銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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キノコは実は菌の仲間

その後、眼鏡ーー志村新八の姉上ーー志村妙に丁寧にお灸を据えられた志乃達は、彼らが営む恒道館道場で正座させられていた。

もちろん、お妙によって満身創痍、ボロボロである。

 

「いや、あのホント……スンマセンでした」

 

「私ら、その……初共演だったんで、はしゃいじゃったってゆーか……はい、調子乗りました」

 

「ゴメンですんだらこの世に切腹なんて存在しないわ。貴方たちのおかげでウチの道場は存続すら危ういのよ」

 

にこりと笑顔を浮かべているが、その表情のまま短刀を抜くのはどうかと思う。この人マジで怖い。志乃はこの時初めて女性の恐ろしさを知った。

 

まあちょうど良い機会なので、ここで少し舞台設定を振り返ろう。

鎖国が解禁されて20年。

宇宙から来た天人により、江戸は高度成長期を迎えていた。

しかし、技術の発展に伴い、古き良きものは廃れる一方。

この恒道館道場でも同じらしく、廃刀令により今は門下生など一人もいないらしい。

 

「それでも父の遺していったこの道場護ろうと、今まで2人で必死に頑張ってきたのに……お前らの所為で全部パーじゃボケェェ!!」

 

「落ち着けェェ姉上!!」

 

怒りに任せて私らに斬りかかろうとするお妙を、新八が必死に止める。彼の苦労が垣間見えた瞬間だった。

 

「新八君!!君のお姉さんゴリラにでも育てられたの!!」

 

「バカ言ってんじゃねェ!!オランウータンに決まってんだろ!!」

 

「んな事どーでもいーだろーが!!待て、待て待て!!切腹は出来ねーが俺だってケツくらいもつってホラ」

 

「じゃ、ついでに私も」

 

そう言って、銀時と志乃は同時に名刺を差し出す。

 

「……何コレ?万事(よろず)屋 坂田銀時?」

 

「こっちは……万事(よろず)屋 霧島志乃……」

 

「こんな時代だ。仕事なんて選んでる場合じゃねーだろ」

 

「頼まれれば何でもやる商売やってるんだ。こいつとは商売仲間」

 

志乃は銀時を指差してから、立ち上がった彼と同時に親指で自身を指し示して、キメ顔を作る。

 

「この俺、万事(よろず)屋銀さんが、なんか困った事あったら何でも解決してや……」

 

「だーからお前らに困らされてんだろーが!!」

 

「仕事紹介しろ仕事!!」

 

言い切る前に、二人は志村姉弟(きょうだい)から袋叩きにされる。

 

「え、ちょっ、私何も言ってな……痛い!?」

 

「落ち着けェェ!!仕事は紹介できねーが!!バイトの面接の時、緊張しないお呪いなら教えてや……」

 

「要らんわァァ!!」

 

「ギャァァァァ!!」

 

恒道館に、志乃の悲鳴が響き渡ったーー。

 

********

 

彼らをフルボッコにした後、新八はお妙を見やった。二人は一応生きている。のびてはいるが。

 

「姉上……やっぱり、この時代に剣術道場やってくのなんて、土台無理なんだよ。この先、剣が復興することなんてもう無いよ。こんな道場、必死に護ったところで僕ら何も……」

 

「損得なんて関係ないわよ。親が大事にしてたものを子供が護るのに、理由なんているの?」

 

「でも姉上!父上が僕らに何をしてくれたって……」

 

ドカァン!

 

大きな音と共に、道場の引き戸が蹴破られる。

そこから入ってきたのは、マッシュルームヘアの天人3人組だった。

 

「くらァァァァ今日という今日はキッチリ金返してもらうで〜!!ワシもう我慢でけへんもん!!イライラしてんねんもん!」

 

「え、何このマッシュルーム……あ、違う。キノコてめー関西弁使っときゃ怖くなるかとでも思ってんのか。いてまうぞゴラァ」

 

「オメーも使ってんじゃねーか」

 

入ってくるなり騒ぎ立てたキノコ。志乃は取り敢えず罵声を浴びせておいた。すかさず銀時のツッコミが入ったが。

 

「オーイ、借金か。オメーらガキのクセにデンジャラスな世渡りしてんな」

 

「若者は刺激を欲しがるからね。でも借金はやめた方がイイよ」

 

「僕らが作ったんじゃない……父上が」

 

「新ちゃん!!」

 

新八の言葉を、お妙が遮った。

そして、キノコがこちらに絡んでくる。

 

「何をゴチャゴチャ抜かしとんねん!!早よ金持って来んかいボケェェ!!早よう帰ってドラマの再放送見なアカンねんワシ」

 

「どいつもこいつもドラマの再放送ってうるさいな、ちょっとぐらい待ってやんなよ……」

 

「じゃかしーわ!!口挟むなガキ!!こっちはオトンの代からずっと待っとんねん!!もォーハゲるわ!!」

 

「勝手にハゲとけキノコ」

 

志乃は仲裁に入ろうとしたが、キノコに一蹴された。彼女の苛立ちメーターが上がる。

何コイツ。キノコのクセに。キノコの分際で!

 

「金払えへん時はこの道場売り飛ばすゆーて約束したよな!!あの約束守ってもらおか!!」

 

「ちょっと!!待ってください!!」

 

「なんや!!もうエエやろこんなボロ道場。借金だけ残して死に晒したバカ親父に義理なんて通さんでエエわ!!捨ててまえこんな道場……おぶっ!!」

 

キノコの言葉に腹を立てたお妙が、ついにキノコを殴った。

さらに殴ろうとするが、仲間のキノコに押さえられる。

 

「この(アマ)ッ!!何さらしとんじゃ!!」

 

「このォボケェ……女やと思って手ェ出さへんとでも、思っとんかァァ!!」

 

キノコがお妙に手をあげようとしたその瞬間、キノコは背筋に寒気が走った。

志乃はキノコの目の前に立ち、金属バットを目前に向ける。振り被った手首は背後にいる銀時に掴まれていた。

二人は、殺気ともとれないプレッシャーを放っていた。

 

「いーかげんにしな。何があっても女に手ェ出すなと母ちゃんに教わらなかったのか」

 

「そのへんにしとけ。ゴリラに育てられたとはいえ女だぞ」

 

キノコは彼らのプレッシャーに、思わず虚勢を張る。

 

「なっ……なんやワレェェ!!この道場にまだ門下生なんぞおったんかイ!!」

 

「いや、そーではないけど」

 

キノコの発言をバッサリ否定する志乃。

……何だろう。締まりが悪過ぎる。

誰だ。こんな空気にした奴は。……あ、キノコか。

 

「……ホンマにっどいつもこいつも、もうエエわ‼︎道場の件は……。せやけどなァ姉さんよォ。その分アンタに働いてもらうで」

 

そう言ったキノコは、胸の内ポケットから一枚チラシを取り出した。

 

「わしなァこないだから新しい商売始めてん。ノーパンしゃぶしゃぶ天国ゆーねん」

 

「ノッ……ノーパンしゃぶしゃぶだとォ!!」

 

「簡単にゆーたら空飛ぶ遊郭や。今の江戸じゃ遊郭なんぞ禁止されとるやろ。だが空の上なら役人の目は届かん。やりたい放題や。色んな星のべっぴんさん集めとったんやけど、アンタやったら大歓迎やで。まァ道場売るか体売るかゆー話や。どないする」

 

どうやらこれは、借金取りあるあるの一つ、「金返せなかったら体で稼いで払ってもらおーか」というシチュエーションらしい。

しかし、志乃には一つわからなかったことがあった。

なので、傍らに立つ銀時に尋ねてみる。

 

「ねー、銀。ノーパンしゃぶしゃぶって何?」

 

「は?あー……ほらアレだよ、男のロマンだ」

 

「都合よくロマンなんて言ってんじゃねーぞ腐れ天パ」

 

言葉を濁す銀時。

だが、確実に目がいつもの死んだ魚のような目ではなく、変態がキャッキャウフフな展開を妄想してニタニタするような目をしていた。

あまりよろしくない意味だということは、彼女には伝わった。

教えてくれてありがとう。志乃はそう言う代わりに、彼の脛を金属バットで殴る。

銀時は痛みに悶えていたが、もちろん知らんぷりだ。

で、話題の中心たちは、話を続ける。

 

「ふざけるな、そんなの行くわけ……」

 

「分かりました。行きましょう」

 

「え"え"え"え"え"!!」

 

あっさりと体を売ることを選んだお妙に、抗議するように新八が叫ぶ。

 

「ちょっ……姉上ェなんでそこまで……もういいじゃないか、ねェ!!姉上!!」

 

その呼びかけに、お妙は足を止めた。

そして、新八を振り返らず語り出す。

 

「新ちゃん、あなたの言う通りよ。こんな道場護ってたっていい事なんて何もない。苦しいだけ……。……でもねェ私……捨てるのも苦しいの。もう取り戻せないものというのは、持ってるのも捨てるのも苦しい。どうせどっちも苦しいなら、私はそれを護るために苦しみたいの」

 

お妙はそう言い切ると、キノコの車に乗せられ、道場から連れて行かれた。

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