暗殺聖闘士   作:挫梛道

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激変の時間

「な…渚、ちょっと…良い…かな?」

「茅野?」

演劇発表から数日。

2学期終業式を翌日に控えた昼休み。

弁当を食べていた渚に、茅野が何やら思い詰めた様な表情で話し掛けてきた。

 

「ん…別に…良いけど…」

そして その様子に、少し戸惑い気味に返事をする渚と共に、茅野は教室を去って行く。

 

ニョキ…パサ…パタパタ…x3

 

その光景を見て、何かを察したのか、悪魔の角と羽を生やし、邪な笑みを浮かべる約3名。

 

「おぉっと~? これは もしかして修学旅行の…あの時の続きが、漸く やってきましたか?」

「…でっすよね~♪

もう、着けて行くしか無いでしょう♪」

「何やってんだ2人共! ぐずぐずするな、置いてくぞ!!…って、片岡さん?岡野ちゃん?」

 

≫≫≫

「離せ!放してくれ!話せば分かる!」

茅野と渚の後をスマホ片手に着いて行こうとした、響、カルマ、中村。

…を取り押さえる片岡と岡野、他数名。

 

「全くアンタ達…そっと見守るとか、出来ない訳?」

「特に吉良っち!アンタはカノジョ持ちだから そーゆーの、解るでしょうが?!

晴華っちに()()、送ってやろうか?」

「すいませんした。それだけは何卒、御勘弁を!

…って、まだ保存してたのかよ、それ!?」

そう言いながら岡野が響に見せたスマホの画面には、沖縄の時の"ハーレム王・吉良響の図"の写真が。

 

「いや、私等は あの2人が、何か間違い起こしたりしないかと心配でさぁ…」

「…で、その()()()とやらが起きた時、それをスマホに収め、後で弄る気満々だった癖に!」

「「「う…」」」

完全にバレテーラな3人。

 

「…でも、良いの~?

こーゆー時ってさぁ、俺達以上に最優先で取り押さえないといけないタコの存在、忘れてな~いぃ?♪」

「「「「あっ…!!」」」」

 

≫≫≫

「…………………。」

「………………………。」

用具倉庫に入った2人。

扉を閉めた後、互いに顔を向け合い…は、せずに、俯いて顔を赤くした儘、沈黙の時間が流れる。

 

「ヌルフフフフフフフフ…いや~、青春ですね~。」

その様子を部屋の隅、茅野の背後の位置で物陰に隠れ気配を消し、カメラとメモ帳を持つ、パパラッチ衣装のピンク色のタコが1人。

 

「えぇい、じれったい!

渚君、あなたも もう、察しているでしょう!

まさか草食通り越して絶食系な上に、烏間先生以上の鈍感系ですか?

こーゆー時は、男の方が、リードする感じに話を切り出すものですよ!

ほら、茅野さんの後ろ、何故だか既に言い感じに、マットも敷かれているじゃ~あ〜りませんか!

…許します! 吉良君ならアウトですが、君達なら、今回は特別に、先生が許します!

さぁ、渚君! 一気に決めてしまいなさい!

何時 漢を見せるの? 今でしょ!」

それは既に、教育者の言葉では無く。

 

「な、渚っ!」

「ひゃ、ひゃいぃ!?」

そして その後の意を決したかの様な茅野の呼び掛け、渚も その迫力に声を裏返しながら返事。

 

「あ、あのさ…目、瞑って…くれないか…な?」

「え…えぇぇっ?!」

自分の真後ろ、気配を殺した覗き(タコ)が居るにも拘わらず、その台詞にテンパる渚御構い無しに、殆んど(ゼロ)距離に近付くという行動に移る茅野。

 

「ちょ…かゃ…」

如何に鈍感系絶食男子と云えど、此処までのアクションで迫られると、流石に何かを察したのか、そして自分も悪くないと思ったか、覚悟を決めたかの様に、混乱状態ながらも、言われた様に目を閉じる渚。

 

「お…おぉ~!! 茅野さん、素晴らしい!」

その様子を、息を荒げながら、カメラを構える殺せんせー。

 

「渚…」

緊張の余り、身体はガチガチ、目を閉じた儘 顔を紅潮させている渚に、茅野が声を掛ける。

 

「…ごめんね♪」

「…ぇ?」

それは、今までの緊張感を打ち消す様な、軽く明るい悪戯調な口調。

…そして それと同時、

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュン!

 

彼女の首筋から突如、2本の黒い()()が生え出で、それが彼女の背後に身を隠していた殺せんせーに超スピードで襲い掛かった。

 

「は、はい~ぃっ?!」

 

ズドッ!

 

出歯亀行為に全神経を注いでいた殺せんせーは回避の反応が遅れ、持っていたカメラを盾代わりにする事で、辛うじて その直撃を免れる。

 

「え…茅…野…?」

まさかの出来事に、渚も何が起きたのか解らなくなり、

「あ…わゎ…カメラが…」

レンズを貫かれ、まだ現像前の、生徒の恥ずかしい場面を収めていたフィルム毎に、破壊された高級カメラに泣き顔を見せる殺せんせーだが、それも一瞬の事。

 

「か、茅野さん!? 触手(それ)は…? キミは、一体…?!」

即座に教師の顔となり、その触手について尋ねるが、

「黙れ、人殺し。」

「……………!!」

それは普段の彼女からは想像も付かない、冷たい表情からの冷たい台詞で返された。

 

「…雪村あぐりの妹。こう言えば、解るでしょ?」

「……!」

「え…?」

雪村あぐり。

E組の元担任の名前を聞き、そして自分は その妹だと聞かされ、驚きの表情を隠せない殺せんせー。

そして超展開から茫然、漸く落ち着きを取り戻した渚も その名前を聞き、再びの驚愕。

 

「あ~ぁ、色ボケ状態の殺せんせーなら、確実に殺れると思ったんだけどな~?」 

普段とは違う、別人の様な冷酷な笑顔で茅野が話す。

 

「まあ、良っか。次は、絶対に殺すから。

場所とかは、直前に連絡するわ。」

 

カガッ…

 

「ま、待ちなさい、茅野さん!」

そう言うと茅野は倉庫の壁を破壊すると、触手を解放した事で備わった超運動能力を活かし、木々の枝に飛び移りながら、その場から姿を消した。

 

「茅野…」

「茅野さん…」

 

▼▼▼

「渚! どーだった?」

「全部 吐きなさい!」

「…って、渚君、茅野ちゃんは、どうしたの?」

「な…?!」

教室に戻った早々に、響他から顛末を問われる渚。

 

「そうか〜、これでE組公認カップル、3組目だね〜。」

「「「「誰の事を言っている?」」」」

「いや、違うから!…と、言うか、そんな事 言ってる場合じゃないから!!」

 

≫≫≫

「「「「「「「な、何だってーーーっ??!」」」」」」」 

「実は…」から始まった 渚の説明。

響達以外にも、【(ナギ)x茅野(カヤ)】には興味アリアリな者が多数な中、その予測の遥か外の内容に、クラス全員が驚きの声を轟かせた。

 

「茅野さんが、雪村先生の妹?」

「いや、意味分かんないし!」

「どうなってんだってばよ!?」

「全部 吐きなさい!」

更に渚を問い詰めるE組の面々。

しかし渚からしても、あっと言う間の出来事だったので、最初の説明以上の事は話せない。

 

「まさか、茅野ちゃんが…いや、磨瀬榛名が雪村先生の妹だったなんてな…」

「「「へ?」」」

「「「え?」」」

「「「は?」」」

そして、響の一言。

 

「いやいや、お前の言う事も分かんないぞ?」

「磨瀬榛名って…()()()()()()の事を言ってんのよね?」

「お…応…」

磨瀬榛名。

自分達と同年の、数年前までは天才子役として、テレビドラマに多数出演していた役者。

 

「子役なんかが、受験時期に合わせて一時休業するって、よく有る話だろ?

…で、その際に正体(みもと)も隠したりもするのかな~?…と思って、茅野ちゃんには気を使って、敢えて触れなかったんだけど…」

「其処は こっそりで良いから、教えときなさいよ!」

「確かに言われてみれば…だけど!」

「くそっ! サイン欲しかった!」

「吉良、マジに使えねーな、おい?!」

「酷くない?」

その茅野の素性に最初から気付いていたらしい響に、非難殺到なE組の皆さん。

自分達と同年だったからか、クラス内でも それなりにファンが居た様だ。

 

「いや、今は そんな話している場合じゃないだろ?」

「そうよ! 確かに茅野さんが役者だったり雪村先生の妹だったりも驚きだけど、今は触手だよね?」

「「「「「………………。」」」」」

しかし そんなカオスな空気も、クラス委員長2人によって取り払われた。

 

「あの触手は…」

「イトナ君?」

そして茅野と同じく、嘗て その身に触手を宿らせていたイトナが口を開く。

曰く、自分と違い、茅野には柳沢(シロ)の様なメンテナンスを施す者は近くに居ない筈。

ならば常に身体全身、筋肉や神経節等に地獄の様な苦痛を…特に脳内に感じていた筈。

それを表情(かお)に出さずに耐え切るのは、普通ならば絶対に不可能。

 

「それを、1年近く…?」

「大した演技力…ってヤツか?」

「それよりも!」

その茅野の精神力や演技力に衝撃を覚える中、櫻瀬が口を開いた。

 

「カエデちゃん、殺せんせーに『人殺し』って言ってたんだよね?

それって、つまり…」

「「「「「「「……!!」」」」」」」

その全てを言い終える前に、教室内の皆が理解した。

E組元担任、雪村あぐりは殺せんせーに殺害された。

…少なくとも茅野は、そう思っている事を。

 

▼▼▼

「片方からの情報だけで、あっさり疑ったりはしないけどさ…」

「それでも、きちんと話してくれなきゃ皆…誰も納得しないよ?」

「言っちゃ悪いけどさ、雪村先生が突然 居なくなって、それと同事、突然 殺せんせーが現れたって…」

「タイミング的には、辻褄が合うんだよね…

ぃゃ…別に殺せんせーの事、疑ってる訳じゃ無いけどさ…」

「…………………………………。」

…その後、E組教室にて、生徒達が担任教師に問い掛ける。

響も雪村あぐりが死亡した経緯、そして殺せんせーがE組担任となった経緯は、4月の決闘(あんさつ)失敗時に聞いていた。

 

「皆の前で話すべきだよ。

雪村先生の事を含め…一体、何が有って、先生がE組(ここ)に やってきたのかを。」

…が、まさか茅野が その元担任の家族とは知らなかった訳で。

烏間とイリーナも神妙な顔で様子を窺う中の、響の言葉。

それに殺せんせーも観念したかの様な困り顔で、口を開く。

 

「分かりました。

先生の過去の全てを話すべき…その時が来たのかも知れないですね。

しかし、もう少しだけ待って下さい。

茅野さんが戻ってきた時…クラス全員が揃った その時に、全てを話すと約束しますよ。」

「「「「「「「………。」」」」」」」

その言葉に、その場の皆が、無言で頷いた。

 

 

 

 

 

▼▼▼

そして夕方。この日の授業が終わった時刻に、殺せんせーのスマホにメールが届いた。

 

 


 

【from :茅野さん

【sub :殺せんせーへ♡

 

❖❖❖

 

今夜20時、椚ヶ丘公園奥の すすき野原にて待っています♪

 

 




 
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