銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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旅する時には忘れ物に注意

その日、志乃はいつものように差し入れのパンの耳と共に銀時たちの元へ遊びに来ていた。

 

「あれ?そーいや神楽は?」

 

「お使いに行ってるよ」

 

「へー。トイレットペーパー?」

 

「えっ……何でわかるの志乃ちゃん」

 

「安売り今日までだから大量に買っとくってトッキーが言ってた」

 

「時雪さん男だろ!?ベテランの主婦か!!」

 

新八とくだらない話をしながら時間を潰していると、神楽が帰ってきた。

 

「あっ、おかえり神楽ちゃん」

 

神楽は荷物を持って帰ってきたが、何やらニヤニヤして仁王立ちをしていた。

 

「………………?」

 

「何やってんだオメー」

 

「ムフフ。跪くアル愚民達よ」

 

「「あ?」」

 

「は?」

 

「頭が高いって言ってんだヨこの貧乏侍どもが‼︎工場長とお呼び!」

 

「女王様の方がいいんじゃねーのか工場長?」

 

「女王様なんかより工場長の方が生産的だから偉いアル!痩せこけた工場長とお呼び!」

 

「痩せこけたって貧乏臭滲み出まくりだよね」

 

目的の全く見えないいつも通りの会話を繰り広げた後、新八が本題を切り出す。

 

「工場長トイレットペーパー買ってきてくれた?」

 

「トイレットペーパーは忘れたアルけど」

 

「オイ勘弁しろよ!安売り今日までなんだぞ工場長!」

 

「それは忘れたけど、もっと素敵な紙は手に入れたヨ」

 

「は?」

 

キョトンとする3人に、神楽は一枚のチケットを見せた。

それを、3人が食い入るように見る。

 

「宇宙への旅4名様!?」

 

「「こっ……工場長ォォ!!」」

 

銀時と志乃は、神楽を崇めるように叫んだ。

 

********

 

数日後。

江戸にあるターミナルから船に乗り込んだ四人は、宇宙への旅を楽しんでいた。……多分。

しかし船に乗り込む前に神楽が定春を連れて行こうとしたのだが、同じくターミナルに居た客の頭に定春が噛み付いてしまい、客は定春に噛み付かれたまま去っていってしまったのだ。

 

「え?定春が攫われた?」

 

「そうアル。私もう旅行なんて楽しめそーにないヨ」

 

「だーからババアに預けとけって言ったんだよ。もう台無しじゃねーか旅行が……」

 

「台無しなのはお前らの人間性だよ」

 

機内食をガツガツ食べまくる銀時と神楽と志乃に、新八がツッコむ。定春が心配ではないのだろうか。

それを気にせず、ボケ連中はさらに続ける。

 

「だって定春だけ残していくのかわいそーネ!銀ちゃんと志乃ちゃんは定春かわいくないアルか!!」

 

「んー、その気持ちはわかるけど……」

 

「旅先でギャーギャー喚くんじゃねーよ。あーあ、興冷めだ。もう帰るか」

 

その時、船内にアナウンスが流れた。

 

『皆様、よろしければ左側の窓をご覧になってください。あれが太陽系で最も美しい星とされる、我らが母なる星、地球です』

 

窓の外には、暗闇に青く輝く美しい地球が浮かんでいた。

その瞬間、銀時と神楽と志乃が一斉に窓に貼りつく。

 

「わー、キレイだ〜」

 

「わーじゃねーよキッチリエンジョイしてんじゃねーか!なんだオメーら!」

 

「小さな悩みなんてどーでもよくなってくるな〜」

 

「ホントだよね。心洗われるわ〜」

 

「洗っちゃいけないよ!心に遺しておかなきゃいけない汚れもあるよ!」

 

新八は完全にエンジョイしている3人を放って、定春を探すべく席を立とうとした。

だが、その瞬間新八に銃が突きつけられる。

銃を突きつけたのは、顔を隠した攘夷志士だった。

リーダーらしき男が叫ぶ。

 

「これよりこの船は我々革命組織『萌える闘魂』が乗っ取った!貴様らの行く先は楽しい観光地から地獄に変わったんだ!宇宙旅行などという堕落した遊興にうつつを抜かしおって。我らの星が天人が来訪してより腐り始めたのを忘れたかァ!!この船はこのまま地球へと進路を戻し、我が星を腐敗させた元凶たるターミナルに突っ込む!我らの地肉は燃え尽きるが憎き天人に大打撃を加えることが出来よう。その礎となれることを誇りとし死んで行け!」

 

「ヤ……ヤバイよ。銀さん、志乃ちゃん」

 

新八が事態を察して2人を呼ぶが、2人は神楽と共に相変わらず窓から地球を眺めている。

 

「私死んだら絶対宇宙葬にしてもらおっと」

 

「俺もそーしよっかな。星になれる気がするわ」

 

「ああ、なれるともさ」

 

「うぉーーい!ホントに星になっちまうぞ」

 

そこに、攘夷志士が銃を向けてやってくる。

 

「オイ貴様ら何をやっている?我らの話聞いてい……」

 

「ほァたァァァ!」

 

「ぐあ!!」

 

しかし、彼は神楽の背面蹴りによって沈められてしまう。

救援に駆け付けたもう一人を銀時と志乃が蹴っ飛ばし、リーダーの男は新八が下から顎を狙って叩き伏せられた。

思わぬヒーローの登場に乗客たちは安心して、彼らに拍手を送る。

しかし、彼らの背後にもう一人別の仲間が居た。

 

「「「「あれ?」」」」

 

「ふざけやがって!死ねェェ!!」

 

しかし、銃を撃つ前に、後ろから開けられたドアにぶつかって倒れてしまった。

そこには、ターミナルで定春に噛み付かれたままの男が立っていた。

 

「あ〜気持ち悪いの〜。酔い止めば飲んでくるの忘れたきー。アッハッハッハッ。あり?何?何ぞあったがかー?」

 

「定春ぅ!!このヤロー定春ば帰すぜよォォ!!」

 

「あふァ!!」

 

「定春!」

 

こうして神楽によって定春誘拐事件?は無事解決した。

銀時と志乃は神楽に蹴っ飛ばされた誘拐犯?を見る。

そして、見覚えのある顔に驚いた。

 

「あ……この人」

 

「こっ……こいつァ」

 

「銀さん志乃ちゃん知り合い?」

 

新八が尋ねた瞬間、操舵室で爆発が起きた。

最初から攘夷志士たちはこれが狙いだったらしい。

おそらくこのままでは、放っておいても船は墜落するだろう。

船は揺れて、中の状態は非常に危険だった。

 

「銀!そいつを早く操舵室に!」

 

志乃の言葉を聞いた銀時は誘拐犯?の前髪を引っ張って、共に操舵室に向かう。

その前を、志乃が走った。

 

「イタタタタタタ!!何じゃー!!誰じゃー!!ワシをどこに連れていくがか?」

 

「テメー確か船大好きだったよな?」

 

「だったら操縦くらい出来るでしょ⁉︎」

 

「なんじゃ?おんしゃら何でそげなこと知っちょうか?あり?どっかで見た……」

 

男の目には、走る銀時と志乃の横顔が、共に戦っていた当時の姿と重なった。

とはいえ、銀時は鎧をつけた姿、志乃は幼い少女の姿だが。

 

「おおおお!!金時と吉乃じゃなかか!!おんしゃら何故こんな所におるかァ!?久しぶりじゃのー金時、吉乃!珍しいとこで会うたもんじゃ!こりゃめでたい!酒じゃー!酒を用意せい!」

 

数年ぶりの再会を喜ぶ男の頭を、銀時と志乃は思い切り壁に叩きつけた。

 

「銀時だろーがよォ銀時!」

 

「アンタホント人の名前ロクに覚えないよね。そーいうとこ相変わらず」

 

2人は呆れて、気絶した男をズルズル引っ張っていった。

 

********

 

操舵室では、パイロットたちが逃げ惑っていた。

船長は爆発に巻き込まれたらしく、ボロボロになって倒れている。

 

「フフ、これまでか。私も船長だ。船諸共死のう!ああ……母なる星地球よ……もう少しでお前の懐にい"い"い"い"い"!!」

 

それを、男が踏んだ。

 

「あれ?何か踏んだがか?」

 

「ちょっと早くしてよ!!」

 

志乃も船長を踏んだことを気にせず、彼を急がせる。

男は操縦の機械を見ながら言った。

 

「あちこちで誘爆が起きちゅー。船に爆弾仕掛けるなんぞどーかしとーど」

 

「ねぇ、何とかならない?」

 

「ま、取り敢えずテキトーに弄ってみよーかの」

 

「いやマジで頼むよ辰兄ィ!?今頼れる人アンタしか居ないんだからね!!」

 

志乃の懇願を受けた男ーー坂本辰馬は、機械を早速弄り始めた。

そこに、新八と神楽と定春がやってくる。

 

「銀さん!ヤバイですよ。みんな念仏唱え出してます」

 

「心配いらねーよ。あいつに任しときゃ……」

 

銀時はそう言って、坂本の背中を見る。

 

「昔の馴染みでな。頭はカラだが無類の船好き。銀河股にかけて飛び回ってる奴だ……。坂本辰馬にとっちゃ船動かすなんざ自分の手足動かすようなモンよ」

 

「……よーし、準備万端じゃ」

 

坂本はそう呟くと、気絶したパイロットの一人を機械の上に乗せて、両足を掴んで操縦桿のように持っていた。

 

「行くぜよ!」

 

「ホントだ。頭カラだ……」

 

思わず新八がボソッと言う。

志乃は坂本の髪を掴んで顔面を思い切り殴った。

 

「酔い醒めにもう一発いく?」

 

「アッハッハッハッ!こんなデカイ船動かすん初めてじゃき勝手がわからんち。舵はどこにあるぜよ?」

 

「これじゃねーことだけは確かだよ!」

 

「銀ちゃん、コレは?」

 

「パイロットから頭離せェェ!!スイマセンパイロットさん」

 

「急げよバカ共!この船なんかどっかの星に落ちかけてるからね現在!」

 

パイロットを舵だと思い込むボケ連中に志乃の檄が飛ぶと、上から新八の声が聞こえてきた。

 

「銀さんコレッスよコレ!ふんぐぐぐ!アレ!?ビクともしない!!」

 

新八が渾身の力で舵を動かそうとしても、操舵室の様々な場所が壊れているせいか、まったく動かない。

そこに坂本がやってきた。

 

「ボク、でかした。あとはワシに任せ……うェぶ!」

 

突然、坂本が吐きそうな声を出して口元を抑える。

どうやら船酔いらしい。

 

「ギャー!!こっち来んな!アンタ船好きじゃなかったの!?思いっきり船酔いしてんじゃないスか!!」

 

「イヤ、船は好きじゃけれども船に弱くての〜……うぷっ」

 

「何その複雑な愛憎模様!?」

 

ツッコミ要員は命の危機に晒されても、的確なツッコミを入れてくる。

舵を動かそうと、神楽や銀時、さらには先程失敗した新八も入って舵を取り合う。志乃はこの間ずっと念仏を唱えていた。

なんとか復活した坂本が、銀時たちを止めに入る。

 

「オウオウ!素人がそんなモン触っちゃいかんぜよ。このパターンは3人でいがみ合ううちに舵がポッキリっちゅ〜パターンじゃ。それだけは阻止せねばならん!」

 

坂本が足を動かしたその先には、瓦礫が。

それにつまづいた坂本は勢いよく転びかけ、舵を掴んだ。

すると、舵は坂本の体重を支え切れずにポッキリ折れてしまった。

 

「アッハッハッハッそーゆーパターンできたか!どうしようハッハッハッ!!」

 

「アッハッハッハッじゃねーよ!あ"あ"あ"あ"あ"!!」

 

こうして操縦の術を失った船は、多くの乗客を乗せたままどこかの星に墜落していくのであったーー。

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