ヨロヨロと、覚束ない足取りで体を起こし、立ち上がる。体が揺れる度に、血がポタポタと零れた。
床に突き刺さっていた刀を抜き取り、不敵に笑う。
「眩しくて眠れねェや」
「銀……‼︎」
「銀さァァァァん‼︎」
鈍い痛みを引きずる志乃も、日輪を背負う晴太も、彼の名を呼んだ。銀時が立ち上がったのを見て、小春、月詠、百華達が次々と下へ降りてくる。
小春は腹を押さえる志乃の元へ駆け寄り、彼女の隣に立った。その両手には、拳銃が握られている。
「志乃ちゃん。……いいえ、我が棟梁。まだ、戦えますか」
こちらを見下ろすこともなく。鳳仙を見据えたまま尋ねた。
志乃は彼女の横顔を一瞥し、ゴキゴキと首を鳴らして金属バットを肩に置く。
「誰にものを言ってんだテメーは。戦えるに決まってんだろ。私を誰だと思ってる?」
「……さようですか。では、ここらで一花咲かせましょう」
「ああ、血の花をな」
志乃の、小春の目の色が変わる。
獲物を狩る、獣の目。志乃は銀狼の覚醒がまだであるためそれ程ではないが、小春は違った。
ペロリと舌舐めずりをし、狂いながらも気高さを兼ね備えるその姿は、まさしく獅子。
彼女こそ獣衆"金獅子"、矢継小春!
「……気に食わぬ。その眼を……やめぬかァァァァ‼︎」
「いけェェェ晴太ァァ‼︎」
銀時が、月詠が、志乃が、小春が、百華達が、一斉に鳳仙に飛びかかる。
鳳仙は月詠の小太刀を左手で、銀時の刀を傘で受け止める。さらに迫り来る百華達に、月詠を投げ飛ばした。
銀時は傘を流し、刀の柄で鳳仙の顎を殴る。しかし逆に鳳仙に刀を折られ、蹴飛ばされた。
立て続けに志乃が金属バットを携え、鳳仙の傘を上から押さえつける。
「放せ‼︎」
鳳仙が志乃を振りほどこうと暴れるうちに、百華達はクナイを、小春は拳銃で鳳仙を撃つ。
刹那、鳳仙は傘を開いた。そのまま志乃を押し出し、さらにそれでクナイと銃弾を受け止める。煙を割いて現れた傘に、志乃と百華達は吹き飛ばされた。
それでも、何度も立ち上がり鳳仙に挑む。たとえ何度も鳳仙に薙ぎ払われても、痛みを押し殺し、血を拭い、立ち上がる。
「いらぬ。この常夜に、このわしに……太陽などいらぬわ‼︎貴様らがごときか細き火など、わしが残らず掻き消してくれる!その忌まわしき魂と身体、引き裂いてな‼︎」
鳳仙が月詠に傘を振り上げる。その腕に、クナイが突き刺さった。
「へー、私クナイ投げの才能あるんじゃない?」
呑気な声と共に、煙から志乃が落ちていた刀を両手に現れる。
「きっさまァァァァ‼︎」
鳳仙が叫び、傘を志乃に突き出す。傘とのすれ違いざまに、志乃は刀を一本、ダーツのように鳳仙に投げた。
刀は鳳仙の左肩に突き刺さる。それも厭わず、鳳仙は傘を振り上げた。
凄まじいその一撃をかわす。その度に破壊された木片やたまに鳳仙の傘が頬やこめかみを掠め、さらにはお守りの髪紐さえ切ってしまった。
猛然と振り回される傘の軌道を読み、かわし距離を縮めていく。
「おおおおおっ‼︎」
ついに生まれた隙を見て、突きを繰り出す。
しかし、それを鳳仙が手刀で木っ端微塵にしてしまった。
「フン、終わり……」
勝利を確信した鳳仙。しかし次の瞬間、それを脆くも崩れていく。
後ろにあった彼女の右手に、金属バットが握られていた。
それを投げて渡した、小春が叫ぶ。
「いけェェェェェェェェェ‼︎」
「でぇりゃあああああああああああっ‼︎」
志乃は渾身の力で、鳳仙を殴り飛ばした。