ある日、志乃が日課である散歩をしていた時。
小春の団子屋で一服しようとスキップしていると、足がもつれてベタッと転んだ。
「わぷっ!」
この年で転ぶなんて恥ずかしい……。
そう思いながらも体を起こそうと手をつくと、スッと目の前に手が差し出された。
「あ、ありがとう」
差し出した手の主に礼を言うと……手の主は、ぱっちりおめめのペンギンみたいなわけのわからない確実に人間ではない生物だった。
それを見た瞬間、志乃はすごい勢いで後退る。
「ギャーーーー!!な、何コレ気持ち悪いぃぃぃぃ!!」
「気持ち悪くない、エリザベスだァァァ!!」
「あだっ!?」
すかさず入った桂の拳に、志乃は頭を抑える。
「エ、エリザベス……?何ソレ」
「坂本のバカがこの間俺の所に来て勝手に置いていったんだ。大方どこぞの星で拾ってきたんだろう。相変わらず宇宙航海などにうつつを抜かしているらしいからな」
「へぇ〜辰兄ィが?でもさ、ヅラ兄ィ地球外生物は嫌いじゃなかった?」
「こんな思想もない者をどう嫌いになれというんだ。それに……結構カワイイだろう?」
桂はそう言ってエリザベスを連れてさっさと行ってしまった。
その間、志乃の思考が停止していたことは言うまでもない。
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昼。この日は全員で集まって食事をしようと約束していたため、全員が万事屋に戻った。
志乃はさっさと机に向かい、テレビをつける。
元々志乃は、料理ができない。そういう人は、無駄に台所に立つよりさっさと退散した方がいい。
テレビでは、宇宙で一匹変てこペットグランプリを開催しており、志乃は他のメンバーが料理している間見ることにした。
「……え?」
志乃は、見覚えのある顔の登場に、思わず固まった。
「ちょっと!みんな来て!!」
「何?どうかしたの志乃」
「テレビ!テレビ見てよ!!」
時雪たちが、一斉にテレビに視線を送る。
そこには、定春を連れた銀時と新八と神楽が、坂田さんファミリーとして登場していた。
「坂田さんファミリぃぃぃぃ!?」
「な、何しとんねんあいつら!?」
「そういえば、このグランプリで優勝したペットには豪華賞品が貰えるそうですよ」
「それで参加したのか……」
「欲に目が眩んだのね。ご愁傷様」
時雪たちが口々に言う。言いたい放題だ。
定春は銀時に噛み付き離れない。銀時の頭からは血が出ていた。
志乃にとってはもはや見慣れた光景なのだが、時雪たちは皆真っ青になっていた。
定春を叱ろうとした神楽は、間違えてADに注意する。緊張でどうやらおかしくなってしまったらしい。
ここで、CMになった。
「……ねえ、銀時のところにあんなデカい犬いたかしら?」
「定春ってんだよ。気を付けな。あいつ凶暴だから」
「うん……だろうね」
時雪の目が完全に死んでいる。
CM後、対戦相手が出てきた。
そこには、桂がキャプテン・カツーラに変装して、エリザベスと共に登場している姿があった。
「……何やってんのあいつ?」
「あれ?桂さんて指名手配されてるんじゃなかったっけ?」
「あの衣装絶対気に入ってますよね」
「あのペンギンオバケ何よ。キモい」
「エリザベス?だったっけ。なんか、辰兄ィが連れてきたんだって。やっぱヅラ兄ィと並んでるとキモさが倍増するね」
「……志乃、言い過ぎはいけない」
ボソッと橘が志乃にツッコミを入れた。
そんなこんなで、番組は進んでいく。
フライドチキンの骨を取ってきた方が勝ちという、ごく簡単なルールにより、グランプリが決定されるらしい。
銀時と桂は男らしく殴り合いをしようとしていたが、当然司会者に止められた。
そしていよいよ、競技に移った。
「それじゃあいきますよォオ。位置についてェェよ〜〜い、ど〜〜ん‼︎」
司会者の合図と共に、エリザベスと定春が走り出した。
しかし、定春は銀時に襲いかかる。
「え、ちょ……銀時さん!?」
「あーあ……うん、ザマァ」
テレビを見ながら時雪は銀時を案じ、小春は銀時を貶した。
一方、エリザベスはものスゴイスピードで走っていく。
だが、エリザベスの足が一瞬オッさんのように見えた。
それを解説する司会者に、桂が詰め寄る。
「言いがかりは止めろ。エリザベスはこの日のために特訓を重ねたんだ。オッさんとかそんなこと言うな!」
「あ……スンマセン」
「……え、マジ?私あの時オッさんに手を差し伸べられたの!?ウソヤダ怖い!!」
「わかったわ、志乃ちゃん。今度ヅラに会ったらあいつのペットを撃ち抜いてくるわ」
「いややめてくださいよ!?」
小春の殺気を、時雪がツッコミを入れて止める。
一方、テレビでは神楽が銀時を傘で持ち上げ、ぶん投げた。銀時をエサにして、定春を追いかけさせる作戦らしい。
投げられた銀時はエリザベスの背中に命中し、それを定春が追いかけてくる。
しかしその中でも、エリザベスは骨を掴もうと手を伸ばした。
それを、銀時が木刀をエリザベスの首元にまわし、阻止する。
「豪華賞品は渡さん」
銀時を、桂が首を絞めて止めようとする。
「エリザベスを離せェェ!!豪華賞品は俺とエリザベスのも……」
言い終わる前に、桂の頭から血が滴る。
定春が、桂の頭に噛みついていた。
「…………フン。なんだかんだ言っても、御主人様が好きか?だが、それ以上噛みつこうものなら君の御主人の首を折るぞ!!さあどーする?」
「どーするじゃねーよ!!通じるわきゃねーだろ!!」
「てめーらよォ!!競技変わってんじゃねーか!!頼むから普通にやってくれェ!!放送出来ねーよコレ」
「放送など知ったことか!!」
最早何の競技かわからなくなってきたが、これはあくまでペットの番組である。
それを、志乃たちはお互いに確認し合った。
だが。
「あーもういいっスわ〜。なんかだるい」
突然、今まで一言も喋らなかったエリザベスが声を発した。
銀時、桂、観客、そしてテレビを見ている志乃たちも驚いた。
そんな中、エリザベスの口の中から、人間の手が出てくる。
「もう帰るんで、ちょっと上どけてもらえますぅ?」
「あ"あ"あ"あ"あ"コレは……」
「……ウソだろ。エリザベ……」
プチン
ここでテレビが消え、その後しばらくお待ちくださいという文字が出てきた。
「「「「「「……………………」」」」」」
「……んだよそりゃねーだろォォォォ!!エリザベスに何があったのさァァァ!!オイッ!!エリザベスぅぅぅ!!」
昼下がりの万事屋に、志乃の轟が響いた。
次回、お姫様が登場します。