それからしばらく。文通相手の女の子から、返信が来た。
文通相手の女の子はうららというらしく、さらに手紙では新八のことをもっと知りたいと書かれてあった。縁側に寝転ぶ銀時と共に手紙を読んだ志乃は、拍手を送る。
「おー、やったじゃん師匠」
「もうメロメロじゃね?どうするよオイ、教えちゃう?あんな事やこんな事まで教えちゃう?」
「あんな事やこんな事って何?」
「あー、いちいち気にすんな。お前は黙ってろ」
志乃の質問を銀時が一蹴する。その後ろで、新八は手紙に同封した写真に目を落とした。
「……いや……銀さん……コレ、彼女が知りたがってるのって……僕じゃなくて、沖田さんじゃね?」
そう。あの後結局、眼鏡は新八の元に戻ったものの、肝心の写真は何故か沖田が新八を斬っているようなシーンを写したものになった。
新八はさらに銀時に問い詰める。
「コレが僕志村新八ですってこの写真渡されたら、誰が見ても僕じゃなくて沖田さんを新八と思わね?」
「大丈夫だよ、ちゃんと写ってるじゃん新八も。いい顔してるよ」
「写ってるって身体半分以上フレームアウトしてるだろうが‼︎ただの斬られ役Bだろーが‼︎」
「細かいことグチャグチャ言うなよ男のクセに。二枚目に勘違いされるならそれに越したことはないじゃん」
「そーそー、俺達一つも嘘は言ってないからね。ちゃんと新八も写ってるからね。それを向こうさんが勝手に勘違いしたとしても、それはもうこちらは知らないって話だから」
「こんなもん誰が見たって勘違いするわ!」
「まーまー、そんな怒らないでよ師匠。兎にも角にも返信してもらうっていう第一関門はクリアし……」
「甘いな」
志乃の言葉を遮る声があった。志乃は思わず立ち上がり、銀時も体を起こす。
軒下から、ヌッと近藤が出てきた。
「第一関門?そんなものはまだまだ先、お前達はまだ門の前にすら立てちゃいない」
「門から入ってくることも出来ない奴に言われる筋合いねーよ」
「ぐぼォ!」
縁側から飛び降りた志乃が、近藤の顔面に着地する。志乃の体重と着地の衝撃が相成って、近藤は地面にめり込んだ。
「アンタほんと何やってんのさ。ストーカーもここまでくると気持ち悪いよ」
「…………ん?」
志乃に何か返そうと彼女を見上げた近藤だが、ふと視界にチラリと白い何かが入る。
状況を整理しよう。
志乃はいつもの、藤色の着流しを着ている。志乃は動きやすいように普段から服をルーズに着るのだが、その状態で近藤の顔面に立っている。
つまり近藤の視界は志乃の服の中にフレームインしてしまっているのだ。それ即ち。
「あ」
「?………………ぁ……っ」
ようやく志乃も状況を理解し、恥ずかしさに頬を染める。次の瞬間。
「てめェェェェェェェ‼︎何ウチの妹にセクハラしてくれてんだァァァァ‼︎」
「アンタ姉上だけじゃなくウチの門下生にまで何してんだァァァ‼︎」
純粋無垢な妹分兼弟子を汚され、怒り狂った銀時と新八が、二人がかりで近藤をめちゃくちゃに蹴りつける。
ちなみに志乃は銀時に回収され、縁側に戻されてその光景を見ていた。
「ぐふっ、ちょ、待てっ!これは誤か……」
「うるせーよ‼︎現場はもう抑えてんだよ、現行犯なんだよ‼︎」
「てめーコイツの純情勝手に奪ってんじゃねーよ!オイ志乃、今日限りで真選組を辞めろ‼︎俺が許可する」
「ぁ、えと……あ、私大丈夫だから……」
未だに怒りが収まらない二人をなんとか宥め、ボコボコにされた近藤を回収する。その際志乃はもちろん、着流しの中を見られないように注意した。
「近藤さん、いつから
「もちろんだ。ここ数日の
「恋愛じゃなくて失恋のエキスパートでしょ。もう諦めなよ。やるだけムダだよ」
自信満々に親指で自身を指す近藤に、志乃は嘆息を交えたツッコミを返す。
一応言っておくが、この二人はつい先程まで、加害者と被害者の関係だった。彼らのやりとりを見て、銀時と新八はひそひそと話す。
「何であんな事あったのにさらりと会話が続いてんだよ。まさか志乃ちゃん気にしてないの?ウソでしょ、だとしたらどんだけ懐深いの」
「いや、あいつの場合は忘れてるだけだ。昔から切り替えの早い奴だったからな」
「それっていいことなんですか?いや、確かにさっきのは近藤さんも悪かったと思いますけど、志乃ちゃんも無防備でしたよね」
「ま、昔っからコイツの周りにゃ年上の男しかいなかったからなァ。余計な事覚えねーように、そーいうことにはデリケートだったよ、俺達も」
ボソボソ話している内容は全て、耳のいい志乃にはちゃんと聞こえていた。若干言いたいこともあったが、全てを呑み込んでここは自分が大人になってやる。
そして話を続ける。
「近藤さん文通やったことあるの?」
「ああ、もちろんだ。手紙がくる度にドキドキしてな。何度振込に行ったかわからんよ」
「文通じゃねーよそれ‼︎架空請求‼︎」
「架空じゃない‼︎確かに俺の胸に残っている」
「利用したのかよアダルトサイト」
やはり近藤も、まともな恋愛をしたことがないらしい。
以前聞いた沖田の話によれば、近藤はギャルゲーの中ならモテモテだという。三次元に活かせられないのはルックスが一番の理由だろうなぁ。志乃はしみじみとそれを実感した。
銀時と並んで、新八に耳打ちする近藤を眺めた。
「新八君、あんな爛れた恋愛しかしたことがなさそうな男に、文通などというプラトニックな恋愛がわかるワケがない。ここは未来の兄たる俺に任せなさい」
それにはもちろん黙っているはずもなく、すかさず銀時が絡んだ。
「なんだテメーコラ、金の発生する擬似恋愛しかしたことなさそうな奴に言われたくねーんだよ。邪魔すんじゃねーコラ、いいトコなんだよ」
「じゃあ聞きますがね、君ここからどーするつもり?相手は新八君に興味を持ち始めた。しかし一体何を語る⁉︎」
僕は江戸で、万事屋のバイトとして働いてます。万年金欠で、趣味はアイドルの追っかけです。
「こんなんでモテるかァァァ‼︎なんだよ万事屋って胡散臭っ‼︎なんだよアイドル追っかけって気持ち悪っ‼︎」
「モテねーお前に言われたくねーんだよ!万事屋なめんなよ」
「そうだよ、アイドル追っかけで何が悪いんだ!嫌がる女性を追いかけるストーカーよりマシだ‼︎」
たたみかけるように言われて、銀時と新八はもちろん反論した。
しかしそれも、近藤の珍しい正論で叩き落とされる。
「じゃあ君ら聞くけど現在モテてますか⁉︎」
「「………………」」
「モテてねーだろ!そうさ、基本お前らの生活を正面から書けば、女性の食いつきがいいわけがあるまい‼︎」
まぁ確かにそれも納得のいく話である。先程のどストレートな文章では、誰もがいい印象を持たないだろう。相手はこちらの事を何一つ知らない。
しかし。
「でも嘘吐けっていうの?私ら色々小細工は使ってるけど、嘘だけは使ってないよ?」
「そんな士道に背くこと出来るか。ただ文章というのは、言い方を変えるだけでだいぶ印象が変わると言ってるんだ」
「言い方を変える?」
キョトンとした志乃に、近藤は先程の文章を使って例を挙げた。
僕は銀さんという侍の下で侍道を学ぶべく、日夜修行に励んでいます。
趣味は音楽鑑賞。こればっかりには財布の紐も緩みます。おかげで万年金欠です。
「「おお‼︎」」
「さっきと書いてる事は同じなのに、印象が全く違う」
180度変わった印象に、新八と志乃は感嘆の声を上げる。そして近藤の文章はこれでは終わらなかった。
僕の夢は、実家の剣術道場を再興させることです。姉も僕の夢を支えようと、一緒に頑張ってくれています。
姉は本当によくできた女性で綺麗だし、気も回るし、僕も結婚するなら姉のような奥さんが欲しいと常々思っています。
最近はその美しさもさらに磨きがかかり、弟の目から見ても眩しささえ感じます。その美しさは喩えるなら一輪の花。触れれば散ってしまいそうな儚さを持っていながら、その花は決して折れない凛とした強さも内包しているのです。
さらに驚嘆すべくはそんな美しさを持ち合わせながら、彼女はそれに傲ることなく、その魂すらも清く美しく暁光のごとく光り輝いていることにあります。これは奇跡でしょうか。いや、奇跡ではない。何故なら奇跡とは彼女の存在そのものであり、今我々が目にしているのは奇跡が起こしたプチ奇跡に過ぎないからです。
さらに驚くことに姉は……
「長い」
「ぐえっ!」
お妙の紹介から完全に路線がおかしくなった。これ以上放ったらかしても、近藤のお妙への気持ち悪いほどの想いが延々に続くだけと判断し、取り敢えず彼の背を蹴っ飛ばす。蹴りたい背中とはこういうことか。
膝をついた近藤を見下ろし、呆れながら志乃は言い放った。
「よくもこんな文章を書き起こしてくれたね。読者も大変だったと思うよ。飽きて途中から絶対飛ばしてるよ。ブルーライトとにらめっこして目ェ疲れてるよ読者も。ていうかコレ完全にアンタの視点だろーが。何のための手紙だよオイ、目的見失うな」
「そうだな……仕方ない、涙を呑んで一行にまとめよう」
ムラムラします。
「どんな弟だァァァ‼︎」
今度は志乃でなく新八のツッコミが入る。
「だからコレ完全にお前の気持ちだろーが‼︎あんだけ長いこと御託並べて結局ムラムラしてるだけかいアンタ‼︎」
「言わないでね、お姉さんに」
「言えるかァァ‼︎」
やっぱりロクな事を考えてはいなかった。頭を抱えた志乃の横で、銀時は彼らの会話に割って入る。
「もうよ、姉ちゃんのことはこの際省こうぜ。姉貴なんていても女からすれば何のメリットもねーよ。なァ志乃?」
「うん。ま、最終的に小姑になるわけだもんね」
「マズいキーワードは全部取ろう。都合のいい所だけ書いときゃいいんだよ」
僕は銀さんという侍の下で、日夜ムラムラしています。
「ムラムラを取れェェェ‼︎一番マズいキーワードが丸々残ってるんだよ!日夜ムラムラって何だよ‼︎年中ムラムラしてるみたいでしょーが‼︎」
「週休二日制でムラムラしています」
「休みはとらんでいいからムラムラを取れェェェェ‼︎」
やっぱりダメだった。ていうかコイツらさっきからムラムラしか言ってないぞ。一体普段からどんだけムラムラしてんだ、気持ち悪い。
色々この男達にツッコみたかったが、師匠のツッコミが炸裂したので、弟子として引き下がっておく。ツッコミに関しては、この師匠には一生勝てないだろう。勝たなくてもいいが。
********
そして後日、手紙が届いた。
新八さんにもお姉さんがいるんですね。私にも姉が一人います。
でも、新八さんのお姉さんとは違って、とても弱い姉です。幼い頃から身体が弱かったこともあって、家に籠りがちでいつも一人。
すっかり引っ込み思案になってしまって、身体が治った今も、人と上手く接することが出来ません。まともに話せるのは妹の私と執事の
たまに外に出たと思えば、海ばかり眺めて遠い世界に想いを馳せています。自分の殻を破ることも出来ないのに。
こんな姉をどう思いますか?
手紙を前にして、銀時、志乃、新八、近藤は揃って渋い表情をする。
「……お……思ったよりガップリ姉の話題に食いついてきたぞ」
「全然……自分のこと書いてないんですけど」
「だから言ったんだよ。姉ちゃんの話題は省けってよォ」
「手紙でわざわざ互いの姉ちゃんの話に花咲かせてどーすんのさ。話題変えよ、スグに切り替えよ」
「しかし無下にも出来んぞ。相手は彼女の肉親、優しくフォローを入れてからさりげに話題を移さんと」
「かーっ、レベル高いねェ」
四人がどうしようかと机に向かって頭を悩ませていると、窓の外から流れてきた煙草の匂いが鼻をついた。
「あっ、やっぱココにいやがった」
「!」
窓から土方が、近藤を見つけて部屋を覗いてきた。
「近藤さん、いい加減にしてくれよ。仕事放ったらかしてプラプラプラプラしやがって。隊士達にフォロー入れる俺の身にもなってくれ」
「おっ‼︎丁度いい所に来た‼︎フォローの男、土方十四郎‼︎」
「?」
近藤が嬉々とした表情をするが、状況を全く呑み込めない土方はキョトンとする。
「上にも下にも問題児を抱え、フォロー三昧の日々!トシにかかればまずフォロー出来ないものはない‼︎」
「そのフォロー三昧の日々を送っている一因は、紛れもなく近藤さんにもあるよね」
力説する近藤に、志乃はボソッとツッコミを入れた。フォローの男っつったって、要するにただの苦労人じゃねーか。
未だ状況を理解出来ない土方は、目の前にいる志乃に尋ねた。
「オイ、何の話だよ」
「まぁまぁ、とにかく上がりなよ。そこじゃちょっと話しづらい」
志乃は窓の縁に手をかけ、土方の肩を掴む。土方が「?」と彼女を見上げる中それを気に留めず、すかさず脇の下に手を入れ、そのまま持ち上げた。
「よっこいせー‼︎」
「うおわあああああ⁉︎」
持ち上げられた挙句、部屋に投げ転がされた。土方はゴロゴロと畳に投げ飛ばされ、頭に手をやった。
律儀に靴をちゃんと脱いでから、志乃に掴みかかる。
「クソガキてめー……今日という今日はいくら俺でも許さねェぞ?」
「ぁ、いやその……こ、今回はごめん。私が悪かった。まさかあそこまで投げれるなんて思わなくてさ、うん……ハイ、ごめんなさい」
普段からなめくさって、沖田と共に問題を引き起こしている志乃だったが、どうやらかなり彼にストレスを与えていたらしい。疲れ切った形相に何故だか申し訳なくなり、今日ばかりは反省した。
彼を宥めつつ、近藤が手紙を差し出す。
「まぁまぁ、コレを読んでみろ十四フォローくん」
「十四フォローって何だよ、十四郎だ!無理があるだろ」
近藤の横で、新八も頭を下げる。
「お願いします、フォロ方さん」
「統一しろよ‼︎何もかかってねーよ‼︎」
ツッコミを返しつつも、土方は手紙を受け取り、目を通す。しばらくしてから、新八に話しかけた。
「オイメガネ、お前こんな女のどこがいいんだ。コイツぁどう見てもB型の女だぞ」
「B型?」
「B型の女は自分勝手でまず人の話を聞かねェ。自分の話だけまくし立てるように喋り、それで会話が成立してると思うタチの女だ。この手合は下手にフォローに回ると延々と一人で喋り続けるぞ。かといって、強引にこっちの話を振ってもまず聞かねェ。相当に上手くやる必要がある」
「何その見解。何なの?アンタB型の女に恨みでもあるワケ?」
「ねーよ‼︎」
「トシ、アレまだ引きずってんのか」
「いい加減なことを言うな‼︎」
手紙を読んだだけで、相手の血液型まで予想してしまうとはなかなかに恐ろしい。しかし志乃の予想は外れ、土方に一蹴されてしまった。
「いや、でもモテる男はやっぱ言う事違うわ、頼りになります
「イチイチ呼び方変えんじゃねェ‼︎」
「A型は今日は何をやっても空回り。めげずに頑張れ」
「O型は急な雨に見舞われるかも。外出の際は傘を忘れずに」
「ただの占いだろーが‼︎何でO型の上にだけ雨が降るんだよ」
……アレ?これはフォローと言うのか?ツッコミの間違いじゃないのか?
ボーッとこの光景を眺めている間に、志乃はフォローとは如何にを云々と考えていた。
まぁ今の話には全く関係ないので、後に回しておくことにする。
「ま、要するに絶妙なさじ加減のフォローと、相手が気づかないくらいの自然な話題替えが必要ってことか。うーん、なかなか難しいな……」
「ガキのお前にゃまだ無理だろ。俺に任せな」
ポンポンと頭を軽く叩いて、まずは銀時が文章を考えてみる。
お姉さんのことを思うと、とても心が痛みます。
でも、うららさんのお姉さんを思う気持ちはきっと伝わっていますよ。いつかきっと、心を開いてくれると思います。
…………開くといえば、うららさんはいつになったら股を開いてくれるんでしょうか。
「不自然すぎるだろーが‼︎」
新八は叫んだその後に、ハッと思い出す。今この場には、こんな下賤な話を聞かせてはいけない相手がいることを。
パッとその人物、即ち志乃を振り返ると、彼女の耳を間一髪土方が塞いでいた。
心配事が減ってホッとした新八は、銀時を振り返ってツッコミを続ける。
「志乃ちゃんの前でなんつー話題に切り替えようとしてんだお前は!原始人でももっとマシな口説き方するわ‼︎」
「恋をする時、人は皆原始に帰るのさ」
「お前だけ帰れ、二度と戻ってくるな!」
「全く話にならんな。フォローが足らん。ペラペラじゃねーか。お前は真剣にお姉さんのことを考えていない」
と言う近藤が挑戦。
お姉さんを思うと、ムラムラします。
「見境なしかい!」
新八はツッコんでから、バッと志乃を振り返る。もちろん今回も土方がフォローして耳を塞いでいた。
志乃は何が何だかわからず、首を傾げるだけだ。
「フォローどころかお姉さんのことしか考えてねーじゃねーか‼︎アメーバでももっとマシな思考してるぞ‼︎」
「恋をする時、人は皆ネバネバさ」
「お前の頭ん中がネバネバだろ!」
師匠のツッコミから察するに、二人共ダメだったのだろう。まぁ、この二人にまともなフォローが出来ると期待していなかった。
そして最後の砦、土方にまわってくる。
「土方さん」
「……仕方ねェ」
お姉さんのこと、色々と新八なさってるようですが、僕はその必要はないと思います。僕はお姉さんに対し、同情の気持ちも励ましの言葉も何も持てません。
だって友達ならいるでしょ。僕が。
それから筆のスピードを速め、次から次へと書いていく。
僕がお姉さんの友達になります。
自分の殻が破れないというのなら、僕が外から殻を破りに行きます。
突き放すと見せかけてからの、超ド級ストレートのフォローが入る。さらにフォローからさりげなく会う約束を取り繕った。
会わせてください、お姉さんに。あっ……ごめんなさい、突然こんな事書いて……。
綺麗事ばっかり並べて……本当は僕、そんな大層な人間じゃないんです。だって僕……本当は……ただ……ただ、君に……会いたいだけだから。
「フォローしたァァ‼︎最後うららさんもフォローしたァァ‼︎」
ぐあっと怒涛の勢いで書き上げた文章は、文句なしの百点満点。コイツスゲェ。何者だ。
しかし土方は、修正液を含ませた筆で最後の文を消す。
「最後じゃねェ。コイツを消しておしまいだ」
「消したァァァ⁉︎『君に会いたいだけだから』を消した‼︎何故⁉︎」
新八が叫んだその後ろで、近藤と銀時がハッと土方の真意に気づく。
「ま……まさか。『君に会いたいだけだから』は、新八君のような
「‼︎……じゃあ、書いた後やっぱり照れて消したことを演出するために……⁉︎」
志乃は思わずヘタリと座り込み、感嘆の声を上げた。
「し、師匠にまでフォローを……。完璧……完璧だ……‼︎これが、フォロ方十四フォロー‼︎」
もうコイツ最強だ。フォローの腕で右に出る者はいないだろう。果たしてコレは本当にすごいことなのか否か……。
土方は書き上げた手紙を封筒に入れ、新八に渡す。
「至急送れ」
「ハイ‼︎ありがとうございます」
新八は一礼してから手紙を受け取り、急いで部屋から出て行った。彼の背中を見送ってから、銀時を見上げる。
「うまくいくといいね」
「……そーだな」
志乃に軽く返事を返し、近藤と土方にボソリと言う。
「オイ、おめーら。礼は……言わねーぞ」
「わかってるさ。男なら誰しも一度は通る道だろ?」
ワハハハハ、と近藤の豪快な笑い声が部屋に響く。しかし、煙草を吸おうとした土方が、ある事を思い出した。
「あ。……やべ。近藤さんが書いた文、消すの忘れてた」
その一言で、一気に部屋の中が静寂に包まれた。
********
それからまたまた数日後。
「銀さんんん‼︎ちょっとォォォこの手紙見てくださいよ‼︎」
ドタバタと、新八が廊下を走ってくる。
手紙とは、先述したあのフォロー炸裂の手紙の返信だ。しかし近藤の書いた文を消すことを忘れていたため、銀時達は最悪を覚悟していた。
銀時と近藤が、耳を塞ぐ。
「ヤベッ……俺知らない俺知らない」
「俺も知らん、トシだよなトシが悪いんだよな」
「元はといえば近藤さんが悪いんだろ!俺も知らねーよ」
いい大人三人が、揃いも揃って責任逃れだ。志乃は呆れた。呆れる他なかった。
しかし、新八の声は何故だか弾んでいる。
「やりました‼︎ついにやりました‼︎うららちゃん僕と会いたいって‼︎」
「…………えっ?」