 そうだ、シロちゃんはいつも私の無茶に答えてくれていた。

 誰よりも私の支えになっていてくれていたんだ。

 あんなに大きな声で強く訴えてくれたのに、私はそれを無碍にしてしまった。

 私はさっきシロちゃんにやってしまったことをとても後悔した。

 

 ムサシ

「だからお願い。マシロの想いを受け取ってあげて。大切な仲間の、家族の事をもう一度想ってあげて」

 

 私は、ムサシちゃんの言葉を聞いて、飛び出そうという気持ちを完全になくしていた。

 私は今までずっと、海の仲間は家族だ、そう言ってきた。

 でも、本当はその家族の中に優劣をつけて、晴風をもかちゃんより下に見ていた。

 私は、晴風の艦長、お父さんなのに。

 気づくと、私の目からうっすらと涙が出ていた。

 自分はまた大切なものを失うところだった。

 ムサシちゃんはそれに気づかせてあげようと、あんなことを言ったんだ。

 

 岬

「ありがとう、ムサシちゃん。ごめんなさい、シロちゃん……」

 

 

 

 -ムサシside.-

 

 アケノは涙を流しながら、その場に座り込んでしまった。

 少しきついことも言ってしまったけど、何とか思いとどまらせることができた。

 

 正直、先ほどのやり取りは自分でも意外なことだと、今になって思う。

 私はいつのまにアケノや晴風のみんなのことを、本当に大切な存在だと思うようになっていた。

 まだ出会って4日しか経っていないのに。

 しかし、その4日間に色んな人と話すようにしていたら、自然と彼女たちの事が好きになっていたのかもしれない。

 私は自分の変化に戸惑いつつも、言葉に表せない嬉しさを感じていた。

 

 さて、色々あったがこれで次の話に持っていくことができる。

 これは今の武蔵の異常を見て、そして先ほどまでのアケノとのやり取りの中で浮かんだことだ。

 

 ムサシ

「さて、ここで一つ提案があるのだけど」

 

 艦橋にいるみんなの視線が私に向けられる。

 

 ムサシ

「アケノ、私を武蔵の近くまで連れて行ってもらえないかしら?」

 

 岬

「……へ?」

 

 突然の提案にアケノは何を言っているのかわからない表情をしている。

 艦橋にいる子たちもどうやら同じ様子だ。

 すると、マシロが私に反論してきた。

 

 宗谷

「待ってください! さっき艦長を止めたのは武蔵に向かわせないためではなかったのですか? でも、なんで艦長と一緒に武蔵に向かうって」

 

 ムサシ

「落ち着きなさい、マシロ。まだ話は終わってないわ」

 

 私はマシロを制して、自分の考えを述べていく。

 

 ムサシ

「私が阻止したのは、アケノが一人で武蔵に向かって乗組員を救出すること。それは学校からの命令には含まれていないわ。でも、スキッパーで接近して現状確認することは、命令の範囲内ではないかしら?」

 

 宗谷

「それはそうですが、それでは先ほど言った危険の可能性は何一つ解決できていないじゃないですか」

 

 ムサシ

「そうね。スキッパーに乗る人間が二人になったところで、武蔵からの攻撃に晒される危険性は全く変わっていないわ」

 

 だが、マシロは見落としている。

 私たちが何者か、ということを。

 

 ムサシ

「でも、二人のうち一人が「メンタルモデル」なら、その問題は解決可能よ」

 

 ヤマト

「!!」

 

 私の言葉にヤマトがわずかに反応を示した。

 さすがヤマト、私の意図を理解できたみたいね。

 一方、他の艦橋メンバーたちはまだわかっていない様子だ。

 

 ムサシ

「メンタルモデルは、姿こそ人間と同じだけど、その戦闘能力は人間の比ではないわ。そして、霧の艦隊の持つ防御能力を完全ではないけど発揮することができるわ。そう、武蔵の主砲弾を防ぐことができる程度には、ね」

 

 私の言葉に艦橋内がざわついた。

 すると、メイが私に尋ねてきた。

 

 西崎

「え? ムサシちゃんってそんなに強いの?」

 

 ムサシ

「そうね、私の話じゃないけど、ある大戦艦級のメンタルモデルが単体で軍の特殊部隊の一個中隊を相手して、壊滅にまで追い込んだという記録があるわね。私はさらに上の超戦艦級だから、それ以上の力があると思ってもらっていいわ」

 

 西崎

「ま、まじですか……」

 

 納沙

「まさに、ノンフィクションの現実化、ですねぇ」

 

 みんなが圧倒されているが、私は構わず続きを話す。

 

 ムサシ

「私はアケノが操縦するスキッパーに乗って、フィールドで安全を確保しつつ武蔵に接近するわ。そして、武蔵にスキャンをかけて艦と乗組員の状態を確認する。スキャンに要する時間は5分もあればいいわ。終わったら晴風に戻って、この海域より離脱する。これが私の考えた作戦行動よ」

 

 そして、私の足元に座り込んでいるアケノに向かって語りかける。

 

 ムサシ

「それに、今は救えなくても、もかちゃんって子の状態くらいなら、ちゃんとわかるわ。だから、今はそれで我慢してもらえる、アケノ?」

 

 岬

「ムサシちゃん……、ありがとう」

 

 再び涙を浮かべて、アケノが私に感謝の言葉を述べる。

 

 宗谷

「確かにムサシさんがいればスキッパーの安全は守れますが、晴風はどうするのですか? 艦長とムサシさんが戻ってくるまでこの海域から離れられないなら、武蔵の砲撃にさらされる危険があることに変わりがないのでは?」

 

 すると、この前は冷静に状況判断できたマシロが以外なことを言ってきた。

 またもやマシロは大事なことを一つ見落としている。

 

 マシロ

「確かにマシロの言う通りね。でもね、この晴風に乗っているメンタルモデルは私一人だけだったかしら?」

 

 宗谷

「あっ!?」

 

 艦橋メンバーが私の意図に気づいて、一斉にヤマトの方に視線を向ける。

 そのヤマトは、なんだか嬉しそうな表情をしていた。

 

 ムサシ

「ヤマト、晴風の防御をお願いできるわね?」

 

 ヤマト

「全く、無茶言ってくれて。確かに晴風にご厄介になる時に、あなたの艦にある備蓄ナノマテリアルの一部をこちらに移してあるから、それを使えば問題ないわ。ただし、そんなに量はないから、せいぜい20分程度が限界よ。」

 

 ムサシ

「大丈夫よ。それだけあれば十分」

 

 そして、私はアケノに手を差し伸べる。

 

 ムサシ

「さぁ、行きましょう、アケノ」

 

 岬

「うん!」

 

 アケノは力強く私の手を握り返してきた。

 

 

 

 アケノとともにスキッパーに乗り込んだ私は、晴風から離れて武蔵の元へ向かう。

 途中、武蔵の砲弾が近くに着水して水柱が上がるが、フィールドでそれを防ぐ。

 しかし、アケノはそんなものを意に介さない様子で避けていく。

 本当に胆力は凄まじいくらい強いわね。

 

 岬

「ムサシちゃん、武蔵にはどのくらい接近したらいい?」

 

 ムサシ

「大体50mくらいまで近づけば、砲撃に晒されず安全に艦全体をスキャンできるわ。それくらいまでお願いできる?」

 

 岬

「わかった。任せて!」

 

 アケノはスキッパーの操縦桿を握り直して、さらにスピードを上げた。

 近づくにつれて、武蔵の巨体がどんどん大きくなっていく。

 そしてついに、武蔵の横50mの位置まで近づくことができた。

 ここまで近づけば武蔵の兵装ではこちらを攻撃することはできない。

 

 ムサシ

「よし! アケノ、このままムサシとの距離を維持しながら並走して。これからスキャンをかけるわ」

 

 私は、演算リングを展開して武蔵のスキャンを開始する。

 

 ムサシ

≪まず、武蔵艦内の生命反応確認……反応は全部で31、とりあえず全員無事みたいね。艦の方は、先ほどまでの教員艦の攻撃でわずかに損傷している箇所はあるけど、浸水はなし。ほとんど無傷の状態ね≫

 

 そして、気がかりだったことを調べると予想通りの結果が出てきた。

 

 ムサシ

≪やはり艦内の人間の生体電流が異常な大きさになっているわね。それに、全員の生体電流の波長が完全に一致している≫

 

 すると、突如アケノが叫んだ。

 

 岬

「!? もかちゃん!!」

 

 アケノの視線の先には、艦橋から両手を振っている一人の女の子の姿が見えた。

 あの子が、武蔵艦長の知名もえか、ということね。

 しかし、彼女の様子を見ると、この前のシマのような状態は見られない。

 

 ムサシ

≪! 艦橋にある4つの生命反応の持つ生体電流は異常値を示していない。何らかの方法で異常状態を回避している?≫

 

 そんなことを考えていると、私は目の前にある岩礁の存在に気が付いた。

 

 ムサシ

「アケノ、前!!」

 

 岬

「!!」

 

 しかしスピードを出していたスキッパーは岩礁と激突して横転する。

 咄嗟にフィールドを張ったため、スキッパーそのものは無傷で済んだ。

 しかし私とアケノは海へ放り出されてしまった。

 私は水面から顔を出すと、アケノに声をかける。

 

 ムサシ

「アケノ! 大丈夫?」

 

 岬

「平気だよ。ごめんね、ちゃんと前を見ていなかったから」

 

 ムサシ

「大丈夫よ。でも目的のスキャンは完了したわ。とりあえずスキッパーに戻りましょう」

 

 泳いでスキッパーに戻ると、ヤマトから概念伝達による通信が入った。

 

 ヤマト

【ムサシ、晴風に張っているフィールドが限界に近いわ。そろそろ戻ってきて】

 

 ムサシ

【了解。こちらもスキャンは完了しているわ。すぐに戻る】

 

 スキッパーに乗り込んだ私たちは武蔵から離れ、晴風へと戻っていく。

 アケノの表情を見ると、少し悔しそうな顔をしていた。

 幼馴染の無事を確認できたのに、助け出せない現状がもどかしいのだろう。

 私はアケノに声をかけようとすると、アケノが先に話しかけてきた。

 

 岬

「大丈夫だよ、ムサシちゃん。今すぐ助け出せないのは悔しいけど、もかちゃんは無事だってわかった。なら、必ず助け出せるチャンスはあるはずだよ。だから、今は晴風に戻らなきゃ」

 

 私は何も言わず、アケノの背中に手をそっと乗せた。

 この子は、もう大丈夫ね。

 私はアケノの背中に身を預けながら、晴風へと戻っていった。

 

 

 晴風に戻った私とアケノは、マシロとリン、そしてヤマトに出迎えられた。

 すでに晴風は武蔵から離れて、安全な場所まで退避している。

 

 宗谷

「おかえりなさい、艦長」

 

 岬

「シロちゃん、ただいま……」

 

 アケノはマシロに対して、少し気まずそうな雰囲気を出していた。

 晴風を出る前のことを思い出しているのだろう。

 

 岬

「シロちゃん、あのね――」

 

 宗谷

「艦長、そんなずぶ濡れだと体調を崩してしまいますよ?」

 

 マシロは穏やかな表情で、アケノの状態を指摘する。

 そういえば、先ほど海に投げ出されて全身が濡れていたんだった。

 

 宗谷

「今お風呂は機関科の入浴する時間帯ですが、急を要するので事情を説明して入ってください。知床さん、艦長の付添いお願いできるかな? 操舵は勝田さんにお願いしておくから」

 

 知床

「わ、わかりました」

 

 アケノはリンに連れられて風呂へ向かっていった。

 すると、今度はヤマトが私に話しかけてきた。

 

 ヤマト

「あなたもお風呂に行かなくていいの? せっかくだし、一緒に入ってきたら?」

 

 ムサシ

「私は全身にフィールドを張っていたから大丈夫よ」

 

 そして、私はマシロとヤマトに向かい合った。

 

 ムサシ

「それよりも、武蔵をスキャンした結果なんだけど……」

 

 私は二人に武蔵のスキャンした結果を伝えた。

 

 宗谷

「とりあえず武蔵の生徒が無事だったことは安心しました。けど昨日の立石さんと同じ状態になっている人がほとんどだったなんて」

 

 ヤマト

「そうね。それに、明乃さんの幼馴染の知名さんを含めた4人は正常な状態であることも気になるわね」

 

 私たち三人はしばし無言になってしまった。

 しばらくして、ヤマトが話し出した。

 

 ヤマト

「とりあえず、私は医務室にいる美波さんに報告してくるわ。ムサシ、あなたは疲れているだろうから、少し休んでいて。ましろさんは艦橋に戻って、明乃さんが戻ってくるまでみんなを指揮してあげて」

 

 ムサシ

「ありがとう、おねえちゃん。その言葉に甘えさせてもらうわ」

 

 宗谷

「わかりました。ヤマトさん、後はお願いします」

 

 マシロは艦橋へ、ヤマトは医務室へと歩いて行った。

 

 武蔵の調査によって、あの生き物がまだ存在することがわかった。

 もしかしたら、横須賀女子海洋学校の多くの艦が行方不明になっていることや、さるしまの砲撃も、あの生き物と何か関係があるのかもしれない。

 そうなると、これは想像以上に厄介なことになりそうね。

 私は一人残った甲板の上で、これからのことを考えるのであった

 




第六話、いかがだったでしょうか。

今回まさかの9000文字越えというボリュームになってしまいました。
話を2つに分けることも考えたんですが、分ける場所をうまく見つけられず、結局そのまま掲載することにしました。

本作ではムサシのおかげで、ミケちゃんとシロちゃんはそこまで気まずくなってないです。
そして、相変わらずの霧の性能の高さよ。
アニメ見ていても、これくらい普通にやっている描写があるものですから、ジャンジャンやっちゃいますよ。
さらに超天才12歳の美波ちゃん加わったら、全部解決しそうな勢いです。

前書きでも書きましたが、昨日はマッチの、本日はミケちゃんの誕生日です!
さらに来週にはもかちゃんの誕生日が控えています。
それに関連して、日曜にアトレ秋葉原でやっている、はいふり模擬店に行ってきました。
そこで誕生日記念の限定グッズであるミケちゃんの等身大タペストリーを購入しました。
早速狭い自宅に飾ろうと思ったんですけど、あまりにデカすぎて飾る場所がなかった!orz
やはり等身大は伊達ではなかった。
そして、本当はもかちゃんのタペストリーも欲しかったんです。実際に売ってました。
でもね、1本8000円(税抜)という値段、さすがに両方は私には無理でしたorz
もかちゃん、申し訳ない!
また別の機会で手に入れられる機会があるなら、その時は真っ先に買いに行く所存です。

次回の第七話は、誰かが誰かに告白しちゃう!?
さぁ、誰と誰なんでしょうか?

次回も読んでいただけると嬉しいです。
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