暗殺聖闘士   作:挫梛道

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違わない時間

「成る程。そんな事が、有ったんですか…」

「…はい。」

2学期終業式が行われた夜の、理事長室。

其処には浅野理事長と殺せんせーが。

…この2人、2学期末試験の結果発表の後、互いに色々と話せる程には、仲が近くなっていた。

浅野學峯が何故、椚ヶ丘にE組というシステムを作ったかも、既に話している。

そして今は、殺せんせーが何故、椚ヶ丘学園に やってきたかを、雪村あぐりの事を含めて…終業式前夜、自分の生徒達に話した事情と同じ話を、一部は省略して改めて話していた。

  

「しかしまさか、茅野さん…いや、雪村さんと言うべきですか?…が、触手を持っていたとは…

私も流石に、其処迄は読めませんでしたよ。」

「…其処迄? それなら理事長先生は一体 ()()()なら、読んでいたのですか?」

理事長の含み有る台詞に、殺せんせーが問い掛け。

 

「そうですね…とりあえず彼女が、雪村先生の妹さん…迄は、直ぐに判りましたが。」

「何と?!」

そして それに対する答えに、殺せんせーは驚愕。

 

「そりゃあね…新年度前の春休み、編入の挨拶に来た生徒が、いきなり 其処…もう直してますが、ショーケースを破壊ですよ?

そして、『確か この学校には、成績や素行の悪い生徒を集めたクラスが在るんですよね?(ニッコリ)』ですから。

編入早々、自らE組行きを志望するなんて、怪しんで身辺を調べたりするのも当然でしょう?」

「にゅ…そ、そんな事が…」

「雪村先生が急に姿を消したと同時、破壊生物であるアナタが椚ヶ丘の…E組の教師をすると やって来た。

直後、彼女の妹が身元を偽り、やはり椚ヶ丘(ここ)に。

あぁ、成る程…とは思いましたよ。

まさか政府とは無関係な、単独行動とは思っていませんでしたが。

一応、政府に『何か私に隠して動いていませんか?(圧)』と尋ねてみたら、『伝わるべきは全て伝えた(怯)』でしたからね(笑)。」

『………………。』

更に理事長の補足説明。

これに殺せんせーは、やや引き顔で無言に。

 

「それにしても…雪村先生が、()()()()()()()()のは聞かされていましたが…まさか裏で、そんな騒動が有ったとはね…?」

「にゅ…すいませんと、言いますか…」

「違いますよ。それについて、アナタを責める心算は有りません。

矛先を向けるなら、その研究機関とやらと、そんな狂った…とは言いませんが、そんな機関の抑えが出来なかった国…いえ、この場合は世界ですかね?」

 

ゴゴゴ…

 

「にゅや?!」

表情を()にした理事長の背中から、()()が滲み溢れるのを殺せんせーは幻視。

 

「彼女…雪村先生はね…」

「はい?」

「無限の活力(バイタリティ)と教育への情熱を携えていました。

もう2、3年も すれば この学園で、最も卓越した教師に なっていた事でしょう。」

「ヌルフフフ…そりゃあ、私の(せんせい)ですからね。」

「だからこそ…そんな彼女を、次代の新エネルギーか何かは知りませんが、自分達が御す事も出来なかった下らぬチカラで彼女の命を奪った者達を、私は絶対に赦したりは しない…!」

 

▼▼▼

「本来なら こーゆーのって、互いの誕生日の時に贈り合うもんだよな?」

冬休み2日目。

響は地元·某県に帰って来ていた。

恋人·早乙女晴華との、数日遅れのクリスマスデート。

響としては「そんな場合じゃ…」な感も有るが、やはり色恋沙汰は別なのだろう。

 

「でも お互いに誕生日の時って、傍に居なかったし?」

そう言う晴華から渡されたのは、響の誕生日…蟹座を表す巨蟹宮の印を象った、金のペンダント。

響も晴華に、彼女の誕生日、処女宮(おとめざ)の金のペンダントを渡している。

クリスマスプレゼントの交換。

因みに その御値段は、中学生としては、かなり頑張っていると言って良いだろう。

 

「…因みに、どーよ?」

「一応、A判定 貰ってる。」

「そりゃ、結構な事で。」

そして会話は、受験の話に。

エスカレーター内定している響からすれば、来年 名門·椚ヶ丘を受験する晴華の事が心配なのだろうが、彼女の今の成績からすれば、とりあえずは合格ラインの安全圏に居るとの事。

それを聞いた響も一安心。

 

「ま、油断しないで、帰ったら最後の追い込みだよ。」

今の この時間が試験本番迄の最後の息抜きなのだろう、受験生である彼女は にっこりと微笑む。

  

「おう、頑張れよ。」

 

その頃…

 

▼▼▼

ふゎわあぁぁぁぁぁああっ!!?

茅野カエデ…雪村あかりは殺せんせーとの決闘(あんさつ)、その後に語られた殺せんせーの過去話を聞いた後、烏間が呼んだ救急車により、椚ヶ丘の市立病院に搬送。

その儘 入院していた。

そして、今。

その病院の一室にて茅野はベッドの上、布団に包まり悶え絶え絶え。

理由は殺せんせーとの決闘時の、渚とのキス。

イリーナとの それを除けば、中学生である彼女からすればプライベートは勿論の事、役者としての演技でも、まだ そういう経験は無かった。

異性…しかも同年代との ()()は紛れも無く、渚が初めての相手だった訳で有り。

  

「あ、()()は緊急時だったから、仕方無かったの!

ななな、渚だって ()()()心算じゃなかった筈なんだし!

ノーカンよ、ノーカン!!」

そう言いながらも、少しでも気を抜けば、その時の場面が脳裏に鮮明に蘇る。

考えない様にしようとしても、それは逆に『考える』と意識するのと同じ事。

却って その時の事を、唇…ついでに()の感触と一緒に思い出してしまい、その気恥ずかしさから…そして()()()()()()()()()()から、顔を赤くしてベッドに潜り込んでいた。

初めて顔を合わせた時は、そんな感情は皆無だった。

単なる…長い髪も手伝ってか…中性的な顔立ちの、小柄な男子(クラスメート)

しかし、本能的に『このコは使える』と感じたのか、その長い髪を自分と揃いの様に結ってみたりと、友好的に接してみた。

自分を影にする為の光。

自分の復讐心を、本命(ターゲット)の目から晦ます為だけの壁役。 

()()()が来る迄の、偽り…または暫定の主役。

その程度の存在だった筈。

しかし今は彼女にとって、それとは異なる次元に位置する者に。

 

「ぅう…次に顔 合わせた時、一体どんな顔すれば良いんだよぉ…『笑えば良いと思うよ(©緒方さん)』…じゃないっ!」

  

コンコン…

 

「…!」

そんな風に布団の中で自問していた中、病室の扉が静かにノックされる。

 

 

今の自分(わたし)を訪ねて来るのは…烏間先生は昨日 訪れて来たばかりから、多分 違う。

ビッチ先生…は、入室前にノックなんて絶対に しない。

あの(ヒト)は「ハァイ♪ 元気〜?」とか、そんなの お構い無しに入ってくる。

殺せんせーは…入って来るとしたら窓からだ。

…と、なれば、クラスの誰かだよね?

奥田さんか神崎さん…それとも陽菜乃ちゃんかな?

 

 

そう思い…確かに今、クラスメートと顔を合わせるのは少し気不味い感は有る。

…が、今 此処で入室を拒めば、その感情は尚の事 増すのは違いない。

何より、これ以上、クラス内の溝を拡げる訳には行かない。

 

「…どうぞ。」

そう思い、扉の向こうの客に部屋に入る様に声を掛けると、

 

カチャ…

 

「や、やぁ…」

「……………!!」

其処に現れたのは予想通りのクラスメート。

 

「…渚?」

しかも、今 顔を合わせるには最も気不味い人物…向こう側も少しだけ気不味そうな表情を浮かべている…フルーツ盛り合わせの籠を手に提げた、渚だった。

 

≫≫≫

「調子は どう? 茅野…いや、雪村…さん?」

「茅野で良いよ。この名前、使っている内に気に入っちゃってるし。」

自分の事を どう呼べばと迷っている渚に、茅野は今迄通りで良いと笑って話す。

 

「…1人?」

「うん。本当は杉野達と一緒に、訪ねる予定だったんだけどさ…」

1人で顔を見せた渚に その辺りの事を尋ねると、渚が言うには最初は杉野他数名と一緒の予定だったが それより一足先、2人きりの時に茅野に言いたい事が有ったとか。

 

「ぇ? それって何なn」

 

ガバッ…!

 

「すいませんでしたぁ〜あっ!!」

「ぇ…ぇええ〜っ???!」

そして茅野が それは何なのかと聞き終える前、渚は床に跪き、見事な土下座を披露。

 

「ちょ…な、渚?」

「ごめん茅野! こんな謝罪で済まされる事じゃないけど!」

「な、渚?! とりあえず、頭を上げて!?」

茅野からすれば、この行動が如何なる意味かは十分に理解している。

だからこそ必死な渚に対して、先ずは顔を上げる様に言うのだった。

 

「私は…大丈夫だよ…

正直 気にしてない…と言ったら嘘になるけど、()()は仕方無かったと思ってるから…」

「ぅ…本当にゴメンナサイ…」

「だからアレは、私からしてもゴメンナサイ案件だから…」

お互いに顔を赤くして、小さな声で話す2人。

 

「只…私、ビッチ先生を除けば初めてだったんだよね…」

「そ、それは僕も そうだし…」

更に顔を赤くし、小声になる2人。

 

「そっか…お互いに初めて、だったんだ…♪」

「ぅ…ん…て、茅野?」

それは役者の本領発揮か、それとも自覚の無い…或いは自覚が芽生えた故の本心か。

渚の言葉に茅野は笑みを浮かべ、満更でも無い様子。

 

「…でも、やっぱり初めてが ()()()()って、ちょっとヤだな〜?

ねぇ、やり直し…しない?」

「え?! か、茅野?」

「それとも、私じゃ…嫌?」

「!!!?」

悪戯に微笑む茅野に、渚は この日1番に顔を赤くしての、パニック状態。

 

「ま、不味いって!

茅野はタレントなんだし、大体そういうのって、恋人同士でないと€§※π‰<々〘@Д⁠@❩>№◉仝∈≯∀≡ψ⇔?!」

そして更に、テンパる渚。

 

「…だったら、恋人同士に、なる?」

「え?…ええ゙ぇっ???!」

茅野も今の渚の台詞、後半は何を言っているかは全く分からなかったが、それでも前半、自分にとって重要な部分は聞き取れたので、悩まし気な表情で追撃の問い掛け。

茅野は役者として、過去にも数度、TVドラマの主役を務めている。

それは演技力だけで無く、その容姿·顔立ちも要因していた事は違い無く。

そんな、美少女にカテゴライズしても恐らくはアンチ以外からは反対意見が出ないであろうクラスメートから、そんな言葉を言われたのだ。

渚の緊張は既に、限界を突破していた。

 

「…良いの? 僕で…」

「ん。渚が良い。」

それでも必死に、言葉を絞り出すと、茅野は あっさりと それを肯で、笑顔で返す。

 

「役者とか、そういうのも余り気にしなくて大丈夫だよ。

ウチの社長、そういうのは結構 大らかだし。

外向きは兎も角、内側には『付き合うならバレない様に上手く やれ』って言ってるスタンスだし。

大体 今の御時世、『彼氏いません』とか言っても、誰も信じないだろうから。

寧ろ此方から早めに堂々と発表した上で、『(一般男性の)A君とは、健全な お付き合いをしています♡』とかの方が、後々のダメージも小さいし。

それにさ、最近もニュースで話題になったから分かるでしょ?

清純派なんかで売ってると、相手が居るのがバレた時とか、色々と面倒なんだよ?」

「……。」

先のフォローなのか、あっけらかんと笑いながら自身が所属する事務所を含めた業界事情…現在進行形で巷を騒がせている、清純派で売っている某女優の不倫&二股騒動を具体例として話す茅野に、渚は やや引き。

しかし正直な処、渚自身も彼女に対し、個人的に思う部分は有った。

席が隣という事で、必然的にクラス内の女子の中での会話は一番多い。

その関係か、殺せんせー暗殺でも連携する事も多かった。

尤も それは茅野自身が そういう風に…渚を()として その陰で動いてきた所為も有るが、それ等の積み重ねが渚に特別な感情を抱かせる事になったのも、ある意味では必然だったのだろう。

何より、茅野が殺せんせーと相対した時、()()()()()()で彼女の動きを止めたのも、それが茅野だったから。

仮に それが他の女子だとしたら、その発想には至らなかった…例え至ったとしても、実際に行動には移さなかっただろう。

 

「か、茅野…僕は…」

そして此処迄 来たら流石の草食を通り越した絶食系男子でも、茅野の誘いに覚悟有る返事をするのだった。

 

『お邪魔虫は、退散…ですね。』

此処で渚のスマホの中にに潜んでいた律も、気を利かせる様に姿を消した。

 

 

 

 

 

「「…………………。」」

それから、数秒後。

 

「…しちゃった…ね♡」

「う…うん…」

それは1秒に満たぬ時間、僅かに互いの唇の先が掠る程度に触れただけだった。

しかし それでも、2日前の止むを得ぬな緊急時の それとは違う。

確かに、互いの意思による口付けだった。

 

「「…………………。」」

互いに頬を赤くして無言、照れ臭そうに微笑む2人。

 

「ねぇ、もう1回…しようか?」

「ぇ?…う、うん…」

そして その沈黙を打ち消したのは、茅野の一言。

 

 

 

「「……………………………………………。」」

そして また触れる唇。

先程と違い、時間にして ()()()と同じく約10秒。

今度は確と互いの唇が重なり合った。

…舌は交わってない。

 

「か、茅野…?」

そして再び訪れた沈黙を、今度は渚が打ち破った。

 

「も…もう1回、良い?」

「ん♪」

それからの凄く遠慮がちな渚のリクエストに、御機嫌な笑顔で応える茅野。

 

「茅野…」

「ん…♡」

茅野の両肩に手を置くと、眼を閉じ口元が若干()()になっている彼女の顔に、自分の顔をゆっくりと近づける渚。

そして この日3度、2人の唇が重なり合

 

バタンッ!

 

茅野っちー! お見舞いに来…た…y…」

「ちょ…ノック無しで いきなり入るのは不味いだ…r…」

「「!!???」」

…う前に、勢い良くドアが開かれ、入って来たのは岡野と杉野。

 

「ぇ?」

「ぇえっ?!」

「ひゃ?」

そして続いて、奥田、神崎、倉橋。

 

「「「「「「「……………………………………。」」」」」」」

病室内7人全員の時が止まった。

 

 

「…ぉ、お、」

そして数秒の静寂から、再び時は動き出す。

 

「俺は見てない! 何も見てないからな!」

「ししし、失礼しますぅっ!」

「はゎゎ…プ、プリン、ここに置いておきますね!」

「ごごごご、ごゆっくり〜?」

「だ、大丈夫! 誰にも喋らないから!

特に あの3人には絶対、話したりしないからぁ〜っ!」

 

ダダダダダダッ…!

 

それと同時、その場から逃げる様に走り出す杉野達。

 

「ま、待って! 違う…これは違うの! ふじこふじこ!」

「そ、そうだよ! 本当に、違うから! ふじこふじこ!」

そして それを、必死に呼び止めようとする茅野と渚。

…しかし、決して違ってはいない。

 




次回『夢の時間(予定)』
乞う御期待!
 
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