『次回放送テレビちゃんぽん、寺門通
テレビの特番により、お通の
新八とトッシーが睨み合う。トッシーの余裕は変わらず、クスリと笑った。
「プッススス、地獄に仏とはまさにこの事。お通ちゃんのおかげで命拾いしたじゃないか、寺門通親衛隊諸君。まぁ余命が少々延びただけの話に他ならないけど。何で勝負したところで結果は変わらない。結局君達は僕に勝つことなんて出来やしないんだよ。ーー会場で会おう。その無様にぶら下がった首、刎ね飛ばして引導を渡してあげる。プッススススス」
そう言って、トッシーが踵を返す。その背を、新八が呼び止めた。
「待ってください。トッシーいや、土方さん。貴方トッシーなんかじゃない。土方さんですよね」
「えっ?」
なんと、新八は彼がトッシーではなく土方だと言うのだ。志乃は呆然として、新八とトッシーを交互に見てから、銀時と神楽と目を合わせる。二人も気づいていなかったらしいが、興味は全く無さそうだった。
新八がさらに続ける。
「トッシーは臆病なオタクです。わざわざ敵地に挑発に来るなんて行為、するワケがない。そんなわざとらしいオタク笑いもしていた覚えはありません。そして何より……煙草なんて吸うワケがない」
確かにトッシーの上着の胸ポケットに、煙草の箱が入っている。彼はおもむろにそれを一本取り出し、火を点けた。その行為が、彼が正真正銘土方だと結論付ける。
煙を吐いた土方の背に、新八が尋ねた。
「土方さん、貴方一体何を企んでるんですか。トッシーに扮してまでオタク達と接触し、あんなにたくさんのオタク達をまとめ上げ、大勢力を作り上げ、さらにはお通ちゃんの
少し黙ってから、土方は語り出した。長いので、ここで要約を入れる。
真選組動乱篇でもあった通り、トッシーは土方が妖刀「村麻紗」を手にした事で生まれた。しかしそれは土方に巣食った別人格などではなく、ヘタれたオタク的部分が増長した土方十四郎そのものだったのだ。
これを良しとしなかった彼は、トッシーを別人格として引き剥がし、意識の奥底に封じ込めた。だがいつになってもトッシーが消えることはなかった。彼は隙あらば身体を乗っ取ろうと意識の奥底で今も目を光らせているのだ。
そういえば、と志乃も思い出す。以前カラーボックスを買ったと聞いた時も、ある時カラーボックスいっぱいに美少女モノアニメのDVDが詰まっていた。また今から敵地に乗り込もうという時も、知らないオタクにアニメの話を小一時間されていた。
それの積み重ねで疲れていたのだろう、文字通り心身共に。志乃は憐れみの目を向けた。
そして土方は、トッシーも自分の人格の一部であると認め、正面から向き合い話し合った。トッシーは、「何も為さぬまま消えゆくのは嫌だ、この世に自分の生きた証が欲しい」と言った。
「……コイツは……
「……土方さん」
新八の後ろで、志乃はずっと呆れていた。そして、土方に色んな意味で同情する。
つーかオタクの覇王って何だ。お前は何をどうすればオタクの覇王なんてどうでもいいものになれるんだ。そんなもの終わりのない旅に出るようなもんだ。
「トップアイドル寺門通。あれを手にすれば、いよいよオタクの頂点にも手が届く。俺の長かった戦いもついに終わる」
「手にするってただファンクラブになれるだけだろ。つーかそれでオタクの頂点になれるとか怖いわ」
冷たい視線を送りつつ、ツッコミを入れる。しかしそれはスルーされた。
「それでもお前は俺を止めるか。この俺の存在を確立するためのこの戦いを。それを知ってなお、邪魔するかお前は」
「……悪いけど、お通ちゃんを愛してもいない人に渡すワケにはいきません」
「何言ってんの?渡すってったってハナからお前のもんじゃねーだろーよ。え?何この雰囲気。何でただのファンクラブ争いなのにこんなバトルもんっぽい空気が流れるの?」
志乃のツッコミも虚しく、二人の耳には届かない。ま、どうでもいいや。パックの中に入っていたいちご牛乳を飲み干し、ゴミ箱に投げ入れた。
********
そして迎えた当日。志乃はお通の親友兼ボディーガードとして会場の舞台にお通と共に上がっていた。会場の熱気は最高潮。むさ苦しさに、思わず吐きそうになる。
この日のために、五千人ものファンが会場に集まったというのだから、まったくオタクというものは末恐ろしい。
今大会は四人一組1250チームの中からたった1チームだけが
司会がオタク達を煽る。
「お前らお通ちゃんの
「「「「「おおおお‼︎」」」」」
「
「「「「「おおおお‼︎」」」」」
「お通ちゃんのためならたとえ火の中水の中、どこにでも行くかァ⁉︎」
「「「「「おおおお‼︎」」」」」
「お通ちゃんのウ◯コなら食べられるかァァ⁉︎」
「「「おおおお‼︎」」」
突如マイクを奪い取り、生放送で極めて危険な発言をしたグループが舞台の上に立っていた。寺門通親衛隊の衣装に身を包んだ銀時、新八、神楽、タカチンだ。
志乃は取り敢えず、銀時の頭を跳び蹴りで蹴っ飛ばしておいた。不意打ちを食らって倒れた銀時の胸倉を掴んで、立たせる。
「お前ら何やってんだ‼︎今生放送だぞわかってんのか⁉︎」
「当たり前だ。コレは愛を確かめる大会なんだろ。つーかオメーこそ何やってんだよ」
「お通の頼みで来たの!っていうか愛を確かめるためってそのために全員に何させるつもりだァ‼︎」
「今から決勝戦を始めるんだよ。全員にお通ちゃんのウ◯コを配る。これをいち早く食したチームが……」
呆れを通り越した志乃の拳が、銀時の脳天に打ち据えられる。かなり本気で殴ったためか、銀時の体は舞台を破壊してかなり深く埋められた。
「お前取り敢えず黙ってろや。これ生放送だぞ?アイドルに何させてんだテメーは。つーかてめーらが好き勝手やるせいで作者は眠れぬ夜を過ごしてんだよ。汚ェ話書いたら何言われるかわかんないって日々怯えてんだよバカヤロー」
「何それ俺のせい?作者だっていつかはこんな日が来るってことくらいわかってただろ。眠れぬ夜も朝になっちまえばもうどーだっていいんだよ。喉元を過ぎれば熱さも吐き気も忘れんだよ。大丈夫だ。恐れという壁を壊すことで、人は日々成長していくんだ」
「アンタら何の話してんの‼︎」
作者の心情を若干吐露しつつ、言い争いを繰り広げる二人に新八のツッコミが入る。寺門通親衛隊でもそのツッコミは健在らしい。
しかし外野が銀時を粛清する程度で収まるはずがなかった。
「お通ちゃんを愚弄するのもいい加減にしろよ‼︎」
「お通ちゃんはウ◯コもオナラもしねェ‼︎消えろォクズ共‼︎」
しかしその程度の罵倒、志乃は物ともせずに言い返す。
「あん?消えんのはテメーらの方だよガキ共。人を好きになるって事はね、相手の汚い所も全部ひっくるめて好きになるって事なんだよ。汚い所から目ェ背けてる時点であんたらは問題外、即刻この場から立ち去りな。そして
「お前もその趣味大概にしとけ」
いつの間にか穴から脱出した銀時が、オタク達を衆道の道へ連れ込もうとする志乃の頭をパンと叩く。頭を摩りながら、反論した。
「なんだよ、別に新たな扉開いたところで奴らにゃ何のメリットもねーんだ。私がオカズにしてるのはイケメンもしくは細マッチョだけ。キモオタなんて望んでないしつーか見苦しい」
「やめて志乃ちゃん、オタクの心はもうズタズタだよ‼︎ていうかこれ以上ボケを重ねるな‼︎いくら僕だってなァ、ツッコミが追いつかないんだよ!」
「大丈夫、師匠は寺門通親衛隊の法被着てる時はスタミナが倍増されるから」
「装備でパワーアップなんかしねェよ‼︎ロールプレイングゲームか⁉︎」
志乃が口にした寺門通親衛隊の言葉に、オタク達が過敏に反応する。
「寺門通親衛隊⁉︎」
「奴らがあの最強の……バカな、親衛隊は新興勢力によってとっくに壊滅させられたって聞いてたぞ‼︎」
「まさか奴らがまだ生きていたなんて‼︎」
「冗談じゃないぞ、拙者奴らがいないならもしや勝ち残れるかもと参ったのに‼︎」
寺門通親衛隊の名を聞いただけでオタク達が慌て、さらには逃げていく始末。おー、師匠って意外と有名なんだな、と改めて実感した。
寺門通親衛隊の登場を皮切りに、ギブアップするチームが続出。出場チームの一割を敗走させた。その後四人は志乃によってまとめて舞台から降ろされ、ようやく大会が始まろうとしていた。
「申し訳ありません、だいぶチームも減ってしまいましたが構わず進行しようと思います。ここで脱落するような人はまず予選は生き残れませんから。いいですか皆さん、予選の内容を説明しますからよく聞いてください。ここにいる約1000チームの中から予選をくぐり抜け、本戦に出場出来るのは、たったの4チームだけです‼︎」
早速会場が驚きとどよめきに包まれる。まぁ確かに1000から4はいきなり絞りすぎな気もするが。
「予選で見させてもらうのは体力‼︎これからお通ちゃんとご友人はヘリで大江戸テレビに移動します。この河川敷からあそこまでおよそ10㎞のコース、これを皆さんには走って来てもらいます‼︎」
ゴールした上位四人の所属するチームが、本戦へと生き残る。四人のうち一人がビリでも一人が上位四人内にランクインすれば、予選は通過。しかしチームの内一人でも棄権者、ギブアップする者が出れば失格。
志乃もお通と共にヘリコプターに搭乗する前に、寺門通親衛隊の元に足を向けた。
「銀がわざわざ参加するなんて、大方賞金目当てってとこ?」
「ま、そんなカンジだ。賞金は俺のものだ、誰にも渡さん」
「頑張ってね。私応援するから。あ、賞金出たら団子奢ってね?」
「ワリィな、賞金の使い道はもう決まってんだ」
どーせパチンコにでも消えるんだろう。相変わらずのダメっぷりに、志乃は嘆息する他なかった。お通に呼ばれたため、心の中で小さくエールを送っといてやる。
ヘリコプターにお通と共に乗り込み、身を乗り出したお通が下でスタンバイするオタク達に声をかける。
「みんな〜〜、早く来てね〜私待ってるからー。それじゃ〜準備はいい?位置について〜よ〜い、どん松五郎‼︎」
お通のかけ声で、オタク達が汗を散らしながら駆け出した。うーわ、キモっ。志乃は心の中で素直な感想を述べつつ、下を見下ろしているお通を見た。しかしその時、取っ手を掴んでいたお通の手が滑る。
「きゃっ……⁉︎」
「危ねっ」
バランスを崩したお通の手を引き、抱きしめる。ヘリコプターのドアを閉めさせてから、お通を席に座らせた。未だ固まっているお通に、優しく声をかける。
「大丈夫か?」
「う……う、うん。助けて、くれて……ありがと……」
「別にいいよ。お通が無事なら、それで」
少し顔が赤い彼女の隣に志乃も座る。ヘリコプターに乗っている間、普段ならたくさんお喋りやら何やらをするところ、今回は何一つ喋らなかった。チラリと彼女を見てみると、頬を赤らめて俯いている。志乃はわけがわからず、首を傾げた。