Xの時間
3学期。新学期がスタートした。
始業式が終えた後、本校舎側では この
A〜D組の各クラスから、合計31人の生徒が自身の手荷物、そして自分が使っていた机椅子を持って階段移動。
校舎5Fに新たに用意された教室に集められたのだ。
E組に代わる、新たな特別強化教室。
建前はエスカレーター進学の権利を失い、他校、または椚ヶ丘の一般受験を受ける事になった大多数の3年生。
その中でも特に成績が芳しく無く、他校受験合格も難しいとされた成績下位の生徒を1つの教室に纏め、他校受験に対応出来る様に学力アップを図るという名目の、特別教室。
しかし その実態は
「…そう、君達の様なポジションは必須。
『あんな風には なりたくない』『明日は我が身』と思わせ、緊張感を持たせる為の生贄は、絶対に必要なんだ。
今回は それを…私自身にも、君達は改めて教えてくれた。」
2学期の期末試験の後、浅野理事長がE組の面々に向けた言葉。
その体現こそが、この新たな特別強化教室。
名付けてX組である。
その対象は、2学期の期末試験順位ワースト30だった生徒達。
「クソ…何で、この俺が…!」
そしてA組に
E組脱却の条件である、試験順位50番以内。
2学期の期末試験でも これをクリア出来なかった瀬尾は、晴れて正式に、特別教室入りとなったのである。
因みに これは、生徒達には この始業式当日に発表された事。
余りに急、不意な決定に、該当する生徒の一部からは その場で反発意見も出たが、理事長に話術で敵う筈も無く。
その
学園理事長·浅野學峯の決定には、誰も逆らえないのだ。
そして それを見ていた1年2年の生徒達。
特に2年生は今の時期になると、来年度のE組行きの生徒も半ば決まっている中、逆に その安全圏に居る者でも油断慢心は出来ないという、緊張感を持つ事になった。
そういう意味でも、このX組の編成は椚ヶ丘の理念からすれば正解と言えた。
≫≫≫
「フン…まぁ残り2ヶ月チョイ、精々頑張れや。」
「「「「「「「……。」」」」」」」
そして、この教室の担任となったのは、元A組担任の大野。
本来なら椚ヶ丘に於いてE組の様な特別教室の担任は…雪村あぐりが そうだった様に…若く、そして将来性の有る新人教師に経験を積ませる事を目的とする人事だが、今回の場合はE組相手に不甲斐ない結果しか残せなかった教職員への戒め。
学年主任として(1学期中間試験後に降任されたが、2学期初めに復任していた)代表して責任を取らされての、謂わば左遷の様な物だ。
それ故か、当人も この異動には投槍で…どうせ新年度迄の事だと思っているのか…生徒達と真摯に向き合う心算は微塵も無く。
そして生徒達も その態度·心情は読めており、教室内の雰囲気は初日から最悪だった。
実は この底辺からの挽回が、生徒、教師共に評価対象…特に担任である大野には…となるのだが、誰も その発想には至れなかった。
▼▼▼
「…どういう心算ですか!? 理事長先生!!」
放課後、理事長室に浅野学秀が押し掛ける。
「どういう心算とは、どういう意味だい、浅野
その浅野(学)の鬼気迫る問い質しにも浅野(學)は涼しく受け流し、その質問を逆に質問で返す。
「くっ…あのX組の事ですよ!」
「それについての意義は、始業式の時に きちんと説明した筈だが?
浅野
しかし、それは仕方の無い話じゃないか。
元々 彼は1学期の時点で、本来ならE組行きだったんだ。
そして その後の試験でも、それを免れる結果を出せなかった。
だから これは、当然の措置なのだよ。
それから…あの特別教室を新設したのは浅野
「…どういう意味ですか?」
「決まっているだろう。君達がENDの象徴で在るべきE組を、END足らしめる事が出来なかった。
彼等をどん底に落とし追い遣る事が、出来なかった。
結果E組の"E"は、『END』処か『ELITE』の"E"となってしまった。
勿論、全ての責任を君達に押し付ける心算は無い。
君達に教鞭を振るっていた、教師達にも問題が有る。
寧ろ、そっちの方が比率は大きいと思っている。
…が、浅野
彼等が そうで無くなったからには、代わりとなる存在が必要不可欠なのも理解出来る筈だ。
だからX組という、新しい特別クラスの編成は、至極 必然なのだよ。…違うかい?
それに、だ。
私は最初、 君もX組に組み入れる心算でいたんだ。
君にも生徒代表として、E組を
「……!?」
「当然だろう?
純粋な学力は勿論、スポーツ面でもE組に後れを取るという、数々の失態を見せてくれたんだ。
特に君が執った戦略、或いは戦術。
普通に勝負していれば圧倒的な勝ちを拾えた…にも拘らず、態々 悉く悪手を選択して、その末の惨敗。
生徒達を率いる者に対して、妥当な処罰だと思わないかい?
尤も これは、他の先生方に止められたのだがね。
だから…浅野
先生達には明日にでも、お礼を言っておきなさい。」
「…………!!?」
にこやかに
浅野(学)は それ以上、何も言い返す事は出来なかった。
▼▼▼
「「「「「「「「………………。」」」」」」」」
そして重苦しい雰囲気はX組だけで無く。
始業式後、旧校舎の教室に戻って来たE組の面々も、同様だった。
彼等にも、残された時間は既に、決して長くは無い。
殺せんせーから聞かされた有効期限…地球最期となる日は奇しくも、自分達の卒業式当日。
「「「「「「「……………………。」」」」」」」
だからこそ、早く殺せんせー暗殺を仕掛けるべきだが、誰も それを誘い呼び掛ける事が無かった。
「俺も お前の素性は、断片的にしか知らされてなかったが…」
「……………。」
ホームルームが終わっても、誰1人席を立たず、帰ろうという素振りを見せない生徒達を廊下越しに見ながら、烏間が殺せんせーに話し掛ける。
「彼等に それを話せば、こんな風になるのは分かり切った事じゃ無かったのか?」
「……………。」
「あの場でアレを話したのを、責める心算は無い。
しかし、彼等もだが お前も…
お前は生徒達に あれ程の重みを背負わせ、それでも教師としての仕事を完遂出来るのか?」
「ヌルフフフ…勿論ですよ、烏間先生。」
烏間が一通り言いたい事を言い終えた時に、それ迄ずっと黙りだった殺せんせーが、何時もの にやけ顔で口を開く。
「まぁ、見ていて下さい。私と生徒達を。
最後迄やり遂げる覚悟が無ければ、最初から教師なんて志してなんかいませんよ。」
「…………。」
≫≫≫
「…悩んでいるわね。」
「「「「!???」」」」
そして教室内。
長く続いていた沈黙を、一言が打ち破った。
「ビッチ先生?」
イリーナの一言が、だ。
「悩むのは決して悪い事じゃないわ。
寧ろ、どんどん悩みなさい。
悪いのは それで恐れ躊躇い、何もしない事。
仮に悩みに悩んで、悩み抜いた末の答えが『何もしない』なら、文句は言わないわ。
でも今のアンタ達は違うわよね?
禄に悩みもせず考えを放棄して只、それをやろうとしている。
それは この1年間、アンタ達の面倒を見てきたカラスマや私、その他の関係者…そして何より、あのタコに対する非礼よ。」
「ビッチ先生…」
「もう1度言うわ、ガキ共。
思いっ切り悩みなさい。そして行動なさい。
コレは殺し屋の…ついでに人生の先輩としてのアドバイスよ。」
「「「「「…………。」」」」」
そう言うとイリーナは、教室を去って行った。
≫≫≫
「…………………。」
それから約5分後。
「あ、あのさ、皆、ちょっと良いかな?」
X組…以前、感想でF組構想をされた事が有りましたが、実は その時には既に、E組に代わるクラスの考えは出来ていました。
Z組として…
しかしZ組というのは既に、とあるマンガ(銀さんじゃないよ)にて『問題児だけを集めたクラス』として在るのを知り、Xとしました。
所謂
≫≫≫
前書きや後書きで、小説オリキャラの容姿イメージを解説していますが、「コッチのが それっぽいな」みたいな理由で、偶にモデル変更、書き直していたりします。
因みに主人公の響も…