暗殺聖闘士   作:挫梛道

117 / 141
  


覚悟の時間

 

「吉良君…ど、どうして…?」

「言った筈だ、渚。お前の覚悟、見せて貰うぜ…とな。」

 

▼▼▼

E組暗殺サバイバル。

渚がチーム(レッド)…『殺す派』の最後の1人、カルマを倒した事で、『殺さない派』チーム(ブルー)の勝利が決定、烏間がゲーム終了を告げる正に その直前に、敵チーム寝返りの宣言の宣言をした響。

 

「構えろ、渚。」

「……。」

渚の前に立つと、傍らでダウンしているカルマが持っていた、赤のインクが浸されたナイフを拾い、戦闘姿勢を取る。

 

「吉良君…本当に本気、なの?」

それを見て冗談では無いと確信したのか、呼応する様に、渚もナイフを構える。

 

「何度も言わせるな。

殺せんせーを助けたいっていう、お前の本気、お前の覚悟…この俺が、見極めてやる。」

響が最初、チーム分けの時に発した『救える命なら救いたい』の言葉は、紛れも無く本音だった。

仮にカルマが渚を(くだ)していたなら その儘、殺さないチームの一員としてカルマと戦い、勝利して終わらせる心算でいた。 

しかし、渚がカルマに勝利…しかも その経緯が己が予測していた展開その儘な決着を見て、ある種の好奇心とでも言うべきか…

改めて渚の信念を自らの身に、直に感じたいと思ったのだ。

 

「渚、お前 最初のチーム分けの時、俺が殺さないチームに着いた時点で『勝った!』とかな安心した感じな、舐めた考え持ってなかったか?」

「…っ?!」

その言葉に、渚は言葉を詰まらせてしまう。

実際に響が自分の側に着いた時、僅かだが、そうした思いを持ってしまったのを、否定出来なかったから。

 

「…でもぉっ!!」

 

ダッ…!

 

だから、誤魔化す様な言い訳は、しない。

決して只それだけじゃないと、目の前の最後の敵(ラスボス)に それを示すには行動でしか無い。

だからこそ、渚はダッシュで距離を詰め、

 

シュッ…!

 

「甘いっ!」

ナイフの一撃を浴びせると見せ掛けて、身を屈めての足払いを繰り出すが、それは響に読まれ、容易く躱されてしまう。

 

「…知ってる!」

「はぁッ?!」

 

パシィッ!

 

しかし それは、渚も想定済み。

渚の狙いは単発に非ず。

最初の足払いから その勢いの儘、

「連続の水面蹴りだと?!」

「渚君、あんな技まで!?」

放った第2撃により、響の足を刈り取った。

そしてダウンした響に改めて、ナイフを突き立てるが、 

「だから、甘いっ!!」

 

どんっ!

 

「??!」

その攻撃は逆に、倒れた儘で放たれた、強烈な前蹴りで返され、渚は吹き飛ばされてしまう。

 

「終わりだ、渚!」

そして今度は、響が倒れている渚に飛び掛かり馬乗り、胸元にナイフを突き立てようとするが、

 

ガキィッ!

 

「何…ぃ?!」

その攻撃は弾かれ、渚は自身が下位置の状態から、

「あ、アレは肩甲骨固め(オモプラッタ)!」

「な…知っているのか、不破?」

「うむ!」

烏間直伝の関節技を、響に極めてみせた。

 

「オモプラッタ…元々は、ブラジリアン柔術の技。

和名は『肩甲骨固め』だけど、実際に極めてるのは実は、肩や肘なんだけどね…」

自身が読んでいた、格闘系コミックの知識で技を解説する不破。

 

「でも、あれじゃ…ダメだよ。」

「カルマ?」

「カルマ君?」

「お前…復活ってか、回復したのか?」

此処で、渚の猫騙し(クラップ スタナー)による麻痺が解かれたカルマが会話に参加。

 

「渚君が吉良っちからギブ獲るなんて、無理な話だよ。…ほら?」

「こ・な・く・そっ!」

 

ぶんっ!

 

「「「あっ!!?」」」 

カルマの言った通り、響は完璧に極まっていたかに見えていた この技を、パワーだけで無理矢理に振り解いた。

 

「このサバゲーの前に、俺に技 仕掛けた時も そうだったけどさ…吉良っちも言ってたろ?

渚君が格闘で勝つなら例えば、チョークスリーパーなんかで一瞬で落とさないと。

寺坂程度なら、アレで充分かもだけど?♪」

「ぁあ゙?!」

 

≫≫≫

「やるじゃないか、渚!」

「……。」

距離を開け武器を手にして戦闘姿勢、仕切り直しとなる両者。

 

「渚の方が、分が悪い。」

「…だな。」

「うん。普通にやって、渚の攻撃が吉良君に通じるとは思えないし?」

「ワンチャン、有るとすれば…」

「「「「「………………。」」」」」

この戦いを見守るクラス全員が、響有利と見ながら、1つの答えを思い浮かべた。

渚が響に勝ち得る唯一の可能性…猫騙し(クラップ スタナー)を。

  

≫≫≫  

 

 

…とか、皆 思ってそうだけど、残念だけど()()は俺には効かないぜ?

あの技は『殺す技』で無く、あくまでも『殺す為』の、謂わば布石の技。

技自体には、殺気なんてもんは無い。

さっきカルマが殺られたのは、アイツは渚の()()()()()()()()()から。

だから、それに引っ掛かたんだ。

それでも今の渚からすりゃ、ソレしか無いだろう。

色々とフェイントを絡めて狙ってるだろうが、来ると分かっているなら、幾らでも警戒、予測、対処は出来る。

そして何より…()()、一番最初に実験台として喰らったのは、この俺だぜ?

 

聖闘士(セイント)に同じ技は通用しない!

 

来いよ。その猫騙しを狙ってきた時…それが決着の時だ。

カウンターで烏間先生直伝の とっておき、御見舞いしてやるぜ!

だから渚…そうなる前に、お前の本気…覚悟をもっと俺に見せてみろ!

 

  

≫≫≫

「………………。」

睨み合いから数秒、渚が手にしたナイフをカルマと対峙した時と同様に、逆手に持ち替えた。

そして もう1本、左手にもナイフを構える。

 

「「「「「………………!!?」」」」」

その2本のナイフから迸る、凄まじい殺気。

 

「なっ?!」

「ぅゎ…」

「…!!」

「へぇ?」

「ヌルフ…」

「…フッ!」

クラスメートが、教師達が、そして響が それを刮目。

解る者には判る、視える者には見える、まるで隠す気の無い馬鹿正直な迄の殺気。

その場の全員が、渚の狙いを察知した。 

 

 

猫騙し!!

 

 

「…あの技は本当にヤバいよ。

鈍いヤツなら兎も角、それなりに強いヤツ…殺気(アレ)に気付けるレベルなヤツなら、どうしても あの殺気に注意を向けてしまう。

それが、撒き餌(フェイント)だとも知らずにね。」

「さっきのお前みたいに、か。」

「…そう。だけど、吉良っちも既に、それは知ってる訳だし、渚君だって、それは承知だろう。

でも、それでもアレが決まれば、流石に吉良っちでもアウト。

たから それを踏まえて、どんなフェイントを織り混ぜて猫騙しを炸裂させるか、」

「吉良が その全てを凌いて、一撃食らわせるか、か…」

その様な会話の中、

 

ダダダッ!

 

「「「「!!」」」」

渚が動いた。

響との距離を一瞬で詰めて行く。

 

 

来たか!…成る程な。

殺気(ナイフ)を左右に捨てて、集中を乱す心算か?

その一瞬を突いてからの猫騙し(パァンッ!)からの斬り付け(ズバッ!)

しかも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でな!

俺が烏間先生との初めての模擬戦の時に、使った戦法だ。…結局 あの人には通じなかったけどな!

それでも まぁ…見事、と言ってやるよ。

俺以外なら それで終わっていたが、残念だったな。

…悪いけど、俺だぜ?

 

 

≫≫≫

「………。」

殺気を纏ったナイフ。

響は その殺気を無視…ある意味では注視して、渚が猫騙し(クラップ スタナー)を仕掛けるタイミングを窺う。

恐らくはカルマの時以上に、間合いの内側…本当にナイフが届く程に踏み込んだ位置で、その殺気(ナイフ)を捨てる…餌を撒くと響は予測。

 

「(ほら、やっぱりね!)」

そして事実、渚は近接距離に詰め寄り、響に向けて2刀流ナイフを振り翳す。

 

「(…からの、フェイントからの猫騙し!

もう少し捻ると思っていたが、其処迄だな。

しかし、お前の本気、覚悟は確かに見せて貰った、渚!

それでも 悪いが、勝たせて貰うz)」

 

斬々ッ!!

 

「…ぇ゙?!」

「「「えぇ??!」」」

「「「はい?」」」

そして そのナイフは其の儘、響の戦闘服(ジャージ)の胸元に、青のラインを十字(クロス)に刻む。

 

『吉良っちさん、戦線離脱(リタイア)です!』

「其処迄!E組暗殺サバイバル、殺す(レッド)チーム全滅により、殺さない(ブルー)チームの勝利とする!!」

その場面に律が響のリタイアを、そして烏間が改めて、このサバイバルゲームの決着、終結を宣言した。

 

「ま…マジかよ、渚…」

「…………。」

信じられないと云った表情で、呆然とする響。

対する渚は、狙い通りに収まったとばかりな、安堵の表情。

 

「お前…最初、から…?」

「うん。吉良君には どんなに裏を掻いても、絶対に猫騙しは通じないと思ってた。

あの夏休みの時から、絶対に何か対策とか練ってると思っていたからね。」

「それで、()()()を逆に()にしたのかよ?」

「うん。吉良君なら必ず、猫騙しを切り返してのカウンターを狙ってくるだろうな…って。」

「…くくっ」

渚に自分の狙いを見透かされていたのを知り、響は思わず苦笑。

 

「吉良君?」

「くっくく…ギャーッハッハッハ!!」

「き、吉良君?!」

…からの、大爆笑。

 

「くっくく、参ったぜ渚! 完全に、お前の勝ちだ!!」

 

バンバンバン!

 

「ちょ…吉良君、痛い痛い!!?」

そして渚の肩に腕を回し、背中を軽く?叩く。

 

「それにしても小細工無し、まさかの弩ストレートかよ?」

「あはは…フェイントしないのが、フェイント…みたいな?」

「…ムカつく!」

 

ガキィッ!

 

「ぎょえーーーーーっ???!

ちょ…吉良君、ギブ! ギブギブギブギブ!!!」

此処で響の烏間直伝、難度Sの関節技ヌメロ·ドスが炸裂。

 

「「「「渚!」」」」

「「「渚君!」」」

「「「吉良!」」」

「「「吉良君!」」」

「「「吉良っち!」」」

「…って、渚に何してんのよー!!?」

そして其処に、E組の面々も駆け寄ってきた。

 

≫≫≫

「渚君…吉良っち…」

響が渚への拷問技を解いた後、最初に声を掛けたのはカルマ。

 

「カルマ…見ての通りだ。

もう、文句は無いよな?」

「そりゃ…俺に勝って、更には吉良っちにも勝ったんだ。

もう誰も、何も文句なんて言えないさ。

渚君の勝ち。そして敗者は勝者に従う。…そうだろ?」

「ケッ、仕方無ぇな!」

「そーゆールールだったしね〜。 」

響の問い掛けにカルマが、そしてカルマの振りに、寺坂、中村も素直に応える。

 

…コクン

 

そして他の殺す派だった者達も、続いて無言で頷いた。

その表情は、誰も不満は無く。

 

【殺せんせーを助ける方法を探す】 

  

戦って戦って戦い抜いた上で決めた このクラスの方針に、異を唱える者は既に居なかった。

 

「…ホンット、参ったよ。

やっぱ渚君がE組、ナンバー1だ。」

「あ、ありがとう、カルマ君。」

更には渚に対して改めて、純粋に勝利を讃えるカルマ。

 

「やったね、渚! カッコ良かったよ!」

「うん、ありがとう、カエデ。」

そして茅野も、渚に労いの言葉を掛ける。

 

「…ん? カエデ?」

「「「「カエデ?」」」」

「「「「カエデだと?」」」」

「渚が茅野の名前を…」

「下の方で…」

「しかも、呼び捨て?」

「「ぁ…し、しまった…?!」」

しかし、それに対しての渚の受け応えに、

 

ニョキ…パサ…パタパタ…

 

その場の全員が何かを察し、響、カルマ、中村を筆頭に、殆どの者が…正確には烏間、神崎、奥田、倉橋以外の皆が…悪魔の角と羽と尻尾を生やし(イメージ)、下種な嗤い顔を浮かべる。

 

「ヌルフフフ…何という事でしょう。

まさか渚君と茅野さんが、其れ程迄に進んでいたとは この私の目を以ってしても…」

因みに約1名…黄色いタコだけはイメージで無くリアルに、角と羽と尻尾を生やしていた。

 

「あ〜ぁ…」

「折角 皆には黙っててあげたのに…」

『結局バレテーラ…ですね♡』

訂正…もう1人。岡野が手に持つスマホの画面内の少女も、リアルに角と羽と尻尾…な所謂 小悪魔コスを着飾っていた。

 

「さ〜て、渚きゅんに茅野ちゃん。」

「少〜しだけ、OHANASHIしないか〜い?」

「全く…何時の間に…www」

「ま、切っ掛けは予想着くけどね〜?♪」

「「( °Д°;)違うから! 本当に違うから! ふじこふじこふじこ!!」」

そして当然?響達から尋問される渚と茅野。

    

▼▼▼

「…さて、だ。」

E組教室。

渚と茅野が響達の追及を辛くも躱した後。

制服に着替え直し、席に着いた生徒達に、烏間が殺せんせーを指差しながら話し始めた。

 

「君達は このタコを救いたいという話に纏った様だが、俺としては立場的に『はい分かりました』と、それを簡単に認める訳には往かない。」

「「「「…………………。」」」」

「しかし、この儘 暗殺の指導訓練をした処で、その技術は君達の身には決して付いたりは、しないだろう。

だから、1ヶ月。その方法を探し出す期間は、今月一杯迄だ。」

それは、烏間からの最大の譲歩。

 

「それに、例え君達が暗殺を休止した処で、君達以外にも このタコを殺そうとしている者達は、多数存在している。」

「「「「……………………。」」」」

「それでも俺はな、どうせ殺すなら君達に、それを成し遂げて欲しいと思っている。

だから、約束してくれないか?

この1ヶ月の結果が どうなろうと、来月…2月からは また、全力で暗殺に費やすと。

生かすも殺すも、全力で やると。」

「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」

「………フッ。

この烏間の条件という銘の願いに、生徒達は元気に応え、烏間も僅かだが、 それに満足気に口元を緩ませた。

    




【暗殺サバイバル 最終個人敵撃破数(キルスコア)
 
 渚  :★★★★★
 茅野 :★★★★
 カルマ:★★★
 狭間 :★★★
 神崎 :★★
 片岡 :★★
 速水 :★★
 岡野 :★★
 磯貝 :★
 前原 :★
 千葉 :★
 イトナ:★
 木村 :★
 


ヌメロ·ドス…マフラーホールドと羽折り固めをミックスした様な技。
詳しく知りたいなら動画検索を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。