銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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いよいよオリジナル長篇いくぞ!の前に必要なので頑張ります
悪党と正義の味方は紙一重


「……はーっ…………」

 

「志乃、こっちだ」

 

高杉に報酬として連れてもらった、春雨の拠点母船。

はっきり言おう。デカい。

志乃はその大きさに圧倒されながらも、流石は宇宙最大の犯罪シンジゲートだなぁ……と感心し、敵地にいることを忘れていた。

 

高杉が先に歩くのに、ついていく。

彼の背中は昔と変わらず大きかった。それだけなら、同じなのに。

……一体何が、彼を変えてしまったのか。どうしても、志乃にはそれがわからなかった。

 

苦労して捕まえた華陀を春雨に引き渡し、提督の元に案内される。

すれ違う天人達が自分の姿を見て何やらざわついたり驚いたりしていた。

まぁ当然といえば当然の反応だ。

何せ、銀狼は元老が最も注目する存在。その末裔である志乃の名が、春雨全体に伝わっていてもおかしくない。

しかし、特に気にする素振りも見せずに進む。

 

自分には、やらなくてはならないことがある。たとえ一人でも、カタをつけなければならない男がいる。

彼のことを調べるために、志乃は高杉の依頼を受け、春雨の母船まで連れてきてもらったのだ。

 

ーー絶対にお前の尻尾を掴んでやらァ、杉浦よォ。

 

志乃は決意を新たに、足を早めた。

 

********

 

部屋には、長いテーブルに志乃と提督が向かい合わせで座っていた。高杉は部屋の外で待っている。

 

「これはこれは、遠路遥々よく来てくれた。ワシが春雨十二師団を率いる阿呆提督だ」

 

「は?アホ?」

 

「誰がアホだ小娘がァ‼︎」

 

「あっすいまっせん聞き間違えました、すいまっせん!」

 

怒り狂う阿呆提督に平謝りをして、志乃は彼を改めて見つめた。

一言で片付けると、ただのブタ。腹の脂肪が多く、拳での貫通は難しそうだと何とも危ない推測を立てていた。

阿呆提督は必死に謝る志乃を見て、これ以上怒れず、溜息を吐く。

 

「まぁよい。今回だけは見逃してやる」

 

「本当にすみません、阿呆提督。あ、改めましてどうも、霧島志乃です」

 

にこ、と薄っぺらい笑顔を顔に貼り付ける。いわば営業スマイルというやつだ。

交渉の場で笑顔を向けられれば人は敵意を向けにくいと聞いたが、さて今回の相手はデブでも立派な海賊だ。一筋縄でいくかどうか。

 

「実は今回、私の私情でこちらの資料室もしくはコンピュータを貸していただきたく、参上しました」

 

「何が目的だ?」

 

「ええ、私は今、とある男との戦いを控えております。私は基本戦いを好まないのですが、その相手の正体が一切わからない状態なのです。素性の知れない相手を殴るなんて私にはできませんし、何よりなかなか証拠を掴ませない奴でしてね、とても困っていたんです。なので、宇宙最大の犯罪シンジゲートであるこちらの資料室かコンピュータならば、彼の正体を掴めるかも、と踏んで来ました」

 

「ほう?」

 

「ご安心を。私はここにいる間、貴方方へ危害を加えないと約束します。目的さえ果たして無事地球へ帰れるなら、私はそれでいいのです。もちろん貴方方にも、私には一切手を出さないと約束していただけるのなら、の話ですが」

 

阿呆提督は、にこりと微笑む志乃の話を黙って聞いていた。

目の前にいるのは、銀狼。元老院だけでなく、春雨と密約を結んだ天導衆も欲しがる最恐の女。

そんな女が、敵地であるこの春雨にやってきて、しかもここにいる間は一切攻撃しないと言うのだ。

だが、それについて出された条件が面倒だ。

私は暴れない。その代わり、お前達も私に手を出すな。そう言っている。

そもそも彼女は、高杉の客としてここに来た。

つまり高杉さえいなくなれば、彼女は地球へ戻る足を無くし、この母艦に閉じ込めることができる。

頭の中でそう計算した阿呆提督は、ニヤリと笑った。

 

「よかろう。そちの希望と条件、両方呑んでやる」

 

「ホントですか?ありがとうございます!」

 

にこっと先程よりも子供らしい笑顔に変わった志乃。

いくら銀狼と恐れられても、所詮ただの子供。阿呆提督の笑みはさらに深くなるばかりだった。

 

********

 

部屋を出ると、柱に寄りかかってキセルを吹かしていた高杉が目に入った。

派手な紫色の着物を着崩している姿は、どこにいても目立つ。そんな事を考えつつ、志乃は彼の元に駆け寄った。

 

「高杉!」

 

「終わったか」

 

「うん、貸してもらえることになったよ。連れてきてくれてありがとね」

 

高杉は志乃を見るなりキセルに入れた煙草を捨て、懐にしまう。彼女が自分の目の前で立ち止まり、見上げて感謝の言葉を述べると微笑んで返した。

その笑みはいつもの薄笑いではなく、昔のような優しい眼差し。

こんなに愛おしい存在は、宇宙中のどこを探しても目の前の少女しかいない。

 

「さてと、早速資料室に行きたいんだけど……どうしよ。そこら辺の人に聞けばわかるかな」

 

「案内してやる。こっちだ」

 

「あ、待って!」

 

先に歩き出すと、小走りで志乃が隣までやってくる。

まだ小さい足が忙しなくパタパタと動き、高杉についていこうと歩みを止めない。

廊下をしばらく歩いていると、広い場所へ出てきた。四方向に入り口があり、そこからまた色んな部屋へ行けるのだろう。

高杉が真っ直ぐ進むのを見て、志乃もついていった。

その時、誰かとすれ違う。すると隣を歩く高杉が、ふと足を止めた。

 

「?」

 

それに倣って、志乃も歩みを止める。

キョトンとして高杉を見上げたが、彼は肩越しに背後を振り返っていた。

 

「高杉……?」

 

名前を呼んでみても、視線を背後の人物に向けてこちらを見ることはない。

誰を見ているのだろうか。疑問が湧き上がって、志乃も彼に倣って振り返る。

刹那、感じたことのある視線が自分に集中したのに気がついた。

あれは確か、吉原で感じたものと同じ。獲物を狙う獣のような、鋭い視線。

ようやくそれを認めると、志乃は大きな目を見開いた。

 

「か……かむ、」

 

言い終わる前に、体を温もりが包み込む。黒いチャイナ服とサーモンピンクの三つ編みが視界に入った。

 

「久しぶり、志乃。……ずっと、会いたかったよ」

 

「か、神威……」

 

そうだ。今の今まで忘れていた。

ここは、春雨の本部。ならば、春雨第七師団の団長を務める神威がいても、何らおかしくなかった。

志乃は抱きしめてくる神威を押し飛ばそうとしたが、その分腕の力を強くされた。

その時、ジッとこちらを見つめてくる視線に、ハッとした。

傍らから見下ろしてくる、冷たい視線。高杉だ。

 

ーーちょ、これってマズいんじゃ……⁉︎

 

一瞬で自分の危機を察した志乃は、神威の腕の中から逃れようと暴れる。

 

「放せ。私にゃアンタと再会を喜んでるような時間はないの」

 

「何でこんな所にいるの?迎えに行くから待っててって言ったのに」

 

「お前に迎えを頼んだ覚えはねェ、さっさと放せバカ」

 

「ヤダよ」

 

「ふざけろすっとこどっこい‼︎」

 

罵倒を交えて神威を引き離そうとするも、流石は夜兎と言ったところか、ビクともしない。

正当防衛として殴ってもいいんじゃないかと思ったが、先程阿呆提督に「お互い手を出さない」と約束してしまったため、どうしようもない。

志乃は後ろでやれやれと肩を竦めている阿伏兎に叫んだ。

 

「ちょっと阿伏兎さん、何他人事みたいな顔してんの!アンタんとこのバカ団長なんとかしてよ!」

 

「あー、ハイハイ。団長、アンタ提督に呼ばれてるだろ。早く行くぞ」

 

「えー?そんなの別によくない?」

 

「いいわけあるか!さっさと行くぞ!」

 

駄々をこねていた神威だったが、阿伏兎が首根っこを掴んで引き剥がしたおかげで、ようやく志乃は解放された。

ゼーゼーと肩で息をする志乃の手を、ずっと黙っていた高杉が掴む。

 

「行くぞ」

 

「へ?わ、ちょっと!」

 

有無を言わせず引っ張られ、つんのめりながらも志乃は歩き出した。

阿伏兎に引きずられている神威は、去っていく二人の背中を見つめ、ボソッと呟く。

 

「…………俺が迎えに行くまで、他の男作っちゃダメって言ったのになぁ」

 

「アレ、嬢ちゃんの男だったのか?嬢ちゃんもあんな可愛いツラして、随分とおっかねェ男選ぶもんだな」

 

神威の呟きを聞き留めた阿伏兎が、独白のように言う。

二人は知らない。何故彼が、志乃に執着するかを。

そして、志乃も知らない。彼が自分に執着する理由を。

 

********

 

高杉に引っ張られて到着した資料室。想像していたよりも大きく、志乃はまたまた呆然としてしまった。

 

「資料はこの奥にもあります。パソコンも完備しておりますので、どうぞご自由にお使いください」

 

「ありがとう、おじさん達」

 

部屋を一通り案内してくれた天人に、礼を言う。

彼がそそくさと退散すると、高杉が彼女を見下ろして言った。

 

「用事が済んだら帰ってこい。すぐに船で送ってやる」

 

「うん、わかった」

 

頷いて答えた彼女の頬に、高杉が手を添える。

突然のことに志乃はビクリと肩を揺らして、高杉を見上げる。

 

「お前……あの男と知り合いか?」

 

「え?う、うん。前に一度会って……」

 

ずいっと顔を近づけると、怯えたように眉を下げた。

 

「以前、この俺を差し置いて好きな野郎がいると言っていたな。奴のことか?」

 

「違う!あいつは何でもない!」

 

「そうかい」

 

即答した志乃に、高杉はさらに顔を寄せ、コツンと額を突き合わせた。

 

「なら、いい。お前の恋人とやらは地球にいるんだろうが……ここにいる間は俺に従え。わかってるよなァ、志乃?お前は俺がいねェと、ここから逃げることすら叶わねえ」

 

「…………」

 

「……奴とは関わるな」

 

そう言い残し、志乃から離れ、背を向けた。

志乃は黙って彼の背中を見ていたが、ふと溜息を吐き、髪を搔き上げる。

 

「向こうからまとわりつかれた場合はどうすりゃいいんですかね、お兄さん」

 

そう尋ねた時既に、高杉は資料室を後にしていた。

相変わらずだ、と志乃は思った。

一度別れて以来、変わってしまったと思っていたが、根本的な部分は昔の彼と変わっていないように思えた。(あたし)のことを想い、護ってくれたあの頃の彼と。

 

「さてと、始めますか」

 

扉から背を向けて、ぐーっと伸びをする。

パソコンを立ち上げてから、簪を取り出し、髪をまとめた。

 

********

 

「…………ぅう……」

 

数時間後。志乃は、机の上に突っ伏していた。

ありとあらゆる情報を引っ掻き集めてみたものの、これといった情報は一切無かった。

なかなか尻尾を掴ませない男、と言えば聞こえはいいだろうが、今の志乃の機嫌は最悪だ。

 

「くっそォ……野郎、見つけたら絶対ェぶちのめす」

 

溜息を吐いて、ガシガシと頭を掻いた。このままだと確実にストレスでハゲそうだ。

というか、元々情報収集なんてガラじゃなかったのだ。いつもならお瀧に任せるところだが、今回は自分で何とかしたかった。

 

一族の問題は、一族で何とかしなくてはならない。

 

再び嘆息して、椅子に凭れかかる。

宙を仰ぎ見ていると、チラリと見覚えのあるサーモンピンクが目に入った。

 

「志乃っ」

 

「どわあ⁉︎」

 

視界いっぱいに、神威の笑顔。

驚いた志乃は、体を急いで起こしてしまった。

すると、

 

ゴチン!

 

「いってェェェ‼︎」

 

「痛っ」

 

志乃がちょうど起き上がったため、額同士が勢いよくぶつかり合った。

夜兎の神威の頭は意外と固く、当たり負けした志乃は額を押さえて塞ぎ込んだ。

 

「ったぁ〜……」

 

「大丈夫?志乃」

 

「うっせぇ!誰のせいだと思ってんだ、このすっとこどっこい!」

 

神威が志乃の顔を覗き込む。その笑顔にイラついた志乃は涙目でキッと睨みつけるが、もちろん彼はそれに動じない。

神威はスッと彼女の座っていた机の上に、カフェオレを置いた。

 

「はい、コレ」

 

「!」

 

「なんか作業してたんでしょ?お疲れ様。ちょっとくらい休憩入れないと、体が保たないよ」

 

「…………」

 

志乃はキョトンとしてカフェオレと神威の顔を交互に見る。

神威にしては気がきくと思ったが、こんな奴が常識なんて持ち合わせているはずがない。罠じゃないかと不安になった。

神威は隣の椅子を引いて、背凭れの方を向いて座った。

 

「どうしたの?」

 

「……いや、何でもない。ありがと」

 

……まあ、せっかく持ってきてくれたのに、その好意を無下にする理由もないか。

視線で促され、志乃はようやくカフェオレに手をつけた。一杯呷り、こくりと飲み干す。

 

「志乃、ちょっと疲れたんじゃない?散歩も兼ねて、デートしない?」

 

「確かにまぁ疲れたけど、デートはしないよ」

 

「えー?」

 

「えーじゃない。大体私は客として春雨に来てんだぞ。ナンパ目的なら消えろ。もしくはブラックホールに飲み込まれろバーカ」

 

プイとそっぽを向くと、神威は志乃の両頬を挟んで、こちらを向けさせた。

 

「志乃さ、」

 

「?」

 

「タカスギシンスケと知り合いなの?」

 

志乃は大きく目を見開いて、こくりと頷いた。

 

「あいつ何?彼氏?」

 

「何であんな奴と付き合わなきゃならねーんだよ。こっちから願い下げだバカヤロー」

 

「違うの?」

 

「当たり前でしょ。大体あいつ、私の兄貴分だよ?」

 

溜息を吐いて、神威の手を掴んで離す。

 

「……アンタ、高杉(あいつ)と同じこと言うんだね」

 

「?」

 

「何でもない」

 

神威から視線を逸らして、もう一口カフェオレを飲む。

フゥと息を吐いた瞬間、ふと、視界が歪んだ気がした。

零してはいけないと、カップを机に置く。頭がボーッとして、思わず神威に倒れかかった。

 

「大丈夫?」

 

「ぅ……頭、が……くらくらする……」

 

「そう?じゃあ……ゆっくりおやすみ」

 

耳元に落とされた囁きを最後に、志乃は重たくなる瞼を閉じた。

 

********

 

神威は動かなくなった彼女を抱きしめ、顔を寄せる。

ブルーライトに照らされた美しい銀髪、きめ細かな白い肌。目を閉じたせいで切れ長の赤い目は見れないが、それだけでも充分だった。

そして、以前吉原で出会った時とは違う着物を纏っている。藤色の着流しは彼女の肌の白さや銀髪と映えていて、とても似合っていた。

催眠薬でぐっすり眠る志乃に、顔を近づける。顎を持ち上げ、その小さな唇を塞いだ。

 

「ん……」

 

「……っはぁ…………」

 

何故ここまで彼女に執着するのか。自分でもわからなかった。

今まで何度も獲物に執着したことはあったが、この少女は吉原で幾度か拳を交えた銀狼だ。

もちろん、獲物として殺す対象でもあるが、志乃に対するこの感情は少し違うように感じられた。

 

何というか、どこにも行ってほしくない、と言うか。

彼女に「自分の子供を産んでもらう」と一方的に約束を取り付けたのは、ある意味他の男に渡したくないから、とも言える。

それは最早、一種の束縛だ。誰にも触れてほしくない。誰にも汚されたくないーー。

 

神威は体を預けた志乃を椅子に戻し、座らせる。ふと、髪をまとめていた簪に目がいった。

自分が髪紐を奪ってから、手に入れたのだろう。男がプレゼントしたならば、今すぐにでもこれを壊してその男を消したくなった。

 

その時、部屋の扉が開く。

そこから誰かが入ってくるのが、足音でわかった。

 

「そこで何をしてやがる」

 

振り向かなくてもわかる、怒気を孕んだ声。その怒りは、はっきりと自分に向けられていた。

 

「別に何もしてないよ?強いて言うなら眠り姫の護衛でもしてた、かな?」

 

肩越しに振り返ると、高杉が睨むように見つめていた。肌にピリピリと感じる殺気に思わず頬が緩み、笑みがこぼれる。

 

「やっぱりね。霧島志乃をダシに使えば、きっと現れると思ってたよ」

 

「…………」

 

「おかげで、こっちから探す手間が省けたや」

 

志乃を起こさないように、立ち上がる。そして、いつもの笑顔で軽く手を挙げた。

 

「やぁ……また会ったね」

 

対する高杉は、神威を睨みつけるばかり。そんな今にも一触即発な空気の中、催眠薬を飲まされた志乃はぐっすり眠っていた。

 

「単刀直入で悪いんだけど、どのタイミングで言ってもきっと驚くから言うよ。死んでもらうよ」

 

「………………別に驚きゃしねーよ……最初に会った時からツラにそう書いてあったぜ」

 

「流石に察しがいいや。実は以前侍って奴をこの目にしてから、こうしてやり合いたくてウズウズしてたんだ。何でだろう、微かだけどあんたからはあの侍と同じ匂いがしたのさ」

 

あの侍。神威は知らないのか名前こそ出さなかったが、高杉には誰かすぐにわかった。

戦争が終わったあの時、自分にも桂にも何も言わずに、黙って志乃を連れ去ったあの男のことだと。

白髪の天然パーマを靡かせた後ろ姿が思い浮かび、思わず口角が上がる。

 

「奇遇だな。俺もその白髪のバカ侍を殺したくてウズウズしてんだ」

 

「………………察しがいいというより超能力でも使えるみたいだね。その左目に秘密でもあるのかな」

 

「フン」

 

その時、三人を中心に取り囲む気配がした。

 

「神威‼︎」

 

神威の後ろに、狼頭の春雨第八師団団長、勾狼が部下を引き連れて現れた。神威、高杉、志乃を取り囲む彼らも、勾狼の部下らしい。

 

「邪魔はするなと言ったはずだよね」

 

「………………邪魔なんざしねーよ」

 

勾狼がニヤリと笑った次の瞬間、背中に貫かれるような痛みが走る。背中を肩越しに見やると、矢が四本、突き刺さっていた。

 

「あり?」

 

「神威……俺達が殺りにきたのは、てめーだ」

 

ガチャ、という音と共に、再び矢が放たれる。矢には何やら毒が塗り込められているらしく、さしもの神威も膝をついてしまった。

勾狼の影から、さらに現れたのは、阿呆提督。

 

「今までよく働いてくれた、神威。だがな、貴様等夜兎の血は危険すぎる。組織において貴様等の存在は軋轢しか生まん。斬れすぎる刃は嫌われるのだ、神威よ」

 

「こいつあ参ったね。アホ提督に一本とられるたァ」

 

ふらつく足を叱咤して立ち上がろうとした先には、刀に手をかけた高杉が立ちはだかる。

 

銀時(バカ)はてめーの代わりに俺が殺っといてやらァ。もちろん志乃(コイツ)も俺がちゃんと貰ってやるよ。だから、安心して死んでいきな」

 

何とか顔を上げた神威の視線の先に、椅子に座って眠る志乃があった。

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