獏大魔王が、両手に巨大なエネルギーを集める。二人の背中から、志乃はギッと獏大魔王を睨みつけた。
「これで全てが終わる。全ては
「塗り潰されるのはテメーだよバイキンマン」
「これが最後だ、獏。白と黒、どちらが生き残るか」
「シロクロはっきりつけようじゃねーか」
「ほざけ虫けら共‼︎ドットの海へと還るがいいィ‼︎」
ついに、超巨大波動が放たれる。
今までにない威力を前に、銀時と白血球王は剣と爪楊枝を合わせて、お互いの必殺技を混ぜ合わせた。
「「いけェェェェェェ‼︎」」
白と黒の光が、ぶつかり合う。銀時と白血球王の渾身の一撃は、獏大魔王の波動を止めた。
小競り合いが続く中、獏大魔王がさらに力を込める。次第に押され始め、銀時達にもドット化の魔の手が押し寄せてきた。
「ぐっ……こいつぁ長くもたねーぜ」
「このままでは……二人仲良くお陀仏だ」
「銀‼︎白血球王‼︎」
志乃が、二人の名を呼ぶ。志乃の体もドット化が進んでいたが、それでも志乃はその場所を動かなかった。
信じていた。二人なら、必ずやってくれると。
すると白血球王が、銀時に自分が獏大魔王を抑えている間に倒せと促してきた。
「今なら奴は無防備だ。
「……二人がかりでやっとのもんをどうしててめー一人で押さえられるってんだ、バカヤロー‼︎」
「策はある。それにこの足では俺はもう動けん。
「………………」
「早くしろ、貴様がまだ動けるうちに」
銀時は力を抜かずに、白血球王を見つめた。
「………………てめェ、約束は……忘れちゃいめーなァ」
「……案ずるな、あんな者に遅れはとらんさ。俺を誰だと思っている。坂田銀時、貴様から生まれた男だぞ」
白血球王はフッと笑い、拳を差し出す。銀時は一度目を伏せてからその拳に自身のそれをコツンと叩き合わせ、獏大魔王の元へ駆け出した。
「白血球王ォォォ‼︎」
強烈な波動に、白血球王は押される。剣にはヒビが入り、ついに粉々になってしまった。
「白血球王‼︎」
志乃が彼の名を叫ぶ。白血球王は両手で波動を押さえ、背後の志乃を護ろうとした。
「ぐっ……ぐ、う……‼︎」
「っ…………」
懸命に波動に立ち向かう彼の背中に、志乃は一度スゥッと息を吸った。
「頑張れ‼︎お兄ちゃん‼︎」
その声は、ハッキリと白血球王の耳に届いた。白血球王は口角を上げ、腹の底から怒号を発した。
「おおおおおおおおおお‼︎」
途端、白血球王の体が白い光に包まれる。それは、獏大魔王の波動を押し返していった。
「バッ……バカな‼︎奴の力が急激に‼︎一体どこにこんな力が残って……」
「力ならば残っているさ。この俺の、
「まっ……まさか貴様!生命エネルギーを全て放出して……バカなっ、そんな事をすれば貴様はっ……貴様はァァァ!」
「お兄ちゃんっ‼︎」
白血球王の体がドット化し、そこからだんだんと消えていく。志乃は涙混じりに叫んだ。
白い光が城を突き抜け、獏大魔王が外に押し出される。
「貴様等ウィルス如きに、この白血球王が…………この……」
吹き飛ばされた獏大魔王を追って、爪楊枝を携えた白髪の男が獏大魔王の上に躍り出た。
「坂田銀時が、負けるかァァァ‼︎」
銀時の渾身の一撃が、獏大魔王に炸裂する。爪楊枝が放った波動は城を破壊し、獏大魔王を消し飛ばした。
凄まじい爆風に、思わず腕で顔を隠す。
ようやくそれが収まると、志乃の目の前に手足がドット化している白血球王が倒れていた。
「お兄ちゃん‼︎」
銀時が獏大魔王を倒したおかげで、志乃の体のドット化は消えている。
志乃は白血球王を抱き起こし、頭を自身の太ももに乗せた。
「しっかり、しっかりして!」
「…………ぅ、………………志乃……」
体を揺さぶると、白血球王はぽっかり目を開ける。視線がすぐにこちらに向き、彼はフッと笑んだ。思えば、初めて名前を呼ばれた気がする。志乃は目を見開いた。
そこに、獏大魔王を倒した銀時が歩いてくる。その後ろには、新八と神楽も来ていた。銀時に、白血球王が話しかける。
「……悪いな、約束を守れなくて。いい加減なのはデフォルトなんだ。貴様譲りでな」
「…………どうやらそうらしいな。俺もたまとの約束破っちまった」
白血球王は志乃の膝を枕に、目を閉じる。
「…………至極遺憾だ。こんなポンコツになってしまうとは。貴様らが来るまでは、俺は実に優秀なセキュリティだった。まさに姫を護る勇者、たま様を護るためなら喜んで命も投げうった。それが……まさか、姫様どころか、くだらん
「…………白血球王さん」
「死しても代わりなどいくらでもいる代用品の俺が、こんな事を……。貴様らのせいで……どうやら俺は完全にどこか壊れてしまったらしい」
きゅ、と白血球王の右手が、温もりに包まれる。目を開けると、涙を滲ませた志乃が、睨むように白血球王を見下ろしていた。
「バカ言ってんじゃねーよ……。アンタは壊れてなんかない。代用品なんかじゃない。アンタは……大した野郎だよ。護るべきものをちゃんと護り通したんだよ。たまだけじゃない……私達の命まで。だから、ダチのために死ぬなよ。ダチのために……私達のために生きてよ、お兄ちゃん…………」
ポタリ、ポタリ。涙が一粒一粒と落ちていく。握りしめてくる手に、力が込もった。
「貴様らがいれば、たま様は大丈夫だ。それに俺はもう……」
「銀時様、志乃様、皆さん。白血球王を最後まで護ってくださって、ありがとうございました」
突如聞こえてきたのは、なんとたまの声。志乃達は顔を上げて、キョロキョロとたまを探す。
「これはたまさん⁉︎たまさんの声だ‼︎」
「たまアル、無事治ったアルか⁉︎どこネ、どこにいるネ!」
「ここです。ここです、ここ」
声が聞こえた方を振り返ると、壊れた柱の上に、超ミニサイズのドット絵たまがいた。発見した神楽が、たまに顔を寄せる。
「たっ……たま様」
「何やってるアルかたま‼︎なんでこんなちっちゃく⁉︎」
「システムがまだ完全に復旧していないのですが、ドット絵ならコピーがとれたので飛んできたんです」
たまは今度は、白血球王の方を向いた。
「白血球王、今まで長い間私を護ってきてくれてありがとう。今度は……私が貴方を助ける番です。今度は私が白血球王の体内に入り、修理を行います。白血球王、私は貴方を決して死なせはしません」
「た……たま様」
「だったら私達も行くアル。モシャス銀ちゃんに借りがあるネ」
「いや、でも僕らどうやって体内に入るの⁉︎この身体の大きさじゃ入れな……」
新八が「入れない」と言い終わる前に、新八が大槌で潰される。見覚えのある光景に、神楽は冷や汗をかいた。
「そう言うと思ってな、俺も打出の大槌Z持ってきてやったぞい。さっ、小さくなりたい奴はそこに直れ。片っ端からぶん殴ってやるから」
たまの体内にまで入ってやってきた源外が、あの悪魔の道具を振り上げる。神楽は悲鳴を上げて逃げ回った。
その光景を見て、志乃はクスクスと小さく笑う。銀時も横倒しになった柱に座り込んだ。
「もうてめーの命はてめーの好き勝手できる所にありゃしねーんだよ。お前はもう、たまを護るだけの存在なんかじゃない。お前が護った分だけ、お前を護ってくれる存在がいるのさ。………………わらわら、まるで白血球みてーだろ」
志乃の膝の上で、白血球王は逃げ惑う神楽達とそれを追いかける源外を眺め、頬を緩めた。
「つくづく厄介な男の
「?」
「こんな時になっても、感謝の言葉も……涙も……ロクに出てきやしない。…………どうするんだ。お前ならこんな時」
「笑うのさ」
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遥か遠くからこちらに迫ってくる、未知の新型ウィルス。それが、大軍となってたまの体内に侵入してきた。
それを退治するのが……他ならぬ、白血球の務め。獏による侵略の傷跡がまだ残るこの日、白血球王は仲間の白血球達を率い、戦っていた。
斬っても斬っても、終わりの見えない戦い。彼の背後に、敵が三人飛びかかってきた。
「白血球王‼︎」
兵士の声に、ハッと振り返る。そこに、白いタンクトップにホットパンツを合わせた、ラフな格好の少女が躍り出た。
少女は腰に挿した刀を抜き、襲いかかってきた三人を斬り捨てる。着地した少女に、白血球王は戦闘中にも関わらず笑みを浮かべた。
彼女もそんな彼を見上げて、呆れたように笑う。
「まったく、これだからお兄ちゃんは。私がいないとダメなんだから」
「フッ……ああ、そうだな。我が妹よ」
立ち上がり、妹と呼ばれた少女は白血球王と背中合わせになる。
その少女は、志乃と瓜二つの顔立ちだった。
「ゆくぞ‼︎」
「うん‼︎」
短い会話を済ませて、白血球の兄妹はウィルスに立ち向かっていったーー。
ーたまクエスト篇 完ー
はい、終了ですたまクエ篇!あー疲れたァ!
えーと、わかりづらかった方のために説明しますが、最後に出てきた志乃似の少女、彼女は志乃のコピーです。白血球王が志乃に本当の妹のような感覚を抱いたことから、たまのセキュリティが白血球王に本当の妹を創り出したワケです。
いやぁ、これの執筆中に色々ありましたよ。コラボのお話を頂いたり調子に乗ってまた漫画買っちゃったりまたまた絵を描いたり……。
さて、お次は二話オリジナルを書いてから、いよいよ地雷亜篇行きます!