暗殺聖闘士   作:挫梛道

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脱走の時間

あ…が…ががが…

 

寺坂と岡野が、"殺せんせー最終暗殺計画"の責任者(トップ)の男に一撃x2を浴びせた後。 

 

「烏間先生!」

「…お願いします、此処から出して下さい。」

「学校に行かせて下さい!」

「殺せんせーに会わせて!」

「烏間先生なら私達を此処から出す事なんて、簡単ですよね?」

「「「「「烏間先生!!」」」」」

「……………。」

E組生徒一同は、烏間に もう1度この施設からの解放を訴えるが、

「無理だ。今の俺には、それは出来ない。」

「「「「「…!!?」」」」」

烏間からの応えは、彼等の期待とは真逆の回答だった。

その表情は自身の不甲斐無さを隠していない。

  

「それも これも、君達が焦って動いて…目を付けられた結果が、この監禁。

普段の行動力が、完全に裏目に出た形だ。

こうなると もう、今の俺には何もする事も出来ない。」

「「「「「……………。」」」」」

「そんなにヤツに会いたいなら、今は寧ろ待つべきだったんだ。

山の外周を警備をしている自衛隊。

その配置が完全に完了して正式に持ち場が定まれば、その先の人員の動きは少なくなり、油断も生じただろう。

そうだな…あと5日、と言った処か?

其処迄 待てば、君達なら包囲を突破出来たかも知れないな。」

「「「「「「…!!!?」」」」」」

此処で烏間の表情が、普段の険しく厳しい表情へと変わった…いや、戻った。

 

「…しかし万が一、山の麓の警備を潜り抜けても、今度は山の中、あのバリアの内側に入る前に捕まるだろう。」

「「「「??!」」」」

「山の中を守るのは【群狼】。君達を拉捕らえた、世界最強の傭兵集団だ。

30人に満たない部隊だが、世界中の山岳や密林で恐れられた彼等は、少人数で広い山中を防衛するのには正しく適任。

そして それを束ねているのが、ホウジョウ。

"神兵"の二つ名を持つ男だ。

俺も さっき、初めて直に顔を合わせたが…アイツは異常だ。

少なく見積もっても、俺の3倍は強い。

普通に戦り合って、君達に勝つ見込みは全く無い。」

「「「「「「…!!!!!?」」」」」」

烏間の『3倍強い』発言に、生徒達は驚きを隠せない。

ある者は神妙な表情で冷や汗を流し、また ある者は、顔を青くして絶句。

 

「だから…もう諦めr

「嫌です!」

烏間が諭す途中、渚が口を挟む。

 

「殺せんせーと話してない事、話さないといけない事が、まだ沢山 有る! やりたい事も!!」

「そうです! こんな形で終わったら また私等、只の底辺(E組)に戻っちゃうよ!」

「「「烏間先生!!」」」

「「「「お願いします!!」」」」

そして渚を筆頭に、他の生徒達も烏間に求め訴えるが、

「何度も言わせるな。今の俺は、君達を此処から出せない。

それに これは、国の…世界の方針だ。」

しかし烏間は、それを一蹴。

 

「…だよね~? 所詮はアンタも社会人。

最後は上の命令に従う…保身に走るって事だ。」

「そうだ。否定は しない。

地位が無ければ、肝心な時に誰も守れないからな。

それに俺は最初から、ヤツは殺すべきだと考えていた。

そして それは、今も変わらない。」

それに対するカルマの煽りにも、何の反論もせずに冷静に対処。

 

「…兎に角 君達も、3日位 此処で頭を冷やして考えてみるんだな。」

 

バタァン…

 

この台詞と共に、烏間と責任者の男は この場から立ち去った。

 

「烏間先生…」

「何なんだよ…あの人、最後の最後で裏切りかよ?」

「信じてたのに〜…」

「「「「………………。」」」」

暗い雰囲気が、室内を支配。

 

「ケッ、揃いも揃って、バカかよオメー等!!」

「「「「「「…??!」」」」」」

しかし直ぐに、それを打ち破る一声が。

 

「寺坂…?」

「寺坂君?!」

その声の主は寺坂。

 

「驚いたぜカルマ。お前ですら、気付いてないとはな。」

「…何が?」

「一言一句、思い出してみろよ、烏間のヤローの言葉を。」

「…?」

「まだ分かんねーのか? アイツ、やたらと()()()、と繰り返してたよな?」

「ぁ…」

「「「ぁ…!」」」

寺坂の言葉に、カルマだけで無く、残りの面々も、漸く気付いたかの様、顔をハッとさせ、

「それだけじゃねーぞ?」

更に寺坂は言葉を続ける。

 

「山の警備は何やかんやで、()()()()()()()()()()()()()()…と。」

「「「「「「………!!」」」」」」

「その山には鬼強ぇー奴等が潜んでいて、そのボスは烏間の3倍強ぇ。

…ついでに、()()() ()()()()()()()ってな。」

「「「「「…!!!!」」」」」

「つ、つまり、それって…?」

「応よ。御都合解釈かも知れねーが…ま、()()()()()だろ?」

「そうか、そういう事が!」

「…だな!」

「私達の戦いは、まだ終わらないわよ!」

「「「「「「おーっ!!!!」」」」」」

烏間の然り気無い情報提供を『3日間 此処で対策を考えろ』『その時には自分も行動を起こす』と解釈したE組一同の顔に、再び殺る気が宿る。

 

「それにしてもオマエ、時々 頭が良いよな?」

「何か時々、良いヤツになるし。」

「口調は兎も角。」

「映画の寺坂君?」

「あ゙?! どーゆー意味だ、固羅ァッ!?

それと映画って何だ、映画って?!」

「まぁまぁ、落っ着けw」

「一応、褒めてんだからwww…なぁ?」

「そうだね。やろうよ、寺坂君!…って、カルマ?」

「………orz」

約1名を除いて。

 

「な、何だ? 何か知らんが、カルマが orzってるぞ?!」

「まさか、寺坂ですら気付いた、烏間先生の真意に気付けなかったショックか?」

「2学期期末テストの時の、きーちゃんみたいに?」

()()()とは何だ?! テメー等、いい加減にしろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

≫≫≫

「…成る程。そういう事ね。」

同刻、この施設の屋上。

五感…特に聴覚を最大限に迄 研ぎ澄ませ、この一連の会話の遣り取りを聴いていた人物が1人。

 

「寺坂、やるじゃん♪」

この人物は口元を僅かに緩め、

 

フッ…

 

次の瞬間には その身を一筋の光に変え、何処かに翔び去って行った。

 

▼▼▼

「ヌルフフフ…」

その頃の旧校舎。

対せんせーバリアに閉じ込められた殺せんせーは、E組専用アルバムの作成に勤しんでいた。

 

プシュッ

 

特殊インクを触手(ゆびさき)から体内に取り込むと、それを別の触手(ゆび)から噴き出し、専用紙にジェット印刷する事で、次々とページを製作。

 

「ヌルフフフ…こんな檻に閉じ込めただけで勝った心算とは、心外です。

自分で言うのもアレですが…私、世の中から見れば非常識の塊なのですよ?」

その余裕な表情には、自分が衛星兵器で殺されるとは、微塵も思ってない様に見える。

 

「…そう。私を殺せるのは、()()()()なのですからね。」

そして自分の教え子達は、きっと この教室に やって来るのを確信している様に。

 

≫≫≫

「よし! 会心の手入れ!!」

日も完全に落ちた頃。

E組人数分のアルバム作成が終わった後、殺せんせーは1年間 世話になった学び舎に感謝の意を示すかの如く、旧校舎全体の清掃に取り掛かっていた。

普段から使っていた教室だけで無く、全ての部屋の床から壁に机椅子は勿論、窓ガラスに天井、そして廊下。

更には外壁も、清掃業者が施したかの様に、完璧な仕上がりを見せる。

 

「ふぅ…それじゃ少し、休憩を…」

そして買い貯めしていたケーキを食べようと、職員室に入ってみると、

「や♪ 殺せんせー♪」

「き、吉良君?」

其処には戦闘着(ジャージ)姿の響が、 

「…って、キミは一体、何を食べているのですか〜!?」

「ケーキ?」

殺せんせーが楽しみとして取っていた、ケーキを食べていた。

 

「にゅ…吉良君は彼女さんの影響で、スィーツが駄目なんじゃ無かったのですか?」

「いや、少し腹減ってたから。

それに全然ダメって訳でも無いし。

一番 甘さ控えめそうなヤツ、選んでるし。

それに この校舎、既に電気ガス水道、止められてるじゃん。

早く片付けないと勿体無いでしょ?

俺は その手伝いをしていただけだよ。

事実、アイスなんかは もう壊滅(ドロドロ)だったぜ?」

「にゅやーー(」°⁠o(」°⁠ーー?!」

 

≫≫≫

「そうですか…そういう事が…」

軽い食事の後、響はE組の皆が今どうなっているかを殺せんせーに説明。

 

「俺は自分に手を出してきたヤツにカウンター喰らわせて、逃げたんだけどね。

参ったぜ…皆のスマホなんかは奴等に取り上げられてるだろうし、何より俺のスマホも もうバッテリーが切れて、家族とかにも連絡が着かねー。」

「それで吉良君は、これから どうするんですか?」

「とりあえず、家には帰れないよな?

政府連中が家に、どんな話してるか分かんないし。

まぁ、皆が来る迄は、旧校舎(ここ)に居る事にするよ。

食べ物なんかは光速で都外に飛んで、調達するさ。」

そして、今後の話し合い。

 

「あ、それから…」

「にゅ?」

「今日の昼間、俺達に凸してきたマスゴミ共 皆、冥界送りにしといたから。

ニュースなんかじゃ、『破壊生物の呪いか?』…みたいな感じで報じられてるよ。」

「にゅやーーーーーっ!!?

吉良君! それって もしかして、先生が そのマスコミの皆さんを殺した事に、なってるんですか??!」

「ん。そんな感じ?

大丈夫 大丈夫。火葬される前に きちんと皆、元に戻すからさw」

「そういう事じゃ無いし、笑い事じゃ有りませんよ!!?」

 

▼▼▼

「それじゃ、皆の考えを確認しとくぞ?」

「「「応。」」」

「「「うん。」」」

…その頃。E組の面々も今の自分達が何をすべきが、何が出来るかを話し合っていた。

その皆の考えは一致。

 

誰も自分達の担任の死は望んでいない。

しかし、それでも自分達は暗殺者。

殺せんせー暗殺に懸けた1年間を無駄にする心算は…まして自分達とは無関係な者達に、それを無意味にされる心算は全く無い。

 

「烏間先生を信じよう。

レーザー発射の前に、きっと何らかの手を打ってくれる筈だよ。」

…だから、彼等は考える。

この場から出た後、如何に動くかを。

考えられる あらゆる事態を想定し合い、それに対応した、あらゆる作戦を打ち出していく。

 

「…磯貝。」

「カルマ?」

「もし此っから出て山の中迄 入ったらさ…その先は、俺に仕切らせてよ。」

「…カルマ?」

「頼む。」

「ああ、任せたよ。」

「おやおや? カ〜ルマ君は寺坂ショックから、立ち直ったかな〜?♪」

「…うっせ。」

 

≫≫≫

そして日は経ち…

 

「おいおい、結局、()()になったじゃないかよ?」

「脱出のチャンス、全く無かった…」

遂にレーザー発射の日…最終期限(リミット)の日を迎える事になった。

時刻は既に正午を過ぎている。

やれる事は やってきた…しかし、だからこそ残された時間が半日を割った今、E組一同の焦りは最高潮(ピーク)に達していた。

 

ガチャ…

 

「「「「…!!?」」」」

そんな時、閉ざされた扉が開かれ、

「誰?」

「烏間先生?」

生徒達は皆、その扉に注目。

 

「良いか? 本当に5分だけだからな?」

「分かってるわよ♪」

其処から見張りの兵隊と一緒に顔を見せたのは、

あ〜ん生徒達〜♡ 心配してたわよ〜♡

「「「「「「「…………………………。」」」」」」」

笑顔満面なイリーナだった。

 

「「「「「「「…………………………。」」」」」」」

このタイミング、やって来たのは烏間だと思い込んでいた事にプラスして、今迄 見た事の無い…過去1番の優しい笑顔&声に思わず引いてしまうE組の面々。

イリーナも それは予想していたかは不明だが、それでも お構い無く、

 

がしっ…

 

「??!」

先ずは扉から1番近くに立っていた狭間を捕まえ抱き締めると、

 

ぶちゅぅうっ!

 

「〜〜??!」

「「「「(◉o◉)!!?」」」」 

何時もの()()()ヤツを御見舞い。

 

ぶちゅ…ぶちゅ…ぶちゅぅ…ぶちゅ…ぶちゅう〜…

 

そして それは狭間だけに終わらず。

近くに居た者から男女問わずに片っ端、イリーナの無差別ディープキスの餌食に。

 

「ちょ、ビッチ先生? や、止めt…」

 

ぶぅっちゅう〜!

 

「〜〜〜〜〜〜?????!」

「あ゙っ〜〜〜〜〜〜〜!!?」

「ぷはぁ♡ よ~し、皆 元気な様ね?

それなら安心したわ♪」

最後は渚に、他の者に比べて少し長い口付けを交わした後、

クソ、何で羨ましいガキ達だ! も、もう良いだろ?」

「あ〜ん、そんなに引っ張らないでよぉ?

じゃ、私、帰るから。じゃね、ガキ共☆」

「「「「「「「…………………………。」」」」」」」

 

ガチャ…

 

顔を赤くした兵隊に腕を掴まれ、イリーナはウィンクしながら退場した。

 

「「「「「「「…………………………。」」」」」」」

イリーナが去った後も、E組の約半数…彼女の毒牙に遭わなかった者は何事だったのか理解が追い付けず呆けた儘だが、

「な、渚、大丈夫? あのビッチ、何しに来たの? 何がしたかった訳?」

難を逃れていた茅野が渚に半泣きで駆け付けると、

「…。」

「…渚?」

渚の口からでてきたのは、何かの機械部品(パーツ)

 

「…。」

「…。」

「………。」

そして それは、渚の口からだけで無く。

イリーナからキスされた全員の口から、何かのパーツ、或いは図面が次々と出てくるのだった。

 

「これは…爆弾のパーツと、この建物の地図だね。」

「ビッチ先生、コレを渡しに…」

「…って、コレだけの部品や紙きれ、全部あの口の中に仕込んでいたのか?!」

「流石はビッチ…と言うべきかしら?」

 

▼▼▼

 

ボンッ! 

 

約4時間後。

日が落ち掛けてきた頃に、建物裏口の扉、開閉部のみが爆破され、

 

ササササ…

 

其処から約30人弱の人影が足音を立てない、独特な歩術で現れ、走り去って行った。

 

≫≫≫

「遅い!」

E組一同が集まったのは、椚ヶ丘駅前のコインパーキング。

数日前、彼等が【群狼】に捕まった場所だ。

其処に待っていたのはイリーナ。

 

「コレは…」

「見ての通り、アンタ達の戦闘着(ジャージ)よ。」

捕まっていた全員分のジャージ、そして武器一式を揃え、待機していたのだ。

 

「アンタ達が逃げたのは、もうヒビキにもメールで伝えてるわ。

返信が来ないのが少し気になるけど、まぁアイツなら、大丈夫…合流出来るでしょ?」

「まぁ、吉良なら…」

「俺は吉良っちなら、絶対に やらかしてくれるって信じてるよ〜?♪」

「「「ですよねー。」」」

Good(よろしい)それから…渚!」

 

ポイッ…

 

「…!?」

イリーナが渚に投げ渡したのは、新品のスマホ。

  

『皆さん、お久し振りです。そして御無事で何よりです!』

「「「り、律ぅ!?」」」

そして その画面には、戦闘着(ジャージ)を着込んだ律が。

 

「流石にアンタ達のスマホは、回収出来なかったからね。

だ·か·ら·仕方無く、この為だけに、新規契約してあげたのよ、感謝しなさい!」

「「「「「あ、ありがとう、ビッチ先生!」」」」」

「それよりも…(うえ)を見てみなさい。」

生徒達からの お礼の言葉に照れもせず、夜空を見上げるイリーナ。

言われた儘、E組の面々も空に目を向けると、其処には見慣れぬ大きく光る黄橙の星が。

 

「アレが、対タコレーザー衛星。

アレからレーザーが発射されるのは、日付が変わる直前だそうよ。

此処迄 来たら、どんな結末になるかは もう私にも予想が付かない。

…でも、どっちにしろ明日、アンタ達の卒業式は行われる。

…だったら! 今から始まる最後の授業、悔いが残らない様、思い切り受けてきなさい!」

「「「「「…はい!」」」」」

イリーナの発破…激励にE組一同は力強く応える。

 

「よし、先ずは手筈通り、各々が準備!

どうせ逃げたのは もうバレてるんだ、包囲が厳しくなる前に動くぞ!!」

「「「「応!」」」」

そして磯貝の号令で、動き始めるE組の面々。

 

「ビッチ先生!」

「ビッチ先生も勿論、来るんだよね?」

「烏間先生と一緒に!」

この片岡達の呼び掛けに、イリーナは

「ふ、ん…当然でしょ♡」

少し照れた様に応える。

そして…殺せんせー暗殺の期限(タイム リミット)迄、残り5時間を切った。

 




 
知らない人の為に…
アニメ版、寺坂の中の人はバルスさんですw
 
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