銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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足りないパーツは己の力で埋めろ

庭が見える部屋に入った志乃は、そこで戦いを見守るお妙の背中を見た。

 

「姐さん‼︎」

 

「‼︎志乃ちゃん……」

 

背後から呼びかけられたお妙は、驚いて彼女を振り返る。志乃はお妙に近寄り、彼女の隣に立った。

庭では、塀の上で眼鏡をかけていない新八と銀時が背中合わせになり、九兵衛と敏木斎がそれを挟んでいた。

そこに、別の部屋から、多くの門下を引き連れて輿矩が現れる。

 

「貴様らァァァ‼︎バカ騒ぎを止めろォ‼︎これ以上柳生家の看板に泥を塗ることは許さん‼︎ひっ捕えろォォ‼︎」

 

輿矩の指令と共に、一斉に銀時と新八に駆け寄る門下達。それを、次々に打ち倒していく男が一人。近藤だ。

 

「邪魔をすんじゃねェェェ‼︎男と男……いや、男と女……いや、侍の決闘を邪魔することはこの悟罹羅(ごりら)勲が許さん‼︎」

 

さらに、二人。土方に肩車されながら、沖田が門下を薙ぎ払っていく。

 

「旦那ァ!片足じゃもって五分でさァ、早いとこ片付けてくだせェ‼︎」

 

「何で乗ってんだテメーは‼︎」

 

そしてさらに、神楽。

 

「ふァちょォォ‼︎」

 

倒立したまま体を回転させ、次々と門下達を蹴散らす。

 

「アネゴォォ‼︎男共が頼りないから私達が来たアルヨォ‼︎」

 

それをずっと見ていたお妙は、目に涙を溜めていた。それをチラリと見て、視線を戦場と化した庭に向ける。

 

「みんな、姐さんのために戦ってるんだよ。あなたが泣いたら、同じように泣く。あなたが笑ったら、同じように笑う。それが、友達ってモンじゃないかな」

 

志乃は木刀を引き抜き、縁側からトンと降り立つ。

 

「あなたがどうしたいかは、あなた自身が決めればいい。でも、苦しんでまで、押し殺してまで、自分の気持ちに嘘は吐かないで。精一杯悩んで選んだ道でも、それが間違ってると思ったら、私らが止めるよ。何度だって、どこへだって、あなたを助けに行くよ」

 

わあっと一斉に襲いかかってくる門下達を見据え、一人一人を殴っていく。木刀を振る手を止めず、お妙を振り返らずに言った。

 

「私の剣は、そのためにある」

 

志乃は地面を踏みしめ一気に加速し、門下を次々と斬るように倒していった。

 

彼らの輪の外で、銀時が敏木斎と、新八が九兵衛と剣を交えていた。しかし、新八との実力差がありすぎて、あっさり九兵衛に弾かれてしまう。

九兵衛と敏木斎が、背中合わせになった銀時と新八の周りを囲むように走り始めた。

そこから、凄まじい連撃を叩き込まれる。あまりの速さに、新八は目を瞑ってしまった。

背後の銀時が、彼を叱咤する。

 

「新八ィ、目ェ開けろ!びびってんじゃねェ‼︎見えるもんも見えなくなるぜ‼︎最後まで目ェひんむいて戦え‼︎」

 

なんとか目を開こうとする新八だが、不意に木刀が弾き飛ばされてしまった。

それを拾おうと動いた隙を狙って、九兵衛と敏木斎が彼の前に躍り出る。そこを、銀時が前に出て、身を挺して新八を護った。

得物を失くした新八を背で庇いながら、銀時は二人の斬撃を捌いていく。しかし、柳生家の中でも強いと謳われる二人に、完全に押されていた。

銀時に護られる彼を見て、九兵衛はほくそ笑む。

 

「お笑いじゃないか、新八君。姉上を取り返そうと、仲間を引き連れ乗り込んできた君が、一番の足手まといとは。君はなんとなくわかっていたんじゃないのか。どんな無茶をしようが、結局最後は誰かが助けに来てくれることを。誰かが何とかしてくれる、そう思っていたからこそ、勝ち目のない僕に戦いを挑みに来たんじゃないのか。君は昔からそうだった。誰かの陰に隠れ誰かに護られ、君を護る者の気持ちなど知りもしない。その哀しみも背負うものも見ようとせず、ただ縋るだけ。妙ちゃんの顔に何故あんな偽物の笑顔が貼りついてしまったか、君にわかるか。それは新八君、君が弱かったからだ」

 

攻撃の手が緩められることはなく、九兵衛はさらに続ける。

 

「君に妙ちゃんの哀しみ、苦しみを受け止める強さが無かったから。彼女は自分の弱さを隠そうと、あんな仮面をつけてしまったんだ。僕が妙ちゃんの隣にいれば、こんな事にはならなかった。僕は妙ちゃんの本当の笑顔を取り戻す。君に妙ちゃんは護れない。護る資格もない」

 

九兵衛は強く地面を踏みしめ、跳躍した。

 

「彼女を護れるのは、僕だけだァァァァ‼︎」

 

二人の強烈な一撃を一身に受け、ついに銀時は膝をついてしまう。覚束ない足で何とか立ち上がり、顔を滴る血を拭う。

 

「知ったよーな口をきくんじゃねーよ。テメーに新八(コイツ)の何がわかるってんだ。テメーがコイツを語るな。テメーなんぞに新八(コイツ)を語ってもらいたかねーんだよ」

 

彼の声音には、確かに怒りの感情が伺えた。

その時、敏木斎が木刀を振りかぶって銀時に襲いかかる。新八は反射的に動き、銀時を押し退けて敏木斎の一閃を顔で食らった。

新八はそのまま障子ごと吹っ飛ばされ、彼を案じて銀時が駆け寄る。そこに、敏木斎が立ちはだかった。

彼の背後では、九兵衛が倒れた新八に歩み寄っていた。

 

「行っても無駄ぞい。大将撃沈。これで終わりじゃ」

 

「バカ言ってんじゃねーよ。………………じーさんよ、アンタの孫は護りてー護りてー自分の主張ばかりで、テメーが色んな誰かに護られて生きてることすら気付いちゃいねェよ。そんな奴にゃ、誰一人護ることなんて出来やしねーさ」

 

銀時と対峙する敏木斎は、ふと彼が木刀を持っていないことに気付く。

それを尋ねた瞬間、倒れていた新八がカッと目を見開き、銀時から貰った木刀で九兵衛を吹っ飛ばした。

新八は今まで失くしていた眼鏡をようやく見つけ、くいっと押し上げる。

 

そして、ついに全ての決着がつこうとしていた。

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