銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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戦いの挨拶は不意打ちから

見事船内に潜入出来た志乃と新八は、攘夷志士達の目を盗んで甲板に出ることが出来た。

船頭を見てみると、そこには磔にされた神楽がいた。

 

「神楽ちゃ……」

 

「新八、待て。あいつらが神楽から離れないと、すぐ囲まれちまう……」

 

志乃がそう言った次の瞬間、爆音が船上に響いた。

物陰に隠れて様子を伺うと、どうやら別の攘夷グループが、この船を襲っているらしい。

爆撃を受けてボロボロになったまた子が、同じくボロボロになった武市に詰め寄る。

 

「武市先輩ィィィィ話が違うじゃないっスかァァ!!」

 

「予想が外れましたね。まァ砲弾も外れたからヨシとしましょう」

 

「外れてるのはアンタの頭のネジっスよォォ!!」

 

「ブハハハハ、バッカじゃねーの!!私あんな連中と何にも関係ないもんネ!!勘違いしてやんの〜!ププッ恥ずかしい」

 

「何浮かれてんの!?お前が一番危機的状況なんだよ!」

 

どうやら神楽を攘夷志士と勘違いした連中は、人質として彼女を使った。だがもちろん神楽は攘夷志士ではないため、砲弾は躊躇なく船に撃ち込まれたーーということらしい。

再び撃ち込まれた砲弾を前に、また子達は神楽を置いて逃げ出す。

志乃は傍らに落ちていた鉄パイプを手にして、新八と共に駆け出した。

 

「もう今しかない!!行くぞ新八!」

 

「わかった!!」

 

志乃は一気に加速し、神楽の前に躍り出る。そして、鉄パイプで砲弾の向かう先を少しずらした。

その隙に、新八が磔の台ごと神楽を救出した。

次の瞬間、爆発が起こる。爆風が収まった時、神楽は目を開いた。

 

「ったく、やっぱ鉄パイプじゃ上手くかち上げられなかったか」

 

「お待たせ、神楽ちゃん」

 

「しっ……志乃ちゃん!!新八ィィ!!」

 

神楽が安堵の表情で彼らの名を呼んだ瞬間、船が動き出した。船はどんどん速度を上げていき、空へ飛ぼうとしていた。

その時、重力の作用で船の後方へ転がりそうになる。

新八は神楽を抱え、志乃は彼の前で飛んでくる木片やらゴミやらを叩き落として、先導しながら走った。

 

「んごををををををを!!」

 

「何者っスかァ!!オイぃぃ答えるっス!!」

 

後ろでまた子が叫ぶが、それを無視してとにかく走る。

だんだん飛んでくる物も多くなり、先程砲弾を殴って折れ曲がった鉄パイプで対応するには難しくなってきた。

 

「あ、コレやべェ」

 

「ダメッもう落ちる!神楽ちゃん助けに来といてなんだけど助けてェェェェェェ!!」

 

「そりゃねーぜぱっつァん」

 

「呑気でいいな、てめーはよう!!」

 

「新八、私こんな所までヅラ捜しに来たけど、やっぱり見つからなかったネ。ヅラは……どうなったアルか?銀ちゃんは……何で銀ちゃんいないの」

 

「……………………」

 

「……ねぇ、神楽。トッキーは?」

 

「志乃ちゃん、ごめんヨ。トッキー私と一緒に捕まっちゃって、別々にされたアル。どこにいるかわからないネ……」

 

「そっか……」

 

その時、再び砲撃が襲いかかる。

その衝撃で吹き飛ばされ、新八は神楽を落としてしまった。

 

「神楽ちゃ……」

 

「くそっ!!」

 

志乃は一足飛びで落ちかけた神楽の手を掴み、後から追いかけた新八は志乃の腕を掴んだ。

砲撃で壊された甲板のギリギリで神楽の手を掴んだため、志乃と新八も一歩間違えば三人諸共滑り落ちるという危険な状況に陥っていた。

そうはさせまいと二人は歯を食い縛って耐えていたものの、ふと体が滑る。

ヤバイ。そう思った瞬間、二人の首根っこを誰かが掴んだ。

二人はそのまま甲板に引き摺られ、神楽も無事救出した。振り返ると、そこにはエリザベスが立っていた。

 

「エリザベス!!こんな所まで来てくれたんだね!!」

 

『色々用があってな』

 

「ア、アンタ何でこんな所に……」

 

志乃が問いかけようとしたその時、視界がエリザベスの背後に、見覚えのある男の姿を捉えた。

男は志乃と目が合うと怪しく笑い、刹那、エリザベスの首をはねた。

 

「なっ…………」

 

「よォ。俺に会いにこんな所まで来てくれたのか?志乃」

 

「高杉……!!」

 

志乃は相変わらず薄笑いを浮かべる高杉を睨みつけ、思わずギリッと奥歯を噛み締めた。

エリザベスを呼ぶ新八の声が、背中から聞こえてくる。

 

「オイオイ、いつの間に仮装パーティ会場になったんだここは。ガキが来ていい所じゃねーよ」

 

「くっ……」

 

志乃は一歩後退りした。

マズイ。想定はしていたものの、まさかこんなに早く高杉と対面するとは思ってもみなかった。

生憎今の自分には、剣のように長いものがない。折れ曲がった鉄パイプは、先程捨ててしまった。

徒手空拳で戦っても、逆に捕まる可能性もあった。何せ彼は、自分を求めているのだから。

どうするべきか悩んでいたその時。

 

「ガキじゃない」

 

聞き覚えのある声に、志乃はバッと首を飛ばされたエリザベスを見た。

次の瞬間、エリザベスの中から黒髪の男が出てきて、高杉を斬る。志乃は呆然と、彼を見上げていた。

 

「桂だ」

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