今回の内容により、過去の話に複数ヶ所、少し矛盾が生じたので、その部分を修正しています。
「……っ!?」
実験拘束台に うつ伏せに寝かせられ、外科手術でも受けるかの様な死神。
其れ等は全て、直接 人の手による物で無く、
初期の肉体改造により、強化された身体。
麻酔無しの手術は、それでも常人ならば激痛が体中に走る物だった。
元が常人離れしている死神だからこそ、少しだけ苦痛に顔を歪ませる程度で済む物。
尤も全身が完全拘束されている身だから、例え我慢出来ない痛みだろうが、のたうつ事も出来ないのだが。
「被験者の肉体…染色体レベルで未知の変化を起こし始めています。
強大なパワーを秘めてるだけに、逆らわれでもしたら…」
「心配は要らん。
あの拘束台は象でも…恐竜でも破壊は出来んよ。」
『本格的な実験』が始まってから、既に1週間が経過。
その肉体変化を警戒してか、例え強化アクリル越しと云えど、死神に近付く者は、今は もう あぐりの他には居なかった。
≫≫≫
「…ダサいです。」
「酷っ?!」
中学校教師としての業務を終え、今や第2の職場と言える研究施設に入所すると、今度は死神の監視に取り組む あぐり。
与えられた仕事…死神の実験後の体調チェック。
それが終われば、死神の監視…と言っても現状では死神が今の監禁部屋から脱走するのは不可能に等しくな、他愛無い会話の時間。
何時の頃からか、その最初に行われるのは あぐりの
そして これも また恒例になっているのか、死神の
「…って死神さん、思い切り鼻の下を伸ばして、嬉しそうに微笑んでるじゃないですか!?」
「はい?」
この日の あぐりのインナーはチューブトップ。
但し、何時も通りな壊滅的に残念な
しかし、彼女の推定F…もしかすればGカップに達するかの胸元を大いに強調した それは、一般的に健全な
「死神さん…もしかして死神さんは、巨乳好きなんですか?」
「はひ?!」
事実、死神は あぐりの台詞通り…幸せ この上 無さそうな だらしないニヤけ顔を晒し、眼前の
「いや…可怪しい。
確かに私も、決して そういうのに興味が無い訳では無い。
…が、しかし!!?」
あぐりの指摘に伸びた鼻の下を抑えながら、その自身の反応に本気で驚きの顔を見せる死神。
「まさかコレも実験の…投与された薬物の副作用…?
そうだ! そうに違いない!」
「(¬_¬)じとー。」
「ほ、本当です! 信じて下さい、あぐりサン!」
そして あぐりの冷たい視線に、死神は必死に弁明。
「…精神面、エロ方面に やや異変を確認。
シニガミ·サンはオッパイスキー、と。」
「待っt…止めろ下さい!…いやマジに!!
それと今の『死神さん』の言い方、何だか変!?」
チェック用紙に その様子を書き込もうとする あぐりに、真剣に死神は待ったを掛け、
「クスクス…書きませんよ。
こんなの書いてたら『もっと真面目にやれ!』って、私が怒られちゃいますよぉ♪」
「……………。
私も1つ、自分の異変を確認しました。
こんなに おちょくられているのに、殺意が欠片も沸きません。」
その後は また何時も通りな雑談タイム。
あぐりは勿論だが、何時しか死神も、この時間を無自覚だが心地良いと感じていた。
そうした中、あぐりは話す。
役者である、自分の妹の事。
自分が受け持つ
「…で、そのテストの内容は?」
「あはは…今日も少しばかり、
「はいはい。それじゃ先ず、アナタの作った
「し、死神さん?!!」
その最中に異変が。
死神が尋常で無い、夥しい量の吐血。
「…!!」
慌てて あぐりが、緊急を報せるボタンを押そうとするが
『雪村サン、柳沢主任も『そろそろだ』と言われていました。
放置していて構いません。』
「な…????!!」
その前に、制御室から その様子を窺っていた研究員から『問題無い』の指示が。
どう見ても問題としか思えない状況で返ってきた その言葉に、あぐりは絶句。
「カハ…ゲボ…ッ!!」
「……………………………………。」
血を吐きながら苦しそうに床を転げ回る死神を、只あぐりは、黙って目を逸らさず、見守るだけだった。
それしか出来ない、自分を歯痒く感じながら。
▼▼▼
更に時は、少し流れる。
「ふん…♪ 良いぞ良いぞ♪
この調子なら、他の生物への細胞移植の実験も、近い内に可能だな。
至急 手配しろ。」
「は、はい!」
監視室から死神の様子を眺める柳沢は、送られてきた細胞データを見て、予定していた並行実験の実施指示を部下に指示。
計画通り。
順調に進んでいる実験に、思わず口元が緩む。
実験が進むに連れ、死神の身体に
体内を循環している反物質エネルギーが桁外れの代謝を起こし、その強大なパワーを受け止める為、体組織は強靭且つ柔軟な物質構成へと置き換わっていく。
更に時が経つと、その腕や指先が鞭の様に撓り、伸び始める。
柳沢達研究者は これを、『触手』と呼ぶ事にした。
こうして死神は精神的で無く、生物学的に『人間』のカテゴリから逸脱した存在となる。
そんな彼を、未だ
「コイツが自分のチカラを理解する前に、新しい拘束台が必要だな。
機能強化したヤツを…な。」
同時、彼等は死神に対する警戒度を高める。
確かに柳沢の研究は、現代科学の限界の遥か先を進む革命的な内容だった。
…しかし、行き過ぎた技術は何処かにて、そのバランスを保つべきな
▼▼▼
『だからさ、お姉ちゃん。そんなサイテー男となんか、別れちゃいなって。』
「そ…そんな事、言わないの!」
あぐりが今、電話越しに話しているのは雪村あかり。
あぐりの妹である彼女は、若いながらもTVドラマの主演も経験している役者だった。
今は中学2年生。来年に受験を控えている彼女は、現在は その稼業を休業中。
そんな あかりは、姉の婚約者の柳沢の事を、余り良く思っていなかった。
1度だけ、あぐりと一緒に外食した事が有ったが、その時に柳沢という人間性を即座に見抜く。
即興の
芸能界に長く腰を据え、その現場にて過去、幾人もの
『お父さんの会社だって、いざとなれば私が何とk
「あかり?」
しかも現在、日中は教師として働いているのを承知で、夜遅く迄 自分の仕事の手伝いを姉に させている男に良い感情を抱く筈も無い。
婚約破棄を勧める自分の妹に、あぐりは優しく諭そうとする。
『…もしかして その研究所に、アイツよりも良い男でも居たりする?』
「は…はい? ななな…何を言ってるのよ!?」
『ふふん…成る程 成る程♪』
「そ、それよりさ、コッチの仕事も余裕が出て来て、少しの時間なら外に出られるかも知れないの。…会わない?」
「本当? 会う会う♪」
▼▼▼
そして暦は3月に入る。
椚ヶ丘学園中等部でも卒業式が行われ、3年生は その学舎を去って行く。
そして この学園では同時、成績不振の2年生が、特別強化教室という名目で、学園裏山の旧校舎…E組に編入される時でも有った。
≫≫≫
「…という訳で、今日はプレゼントを持ってきましt
「……………………………………………………。」
「…何ですか? その、凄く微妙そうな顔は?」
あぐりが突然にプレゼントと称して目の前に出した箱を見て、死神は器用に顔を左右半々、上下に引き攣らせていた。
「とりあえず、何が どういう訳かを、先に説明して貰えますか?」
「この前、首元だけが異様に冷えると言ってましたよね?」
「…マフラーか、何かですか?
以前 アナタがしていた、大腸小腸デザインのヤツなら結構です。」
「…普通の、ネクタイ、です!」
死神の人体実験が始まって、1年が経過した頃。
反物質計画が順調に進むに連れ、それに並行して、研究施設内外で様々な実験が施されていた。
その1つとして、月面に設置された実験基地。
その内部は地球と ほぼ同じな環境が施され、其処には1匹のマウスが全自動で飼われていた。
…死神の体内に埋められた、反物質生成細胞を移植したマウスが、である。
細胞分裂の原理を利用し、莫大なエネルギーを生み出し続ける反物質生成細胞。
牧牛サイズの反物質生物が20頭も在れば、日本レベルの国土、文化、人口ならば その電力が完全に賄えるという、正しく夢のエネルギーであり、研究である。
しかし、それでも今は検証途中の計画。
柳沢の研究チームも、何の懸念を持たなかった訳では無い。
その1つが、触手生物の老化による細胞の不具合だった。
細胞分裂の活動が停止した時、その反物質生成サイクルには どの様な影響が及ばされるか?
…その確認の為、人間より老化の早いマウスによる実験が、あくまで、念の為、万が一を考え…何事が起きても被害が出ないであろう、月面で行われていた。
そうして暫くすると、そのマウスにも寿命が。
先ず問題無い…何事も起きないと思われていた検証。
しかし…その結果は最悪以外の、何物でも無かった。
マウスが死に…細胞分裂が終わっても、反物質生成サイクルは消滅せずに、マウスの
そして それは月の物質を連鎖的に反物質へと変えてゆき暴走、最終的には月の約7割を消し飛ばす。
…地球の影が映り そう見えるで無く、文字通りな そういう形。