銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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娘に彼氏が出来て泣くのは親父

「うがァァァァ!!」

 

「神楽ァァ!!」

 

「神楽!」

 

えいりあんの核を突き破って、銀時と共に神楽が飛び出す。銀時は鼻で笑いながら、木刀を握った。

 

「ったく、食い意地が張ったガキだよ。親の顔が見てみてーな、オイ」

 

「…………俺も見てみてーよ。お前のような無茶苦茶な男の親の顔を」

 

「さーて、そろそろ終いにしましょーか」

 

三人は並んで互いを見てニヤリと笑い、一斉に跳んだ。

 

「いくぜェェェェ!!志乃!お父さん!」

 

「おうよっ!!」

 

「誰がお父さんだァァァァ!!」

 

三人の渾身の一撃を食らった核はその力に耐え切れず、その影響でえいりあんの動きも鈍くなった。

下で戦っていた小春達も、それに気付いた。

 

「アイツら……やってくれたのね」

 

一方えいりあんの核の上で、志乃は軍艦にいる松平片栗虎に電話をかけた。

 

「もしもしとっつぁん!?志乃だけど」

 

「あん?あー、なんだてめーか。オジさんは今忙しいんだよ。依頼ならまた今度すっから。じゃーな」

 

「待て待て待て待て!!頼むからアレ止めて!!私アンタのせいで命を落としそうなの!!」

 

「あ?てめーそこにいんのか?早く逃げろ。じゃーな」

 

「だから、じゃーなじゃねーっつーの!!頼むから止めてよ!つーか私アンタに五分待てっつったよね?何で撃った!?」

 

「いや、五時から娘の誕生パーチーがあるから」

 

志乃は思わず、固まってしまった。声が聞こえなくなったので、松平は電話を切ろうとした。

 

「もういいか?じゃ、早く逃げろよー」

 

「……ふざけんなよこのクソジジイ!!」

 

電話越しに、志乃は思いっきり叫ぶ。志乃の苛立ちは、既に頂点に達していた。

 

「てめっ娘の誕生パーチーごときで人の命消す奴があるかァァァ!!」

 

「ごときとは何だ。俺の大事な娘の生誕祭だぞ。これを祝わないなど父親失格だ」

 

「アンタは既に人間失格だよ!!それで命の危険にさらされる私らの身にもなってみろや!!あといい年こいたオッサンがパーチー言うなキモいから!!てめっ、今度会ったら絶対に殺してやっからなァァ!!」

 

怒りに任せてシャウトした後、志乃は八つ当たりでグシャリと携帯を握り潰してしまう。

それでも彼女の苛立ちは収まらず、イライラだけが心の中で燻り、煮え滾る。

その時、意識の定まっていない神楽が、星海坊主の髪の毛を酢昆布と間違えて、引き抜いてしまった。

 

「ぎゃああああああ何すんのォォォォ!!お父さんの大事な昆布がァァ!!」

 

父親が絶叫する隣でもっさもっさと髪の毛を食べる神楽を、銀時が止めようとする。

 

「おいィィ何食ってんだ!出せェェハゲるぞ!そんなもん食ったらハゲるぞ!」

 

「ハゲるかァ!お前ホント後で殺すからな!」

 

しかし、志乃はそんな光景に目もくれなかった。ただ、自分の中で狂いそうな獣を抑えつけるのに必死だった。

ふと、視界が真っ白になる。

志乃は抜刀し、その光に向けて「鬼刃」を力任せに振り下ろした。

 

********

 

ドォォン!!

 

大きな爆発音と共に、風が吹き荒れる。松ちゃん砲により、えいりあんは始末された。そこで戦っていた、銀時達諸共。

ターミナル前で奮戦していた真選組、「獣衆」、そして駆けつけた時雪が、信じられない気持ちでターミナルを見上げた。

 

「なっ……なんてこった。まさか……あの連中が」

 

「…………志乃」

 

震える声で呟いた時雪は、膝から崩れ落ちる。

信じたくなかった。たった今目の前で、志乃が死んだなんて。

 

「志乃…………志乃おおおおおおおおお!!」

 

涙を流し、ターミナルに吠える。

その時、真選組のパトカーに通信が入った。

 

「射撃地点から、微弱な生体反応が!」

 

「えっ!?」

 

誰もがその報告に驚き、再びターミナルに視線を移す。

煙が舞うえいりあんの核。

その上に、銀髪を風に靡かせた一人の少女が立っていた。

少女は太刀を両手で刃先を下に向けて持ち、片膝をついていた。

遠目から少女を認めた時雪は、歓喜のあまり立ち上がる。

 

「志乃だ……志乃だっ!!」

 

「オイオイ、冗談だろ……?」

 

時雪と同様志乃の姿を認めた近藤だが、若干声が上ずっていた。

 

「まさか、あの砲撃を……刀で斬ったってのか……!?」

 

志乃が立つ両側の核の表面は、志乃を中心にして扇状に焼け(ただ)れていた。

志乃の後ろに固まるように集まっていた銀時達も、もちろん無事だった。

 

「お……おい、志乃……?」

 

銀時が恐る恐る声をかけてみた次の瞬間、志乃の体は吊っていた糸が切れたように倒れ込んだ。

前のめりに倒れた志乃は、そのまま下へ落ちそうになる。

 

「志乃ちゃん!」

 

新八が叫んで彼女に手を伸ばしたその時。

 

ーーヒョイッ

 

「ったく。若いのに無茶するぜ、お嬢ちゃん……」

 

倒れかけた志乃の首根っこを傘で釣り上げ、星海坊主は笑った。

 

********

 

志乃が目を覚ましたのは、救護班の簡易テントの中だった。ベッドに横たわっていた体は鉛のように重く、上体すらまともに起こせなかった。

 

「気がついたかい、お嬢ちゃん」

 

聞き覚えのある声に目を向けると、星海坊主がベッドの横の椅子に座っていた。

 

「……アンタ、何でここに?」

 

「少し、お嬢ちゃんと話がしたくてな」

 

「フーン。失礼かもしれないけど、私今体を起こせなくてね。この状態で話してもらってもいいかな」

 

「ああ、構わねーが……」

 

星海坊主の了承を得たところで、彼は宙を見る志乃に問いかけた。

 

「てめーまさか……あの"銀狼"か?」

 

「そうだよ」

 

あっさりと答える志乃。その目は、相変わらず天井に向けられていた。

 

「私は『獣衆』現棟梁、銀狼こと霧島志乃さ。最近になって私自身も知ったんでね。残念ながら、アンタが恐れる程の力は持ってないよ」

 

「安心しろ、お嬢ちゃん。俺は強い奴がいたら、誰彼構わず戦い挑むよーな無謀なこたァしねェ」

 

「そーかい。寝首かかれるかとヒヤヒヤしたが、その心配も必要なさそーだな」

 

「だがお嬢ちゃん。てめーは自分の中に流れる血の恐ろしさってのをわかってるのか?」

 

その問いに、志乃は一瞬眉を寄せた。

 

「俺達みてーな、戦うことしか出来ねー奴らはみんなそうだ。代々流れるその血の本能には抗えねェ。それは自分にとって最強の武器にもなるが、最悪のトラウマにもなる。俺もお嬢ちゃんも一緒さ」

 

星海坊主はそう言いながら、自身の無くなった左腕を見せた。

 

「こいつァ自分(てめー)のガキにやられたのさ」

 

「!」

 

「神楽じゃねーぞ。上にもう一人いてな。こいつがとんでもねェ性悪でよう。いや……性悪というか夜兎の血を忠実に受け継いだというか。闘争本能の塊のようなガキでな。遥か昔、夜兎族には『親殺し』というとんでもねー風習があったのさ。親を越えてなんぼという野蛮な慣わしが。いつの間にか消えた古の慣わしを、野郎はこのご時世に実践しようとしやがったのさ。天下の星海坊主の首を、()ろうとしやがった」

 

志乃は語る星海坊主に目を向けず、耳だけをずっと彼に向けていた。

 

「その時になァ俺も気付いちまったのさ。俺の首を狙うガキを前にして、止めるではなく本気で息子を殺そうとしている俺の中の血によォ。神楽が止めなければ、確実に殺してた。あん時の俺を見る奴らの怯えた眼は、今でも忘れられねー」

 

「……アンタも苦労したんだね。だからアンタは、家に寄り付かなくなったと。また同じように、家族を壊したくなかったから」

 

「まァ、そんな感じだよ」

 

志乃はようやく視線を星海坊主に向けた。

 

「家族想いなんだね」

 

「……果たしてそうかねェ。娘と死にかけた母ちゃんを残して、逃げ回ってたくせに」

 

「充分だと思うよ。普段は嫌でも、なんだかんだ言って一緒にいると幸せになれる。そーいうモンじゃないの?家族なんて」

 

志乃は一度嘆息してから、神楽のことを訊いた。

 

「神楽は?……連れて帰るの?」

 

「いいや。アイツが地球(ここ)に残りたいというなら、それを信じてやろうと思ってな」

 

「そっか」

 

志乃は上体をゆっくり起こし、なんとか座る形をとった。

 

「……お嬢ちゃん。アンタもその血の末裔なら、気をつけた方がいい。お前の中に流れる血は、いつしかお前の大切な何かを傷付けるかもしれねー。今の内に制御出来るよう鍛えとけ。お嬢ちゃんはまだ若いんだから」

 

「忠告感謝するよ、お父さん」

 

星海坊主は椅子から立ち上がり、傘を持ってテントから出た。

その背中を見送った志乃は、自分も部屋から出ようとベッドから降りる。と、その時。

 

「志乃ッ!」

 

テントの入り口から、時雪が必死の形相でこちらへ駆け寄ってきた。

足がもつれてコケかけたところを、抱きとめてやる。

 

「どーしたのトッキー。私まだ病み上がりなんだけどー?」

 

「もうっ!!あんな危ない事二度としないで!!こっちがどれだけ心配したか!!」

 

「あー、ハイハイわかりましたよ」

 

時雪は志乃の背中に手をまわし、ぎゅうっと胸に顔を押し付けてくる。

グスッと鼻を啜る音が聞こえた。

 

「ホントに……ホントに、心配したんだからね……」

 

痛いくらいの力で抱き締められる。

この腕の中には、何度捕まっても温かいと感じる。ホッとする自分がいる。この温もりを、他の誰かに奪われたくないと思う。

 

ずっと。

この手で、彼を護りたい。

 

志乃は彼の背に手を伸ばしかけたが、ふと脳裏に砲撃を斬った時の自分が蘇った。

そして、思い出す。

 

自分が、一体誰か。

 

志乃は宙に上げていた手を、時雪の肩に起き、彼を離した。

 

「トッキー、心配かけてごめんね」

 

「うんっ……いいよ」

 

「……帰ろっか」

 

志乃は時雪の手を掴み、引っ張る。

いつか自分のこの手が、時雪を傷付けてしまうかもしれない。

でも。それでも、今だけは。

 

 

 

 

 

「こうして手を繋いでも、いいよね……?」

 

 

 

彼女の問いに、答える者はいなかった。

風に掻き消され、誰の耳にも入らなかったからである。

 

 

 

 

 

ー星海坊主篇 完ー

 




突然松平のとっつぁんが出てきましたが、志乃ちゃんにやたらと政府絡みの面倒事を依頼してくる厄介なオッさんです。
主に将軍の護衛とかそんなんですが、たまに娘の件でも依頼してきます。志乃ちゃんが一刀両断して断りますが。
そのため、将軍とも仲良しです。遠慮なく将ちゃん呼びます。

ちなみに、夏祭りの時に依頼したのもとっつぁんです。
志乃ちゃんはとっつぁんの依頼は大体上辺だけやっといて、後はサボりに全力を注ぎます。
でも依頼だけは必ず達成するので、志乃ちゃんにとってはめちゃくちゃいい金ヅルになってるみたいです。

次回、銀さんに隠し子が……?
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