鞘から村麻紗の刀身が抜かれ、その姿が露わになる。それは即ち、土方が妖刀の呪いをねじ伏せたことを意味した。
銀時も口元に笑みを浮かべ、近藤を見る。
「ワリーなゴリラ、そういうこった。残念ながら、てめーの依頼は受けられねェ。なんぼ金積まれてもな。
近藤は一つ、溜息を吐いた。
「万事屋、仕事はここまでじゃなかったのか」
「なァに、延滞料金はしっかり頂くぜ」
銀時がボンネットに片足を乗せ、近藤の手を引き寄せる。
ずっと後方から走ってきたバイクがパトカーを追い越し、土方と伊東が刃を交えた。
土方の斬撃は伊東の肩を斬ったものの、こちらはパトカーの車輪が一つ取られていた。見事バランスを崩したパトカーは、コントロールを失い後方の車両にぶつかりかける。
咄嗟に土方が扉に足を、トランクに手をついて、衝突を防いだ。
「何してんだァァァァ‼︎早くなんとかしやがれェェ‼︎」
しかもこのタイミングで、敵の車がやってくる。土方は今、全く身動きの取れない無防備な状態だ。
神楽が助太刀に入る。何故か彼の腹の上に乗って。
「トッシー、後は私に任せるネ。何も心配いらないネ」
「おかしいィィィ‼︎何かおかしィィ‼︎」
神楽に向かって、浪士が斬りかかる。しかしその瞬間、扉が片方吹っ飛ばされ、車と浪士を巻き込んで転がっていった。
「近藤さん、さっさとこっちへ移ってくだせェ。ちぃと働き過ぎちまった。残業代出ますよね、コレ」
「総悟‼︎」
車両の中は、沖田が粛清した隊士達があちらこちらに転がり、血が所々に飛び散っていた。沖田自身も頭から血が流れ、腕を怪我している。
「俺が、是が非でも勘定方にかけ合ってやる」
「そいつぁいいや。ついでに
何やらカッコイイ雰囲気を醸し出しているが、彼はその土方の上に乗ってそのセリフを言っていた。
今でも落ちるか否かのヤバい状況なのに、追い打ちをかけるように近藤までもが土方の腹の上に乗る。
「つーかてめーら何で当たり前のように人を橋のように扱ってんだ⁉︎」
「待ってくれ、トシを置いて俺だけ逃げろというのか‼︎」
「そこで揉めんなァァ‼︎」
「あーもう、いいから!さっさと行けって……」
ーーゾクッ‼︎
「えっ」
こちらを狙って迫り来る気配。志乃が振り向いた次の瞬間、目の前にバイクの前輪があった。
「⁉︎」
驚きつつ、咄嗟に左手に持っていた金属バットで防ごうとする。
しかし、パトカーに乗り上げてきたバイクの前輪はそれを弾き、志乃の体ごとパトカーから跳ね飛ばされてしまった。
「くっ‼︎」
「志乃ッ‼︎」
宙を舞った志乃を追って、銀時もパトカーから転がり落ちる。
バイクに吹き飛ばされた志乃は、ゴロゴロと転がり、砂塵が舞い上がる中倒れていた。バイクに乗った男は、一直線に志乃めがけて刀を振る。
「……何、」
砂埃の中から、鋭い紅い視線が、男を射抜く。
「すんだコラァァァァァァァ‼︎」
怒号と共に強く振り抜かれた金属バットが、ゴバッと煙ごとバイクを豪快に掻っ裂き、大破させる。
男はバイクの爆発の餌食になる前にそれから飛び降り、着地した。
頭から流れた血を裾で拭い、男と対峙する。男は真顔のまま、声音だけ楽しそうだった。
「面白い。なかなか面白い変奏曲を奏でるな、おぬし。軽快なポップスかと思えば、突如気品のある凛とした曲に変化する……喩えるなら今は、竜笛の
ようやく男の顔をちゃんと見た志乃は、もちろん彼の言葉など無視していた。
間違いなく見た顔だ。どこで……。
凝視していると、ふと紅桜事件を思い出した。
「お前、確か高杉のとこにいた……誰だっけ?ってか、人と話す時はヘッドホンを取りなさい。どーいう教育受けてんだてめっ。ったくチャラチャラしやがって、近頃の若者はよォ。オイ聞いてんのかバーカ!バーカバーカ」
何故か話がめちゃくちゃ逸れている。これは志乃が、銀時の影響を深く受けていることを鮮明に意味していた。
「拙者は河上万斉と申す者。して、霧島志乃……やはり真選組にいたでござるかバカ」
「んだよ、聞こえてんじゃねーかよバカ」
チッ、と舌打ちを立ててから、志乃は目の前の男を見る。
「
「背信行為を平然とやってのける者を仲間にするほど、拙者達は寛容にござらん。また、信義に背く者の下に人は集まらぬ事も拙者達は知っている」
「……?…………まさか‼︎」
嫌な予感がして、バッと振り返る。その瞬間、列車が向かった先で爆発が起こった。
「みんなっ……!」