よっしゃ柳生篇、出てこいやァ‼︎(違う)
めでたい事があったら取り敢えず赤飯
「お疲れさんっしたー」
今日も志乃は真選組のバイトのため、屯所に来ていた。
いつもの藤色の浴衣に着替え、帰ろうと襖を開けると、そこには私服に着替えた真選組隊士らがいた。
「アレ?どうしたの?」
「今からお妙さんの店に行くんだ」
「は?姐さんの?」
山崎から返ってきた意外な答えに、志乃は思いっきり顔を顰めた。
驚くのも無理はない。お妙の働く店は、仕事に疲れた親父達の聖地・キャバクラである。
局長である近藤がお妙に惚れてからそこに通いつめていることは知っていたが、何故真選組総出でキャバクラに行くのか。
「何で警察の人が揃いも揃ってキャバクラに行くの?」
「いや、実はね……」
訝しげな彼女の視線に苦笑を浮かべながら、山崎は経緯を説明し始めた。
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話を要約するとこうだ。
実は近藤に、縁談が来ているというのだ。なんでも幕府から来た見合い話なのだが、相手は猩猩星の第三王女バブルス。つまりは天人なのである。
しかもその姿が……。
「ゴォォォォォォリラァァァァァァァァァァ‼︎」
「ぶがふっ⁉︎」
見合い写真を見せられた志乃は、突如狂乱して見合い写真ごと山崎をぶっ飛ばしてしまった。山崎はそのまま襖やら近くにいた隊士らを巻き込んで、ドンガラガッシャーンと大きな音を立てて吹き飛ぶ。
我に返った志乃が、青ざめながら山崎を救出した。
「ご、ごめんザキ兄ィ!大丈夫?」
「いてて……な、なんとか」
優しい山崎で良かった。これがもし土方や沖田だったら、もう恐ろしい。
土方なら拳骨一発で済むが、沖田の場合は手錠と首輪をはめられ、その後はとんでもない辱めを受けていただろう。
志乃はそのことに安堵しながら、山崎に再度頭を下げる。
「本当にごめんなさい。私、昔からゴリラ苦手で……」
「そうだったの?」
「昔のトラウマでね。写真でもやっぱ怖いんだ」
「何?何がどうなったらゴリラがトラウマになるの?」
「思い出したくないから話したくない」
しかし、周囲からゴリラゴリラと呼ばれる近藤は大丈夫ということから、少なからず志乃からは人間扱いされているようだ。
まぁとにかく、真選組の面々は今から、近藤とゴリラの結婚を阻止すべくお妙の働く店に向かうらしい。
上手くいかないと思うが。志乃は欠伸を一つしてから、スクーターに跨った。
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翌日。志乃は銀時らと共に、高級料亭の屋根の雨漏り修理をしていた。
志乃は一応万事屋という仕事柄、大方の事は出来るのだが、料理だけは出来ない。
ちゃんと教われば作れるのだろうが、教わって覚えるのは正直癪なのだ。それはつまり、自分が出来ないことを認めてしまう。
それが嫌だった志乃は、なんでも独学で勉強した。
瓦の下の屋根の木に釘を当てつけ、金槌で叩きながら、新八と銀時の会話を聞いていた。
「あー?姉貴が朝帰り?」
「そーなんです。朝帰りっていうか仕事柄いつも朝帰りなんですけどォ。今日はいつもよりさらに遅く帰ってきて、僕と目も合わせずに着替えてまたすぐ出てきました」
「新八、そういう時はなァ黙って赤飯炊いてやれ」
「やめてくんない‼︎姉上は結婚するまでそーいうのはナイです‼︎しばき回しますよ‼︎」
「将来結婚すると決めた相手ならわかんねーだろ。しばき回しますよ」
「そんなもんいねーもん‼︎認めねーもん僕!」
「シスコンも大概にしな新八。アンタと姉上は、法律上結婚出来ないんだよ」
志乃もその話に便乗して、会話に乗る。銀時がさらに続けた。
「姉上もようやくお前という重い鎖を引き千切って、甘美な大人の世界に羽ばたこうとしてんだよ。そういう時、弟はもう黙って赤飯製造マシーンになるしかねーだろ。泣きながら赤飯製造マシーンだよお前」
「銀ちゃん!私も大人になれば赤飯食べれるアルか⁉︎」
「お前は泣きながら豆パンでも食ってろクソガキ」
神楽を一蹴した銀時は、昼食の豆パンを配り始めた。ちなみにこの豆パンは、志乃の知り合いのパン屋が売れない豆パンを横流ししてきたものである。
銀時から豆パンを受け取り、もさもさと食べる。美味しいのになァ、豆パン。
しかし、鼻水を啜る神楽によれば、三日間三食豆パンなのだという。そりゃ嫌になるわな。
新八は涙目になりながら、相手は誰だとブツブツ言いながら豆パンを食べていた。
「まさか……近藤さん⁉︎まさかあのゴリラと⁉︎」
「ゴォォリラァァァァァァァ‼︎」
「ぐえぶっ‼︎」
ゴリラの言葉に反応した志乃が、思いっきり新八を殴り飛ばした。
「新八、志乃の前であまりゴリラって言うなよ。こいつガキの頃、動物園のゴリラの檻に落ちて襲われて以来、ゴリラ恐怖症になっちまったんだからな」
「そーいうデリケートな事は先に言って下さいよ!」
平和な昼下がり、新八のツッコミが空に響き渡ったーー。