暗殺聖闘士   作:挫梛道

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衝突と分裂の時間

 

「あ、あのさ、皆、ちょっと良いかな?」

「「「「「「「…?」」」」」」」 

「渚?」

「渚君?」

教室を支配していた静寂。それを、渚の声が打ち消した。

 

≫≫≫

「渚、どうかしたのか?」

渚の呼び掛けで、裏山に集合したE組の面々。

 

「ん…。実は、冬休みの前から ずっと、考えていたんだけどさ…」

「ぁ? 何だ そりゃ?」

「とりあえず、言ってみろよ。」

「…出来るかどうかは分からないけど…」

クラス内の皆が注目する中、渚は緊張気味に言葉を続ける。

 

「…殺せんせーの命を、助ける方法を探したいんだ。」

「「「「「「!!?」」」」」」

この渚の言葉に、クラスメートは己脳内に雷電が迸る感覚を受けた。

助ける…

それは、今迄 自分達が悩み考えていた『殺す』という選択とは、真逆の発想。

 

「…って、助ける?」

「つまり それって、3月に爆発しないで済む方法って事?」

「渚…何かアテって有るの?」

それを聞いて岡野達が渚に詳しく問い掛ける。

 

「勿論、今は何も無いよ。

でも、無いけど…殺せんせーの あんな過去(はなし)を聞いちゃったら、もう今迄通りな暗殺対象(ターゲット)としては見られないよ。

それは皆だって、そうでしょ?

だからこそ、この冬休みには誰も皆、殺せんせーを殺りに行かなかった。」

「「「「「……………。」」」」」

渚の言う事に、誰もが反論せずに黙り込んだ。

事実その通りな中、渚は更に言葉を続ける。

 

「…だから、駄目かな?

殺すより先に助けたいって思うのって、間違ってる事なのかな?」

「私、賛成〜〜〜〜〜〜〜♪」

渚の訴えに、先ずは倉橋が笑顔と挙手で、賛同の意を見せた。

 

「渚が言わなかったら、私が言おうと思ってた。」

「片岡さん…!」

「恩返し、したいからね。」

そして片岡。

 

「うん、恩返し。何だかんだで私等、殺せんせーの お陰で色々と成長したしね。」

「…ですね! 」

「やれるなら、やってみようぜ!」

「新章、スタートよ!」

更には次々と、渚の意見を支持する様に、名乗りを上げていくクラスメート達。

 

「皆…!」

これに渚も、自分と同じ気持ちを持った者が多数居た事に、安堵と感動を覚える。

 

「…あの、さ? ちょっと良い?」

しかし そこで、其の流れを閉ざす様な声が1つ。

 

「こんな空気の中、言うのもアレだけどさ、私は反対。」

その声の主は中村。

 

「中村さん…?」

「渚の言いたい事、解るよ?

…でもね、殺せんせーは こう言った。

暗殺者(アサシン)その対象(ターゲット)

その関係こそが、私達を結ぶ絆…と。」

「………。」

「この1年、そうして築いてきた その絆、私も本当に大事に思ってる。」

「中村…さん…?」

「だからこそ、私は殺らなくちゃダメだと思う。」

「…!?」

普段の、何方かと言えば おちゃらけキャラな中村が、厳しく鋭い眼で宣言。

 

「悪いな、渚。」

「俺達も、中村側だ。」

「えぇっ?!」

更には其処に、寺坂、村松、吉田、そしてイトナが、中村に同調の姿勢を見せた。

 

「大体よ、オメー。"助けたい"って…具体的には一体どうする気だ?

あの柳沢(シロ)みたく、1から あのタコ作れるレベルな知識でも持ってるなら、兎も角よ。」

「そういうのに必要な科学化学知識…竹林に奥田も、高く見積もった処で、今は精々が並の大学生程度だ。」

「…で、でも、」

そして寺坂とイトナの放つ正論(げんじつ)に、渚は何も言い返せない。

 

「渚。中村も言ってただろ、言いたい事は解る…と。

そりゃ俺達だって同じだ。」

「…でもな?」

「吉田君? 村松君?」

「今から その()()()()()とやらを探してよ、結局3月迄、『何も見つかりませんでした』だったら どうなるよ?」

「……!!」

更に覆い被せる台詞に、渚は完全に黙りに。

確かに、中村や寺坂達の主張の方が正しい。

E組の面々の暗殺技術は、今が絶好期(ピーク)と言って良いだろう。

その時期に何の行動も起こさず、残された時間を無駄に過ごして期限切れ(タイムリミット)を迎えるのは愚の骨頂。

 

「渚だけじゃね―ぞ? お前等もだよ!

あのタコが そんな半端な結末、そんな半端な生徒で喜ぶとでも思ってるのかよ? ぁあ??!」

「「「「「「……………………………。」」」」」」

そして普段は脳筋担当で、何も考えていない様な寺坂が、核心を突くかの この台詞。

渚だけで無く、渚に賛同していた者達の心に深く突き刺さった。

 

「でも、それでも、何にもしないよりk

「渚君さぁ…」

「…!?」 

それでも、必死に渚が自身の主張を通そうとした時に、それを遮るかの様に渚を呼び掛ける声が。

  

「カルマ君?」

それはカルマ。

 

「渚君、解ってるの?

今の このクラス、1番 暗殺の才能持ってるの、渚君だよ?」

「え? ぼ、僕は…」

「ほら、それだよ。『自分(ボク)は そんな事…』とか思ってるだろうけどさ、年末の()()で、ハッキリしたんだよ。」

「「…?!!」」

年末の()()…その言葉に渚、そして茅野が過剰な反応を示すが、カルマが言っているのは その行動過程その物で無く、その結果。

 

「確かに吉良っちのアシストが有ったからこそだとしても、あ·の·茅野ちゃんを無力化させたんだ。

…俺は直接に見てないけど1学期、鷹岡の時も そうだったんだよね?

俺や吉良っちの様な見た目 分かり易い、表面的な戦闘力(つよさ)なんかじゃない。

皆、其れ等を見て、渚君がクラスで1番なのを確信したんだよ?認めたんだよ?

…そんな渚君が『暗殺止めよう』って、一体 何を意味してるのか、判って言ってる訳?」

そ、それは…………。」

「ほ〜ら、やっぱり何も判ってない。

才能が無いなら無いなりに、今も無い頭 使って必死に どうしようか悩んでる奴等の事なんか、全然 考えていない。」

「「「「カルマ、言い方!」」」」

「………。」

一部から突っ込みが入るが、それでもカルマの言う事は真実で、渚は増々、何も言えなくなってしまう。

 

「自分を小さく見るのは悪いとは言わないけどさぁ、でも それだって度が過ぎると、凄くムカつくんだよ。

もしかして そうやって、ワザと自分を最弱に設定する事で、他の弱者の思考は自分より強者の考えとかで片付けて理解出来てない、理解しようとしてないんじゃないの?」

「違う! そんな事は無い!

僕は単純に、殺せんせーを助けたいだけ!

カルマ君は そんなに殺せんせーの事 嫌いなの? 殺したいの?

暗殺だけじゃない…

皆で色々と遊んだり…凄く楽しかったじゃないか!

そうでしょ? そうだよね? 違うの?」

「だ・か・らッ!

あのタコが色々と頑張って、渚君みたいなヘタレ出さない様に、教室を楽しく殺る気で、盛り上げてたんだろ!!

殺意が鈍ったら、E組は成り立たないんだよ!

それすら…その努力すら解らない?

身体だけで無く頭ん中迄 ホント、小学生な訳?」

普段の2人からは想像も着かない様な、感情剥き出しな言葉の応酬。

 

ピク…

 

しかし、カルマの最後の言葉は普段なら兎も角、今の渚には地雷だった。

日頃から、自身の小柄な身体にはコンプレックスを持っていた渚。

日常の冗談混じりな会話の中の一言なら苦笑交じりで受け流せたが、今回は悪い方向に琴線が触れたらしく、眼に宿る感情の色が明らかに変化。

 

「へぇ?」

そして それを、カルマは即座に察知。

そして それを、カルマは『面白い』と判断。

 

「え? 何何? 何なの その目?

まさか小動物の分際で、人間様に刃向かう心算?」

そして何時も通り、いや何時も以上の凶悪な笑顔で渚を挑発。

 

どんっ!

 

「ぅっ?!」

其処から胸元への突き出し。

一応の加減は しているのか、渚も それで倒れる事も無いが、

「それなら、受けてやるぜ?

相手に自分の言う事 聞かせたいならさ、力ずくで やってみろよ?…ほら!」

 

どんっ!

 

「…!?」

そして胸への突き出し再び。

カルマからすれば今度は押し倒す心算で、それなりに力を加えたのだが、渚は少し体勢(バランス)を崩しただけで、転倒には至らない。

そして殺気全開放、カルマを睨みつける。

 

「…コイツッ!」

これにより、カルマも真剣モードに。

戦闘なら自分が完全有利故の余裕を消し、顔からも舐めプの笑みが消え、胸元で無く顔面…倒すで無く斃すに切り替え、凶悪な右拳を渚に向けて打ち放った。

 

ガシィッ!

 

「「「「「!!!!?」」」」」

しかし その拳は渚には届かない。

迫る拳…腕を渚は それを紙一重で躱すと瞬時に捕獲して、

「と、飛び付きの三角絞めだと?!」

逆に絞め技に捕らえるのだった。

 

「僕だって、そんな中途半端な気持ちで言ってなんかいない!

無理矢理(ちからずく)で言う事 聞かせろって、そう言うなら!!」

そう雄叫び(シャウト)しながら、カルマの首筋を締め上げる渚。

 

「渚君、何時の間に あんな技を?」

「烏間先生、希望者には格闘技や護身術を教えてたんだよ!」

「因みに吉良君は それで、数々のMuscle技を身に着けてるわ!」

「しかし、ダメだ。」

「吉良?」

「渚がカルマに格闘で、普通に勝てる筈も無い。

アレで決めるならギブ狙いで無く、瞬時に()()()べきだった。…ほら、見てみ?」

「「「「!!?」」」」

 

ぐぃ…

 

響の言う通り、カルマは技を掛けられた状態、極められた片腕だけで渚の体を持ち上げ、

「…殺す!!」

逆に反撃の左拳を振り上げるが、

「止めろって!」

「2人共、いい加減にしろ!!」

其処に磯貝、前原、杉野、木村が両者の間に割って入り、2人を引き剥がす。

 

「お前等、離せぇッ!」

「コイツ、何て馬鹿力なんだよ!?」

「落ち着けって!」

「カルマッ!!」

磯貝と前原、杉野が3人で抑えるも、それでも渚に襲い掛からんとするカルマ。

 

じたばたじたばた…

 

「…………。」

対する渚もカルマに向かおうとしているが、木村1人に背後から抱かれた(バックを取られた)状態で、完全に身動きが取れていない。

 

「お前等マジ、落ち着けよ!」

「クラスの状況が激変したから、苛立ってるのは解るけどよ!」

そして残るクラスメート達も、2人を落ち着かせようと宥めに入る。

 

「ヌルフフフ…中学生の、男子のケンカ、大いに結構!」

「「「「「!!!!??」」」」」

そして此処で、事の元凶が登場。

…何処ぞの軍の、最高司令官のコスプレで。

 

「しかし、それなら暗殺で始まった このクラス。

武器(コレ)で勝負を着けるべきでは?」

 

ゴトッ…

 

そう言いながら、生徒達の前に、大量の武器(エアガン)を持ち出す殺せんせー。

 

「「「「「騒ぎの張本人が仲裁案を出してきた?!」」」」」

「何? クラス全員で、サバゲーでもやれって言うの?」

生徒達が ざわめく中、赤と青の2色に塗り分けられたBB弾を見て、響が質問。

 

「その通り。先生を殺りたい人は赤チーム、殺りたくない人は青チームに別れて、ハッキリと決着させましょう。

そして勝利チームの意見を、クラス全員の総意とする。

…それで どんな結果になろうとも、互いに恨みっこ無し…どうですか?」

「「………………………………。」」

渚とカルマ、2人に交互に顔を向けながら、殺せんせーが問い掛け。

 

「ん、俺は それで良いよ〜?♪」

「僕も…!」

これに、2人は了承の意を示す。

 

「…だ、そうですが、皆さん?」

それを確認した殺せんせーは、残りの面々に話を振ると、

 

コクン…

 

その全員が、小さく頷いた。

 

「はい、決定です。

それなら次は、チーム分け。

皆さん、自分の信念に従い、武器と弾を選んで下さい。」

こうして今後の殺せんせーの待遇を決める、E組サバイバルゲームが始まる事になった。

 

≫≫≫

「急に すいませんね、烏間先生。」

「気にするな。彼等の中が不協和となるのは、俺も望まない。」

審判役として呼び出された烏間に、殺せんせーは頭を下げる中、E組メンバーのチーム分けが始まった。

 

「必殺を目指して必死に やってきたから、今の俺が此処に居る。

誰が、何が俺を此処迄 育ててくれたのか…其処から目を逸らしたくない。

…だから俺は、殺す(コッチ)側だ。」

「…同じく。」

 

「私ね、殺せんせーを殺そうとした事、今は凄く後悔してる。

多分、お姉ちゃんの血筋かな?

『このヒトには もっと長く生きて欲しい』…今は そんな風に考えている。

だから私は…殺せんせーを守りたい。」

 

「俺は殺す為に、このクラスに来た。

状況事情が変わろうが、それは変わらない。

そして殺せんせーを殺す毎日は面白い。

…単純な理由だ。」

 

「それなら俺達も、単純だ。

助けたいから助ける、それだけだよ。…な?」

「…本当は皆の意見、全部 尊重したいんだけどな。」

 

正義(Justice)に名前負けしない暗殺者を目指せって言ったのは、殺せんせーだぜ?

それなら俺は、そのアドバイスに従うだけだよ。」

 

「私は…この機体(からだ)ですから、今回の様なゲームには普通に参加不可です。

ですので中立と、させて頂きます。」

…其々が各々の考えの下、(殺す)(殺さない)のチームに分かれていった。

本体がE組教室に固定されている律は今回、中立の立場に就き、現状、殺す・殺さない両チームの人数は、14:14。

 

「………………。」

そして最後の30人目…残ったのは響である。

 

「吉良…」

「吉良君…」

「吉良っち…」

「きーちゃん…」

響が着いたチームが、人数的に有利。

それ以上、響の戦闘力がE組内でも企画外故に、それだけで そちらのチームが優位に立つのは違いないだろう。

 

「俺さ…渚の言いたい事も中村ちゃんやカルマの言いたい事も、どっちも理解出来るんだよな。」

「吉良君…」

「吉良っち…」

そうして皆が注目する中、響が選んだのは、

「しかし、それでも救える命なら、救いたいって考えの方が強い。」

「吉良君!ぁ、ありがとう…」

「渚。お前の信念、覚悟…見せて貰うぜ?」

チーム(ブルー)だった。

  

 


 

・チーム(ブルー)(殺さない派)  ・チーム(レッド)(殺す派)  

 渚              カルマ    

 響               中村

 茅野              寺坂

 磯貝              吉田

 片岡              村松

 前原              イトナ

 杉野              千葉

 竹林              速水

 奥田              岡野

 神崎              木村

 矢田              岡島

 不破              菅野

 原               三村

 倉橋              狭間

 櫻瀬

 

 

・中立

 律

 




 
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