目の前も背後も、天人ばかり。彼らが取り囲んでいたのは、傷だらけで体力も消耗した二人の侍だった。
「……これまでか。敵の手にかかるより、最後は武士らしく潔く腹を切ろう」
一人は、桂。絶体絶命の危機に、最期を悟った桂は、諦めかけていた。
しかし、背中合わせでしゃがむもう一人の男ーー銀時は、諦めていなかった。
「バカ言ってんじゃねーよ、立て」
銀時は桂を振り返らず、迫り来る天人を前に立ち上がる。
「美しく最後を飾りつける暇があるなら、最後まで美しく生きようじゃねーか」
その言葉に、桂も立ち上がった。
「行くぜ、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ」
再び走り出した二人は、次から次へと眼前の敵を斬り伏せていく。
その強さ、猛々しさ。
この坂田銀時という男は……ーー
ーーまさしく、
********
「天人との戦において鬼神の如き働きをやってのけ、敵はおろか味方からも恐れられた武神……坂田銀時。我等と共に再び天人と戦おうではないか」
「…………銀さん。アンタ、攘夷戦争に参加してたんですか」
新八は、戸惑いの表情で銀時を見やる。銀時の代わりに答えたのは桂だった。
「戦が終わると共に姿を消したがな。お前の考える事は昔からよくわからん」
それまで黙っていた銀時が、やっと口を開いた。
「俺ァ派手な喧嘩は好きだが、テロだのなんだの陰気くせーのは嫌いなの。俺達の戦はもう終わったんだよ。それをいつまでもネチネチネチネチ京都の女かお前は!」
「バカか貴様は!京女だけでなく女子はみんなネチネチしている。そういう全てを含めて包みこむ度量がないから貴様はモテないんだ」
「バカヤロー。俺がもし天然パーマじゃなかったらモテモテだぞ多分」
「何でも天然パーマの所為にして自己を保っているのか。哀しい男だ」
「哀しくなんかないわ。人はコンプレックスをバネにしてより高みを……」
「アンタら何の話してんの!!」
完全に話が脱線した2人に、新八がツッコむ。路線に戻った桂が、さらに続けた。
「俺達の戦はまだ終わってなどいない。貴様等の中にとてまだ残っていよう、銀時……国を憂い共に戦った
銀時は黙って視線を逸らす。志乃は、そんな銀時を見やっていた。
「天人を掃討し、この腐った国を立て直す。我等生き残った者が死んでいった奴等にしてやれるのはそれぐらいだろう。……そうは思わないか、志乃」
「!」
突然話題の矛先が向かれた志乃は、目を見開く。桂はそんな彼女を見つめながら話した。
「お前の叔父上である刹乃殿も、先の戦で命を落としてしまった。この国を憂い、護ろうと戦った彼は、とても気高かった。その遺志を俺と共に継がないか、志乃」
「……私は…………………」
志乃は俯き、言い淀む。
志乃は幼い頃、攘夷戦争でたった一人の肉親ーー霧島
言い淀む彼女の答えを、桂はジッと見つめて待っていた。
それを、サッと庇う影があった。銀時だ。
「ヅラ、やめろ。てめェ、コイツにまで刀を持たせる気か。そんなこと、
「どけ、銀時。俺は志乃に聞いている。今は、少しでも多くの力が必要なのだ。我等の次なる攘夷の標的はターミナル。天人を召喚するあの忌まわしき塔を破壊し、奴等を江戸から殲滅する。だが、アレは世界の要……容易には落ちまい。お前達の力がいる、銀時。それに、志乃」
桂はさらに、トドメの言葉を放った。
「既に我等に加担したお前達に断る道はないぞ。テロリストとして処断されたくなくば俺と来い。迷う事はなかろう。元々お前達の居場所はここだったはずだ」
「銀さん、志乃ちゃん……」
新八と神楽は、銀時達を見つめる。
次の瞬間、突然障子が蹴破られた。そして、そこから黒い制服を着た男達が部屋に入ってきた。
「御用改めである!!神妙にしろテロリストども!!」
「しっ……真選組だァっ!!」
「イカン、逃げろォ!!」
「一人残らず討ちとれェェ!!」
一気に攻め込んできた真選組から逃げ出す桂一派と銀時達。逃げながら新八が尋ねた。
「なななな何なんですかあの人ら!?」
「武装警察『真選組』。反乱分子を即時処分する対テロ用特殊部隊だ。厄介なのに捕まったな。どうしますボス?」
「だーれがボスだ!!お前が一番厄介なんだよ!!」
「ヅラ、ボスなら私に任せるヨロシ。善行でも悪行でも、やるからには大将やるのが私のモットーよ」
「オメーは黙ってろ!!何その戦国大名みてーなモットー!!」
桂と神楽のボケに、銀時が珍しくツッコミ役にまわる。
「オイ」
呼び止められた銀時は、一瞬動きを止めるが、突きを繰り出してきた刀を間一髪かわした。
刀の持ち主は、土方だ。
「銀!」
志乃が加勢しようと金属バットを抜くと、ふと背後から殺気を感じた。
志乃はすかさず背中に金属バットを向ける。背後で金属がぶつかり合う音が響いた。
「っ……!?」
「小さいのになかなかやるな、お嬢さん。もう少し手合わせしたいが、生憎俺は立場上、アンタを捕まえなきゃならねー。おとなしくお縄についてもらおうか」
「私らは巻き込まれただけだっつの……!」
志乃は金属バットで刀を受け流し、横薙ぎに振り、刀とぶつける。志乃は、刀の持ち主を見上げた。この時、相手が初めて男ーー杉浦だと知った。
杉浦はニヤリと笑って、手錠を出してみせる。
「土方さん、杉浦。危ないですぜ」
第三者の声が乱入してきた瞬間、二人の元にバズーカがぶち込まれた。幸い、怪我人は出なかったが。
バズーカを撃った本人は、何事もないように歩み寄る。
「生きてやすか土方さん、杉浦」
「バカヤロー、おっ死ぬところだったぜ」
「な、何とか生きてますよ」
「チッ、しくじったか」
「しくじったかって何だ!!オイッ!こっち見ろオイッ!!」
「沖田さーん。狙うなら次からは土方さんだけを狙ってくださーい」
「オイ杉浦てめー!!どーいう意味だ!!」
どさくさに紛れて上司の命を狙うとは、なんという部下だろうか。
そして、自身の安全のために上司を売るとはどういう部下なのだろうか。真選組の先行きが危ぶまれる。
一方、銀時たちは何とか押入れに逃げ込み、隠れていた。だがそこも、すぐに真選組に囲まれてしまう。
桂は懐から球状の機械を取り出した。不審に思ったのか、銀時が尋ねる。
「?そりゃ何のマネだ」
「時限爆弾だ。ターミナル爆破のために用意していたんだが仕方あるまい。コイツを奴等におみまいする……そのスキに皆逃げろ」
不意に、銀時が桂の胸倉を掴む。
その拍子に、時限爆弾が床に落ちた。
「貴様ァ桂さんに何をするかァァ!!」
「うるさいよバカタレ」
騒ぐ志士に、志乃が金属バットで殴りつける。倒れた志士を横目に、志乃は銀時と桂を見た。
「…………桂ァ。もう終いにしよーや。てめーがどんだけ手ェ汚そうと、死んでいった仲間は喜ばねーし時代も変わらねェ。これ以上薄汚れんな」
「薄汚れたのは貴様だ銀時。時代が変わると共にふわふわと変節しおって。武士たるもの己の信じた一念を貫き通すものだ」
「お膳立てされた武士道貫いてどーするよ。そんなもんのためにまた大事な仲間失うつもりか。俺ァ、もうそんなの御免だ。どうせ命張るなら俺は俺の武士道を貫く。俺の美しいと思った生き方をし、俺の護りてェもん護る」
そう言い切った銀時の目には、確かな光が宿っていた。
「銀ちゃん」
突然声を発した神楽に、全員の視線が集中する。
「コレ……弄ってたら、スイッチ押しちゃったヨ」
********
一方、こちらは銀時たちのいる押入れを取り囲む真選組。
「土方さん、夕方のドラマの再放送始まっちゃいますぜ」
「やべェビデオ予約すんの忘れてた」
「またッスか土方さん。老けてきてますね、最近多いですよ」
「よし、まずてめーから始末してやろうか」
どいつもこいつもドラマの再放送を見たがりすぎである。そして、予約を忘れすぎだ。
早く帰りたい真選組は、バズーカの発射用意をした。次の瞬間、押入れの中にいた銀時達が障子を蹴破り現れる。突然の事に真選組は動揺した。
「なっ……何やってんだ止めろォォ!!」
「止めるならこの爆弾止めてくれェ!!爆弾処理班とかさ……何かいるだろオイ!!」
モジャモジャ頭がさらに爆発してる銀時は真選組に爆弾を差し出す。ちなみにタイムリミットは残り10秒。爆弾を一目見た真選組は、次々に逃げ出した。
「銀さん窓、窓!!」
「無理!!もう死ぬ!!」
「銀ちゃん、歯ァ食い縛るネ。ほあちゃアアアアア!!」
神楽が傘を野球のバットのように振り、銀時を打った。
窓に向かってフルスイングを受けた銀時は窓を割り、外に出される。
銀時は落ちながらも、渾身の力で爆弾を上空へ投げ上げた。爆弾は無事に何も巻き込むことなく爆発した。
「ぎっ……銀さーん!!」
「銀ちゃん、さよ〜なら〜!!」
新八は銀時を案じ、神楽は勝手に銀時を殺した。
一方桂は、爆弾騒動の間に屋上へ逃げ、デパートの垂れ幕に捕まった銀時を見下ろしていた。
「美しい生き方だと?アレのどこが美しいんだか。……だが、昔の友人が変わらずにいるというのも、悪くないものだな……」
桂がそう言い残し、予め用意していた飛行艇に乗ろうとするが、ある人物が呼び止める。
「ヅラ兄ィ!」
「ヅラじゃない桂だ」
桂が振り向くと、そこには志乃が立っていた。
どうやら、自分の後をつけていたらしい。志乃は真っ直ぐ、桂を見つめていた。
「桂兄ィ。私は……攘夷のために、剣はとらないよ」
「!」
「私はね、
「…………志乃」
桂は攘夷戦争当時、まだまだ幼かった彼女の姿を思い出した。
しかし、今になって……よく思うようになった。自分達のしてきたことは、本当にあの娘の幸せに繋がっていたのかと。寧ろ、彼女の自由を縛っているかのように思えた。
それでも。目の前に立つ大きくなった妹は、自分達の背中を見てこんなに立派に成長してくれた。保護者として、兄として、これほど嬉しい事はない。
桂は志乃の決意の表れた瞳を見つめ頷き、飛行艇に乗り込んだ。空を走っていく飛行艇を、その姿が見えなくなるまで見守っていた。
真選組のモデルとなった、新撰組。
この「選」と「撰」とどっちが正解なの!?と思われる方も多いと思いますが、ハッキリ言います。
両方正解です。だって、局長の近藤が両方書いたことあるんだもん!テキトーじゃねーかァァァ!!
次回、アイドル登場です。