暗殺聖闘士   作:挫梛道

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突破の時間

「よし、俺達も行くぞ。」

「了〜解♪」

E組生徒一同が動き出したと同じ頃、烏間とイリーナも行動を起こしていた。

既に生徒達が本部施設から逃げ出した事は、司令部も承知で有り、烏間は その生徒達の説得役を名乗り出たのだ。

 

 

生徒達は間違い無く、あの破壊生物の元に向かっているでしょう。

しかし、追い詰められた破壊生物が ()()を起こせば、大惨事となるのは必至。

…そうなる前に、彼等を止めてみせます。

 

 

勿論、烏間もイリーナも、殺せんせーが自分の教え子に手を掛けるとは微塵も思っていない。

しかし、司令部の面々…特にトップの男は その様には思っていない。

この暗殺者と その標的(ターゲット)の奇妙な絆を知らないから。

そして何より、彼等が破壊生物の元に辿り着ける訳が無いと、信じて疑ってない。

彼等が目指す山の外周には、警察や自衛隊が十重二十重に警備を敷いている。

そして仮に、それを潜り抜けた先には、世界最強の傭兵部隊【群狼】が待ち構えているのだ。

如何に訓練されたと云え、所詮は子供。

其れ等を突破出来る筈も無い。

このトップは それを踏まえた上で、『どうぞ ご自由に(笑)』と、軽い気持ちで烏間の申し出を承諾したのだった。

 

「…お前も御苦労だったな、イリーナ。」

「まぁね♡」

そして このE組の面々の脱走劇に、一番 暗躍したのはイリーナ。

彼等が拘束された翌日には、見張りの兵達に接触して、休憩時間に雑談する習慣を作り、「少しだけで良いから、生徒達に会いたいな〜?♡」と我儘を聞き入れる位に心を開かせていたのだ。

そして生徒達には感動の再会からの熱い抱擁から…と見せ掛けて、脱走用の爆弾部品や その為の経路等が書き込まれたメモを渡していたのだった。

…口移しで。

  

「そんな風に思ってるなら、御·褒·美♡欲しいかな〜?♪」

そして今。

 

「ん~~♡( =3=)」

「……………。」

烏間の前には、目を瞑っているタコがいた。

普段の烏間なら、それをガン無視する処だが、 

ハァ…やれやれだ。

 

chu… 

 

今回だけとばかり、一言 小さく呟くと、口を彼女の額に軽く当てる。

 

「…!!」

それに対するイリーナ。

普段なら「(デコ)かい!?」と、目を三角にしてキレていた処だろうが、

「でへ…で〜へ〜へ〜♡(//∀//)」

今回は効果覿面だった様だ。

 

「…行くぞ。」

「(♡∀♡)は…は〜い、アナタ♡」

 

▼▼▼

…その頃のE組の面々。

各自が一時帰宅し、家族に気付かれる前、自宅に保管していた予備の戦闘着(ジャージ)に袖を通し、武器を構え…

そして集合したのは、隣町…イリーナに渡されたメモで選択された、警察が最も手薄と見られる、隣町側の山の入り口だった。

 

「結局 吉良君とは、連絡が着かなかったね…」

「大人しく一緒に捕まってりゃ、良かったんだけどね〜♪」

「カッ! 普段の無敵っ振りが、裏目に出たってか?」

『どうやら吉良っちさんのスマホ、バッテリー切れみたいですね。

そして充電が出来る状況では無いと思われます。』

「まぁ、居ないなら、もう仕方無いさ。」

「そうだね。でも明日…卒業式じゃ顔を合わせるだろうからさ、その時に皆で『出番無し』『役立たず』『何やってたの?www』って、弄ってあげようよ。」

「「「「「「「「「おーっ!www」」」」」」」」」

「よし、行こう。」 

「「「「「「応!!」」」」」」

「「「「「「ん!!」」」」」」

こうしてE組一同も動き出す。

 

…殺せんせー暗殺期限まで、残り3時間。

 

▼▼▼

「…来たみたいだぜ?」

「吉良君…君は、皆さんと合流しなくても?」

「このタイミングじゃ、もう不自然でしょ?

あの時 逃げた後、直ぐ旧校舎(ここ)に向かってたって方が、皆も納得するさ。」

それから少しの時間が経過。

E組一同が山に入った気配を感じた、殺せんせーと響は旧校舎で待つ。

彼等なら皆欠ける事無く無事に、この場に辿り着く事を、信じて疑う事無く。

 

 

 

…しかし、響も殺せんせーも気付かなかった…想定していなかった。

対せんせードーム…地の盾を形成している一面に一瞬 ()()が出来、直ぐ閉じた事に。

そして その一瞬その隙間から、本来なら このバリアを素通り出来ない存在が、ドームの内側に侵入した事に。

 

▼▼▼

 

パァァンッ!!                  

 

烏間からの情報では、傭兵団【群狼】は30人からの部隊。

そして先日の、中村、矢田、響との絡みで、既に3人程 戦線離脱(リタイア)しているとの事。

即ち現状は、僅かながら人数では勝っているE組。

そして何より、戦場である山の中は1年間、殺せんせーを相手に学び、遊び、暗殺をしてきた自分達のホームグラウンド。

町中で拉致された時とは状況も…勝手が違う。

その僅かな優位性(アドバンテージ)を無駄にする心算も無く。 

 

「オラ、縛れ縛れ!」

「「応よ!」」

最初に見つけた見張り役の兵。

それを渚が気配を消して背後から近付き、()()()·クラップスタナーで麻痺させると、後ろに控えていた寺坂、村松、吉田が布テープ(業務用超強力)でミイラの様に全身拘束。

 

「〜か〜ら〜の〜♪」

そしてカルマ。

 

ぐぃ…

 

歯科治療等で使用される開口器(マウスオープナー)で無理矢理に口を開き固定させると、

 

ニョキ…パサ…パタパタ…

 

ねーねー、ワサビと辛子、どっちが好き〜?

え?両方共 大好き? OK、分かった〜♪」

デビル·スマイルを浮かべ、チューブ入り山葵&辛子を見せながら、英語で(たずね)る。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!??」

そして容赦無く、山葵と辛子を口、そして鼻の中に大量注入、更には其れ等を多量に塗り付けたアイマスクを被せるという、

「悪魔か、お前は?!」

「てか、開口器(そんなもん)、用意してたのかよ?」

「どういう想定なのよ?!」

正にカルマの本領発揮。

 

「あ、そうだ。奥田さん、アレも使おうよ♪」

「は…はい!」

そしてカルマの何か思い付いた様な呼び掛けに、奥田が取り出したのは、彼女が開発していたカプセル錠剤。

銘を【ヴィクトリア·フォール·アルティメット】。

簡単に解説すれば、速効性超強力下剤である。

 

「愛美ちゃん、あんなのも用意してたの?」

「はい、カルマ君に『念の為』…って頼まれていました。」

「どんな『念の為』!?」

さぁ、最強傭兵さんの強い所、俺達に見せてよ〜?♪」

£§⇔↹‡∉№¶(⁠ʘ⁠ᗩ⁠ʘ⁠⁠)仝@↺◐❖〜!!?

このカルマの所業に、普通な文字では表現不可な声を上げる傭兵。

 

「ククク…痛みには耐性有るっぽいけど、それ以外は てんでダメダメみたいだね〜?♪」

「「「「「「(あ…悪魔!!)」」」」」」

そして その様子に頼もしさを感じながら、ドン引きなE組の皆さん。

 

「さあ皆。今から この悲鳴を聞いて、()()()()がドンドンやって来るよ〜?♪」

  

≫≫≫        

『皆さん、3人程、此方に近付いています。』

イトナ特製ドローンと同調(シンクロ)した律から、報告が入る。

捕らえた傭兵の叫び声…そして異臭に反応したのか、近い位置に待機していた傭兵が動き出したのだろう。

しかし、

 

ビュンッ…

 

ぬぉっ!?

1人は足下に仕込まれていたワイヤートラップに引っ掛かり、宙吊り状態から、

「はいはーい、ちょっとビリビリしますからね〜♪」

「「そ〜れ!!」」

  

ビリゥッ!

 

「 」

倉橋、狭間、原のスタンガン攻撃で行動不能に。

 

「まさか、山中に こんな(トラップ)、仕掛けてるなんて思いも しないよな〜?」

「私達も、対人間で仕込んでた訳じゃ無いんだけどね。」

あくまでも対·殺せんせーとして配備していた罠を、それ以外の者に使う事に…そして成果が出た事に、岡島と矢田が苦笑。

 

パスッ…パスッ!

 

「…??!」

そして1人は、木の上で待機していた千葉と速水の狙撃…弾は対せんせー弾に奥田特製の麻酔針を取り付けた物…により、その場に倒れた。

 

What?

そして残る1人は それに気を取られた瞬間、

 

バサッ…!

 

「…!!?」

茂みの中に潜んでいた不破が、身を低くして飛び出して…今更な解説だが、E組特製戦闘着(ジャージ)(ブーツ)は、爪先部分に強化硬質プラスチックが仕込まれた 危険な 安全靴であり…

マチュキック!!

 

ドスッ!!                  

  

そのブーツによる爪先蹴りを、相手の股座に真正面から浴びせる。

 

g… NO〜〜〜〜〜??!

そして傭兵の方は、着ていた軍服にはファウルカップの類は仕込まれていなかったらしく、この一撃で悶絶。

 

「ふ、不破〜! お前は、何ちゅう恐ろしい真似を…!?」

「ガ●ダムが殺れと言った。」

「何でも かんでもガン●ムの所為にするな!」

御大(おハゲさま)に謝りなさい!」

その、ある意味カルマ以上に悪魔な所業を三村、菅谷、竹林が突っ込む中、この傭兵も布テープにより雁字搦めされた後、山葵&辛子、そして下剤の責めを受けるのだった。

 

▼▼▼

その後も続く、E組無双。

【群狼】は次々と、E組の奇襲で脱落して行く。

元より相手は中学生だと侮り、烏間からも戦闘力を過小して伝えられた油断による物。

そして…

 

「フッフッフ…反対に生徒達には、最大限に用心する様に言っておいたからな!」

「…親バカ?」

「ふっ…そうかもな。

兎に角だ、この山は彼等のホームグラウンド。

余所の戦場で()()相手に戦っていた奴等とは、経験値が違う。」

「…確かに、ね。

それに双方の戦う動機…『殺る気』の差は歴然よね。」

「その通り。この学び舎に場所を限定すれば、彼等は世界最恐の暗殺集団だ。

…しかし、」

此処迄 満足気に話していた烏間が、急に表情を厳しくした。

 

()()()が本気で動き出せば、戦況は一瞬で一変するぞ!」

 

▼▼

「見事…としか言い様が無いな。

認めよう。正直、君達を侮り過ぎていた。」

「「「「「………………!!」」」」」

そして、烏間が危惧していた『あの男』が、E組一同の前に姿を見せた。

 

「あのロン毛に眼鏡…」

「間違い無いわね。」

「あのオッサンが、烏間先生の言っていた…」

【群狼】リーダー、クレイグ·ホウジョウ。

烏間が、「自分の3倍強い」と言わせた男が、アサルトライフルを携えて現れたのだ。

 

「…出来れば、エンカしたくなかったけど、」

「出遭ったからには、仕方無い!」

しかし、烏間からの情報で、この男の対策も立てていた。

 

「散ッ!」

 

ザザザッ…

 

先ずはカルマの指示の下、散開してホウジョウを囲んだ上で、

 

パスッ!パスッ!

 

木の上で待機していた千葉と速水が狙撃。

 

「ふん…」

しかし、その麻酔針付きの弾は、簡単に盾代わりにしたライフルで弾かれた。

 

「麻酔針…そんな玩具で無く、部下の持っていた銃を使うべきだった…な!」

 

ガキィッ!

 

「!!」

その口上の途中、カルマが側面から警棒(ロッド)での奇襲を試みるが、ホウジョウは それを盾代わりにしたライフルで防御すると、その儘 今度は そのライフルを殴打武器の様に振り抜き、カルマを吹き飛ばした。

 

「まだだ!」

しかし、少年少女のターンは終わらない。

 

カッ…!

 

「…?!」

神崎が高出力ライトを浴びせ、その光を一瞬 腕でガードした処で、磯貝、前原、岡田が特攻。

ロッド、山中に落ちていた木の棒、そして蹴りの同時攻撃。

その全ては防御されたと同時、距離を空ける様に退避。

 

ヒュンッ!

 

その次の瞬間、杉野が投げた、野球ボール程の大きさの石がホウジョウ目掛けて連続で飛んでくる。

これは簡単に躱されるが、それは あくまでも牽制目的。

間髪入れず、今度はイトナ、木村が。

続け様、片岡、中村、茅野が。

そして全員が、時折 飛び道具での牽制を挟んでの、数人グループでの一撃離脱を繰り出して行く。

これがE組メンバーの、ホウジョウ対策。

防御される前提での、連続波状攻撃。

烏間から【群狼】の…ホウジョウの強さを聞かされた後、監禁されている中、全員で何度もシミュレートしてきた戦法だ。

 

 

マジ銃を使わないのは、それは相手の土俵に上がる事になるから!

 

銃撃戦じゃ、絶対に勝てねー!

 

てゆーかコイツ、そうなったら絶対に同士撃ちを狙ってくるだろ!

 

…だから私達は、()()()()

 

有効打なんか要らねぇ!

 

兎に角 今は、相手に戦闘体勢を取らせないのが、最優先!

 

連携を重ねて、何とか隙を作り出して…

 

その時に…

 

殺って殺る!!(殺さない)

 

 

≫≫≫

「クソ、小賢しい!」

銃を構える暇も許さない連続攻撃が、徐々にホウジョウから冷静さを奪っていく。

しかし、ホウジョウも只 防戦一方な訳で無く。

何度も攻撃を受ける中、そのパターンは学習していた。

 

 

…次は、照明の目眩ましから、正面から1人、そして右側1人、左後方1人!               

 

 

カッ… ダダダッ…!

 

「ほら…な!」

ホウジョウの予想通り、竹林のライト照射から、カルマ、岡島、渚が突進。

  

「そして次は、麻酔針の狙撃…」

この3人の攻撃も捌いた後、次の攻撃であろう、千葉と速水に注意を向けた時、

 

パァァンッ!!                  

 

「…?!」

後方からの攻撃の後、一撃離脱のパターンを破り、距離を空けなかった渚のクラップスタナーが、ホウジョウに炸裂。

 

「今だ、律!」

『はい!!』

 

ヴィィィ…

 

そして律が制御(コントロール)するドローン3機が、ホウジョウを包囲、

 

シュッ!

 

装備された砲身から、麻酔針の同時発射。

 

「ちぃいっ!!」

しかしクラップスタナーの効きが不十分だったのか、ホウジョウは無理矢理に身体を動かし、3本の麻酔針を叩き落とす。

 

パスッ…

 

「何…?!」

()()の麻酔針は。

ホウジョウの首筋には、()()()が突き刺さっていた。

 

「こ…コレは…?!」

実は律は、3機のドローンの内 1機だけ、麻酔針を2発連射していたのだ。

隠し弾撃ち(ブラインド·ショット)

律が転校初日、殺せんせーに対して有効打を与えた攻撃だ。

如何にホウジョウが烏間をも凌駕する人外の身体能力を持っていたとしても、初見では殺せんせーですら見切れず躱せなかった…ましてやクラップスタナーにより、体の半分以上が不自由な状態で、これを防げる筈も無く。

 

「バカ…な…!?」

更に言えば…この麻酔針に含まれていた薬は、嘗て沖縄にて、烏間を長時間 行動不能にしていた薬剤を()()()()()だけ、効果がソフトになる様にした物。

この薬の開発者である、殺し屋スモッグから貰った薬剤レシピを参考に、奥田が調合した物だった。

 

ガタ…

 

この奇策に、ホウジョウはライフルを手放し、その場に崩れる様に倒れ込む。

   

「…って、それでも まだ ちょっと動けてるぞ?!」

「流石は烏間先生の3倍!」

「ガムテ持って来い、ガムテ!」

「簀巻きだ、簀巻き!!」

「電撃も浴びせちまえ!」

そして それでも…戦闘は不能と云え、まだ体を動かそうとするホウジョウに、E組一同は驚愕、感心、畏怖しながら全力で全身拘束。

 

≫≫≫

「よし、行こうか。」

「「「「「応!!」」」」」

こうしてホウジョウの身動きを完全に封じた後、【群狼】の防衛網を突破したE組の面々は地の盾(バリアー)を、そして その先、殺せんせーが待っているであろう、旧校舎を目指す。

 

▼▼▼

「久し振りだな、"初代"死神。」

「……………。」

「………!!」

「………………。」

同刻。

旧校舎には、招かれざる客が2名、来訪していた。

    




 
マチュキック…詳しくは画像検索を
  
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