銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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団子といえばやっぱりみたらし団子だよね

「愛だァ?夢だァ?若い時分に必要なのはそんな甘っちょろいもんじゃねーよ。そう……カルシウムだ。カルシウムさえとっときゃ全てうまくいくんだよ。受験戦争、親との確執、気になるあの娘。取り敢えずカルシウムとっときゃ全てうまく……」

 

「いくわけねーだろ!!幾らカルシウムとってたってなァ、車に撥ねられりゃ骨も折れるわ!!」

 

銀時と神楽と志乃は、前回の交通事故で見事足を骨折した新八のおみまいに来ていた。

しかし怪我をしたと言っても、新八のツッコミのキレが下がる訳でもない。

 

「俺も撥ねられたけどピンピンしてんじゃねーか。毎日コイツ飲んでるおかげだよ」

 

「私も健康そのものだよ。毎日アンタらに付き合ってるおかげだね」

 

「いちご牛乳しか飲めないくせにエラそーなんだよ!それと僕らと居る事と健康は何の関係もねーわ!」

 

「んだコラァァコーヒー牛乳も飲めるぞ!!」

 

「健康は人生の中で一番大切な事なんだぞ!?健康ナメんな!!」

 

「やかましーわ!!」

 

病院の中で堂々と騒ぎまくる銀時達に、看護婦の一喝が飛ぶ。

 

「他の患者さんに迷惑なんだよ!!今まさにデッドオアアライブを彷徨う患者さんだって居んだよボケが!!」

 

「あ……スンマセン」

 

「エライのと相部屋だね、新八」

 

「うん、もう長くはないらしいよ。僕が来てからずっとあの調子なんだ」

 

「その割には家族来てないじゃん。え、何?見放されてるの?」

 

「いや、あの歳までずっと独り者だったらしいよ。相当な遊び人だったって噂」

 

「遊び人?って何?」

 

「あ、うん……志乃ちゃんはまだ知らなくていいんだよ」

 

「まっ人間死ぬ時ゃ独りさ。そろそろ行くわ。万事屋の仕事もあることだし」

 

「私も。留守番させてるしね〜」

 

銀時達は、そろそろ帰ろうと席を立った。

その瞬間、病院の老人が勢いよく起き上がった。

 

「万事屋ァァァァァ!!」

 

「ぎゃああああ!!」

 

デッドオアアライブを彷徨っていた患者がいきなりアライブに飛び込んだので、医師は思わず悲鳴をあげる。

老人はヨロヨロと覚束ない足取りで、こちらに歩み寄ってきた。

 

「今……万事屋って……言ったな……それ何?何でも……して……くれんの?」

 

「いや……何でもって言っても、死者の蘇生は無理よ!!ちょっ……こっち来んな!!のわァァァ!!」

 

銀時は恐れのあまり、悲鳴をあげる。

だが、老人はかんざしを差し出した。

 

 

「コ……コレ、コイツの持ち主捜してくれんか?」

 

********

 

銀時は、かんざしの持ち主を捜すため、かつて彼女が働いていたという団子屋の事を聞こうと、贔屓してもらってる団子屋に向かった。

 

「団子屋『かんざし』?そんなもん知らねーな」

 

「昔この辺にあったって聞いたぜ」

 

「ダメだ俺ァ三日以上前のことは思い出せねェ。それよりよォ銀時、お前たまったツケ払ってけよ」

 

「その『かんざし』で奉公してた綾乃って娘を捜してんだ。娘っつっても五十年も前の話だから今はバーサンだろーけどな」

 

「ダメだ俺ァ四十以上の女には興味ねーから。それよりよォ銀時、お前たまったツケ払ってけよ」

 

団子屋の店主に同じことを2回も繰り返し言われた銀時だが、当然スルー。

そもそも彼はツケを払うつもりなどない。白々しさを通り越して最早別の領域に達しているようだ。

一方、同じく団子屋に訪れていた志乃は、別の店員を訪ねていた。

 

「よォハル」

 

「あら。志乃ちゃんじゃない。いらっしゃい」

 

店から出てきた金髪の女性は、志乃を見て柔和に微笑む。彼女を見た銀時も、挨拶を交わした。

 

「おっ。よー、小春。オメーこんなとこで何やってんだよ」

 

「チッ。何よアンタ銀時じゃないの。こっちの台詞だわ。何しに来てんのよクソが」

 

「相変わらずおっかねー女だな。志乃がオメーみてーな女に成長したらどーすんだよ」

 

銀時に対して笑顔で毒を吐きまくる女性ーー矢継小春は、微笑みを絶やさず銀時の頭をお盆で殴った。

 

「貴方こそ相変わらず志乃ちゃんに関わってるらしいじゃない。お願いだから、あの娘に悪影響を及ぼすような事だけは無いようにしてね」

 

「てめーが一番の悪影響だろーが」

 

「脳みそぶちまけるわよ」

 

「いいかげんにしろてめーら!!店先で物騒な会話してんじゃねーよ!!」

 

店主に怒られた小春は、銀時のこめかみに当てた拳銃を渋々しまった。

そして、銀時と話を続ける。

 

「で?アンタ何でここに来たのよ。どーいう風の吹き回し?」

 

「依頼があってな。このかんざしの持ち主を捜してくれって」

 

「はァ、かんざしねェ。それ、何て名前の人なの?」

 

「えーとなァ、綾乃ってんだ」

 

「ふーん……知らないわ」

 

「だったら最初から首突っ込むんじゃねーよ」

 

「ハイハイ。それじゃー、仕事頑張ってね」

 

小春はそれだけ言うと、とっとと店の中に入っていった。

 

「アイツ、ホントどんな人生送ってきたんだよ。ロクな人生送ってねーな」

 

「あはは……ん〜でも綾乃さんかァ……どっかで聞いたことあるよーな、無いよーな……」

 

志乃が銀時の隣に座り、うーんと顎に人差し指を当て考えるポーズをとる。

すると、彼女にいい考えが浮かんだ。

 

「そーだっ!捜し物なら定春に捜してもらえばいいじゃん!」

 

「は?」

 

「ほら、犬って鼻がきくでしょ?それと同じ要領で、定春にかんざしの匂いを嗅いでもらって、捜してもらえばいいんだよ!」

 

「いや……無理だろソレ」

 

「何言ってるアル!物は試しネ。定春〜!」

 

「オイオイ、大丈夫なのかよ……」

 

神楽と志乃が定春を呼ぶ横で、銀時は溜息をついた。

 

********

 

早速定春にかんざしの匂いを嗅がせて、匂いを辿ってもらう。リードは銀時が持っていた。

 

「オーイ、流石に無理だろコレ。五十年も経ってんだ。匂いなんか残ってるかよ」

 

「何言ってんの銀。そんなの分かんないよ」

 

「志乃ちゃんの言う通りネ。綾乃さんもしかして体臭キツかったかもしれないアル」

 

「バカ、別嬪さんってのは理屈抜きでいい匂いがするものなの。いや……でも別嬪さんのくせに体臭キツいってのも、完璧な女より逆に何かこう燃えるものが……」

 

「銀、何言ってんの?」

 

こんな会話をしながら、定春がたどり着いたのはスナックお登勢だった。

その店の扉を叩き、こちらを見る。

 

「オイ、まさか……」

 

********

 

「何だよ、家賃払いに来たのかイ。お前、こちとら夜の蝶だからよォ、昼間は活動停止してるっつったろ。来るなら夜来いボケ」

 

「何やアンタら何しに来たん?」

 

中から出てきたのは、お登勢と従業員のお瀧。

かんざしの持ち主の匂い、五十年前……。

まさかの回答が銀時達の頭の中で弾き出されそうなその瞬間、銀時達はそれを否定した。

 

「…………いやいや、これはないよな」

 

「ナイナイ」

 

「綾乃ってツラじゃねーもんな」

 

「何で私の本名知ってんだィ?」

 

はい、アウトー!!

この一言で、銀時達の予感は完璧に的中した。

だが、銀時は食い下がる。

 

「ウソつくんじゃねェェェババァ!!おめーが綾乃の訳ねーだろ!!百歩譲っても上に『宇宙戦艦』が付くよ!!」

 

「宇宙戦艦綾乃……めっちゃ笑える」

 

「オイぃぃぃ!!メカ扱いかァァァ!!そして志乃!!アンタ何想像して笑ってんだい!!」

 

戦艦にお登勢の顔が付けられた宇宙戦艦綾乃を想像して大爆笑した志乃に、お登勢の一喝が入る。

お登勢は煙草を吹かしながら溜息をついた。

 

「お登勢ってのは夜の名……いわば源氏名よ。私の本名は寺田綾乃っていうんだイ」

 

「前にアンタにも教えたやろ?志乃」

 

「あー!!だから聞いたことある名前だと思ったんだ」

 

やっとモヤモヤが解消された志乃は、掌に拳をポンと置く。

その傍らで、銀時と神楽は完全にやる気を無くしていた。

 

「何嫌そーな顔してんだコラァァァ!!」

 

突然、スナックお登勢の固定電話が鳴る。

お登勢は中に入って、受話器を取った。

 

「ハイ、スナックお登勢……何?いるよ銀時なら。新八から電話」

 

「何よ」

 

「何かジーさんがもうヤバイとか言ってるけど」

 

********

 

病院では、依頼主の患者がまさにデッドに直進していた。

今まさに、命が途絶えようとしたその時。

突然、銀時、神楽、お登勢を乗せた定春と、志乃、お瀧を乗せた垂直離着陸機能を搭載した志乃愛用のスクーターが、病室の窓をめちゃくちゃに壊した。

銀時達は、依頼を達成するため、かんざしの持ち主ーーお登勢を連れて来たのだ。

 

「おい、じーさん。連れて来てやったぞ」

 

「い"っ!?お登勢さん!?」

 

だが、患者はデッドに真っしぐら。意識は朦朧としていた。

意識を戻そうと、志乃が患者の頭を軽く叩く。

 

「ちょっと、起きてよジーさん」

 

「ちょっ、何やってんの君ィィィ!!」

 

意識を呼び覚まさせ、かんざしを挿したお登勢を見せる。

 

「かんざしはキッチリ返したからな……見えるかジーさん?」

 

患者の目には、あの頃の彼女が映っていた。

 

「……綾乃さん。アンタやっぱ……かんざしよく似合うなァ……」

 

「…………ありがとう」

 

こうして、患者は息を引き取った。

 

********

 

帰り道。銀時と志乃は、お登勢と並びながら歩いていた。神楽とお瀧は、一緒に定春に乗っている。

ふと、銀時がお登勢に尋ねた。

 

「……バーさんよォ。アンタひょっとして、覚えてたってことはねーよな?」

 

「フン。さあね。さてと……団子でも食べに行くとするかイ」

 

「ん……ああ」

 

かんざしを揺らして歩く彼女の姿が、この時銀時の目には、お登勢ではなく、一瞬娘時代の綾乃に見えていたーー。




次回、何やら怪しい組織に遭遇します。
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