「俺は元来そんなに人嫌いの激しいタチじゃねェ。だが、これだけは許せんというのが三つあってな。一つ目は、仕事の邪魔をする奴。二つ目は、便所に入っても手を洗わん奴。三つ目は、汚らしい天然パーマの奴だ」
陀絡の嫌いなもの三つ。
それを聞いた銀時はニタリと笑った。
「全部該当してんじゃねェかァァァァ!!」
陀絡の苛立ち混じりの突きを、銀時がジャンプしてかわす。
時雪も、ハム子を護りながら避けた。
銀時は壁を蹴り、陀絡の頭も踏む。
「そいつァ光栄だ。ついでに俺の嫌いな奴三つも教えてやろーか?ひとーつ、学園祭準備にはしゃぐ女子!ふたーつ、それに便乗して無理にテンション上げる愚の骨頂男子!みーっつ、それら全てを包容し優しく微笑む教師」
銀時は嫌いなものを発表しながら、陀絡の周りにいた天人達を全員片付けてしまった。
「てめェ要するに学園祭が嫌いなだけじゃねーか。よほど暗い青春送ったな……」
「てめーほどじゃねェよ。いい歳こいて便所でスーパッパか?もっともてめーらが好いてるのは、シャレにならねェハッパみてーだがなァ。天人が来てから世の中アブねーもんも増えたからよォ、困るぜ。若者をたぶらかしてもらっちゃ」
銀時はそう言いながら、時雪と共にハム子を抱えた。
「たぶらかす?勝手に飛び付いてきたのはその豚だぞ。望む通りのモン用意してやったのにギャーギャー騒がれてこっちも迷惑してんだ」
「そーかい。バカ娘が迷惑かけて悪かったな。連れ帰って説教すらァ」
時雪が、木刀を持った手で、トイレのドアを開ける。
するとそこには、奴等の仲間らしき天人達がたくさんトイレを囲んでいた。
「オイオイみんなで仲良く連れションですか……便器足んねーよ……」
「銀時さん……コレ、どうするんですか……?」
時雪が尋ねた瞬間、天人達の後ろで声が聞こえた。
「オラッちゃっちゃと歩かんかイ!!」
「こいつフラフラじゃねーか、情けねェ!!」
そこには、天人達に連行される新八と神楽、気を失って一人の天人に担がれている志乃が居た。
「新八!!神楽!!志乃!!」
「オイ、三人共!!オイッ!!」
「てめーらァァ!!何しやがった!!」
「志乃達に何するつもりだ!!」
銀時と時雪は、押さえつけてくる天人達を振り払い、彼らを助けようと暴れる。
「お前、目障りだよ……」
「「!!」」
陀絡の声に、2人が振り返る。
その瞬間に、陀絡は銀時の左肩に一撃を食らわせた。
銀時達はそのまま窓に押し込まれ、窓を割って外に出され、三人諸共落とされてしまった。
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銀時は目を覚まし、上半身を起こしていた。
そこに、桂とお瀧、小春、橘剛三、九条八雲が入ってくる。
ちなみにお瀧、小春、橘、八雲は獣衆の一員である。
「ガラにもなくうなされていたようだな……昔の夢でも見たか?」
「ヅラ?何でてめーが……」
ここに、と言おうとしたその時、銀時の脳裏に連れ去られた新八、神楽、志乃が浮かび上がった。
「そうだ!!」
こうしちゃいられない、と立ち上がろうとしたが、痛みに負け布団に突っ伏してしまう。
「バカね。アンタは左腕と肋骨何本か持ってかれてるのよ」
「時雪が庇ってくれたおかげだな。だが、時雪はお前たちを庇って意識すら危うい状態だ。あの娘も外傷はないが、体は麻薬にやられている。死ぬまで廃人だろう」
「クソガキめ、やっぱやってやがったか」
「というか、貴様は何であんな所に居たんだ?」
「というか何でお前等に助けられてんだ?俺は。というか、この前の事謝れコノヤロー!」
というか、の流れに乗って、テロ事件の謝罪を桂に求める銀時。
だが、それを無視して、桂はある粉が入った袋を差し出した。
「というか、お前はコレを知っているか?最近、巷で出回っている"転生郷"と呼ばれる麻薬だ。辺境の星にだけ咲くと言われる特殊な植物から作られ、嗅ぐだけで強い快楽を得られるが、依存性の強さも他の比ではない。流行に敏感な若者達の間で出回っていたが、皆例外なく悲惨な末路を辿っている……。天人がもたらしたこの悪魔を根絶やしにすべく、我々攘夷党も情報を集めていたんだ……そこに、お前達が降ってきたらしい。俺の仲間が見つけなかったら、どうなっていたことか…………というか、お前は何であんな所に居たんだ?」
「というか、アイツらは一体何なんだ?」
銀時の問いに答えたのは、八雲だった。
「宇宙海賊"春雨"。銀河系で最大の規模を誇る犯罪シンジケートです。奴等の主な収入源は、非合法薬物の売買による利益。その魔手が、末端とは言え地球にも及んでいるという訳です」
「天人に
桂の言葉も聞かず、銀時は立ち上がって上着を手に取る。
「オイ、聞いているのか?」
「仲間が拉致られた。志乃もだ。放っとく訳にはいかねェ」
「その身体で勝てる相手と?」
「"人の一生は重き荷を負うて遠き道を往くが如し"。昔なァ、徳川田信秀というオッさんが言った言葉でな……」
「誰だそのミックス大名!家康公だ家康公!」
桂にツッコまれながらも、銀時はこちらを振り向かず続ける。
「最初に聞いた時は何を辛気くせーことをなんて思ったが、なかなかどーして年寄りの言うこたァバカに出来ねーな……。荷物ってんじゃねーが、誰でも両手に大事に何か抱えてるもんだ。だが、担いでる時にゃ気付きゃしねー。その重さに気付くのは全部手元から滑り落ちた時だ。もうこんなもん持たねェと何度思ったかもしれねェ。なのに……またいつの間にか背負いこんでんだ。いっそ捨てちまえば楽になれるんだろうが、どーにもそーゆ気になれねー。
銀時の言葉を最後まで聞いた桂と獣衆は、一息ついて肩を落とす。
桂が、銀時と並んだ。
「片腕では荷物など持てまいよ。今から俺がお前の左腕だ」
桂と銀時を挟むように、獣衆の四人も並ぶ。
小春は拳銃を両手に持ちながら、ぶっきらぼうに言う。
「志乃ちゃんを助けるためよ。今回だけだからね」
八雲は、手に手鋼をはめながら、笑顔で言った。
「久々にやりましょう、お二方」
お瀧も、懐に手裏剣やクナイを忍び込ませる。
「楽しそうな戦闘にウチらが行かん訳にはいかへんやろ」
橘は、槍を肩にかけて並んだ。
「行くぞ。仲間を取り戻しに」