コギャルにもいい奴はたくさんいる
この日、志乃は従業員の茂野時雪と共に、久々に入った万事屋としての仕事の依頼主を訪れていた。
相手は幕府の由緒正しき役人である。志乃と時雪は、客間に通されていた。
役人が話をするが、志乃は話を流すように聞き、出されたせんべいを貪り食っている。
時雪はそれを止めようとするが、志乃は聞く耳を持たない。
「今までも二日三日家を空けることはあったんだがね、流石に一週間ともなると……連絡は一切ないし、友達に聞いても誰も何も知らんときた。親の私が言うのもなんだがキレイな娘だから、何か良からぬことに巻き込まれているのではないかと……」
役人はそう言って、写真を志乃に差し出す。
キレイと言われた娘は、デブのギャルだった。
「……ああ、なるほど。何かその……むぐむぐ、巨大なハムを作る機械とかに巻き込まれていバリバリ、る可能性がありますね……」
「いや、そーゆんじゃなくて何か事件に巻き込まれてんじゃないかと……」
「事件?ハムがソーセージと不倫したとか」
「いいかげんにしろよ。久々に来た仕事パーにするつもりか」
時雪にツッコミを受ける志乃は、仕事のしなさ過ぎで少しボケていた。
いや、ボケているで済まされるのだろうか。
「でも、それなら俺達よりも警察とかに相談した方が……」
「そんな大事には出来ん。我が家は幕府開府以来徳川家に仕えてきた由緒正しき家柄。娘が夜な夜な遊び歩いているなどと知れたら一族の恥だ。他の万事屋にも頼んでいる、何とか内密の内に連れ帰ってほしい」
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志乃と時雪は、娘ーーハム子(名前も知らないのでこの名称でいく)がよく来ていたというクラブにやってきた。
そこで銀時達と合流し、共に事件解決にあたる。
神楽が、早速鳥頭の店員に話を聞く。
「あー?知らねーよこんな女」
「この店によく遊びに来てたゆーてたヨ」
「んなこと言われてもよォ嬢ちゃん。地球人の顔なんて見分けつかねーんだよ……名前とかは?」
「えーと、ハ……ハム子……」
「ウソつくんじゃねェ明らかに今付けたろ!!そんな投げやりな名前付ける親がいるか!!」
「忘れたけどなんかそんなん」
「オイぃぃぃ!!ホントに捜す気あんのかァ!?」
「銀さん……神楽ちゃんに任せてたら永遠に仕事終わりませんよ」
「あー、もういいんだよ」
「そーそー、どーせどっかの男の家にでも転がり込んでんだよ。私あんな女に絶対ならない」
「そんなテキトーな見解でいいの?」
「アホらしくてやってられるかよ。ハム買って帰りゃあのオッサンも誤魔化せるだろ」
「よし、依頼達成」
「誤魔化せる訳ねーだろ!アンタらどれだけハムで引っ張るつもりだ!!」
「ちょっと待てェ!!本当に買いに行こうとするなァァ!!」
ハムを買いに行こうとする志乃を、時雪が止める。
志乃らのパーティーの中で、ツッコミ役は彼のようだ。これは重要事項なのでよく覚えておこう。
時雪は、トイレに行こうと席を立った。
「志乃ごめん、トイレ!」
「おー、分かった」
志乃が軽く返し、キャンディを頬張る。
と、ここでハム子を捜していた神楽が、デブ男を連れて帰ってきた。
「新八〜!もうめんどくさいからこれで誤魔化すことにしたヨ」
「どいつもこいつも仕事を何だと思ってんだチクショー!大体これで誤魔化せる訳ないだろ。ハム子じゃなくてハム男じゃねーか!」
「ハムなんかどれ食ったって同じじゃねーかクソが」
「そういうこった。ごたごた言ってんじゃねーよ」
「何?反抗期!?」
可愛い顔して普通に毒を吐く神楽と志乃。これを反抗期と言わずして何と言おう。
そんな会話をしていると、ハム男が突然倒れた。
「ハム男ォォォォ!!」
「オイぃぃ駄キャラが無駄にシーン使うんじゃねーよ!!」
「ハム男、あんなに飲むからヨ」
「……!?待って、神楽!」
ハム男に近付こうとした神楽を、志乃が制する。
志乃には、ハム男が酒に酔っているようには見えなかった。
鼻水と涎を垂らして、口元には泡が出ている。
酒に酔っただけで、こんな状況に陥るのは絶対にありえない。
すると、先程の鳥頭の天人店員がやってきた。
「あー、もういいからいいから。後俺がやるからお客さんはあっち行ってて。……ったくしょーがねーな、どいつもこいつもシャブシャブシャブシャブ」
「シャブ?」
シャブというのは、言わずもがな麻薬の事である。
麻薬は一度使用すると快楽を得られるが、それからずっと麻薬に依存し、体がボロボロになってしまう恐ろしいものである。
よいこのみんなは、麻薬に手を染めることのないよう、気を付けよう!
あ、話が逸れた。戻ろう。
ハム男を抱えた店員が、志乃の疑問に説明をしてくれた。
「この辺でなァ最近新種の
「ふーん……ありがとうね、鳥」
志乃は店員に一応礼をしてから、考え込むようにソファに座った。
それにならい、新八と神楽も座る。
「どうしたの、志乃ちゃん?」
「嫌な予感がする」
「嫌な予感?」
「それどーいう意味ヨ」
「私の推測の話なんだけど、もしかしたらハム子が、
「ええ!?」
驚いた新八が、思わず立ち上がる。
志乃は新八を落ち着かせてから、続けた。
「さっき見たあのハム男……彼も、見た感じ若かった。私が聞いた話なんだけど、今若者の間で密かに宇宙から来た麻薬が出回ってるらしいんだ。あのハム子もあんなナリだけどまだガキだろう。もしかしたらあいつも、もしかしたらハム男みたいになってるかもしれない……」
「そんな……」
「あー、くっそ……イヤな予感しかしない」
自分の憶測をぶつけた志乃は、ガシガシと頭を掻き毟り、ゆっくりと店内を見渡す。
ピリッと殺気立った空気が、辺りを支配していた。
「遅いな、銀さん」
そう呟いたのは、隣に座る新八だった。
「どうも嫌な感じがするんだ、この店……早く出た方がいいよ」
「そうだね……」
「私捜してくるヨ」
神楽が席を立とうとしたその時、彼女の頬に銃が当てがわれた。
「てめーらか。コソコソ嗅ぎ回ってる奴らってのは」
銃を向けてきたのは、何やら恐ろしい雰囲気を醸し出す天人達だった。
「なっ……何だアンタら」
「とぼけんじゃねーよ。最近ずーっと俺達のこと嗅ぎ回ってたじゃねーか、ん?そんなに知りたきゃ教えてやるよ。宇宙海賊"春雨"の恐ろしさをな!」
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一方、トイレに入っていた時雪は、隣でブツブツ言ってる銀時の独り言を聞いていた。
正直言って、聞いてるこっちが恥ずかしい。
時雪はトイレに入ってから何度目かの溜息を吐いた。
すると、銀時の入ってるトイレのドアを、何者かが叩いた。
「ハイ、入ってますけ……」
「いつものちょうだい」
「はァ?」
声からして、相手は女だった。
何故女が男子トイレに入っているのだろうか。いつものとは何だろうか。頭の中で、疑問が尽きない。
声の主は、緊迫したような勢いで銀時に詰め寄る。
「早く……いつものちょうだいって言ってんじゃん!!アレがないと私もうダメなの!!」
「い……いつものって言われても、いつものより水っぽいんですけど」
「何しらばっくれてんのよ、金のない私はもうお払い箱って訳‼︎いいわよアンタらのこと警察にタレ込んでやるから」
「ちょっと待てお前。え?警察に言う?別にいいけどお前……何が?って言われるよ」
あまり聞きたくない話を嫌でも聞いてしまった時雪は、今日何度目かの溜息をつく。
その時、男子トイレ内で銃声が響いた。
それに続けて、男の声が聞こえる。
「誰に話しかけてんだボケが……もうてめーに用はねーよブタ女!」
まさか。イヤな予感がした時雪は、常備している木刀を手にトイレを出る。
そこには、先程の声の主であろう女が血を流して倒れていた。
そして、それを引き摺る天人が。
隣のトイレに居た銀時も、同じく出てきていた。
「ぎ……銀時さん……これって……」
自然と、時雪の声が震える。
銀時も、かなりヤバい状況である事を察していた。
「ハム子ォ、悪かったなァオイ。男は男でもお前、エライのに引っかかったみてーだな」
「ハム子さん……!!」
「オイ、時雪。てめーはハム子連れて下がってろ」
銀時は時雪を見ずに、目の前に立つ天人ーー陀絡と対峙する。
時雪は銀時の雰囲気を感じ、すぐにハム子を連れて銀時の後ろに下がった。