銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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いい人はフォローも上手い

晴太の頭に、クナイが突き刺さっている。その光景を見た銀時達は、固まった。

神楽と志乃も、すぐに晴太に駆け寄って容態を見る。

 

「刺さってますよォ、完全に‼︎」

 

「颯爽と助けに来て結局刺さってんじゃねーかァァ‼︎何しに来たんだてめーは‼︎」

 

新八と志乃が一斉に銀時を責め立てる。

で、彼がどうしたかというと、怒りの形相で百華を睨みつけていた。

 

「てめーらァァァァ‼︎死ぬ覚悟は出来てんだろーな‼︎」

 

「誤魔化したァ‼︎怒って結局全部他人のせいにしたァ‼︎」

 

再び臨戦モードに現場が入りかけたその時、百華の一人が、手を挙げた。

 

「あの、スイマセン。私、見ちゃったんですけど。さっき……あの人が助けに入った時、弾いたクナイの一本が、刺さってました」

 

彼女の証言を皮切りに、他の百華の女達も次々にその瞬間を見たと言う。

で、彼がどうしたかというと、汗塗れの怒りの形相で百華を睨みつけていた。

 

「てめーらァァァ‼︎死ぬ覚悟は出来てんだろーなァァ‼︎」

 

「無かった事にしてるよ‼︎前の出来事丸々無かった事にして再編集しようとしてる‼︎」

 

「てめーが犯人なのはもう目に見えてんだよこのクソ兄貴‼︎オイ手ェ出せ‼︎現行犯逮捕じゃボケェェ‼︎」

 

完全に自分が悪い事をしたのに、銀時はどこまでも他人のせいに仕立て上げようとする。警察に突き出してやろうかと志乃は本気で検討した。

 

「ぬしもわっちのクナイの餌食となるがいい。わっちが殺したあの(わっぱ)のように、今スグ連れていってやろう」

 

「お姉さん、もういいよ。こんなダメな奴に気ィ使うことないよ」

 

この人めちゃくちゃいい人だ。またも気を使ってくれた月詠に涙しながら、志乃は彼女の優しさを断った。

しかし、月詠は引き下がらない。

 

「気など使っておらん。わっちがクナイを投げねばこうはならなかった。過程はどうあれ原因を作ったのはわっちじゃ。わっちが殺した」

 

「いや、違うから。コイツだから。殺したのコイツだから。お姉さんは何も悪くないから」

 

「何このやりとり⁉︎てか何で志乃ちゃんがフォローにまわってんの⁉︎」

 

晴太を殺ったのがどちらか、で揉める銀時と月詠。

しかしその最中、銀時の額にクナイが突き刺さった。

 

「……え?」

 

突然倒れた銀時に意識を奪われていた新八、神楽、志乃の胸を、クナイが穿つ。そして銀時同様倒れた。

月詠は部下を振り返り、言う。

 

「奴等はわっちが始末しんした。そう鳳仙様に伝えなんし。後始末はわっちがしておく」

 

部下達が去っていったのを見てから、月詠は仰向けに倒れる銀時に歩み寄った。

彼の額に刺さったクナイを引き抜く。

 

「起きなんし。さっさとせんと今度は本物のクナイを叩き込むぞ」

 

その声を合図に、五人は一斉に体を起こした。

 

「……あり?生きてる」

 

志乃は自分の胸に刺さったクナイを抜き、その刃先を見た。

クナイの先には吸盤がついていて、確かに側から見れば、刺さったように見えるだろう。

とにかく、月詠のおかげで銀時達は命拾いした。

 

********

 

月詠に連れられ、銀時達は大きなパイプの上を歩いていた。その穴の蓋を開けて、月詠はそこから逃げるよう促す。

しかし、晴太は逃げるつもりはなかった。母に、日輪に会うために、自分はここに来たのだから。

だがそれも、月詠がはねつける。

 

「わっちにぬしらを逃がせと頼んだのは誰でもない、その日輪じゃ」

 

なんでも、月詠は晴太と銀時達を殺せと命じられたという。それを彼女に命じたのは、吉原の楼主、鳳仙。

鳳仙は日輪と晴太が会うのを恐れているというのだ。

 

「何で⁉︎子供とマミーが会うのを邪魔立てされる義理はないネ‼︎」

 

「日輪が吉原(ここ)から逃げるかもしれんからじゃ。八年前、赤子のぬしを連れて逃げた時のように」

 

そもそも吉原は、二十年前の攘夷戦争により、一度地上から姿を消した。

だが、その利に目をつけた天人達が売淫御法度の時勢に幕府に取り入り、地中深くに復活させたのがこの吉原桃源郷だという。

 

中央暗部が関わっているため、幕府も黙殺する超法規的空間であるここは、公に出来ない秘事を語る場として利用されることも多い。花魁ともなれば、国を左右しかねない情報の一つや二つを知り得る。

 

そのため、ここに売られてきた遊女達は、一度入れば二度と太陽を拝むことは出来ない。

売り飛ばされてきた女達は商品として扱われ、地下に繋がれ使い物にならなくなるまで酷使される。

価値がなくなれば野垂れ死にさせられ、逃げ出そうとすれば始末される。

 

ここが常夜の街と呼ばれる所以は、決して色里を指してのことではないーー。

 

しかし、そんな絶望の中、たった一人違う女がいた。それが日輪だ。

どんな境遇にあろうと強く気高く生きる彼女の姿は他の女達を勇気付け、常夜の街を照らす太陽となった。

 

「わっちが己が顔を傷付け女を捨てたのは、遊女になるのが嫌だったわけでも百華として吉原を護るためでもない。日輪を護るためじゃ」

 

晴太は、そんな吉原で生まれた子供。日輪が、命を賭して護ろうとした存在。

吉原で子を産めば、母子共々殺される。それでも晴太はこの世に生を受けた。吉原から逃げ出せば、地の果てまで追い詰められ、必ず殺される。それでも晴太は、地上に連れ出された。

日輪は当然鳳仙に見つかり、吉原に連れ戻された。晴太を護るために、自分をまたあの監獄に縛り付けて。

 

「わっちはぬしを死なせるわけにはいかぬ。帰れ……ぬしが死ねば、日輪の今までの辛苦が水泡に帰す」

 

月詠が再び帰るよう促した。

その時、志乃は背後から殺気を感じた。今まで感じたことのない程、鋭く獲物を狙うような殺気。

志乃が振り返ったのを見て、銀時も同じ方向を見やった。

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