銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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実写銀魂、観に行きました。めちゃくちゃ面白かったです。パロディネタもその他諸々も含めて最高でした。
一番驚いたのが、銀さんのあの格好で袖から腕を抜くと、綺麗に袖が落ちてこないということ。器用なのか。器用な銀さんだからできたのかアレは。


しぶとく図太く強かにしなやかに生きていく僕ら

辰羅の軍勢と華陀が志乃達を振り返る中、次郎長だけは真っ直ぐ銀時と志乃を見つめた。

 

「待ってたぜ、白髪兄妹」

 

「借り、返しに来た。……って言いてェ所だが、どうやらモタモタしているうちに勝手が変わっちまったようだな」

 

「察しがいいじゃねーか。まァ、嬢ちゃんにとっちゃ想定内だろーが」

 

「えっ、いや、流石にコレは予想外だったよ。思ってたより敵の人数少ない」

 

突然の乱入者に驚く華陀達をよそに、銀時、志乃、次郎長はいたって普通に会話をしていた。

 

********

 

一方その頃、時雪達は華陀の送り込んできた辰羅の軍勢に囲まれていた。

利用されていたと気づくのはあまりにも遅く、先程平子を庇った西郷も、かなりの深手を負わされていた。

互いに潰し合いをしていたため、誰も彼も皆疲弊している。それで天人相手にもうひと暴れをするなんて、よほどのバカでないとできない。

もうダメだと誰もが思う中、時雪と彼の兄弟達は彼ら(・・)を待っていた。

しかし聞こえてきたのは、期待していたものとは別の声。

 

「やれやれ、ガラにもなく情けない声上げちゃってまァ。アンタらそれでもかぶき町の一員かい」

 

「そ……その声は、まさか……まさか‼︎」

 

声の主は、お登勢と銀時の店の向かいの屋根の上に立っていた。紅が塗られた唇から、フッと紫煙を吹かす。

 

「しぶとく図太く強かにしなやかに。それが、私達ってモンじゃないのかい」

 

その人物をようやく見上げた時雪も、彼女の姿を見て表情が綻んだ。

 

「お登勢さん‼︎」

 

********

 

「新八、神楽」

 

銀時が、自身の後ろに立つ二人に言う。

 

「西郷の息子のことは頼んだ。今頃奴等もヤベーことになってるだろ。……時間がねェ」

 

「銀ちゃん……」

 

心配そうに見上げてくる神楽の頭に、軽く手を置く。太刀を肩に担いだ志乃も、ニッと笑った。

 

「てめーら信じて頼んでんだ。だったらてめーらも俺を信じろ」

 

「大丈夫、銀は何があっても死なせないよ。私が必ず護る」

 

「…………銀さん、志乃ちゃん。かぶき町で、また会いましょう」

 

新八と神楽は二人に背を向け、再び来た道を戻って走り出す。その背中を見送ってから、志乃は銀時の隣に立った。

しかし、不利な状況は変わらない。

相手は宇宙に名高い傭兵部族「辰羅」。少数ならまだしも、数がそこそこ多い。それにたった三人で挑もうというのだ。

 

「おぬしら、何をしに来たか知らんが女子供だけはこの修羅場から逃がしてやったつもりか。ムダじゃ、かぶき町に残る四天王勢力は鼠一匹たりとも逃さぬぞ。もちろん貴様も、次郎長も、"銀狼"も」

 

「そんなんじゃねーよ。相手がてめーらじゃ加減もできそうにねーんでな」

 

「オイてめェ私を女子供に含まなかったよな?よし決めた。ちょっと手加減してやろーかと思ってたけど決めたわ。お前ら全員皆殺しだ」

 

口元に笑みを浮かべながら、志乃は太刀を肩に担ぐ。抜刀した銀時も、彼女の言葉にのった。

 

「あーなるほどな。確かにこいつら全員皆殺しにすりゃ、早ェ話だな」

 

「でしょ?ねっ、でしょ?私ってば天才」

 

「……ククク」

 

得意げに言う志乃の耳に、別の男の笑い声が入ってくる。

 

「天下の次郎長と春雨相手に大見得切ってくれるじゃねーか、嬢ちゃん」

 

「でもゴチャゴチャ考えるよりかはマシでしょ?次郎長の旦那」

 

「あァ、わかりやすくていい」

 

次郎長はキセルの煙草を捨てると、それを懐に仕舞った。

 

「のったぜ嬢ちゃん。俺も皆殺しだ」

 

「お互い孤立無援。自分(てめー)以外の動く奴ァ根こそぎ叩き斬ればいいワケだ」

 

「最後に一人、ここに立ってた奴が勝ちってな。実にシンプルで(オイラ)好みだよ」

 

「どうでもいいけど私は巻き込まないでよ。アンタらバカ共の喧嘩なんざ、知ったこっちゃねーってんだ」

 

「お前さんも似たようなモンだろう」

 

広間に、三人の笑い声が響く。

この圧倒的不利な状況がわからないのか。華陀はゲラゲラ笑う銀時、志乃、次郎長に叫ぶ。

 

「……な、何が…………可笑しい。何を笑っているのじゃ‼︎貴様ら己の置かれた状況をわかっているのか!貴様らもこの街ももうおしまい……」

 

ドォッ‼︎

 

刹那、三人が一斉に動いた。不意打ち、と呼ぶにはあまりにも強力すぎる。辰羅はロクに抵抗する間も無く、三人に次々と吹っ飛ばされていた。

 

「クソジジイぃぃぃぃぃぃ‼︎」

 

「小僧ォォォォォォォォ‼︎」

 

銀時と次郎長が絶叫する中、二人がすれ違う。そのままお互いの背後の敵を斬り飛ばした。

志乃も銀時や次郎長と背中合わせになり、太刀に付着した血を払う。

 

「「俺が殺るまで死ぬんじゃねーぞ」」

 

まったく、このバカ共の殺し合いに巻き込まれなければいいが。

志乃は嘆息して、真っ直ぐに自分の標的ーー華陀を見据えた。

 

********

 

「お……お登勢ぇぇぇ‼︎」

 

「何故てめーがァァ‼︎何故屋根の上にィィ‼︎」

 

「お登勢……さま」

 

「お登勢さん……」

 

敵も味方も、突如現れたお登勢を驚愕の表情で見上げる。お登勢は呆れたようにフッと笑う。

 

「ったく、しょうがない奴等だよ。こんなボロ店ほっときゃいいのに。こんなに派手にやらかしちまって、ホントにありがたいバカ共だよ。つまらん喧嘩はこれでお開きにしようじゃないか。みんなウチの店においで。次郎長一家もオカマ一家もまとめて面倒みるよ、仲直りの宴会だ」

 

「は……はぁ⁉︎」

 

「ピラ子、アンタもだよ。アンタは色々やってくれたからね。タコ踊りの一発や二発やってもらうだけじゃ済まないよ」

 

「おっ……登勢」

 

この場を仕切るようにお登勢はパンパンと手を叩く。彼女の様子に苛立った源外が叫んだ。

 

「ババアぁぁぁ!何呑気なこと言ってんだ‼︎状況が見えねェのか、んな事言ってる場合じゃねーんだよ‼︎」

 

「用があんならさっさと済ましな。ホラいつまで寝てんだいアンタら。さっさとおし。こんなバーさんが重傷の身体引きずって来てんのに、立てねェとは言わさないよ。こんなバーさんが生き返ってきたのに、もう諦めたとは言わさないよ。つまらん喧嘩はおしまい。こっからが江戸の華……本物の喧嘩って奴じゃないかい」

 

自分達の街を護れるのは、自分達しかいない。そうしてかぶき町の住民達は、この街を護ってきた。

やり方は違っても向いている方向はバラバラでも、みんなの気持ちは同じなのだ。みんな、かぶき町が好きなだけなのだ。

彼女の言葉を聞いた時雪は、バッと地上に立つ全員を振り返る。

 

「皆さん、聞いてください!まだ希望は残ってます!志乃が残してくれた、最後の希望が……‼︎」

 

しかしその時、辰羅二人が動いた。手始めに、屋根の上に立つお登勢を狙ったのだ。

 

「‼︎お登勢さっ……」

 

時雪が振り仰いだ瞬間、お登勢に迫った辰羅の額に、クナイが撃ち込まれる。

お登勢の背後から現れた赤い影は、両手に持った小太刀を辰羅の喉に突き刺し、そのまま地面へと叩きつけた。

 

「言うたやろ。お登勢さんに手ェ出したら殺すて」

 

小太刀を引き抜いたその人物は、赤い髪を揺らして立ち上がった。忍者にしては目立つ忍装束。だが隠密をほとんど捨てた彼女にとって、それは些末な事に過ぎない。

彼女の姿を見たヤクザ達が騒ぐ。

 

「おっ……お前は……"赤猫"⁉︎」

 

「バカな‼︎この混乱に乗じて『獣衆』まで動き……」

 

ドスッ

 

最後まで言い切る前に、"赤猫"ーーお瀧のクナイがヤクザ達の顔のすぐ横を通って、壁に突き刺さる。

 

「アンタらいつまで人を誤解したら気ィ済むんや。この街を大切に思とる棟梁が、そないな事するわけないやろ」

 

辰羅達の敵意が、今度はお瀧一人に向けられる。クナイと小太刀を構えたまま、お瀧は襲い来る辰羅を倒していく。

 

「ウチかてな、この街には恩義を抱いとるんや。この街は、はみ出しモンのウチらを受け入れてくれた。人殺しのバケモンやなく、人間として受け入れてくれた……。せやからウチはこの命賭してでも、この街を護る!」

 

一人二人と、敵の首を正確に狙って斬りつけていく。

その時、彼女の背後に三人が回り込んできた。

 

「お瀧さん‼︎」

 

たまが彼女を案じて叫んだ次の瞬間。

 

ーーズドォ‼︎

 

ーーズバッ‼︎

 

ーードキュン‼︎

 

一人は背中から手で体を貫通され。

一人は薙刀で体を斬りつけられ。

一人は銃弾で心臓を撃ち抜かれた。

お瀧は背後を見ることなく、溜息を吐く。

 

「何ですか助けてやったのにその態度は。泣いて伏して喜びなさいニャン公が」

 

「八雲、苛立ちならば敵に向けろ。今はアホな喧嘩をしている場合じゃないんだ」

 

「そうそう、こいつら全員メチャクチャにしちゃっていいんでしょ?なら、私達の得意分野だわ」

 

カツカツと歩いてくる三人。その姿を見た全員が、驚愕を顔に浮かべる。

 

「なっ……"白狐"⁉︎"黒虎"に"金獅子"……『獣衆』全員だとォ⁉︎」

 

「まさかアレ、全部志乃ちゃんが……?」

 

辰巳が時雪に問う。時雪は彼女を見て頷き、再び『獣衆』に視線を投げた。

 

「はい。志乃は恐らく、最初から華陀の裏切りを予測していました。華陀の背後に何がついているかも……。だから、宇宙三大傭兵部族『辰羅』に対抗できる勢力を温存していたんです。自分は華陀を狙うために」

 

「でも、何でそんなことを……」

 

重ねて尋ねるお妙に、時雪は眉を顰めながら首を振った。

 

「……わかりません。何で志乃が、華陀の本性に気づいていたのか。志乃は一人、何か目的を成し遂げようとしているみたいなんです。それが何かはわかりませんが……」

 

「目的……?」

 

こちらを覗き込んでくる視線に、思わず俯いてしまう。

何故あいつはいつもいつも、俺に何の相談もしないで行ってしまうのだろう。自分一人で全てを抱え込んで、自分一人で解決しようとしてしまうのだろう。

そんなにも、俺は頼りないか。そう考えると、時雪は悔しくて悔しくて堪らなかった。

 

「だったら、帰ってきたらあの志乃(バカ)に一発ぶち込んでやったらいい」

 

「……橘さん?」

 

「拳でも何でもいい。アイツが二度と自分一人で抱え込まんようにしてやればいい。何だったら叱ってやれ。そうでもせんと、あのバカは止まらん」

 

薙刀を肩にかけた橘は、嘆息して時雪を見下ろす。曲がりなりにも志乃を育ててきた彼も、彼女のその性格を持て余していたのだ。

時雪が答える前に、再び辰羅との戦闘に入る橘。

しかし時雪の背後から、辰羅の刃が襲いかかった。




お気に入り100件突破しました!ありがとうございます!

こんなほぼ息抜きみたいなくっだらねー小説がここまで来れたのも、皆様のおかげです。
本当にありがとうございました!
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