銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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暗号は解読するのが難しいからこそ暗号

にこ、と笑んだ医者ーーいや、医者に憑依した杉浦が、ヒラヒラと手を振る。

次の瞬間、怒りの形相で沖田が抜刀していた。

 

「総悟‼︎」

 

近藤の声も聞き止めず、殺気剥き出しで医者に飛びかかろうとしたその時。

 

「いいんですか〜?」

 

クスクスと楽しげに笑いながら、杉浦が言う。

 

「今の俺は、この医者の体を借りている。もし俺を斬っちゃったら、お医者さんが死んじゃいますね☆あはっ」

 

「っっ……てめェッ……‼︎」

 

「そんな怒らないでくださいよォ〜」

 

あっはっはっはっはっ、と殺気に満ちた空間に、杉浦の呑気な笑い声が響く。それを恨めしそうに聞きながら、沖田は刀を納めた。

 

「さて、現在病院にいる霧島志乃ちゃんですけど……何やらヤバイ状況みたいですね〜」

 

「すっとぼけやがって。どうせテメーが仕掛けたことだろ」

 

「あはっ、バレちゃいました?ま、正解なんですけどね。さっすが土方さん!」

 

チッ、と舌打ちを返され、杉浦は再び話し始める。

 

「そうですよ。今回も辻斬りの件も、全て俺が仕組みました。理由ですか?そんなの簡単ですよ。前に言ったでしょ?俺は、霧島志乃を壊すって。その時が今なんですよ」

 

「いまいち要領を得ねェな。もっとわかりやすく説明しろ」

 

「はーい」

 

能天気な返事に、土方は再び舌打ちする。コホンと一つ咳払いをしてから、杉浦は語り出した。

 

「皆さん気づいてないんですか?最近あの娘がおかしいことに。あの娘の目が、虚ろになる瞬間があることに。それこそ、俺がずっと待っていた瞬間なんですよ。霧島志乃は、銀狼に目覚め始めている」

 

杉浦は部屋にあるベッドに腰かけて、続けた。

 

「今までだって貴方達は、その片鱗を見てきたはずだ。エネルギー砲をぶった斬ったり、ヘリコプターだって一刀両断。こんなの、人間ができる技じゃないんです。これらを見て、俺はピンときましたね……霧島志乃は、近い内に覚醒すると」

 

「…………」

 

「銀狼に覚醒したら……志乃は一体、どうなるんですか」

 

時雪が震える声で尋ね、それに杉浦が答えた。

 

「全てを殺すまで、止まらない。視界に映るもの、無機物から生命に至るまで、何もかもを壊すまで、銀狼は永遠に戦い続ける」

 

「‼︎」

 

「もし今、志乃が銀狼に目覚めたら……ふふっ。まぁまずは江戸の街が廃墟になりますかね。かぶき町も城も、ターミナルもぜーんぶぶっ壊して、人も街も跡形も残らないくらいに」

 

「そんなこと、志乃ちゃんがするはずないアル‼︎志乃ちゃんは、自分の暮らすこの世界が大好きだって言ってたネ」

 

杉浦の言葉に反論したのは、志乃の親友である神楽だった。志乃が自分の血の力を恐れていたのは、同じ境遇にある彼女が何より知っていた。

しかし、杉浦はどこ吹く風だ。

 

「おやおや?随分と銀狼の血を甘く見ているらしいね、夜兎のお嬢さん。でも君だって同じだろう?口ではいくら綺麗事を並べても、結局自分の本能にはあっさりと負けてしまう。所詮獣はその程度だってことだよ」

 

「ッ……‼︎」

 

神楽が悔しさにギリ、と歯を噛みしめる。自分は吉原で阿伏兎と戦った時、自分の血の力に負けてしまった。

図星を突かれ、何も言い返せないでいると、口を挟んできたのは銀時だった。

 

「……さっきからゴチャゴチャうるせーな、てめーは。どうにも妙だったんだよなァ。何でお前はそこまで銀狼を知ってるんだ?銀狼の血筋なんて、この世にゃもう志乃(あいつ)しかいねェだろうが。なのに気持ち悪ィくらい詳しすぎるんだよ。熱烈なファンか?」

 

「こんな血塗られた一族にファンなんかいるはずないじゃないですか」

 

「そうでもねーさ。志乃を見てみろ。幕府だけじゃねェ、鬼兵隊や春雨、さらには中央暗部に至るまで大人気だ。ま、中には振り向いてくれなきゃ殺すなんていう、とんでもねぇメンヘラファンもいるがな」

 

「だから、俺をそんなアホ共と一緒にしないでくださいって言ってるでしょ。話聞いてます?」

 

「ワリーな」

 

杉浦の表情から、笑みが消える。

代わりに銀時が口角を上げて、木刀を向けた。

 

「俺ァ男の長話にゃ興味ねーんだ。早いとこお前の居場所を吐いてくれるとありがてェ。嫌だってんなら、その体ごとめちゃくちゃにしてやるけどな」

 

「…………チッ」

 

憎々しげに舌打ちをした杉浦は、一息吐いて銀時を睨みつける。彼は、自分自身を探られることを最も嫌う。

 

「……仕方ありませんね。俺もそう簡単に霧島志乃に死なれちゃ困るんですよ。あの女には、俺の元へ来て大立ち回りを演じてもらわなきゃならねーんでね」

 

「その代役は俺が務めてやるよ。それで充分だろ?」

 

「いいえ、全く物足りません。何てったって、化け物同士の戦いなんですから」

 

杉浦に、いつもの笑みが帰ってくる。

 

「ま、いいでしょう。『白夜』は今、俺の手元にある。この紙に書いてある場所で待ってる、と志乃に伝えてください」

 

杉浦がパチンと指を鳴らすと、銀時の掌に一枚の紙切れが落ちてくる。その紙には、こう書いてあった。

 

『16 ー 32 21 41 17 6 8 25 15 3 10 22 12 25 824 62 46』

 

「……?何だコレ」

 

「勘の鋭い志乃なら、すぐにわかると思いますがね。では、ごきげんよう」

 

にこ、と最後にもう一度微笑んでから、杉浦の気配が消え、医者の意識が戻ってきた。

 

「……あ、あれ?皆さん、私は一体何を……」

 

キョロキョロと辺りを見渡す医者を無視して、銀時達は互いに顔を見合わせ、謎の数列に目を落とした。




暗号もし解読できた方がいらっしゃれば、是非教えてください。
正解発表は、作中でします。
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