暗殺聖闘士   作:挫梛道

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光速の時間

「久し振りだな、"初代"死神。」

「……………。」

「………!!」

「……………。」

殺せんせーと響の前に、現れた2人。

1人は柳沢。

そして もう1人は、全身コートとフードで顔は隠しているが、 

「柳沢…と、そっちは何時ぞやの"自称"死神か。」

響は即座、その正体を見破った。

 

…チッ、よく分かったな、少年。」 

「そりゃ、ね。()()()()()に1年も通ったからかな?

()()()()()の気配ってヤツ?…は、嫌でも覚える様にもなるさ。」

正体披露(ネタばらし)は まだ延ばしたかったのか、柳沢の少し不満そうな口調に、響は勝ち誇ったかの どや顔で返す。

 

「そして…その"死神"の正体は、もしやと思ってましたが、やはり()()でしたか…」

「殺せんせー?」

そして殺せんせーは、目の前の"死神"が何者であるかも分かったかの様子。

 

「え? 知ってるの? 殺せんせー?」

「はい。…久し振りですね。」

「……。」

「先ず、私はキミには謝らないと いけません。

確かに あの頃の私は余りにも、キミを見て…視ていなかった。

だからキミが 、()()()()()()に出たのも、今は理解出来ます。

ですから私は、キミを恨んで等は、いまs

勘違いしないでよ、()()

「??!」

そして この"死神"に対し、謝罪の言葉を並べようとした処を、当人が遮った。

 

「殺せんせー、『先生』って?」

「はい。彼の名はシューラー。

私の殺し屋時代の…嘗ての弟子です。」

「弟子…そんなの居たの?!」

「…そして私を、柳沢の研究機関に差し出した人物です。」

「マジか…

…で、殺せんせーは あの時の死神が、自分の弟子(コイツ)って分かってたの?」

「はい。尤も その時は まだ、もしかして…ってレベルでしたけどね。

覚えていますか、吉良君。

あの時…律さんが彼から受けたメールにより、ウイルス感染した時の事を。」

「ん?」

「そして その時、立派だった律さんの(バスト)が、一瞬にして茅野さん以上に慎ましくなったのを!!」

「知るかよ?!…って、それ茅野ちゃんが聞いたら、マジに殺されるぞ!?」

「兎に角です! その ひんぬー趣味からして、()ではないかと、当たりを付けていたのですが…」

「最低な見極め方だな、おい!?」

…先に言っておくけどさ、僕は先生…アンタが僕を視ていなかった事については、実は それ程ムカついてなんていないんだ。

あの時、先生に弟子入りした時から そうだった。

僕の目的は あくまで、世界最強の殺し屋。

アンタに認められるとかじゃ無くて、アンタの…"死神"以上の、殺しの技術(スキル)の習得だったからね。

だから、先生が僕を眼中に入れてなかったのは、寧ろ好都合だったんだよ。

会話の途中、響の疑問に殺せんせーが答えた話…これ以上 余計な事を言われたくなかったのか、2代目死神…シューラーが再び 話し始める。

 

御陰で先生は、僕が()()と繋がっているのにも全く気付かず…

結果、最強の殺し屋『死神』の名は、僕の物になったんだからさ。

あ、だから先生の事は、憎む処か感謝もしてるし尊敬もしてるんだよ?

…でも、僕達の世界では そんなのに囚われるなんて、最も愚かしい事だよね?

「そうでしたか…私、少しだけホッとしました。

キミに裏切られた理由…それが、私に問題が有っただけじゃないのが分かりましたからね。」

「…もう お喋りは良いだろ、2代目?」

シューラーが殺せんせーに対しての感情を話してる中、今度は柳沢が、その会話を中断させた。

 

「さて、本題だ。

我々が何故、この場所に来たのは、何故だが分かるか?」

「それは勿論…私を殺しに来たんですよね?」

「御名答。まぁ、コレは愚問だったか。

…では、如何にして?

この質問には答えられるかな? モルモット。」

「………。」

「分からないか?

いや、お前が察しない筈も無い!

認めたくないだけだよな?… 2代目!!」

 

バサァッ!

 

下卑な笑みを浮かべる柳沢の声に反応したシューラーが、コートを脱ぎ捨てる。

  

ボコッ…ボコッ…

 

「にゅ…!?」

「マジか…?!」

そして姿を見せたのは、身体全身が漆黒の異形。

コートという拘束が解かれたと同時、その身体は縦も横も倍近く膨張し、一応、辛うじて人型と言って良いが、その人の身体全身から、無数の触手が生えていると云った形状だった。

 

「やはり柳沢から、手術を受けていましたか…」

「フハハハハハハ! その通り!

昨年、コイツが貴様を殺り損ね拘束された時、私が話を持ち掛けたのだよ!

『真の最強に なってみないか?』…とな! 反物質細胞の暴走の可能性は伏せて、な!

そしたら彼は、二つ返事で快諾してくれたよ!」

そういう訳だよ。さぁ、行くよ、先生。

 

ババッ!

 

顔の肉は殆んどが剥がれ落ち、まるで髑髏剥き出しなような面持ちとなったシューラーが、野生動物が自身を大きく見せる威嚇の様に、全身の触手を大きく放射状に広げ、戦闘の構えを見せる。

 

…の、前に、ね?

「え? 俺?」

しかしシューラーは直ぐに攻撃する事無く、殺せんせーの隣に立っていた響を睨み付けた。

 

キラヒビキ…だったな?

お前だけは、絶対に赦さない!!

「何だ? もしかして あの時の、俺に やられたリベンジか?」

あぁ、そうだよ!

今の僕はねぇ、『死神』の弟子なんかじゃない!

この僕が、()()なんだ!!

その最強の殺し屋、死神である僕が、アマチュアの子供に敗けた儘なんて、そんなの我慢出来る訳が…赦される筈が無いだろう?!

響の問い掛けに、シューラーは感情の儘を吐き出すが、

「成る程。最強の殺し屋、"死神"の弟子…2代目死神か?

…は、殺し屋としては、3流な様だな。」

何?!

響は それを、辛辣に流し返した。

 

「以前、沖縄で会った殺し屋さん達が言ってたぜ?

『私怨で動くヤツは3流』ってな。

そういう事…そうなんだろ?」

だ、黙れぇっ!!

 

ビュンッ!

 

響の台詞は逆鱗だったのか、シューラーは頭を大きく振り翳し、その頭に生えている…ギリシャ神話に出てくる怪物、メデューサの髪の蛇を彷彿させる様な幾本もの触手を響に向けて放った。

その全てが鞭の様な叩き付けで無く、突槍の如くな刺突狙いの音速の触手だ。

 

「………。」

当然、音を超える光速移動が可能な響なら、それを避けるのは容易く、余裕を持って紙一重で躱そうとするが、

「危ない、吉良君!」

  

どんっ!

 

「うおっ?!」

此処で殺せんせーが響を横から突き飛ばす。

 

「殺せんせ

宇宙(そら)から、見られていますよ?」

「…!?」

響の「何すんだ?!」の問い掛けよりも早く、それに答える殺せんせー。

事実、宇宙に浮かぶ、対せんせーレーザー砲【天の矛】に備え付けられたカメラにより、旧校舎周辺…今迄の柳沢達との遣り取りは音声こそ拾われないとしても、司令部に筒抜けだった。

つまり此処で響が聖闘士(セイント)の能力を行使すれば、それは その存在を司令部…そして世界中に知らしめる事になる。

 

「衛星のカメラ…か…」

夜の空、月の隣で月よりも明るく光る、黄橙の星を響は見上げ呟く。

 

「ヌルフフフ…流石の吉良君も生物的な物なら兎も角、科学、機械の視線には、気付けなかったみたいですねぇ?

そもそも、あれだけ大掛かりな代物。

確実に私を殺すという意味でも、あの衛星がカメラ付きという発想は、持てませんでしたか?」

「…るせーよ。」

 

ぷしゅーっ…

   

少し顰め面となった響に悪戯な笑みを浮かべながら、濃黒の霧の様な…暗黒物質とでも表現すべきか?…物を吐き出す殺せんせー。

その黒霧により旧校舎とグラウンド上空の対せんせーバリア【地の盾】の内側は、数ミリの隙間を空け、厚く広くコーティングされた。

 

「これで大丈夫。少なくとも宇宙からは、君の動きを確認する事は出来なくなりました。

此方の2人は…吉良君なら事が済めば、記憶を消したり弄ったりするなんて簡単ですよね?

それとも そんな御都合技、持ってないです?」

「いや、普通に持ってるし。」

「宜しい! ならば安心して、ガンガン避けて下さい。

…と、言いたい処ですがシューラー。

私の生徒を傷付けるのは、許しません。

アナタの相手は、やはり この私がします。」

そして生徒ファーストな殺せんせーが、戦うのは自分とばかりに前に出るが、

クス… 構わないけどさ…僕はアンタと戦ってる間も、コイツにも攻撃を仕掛けるよ?

先生…僕と戦いながら、ソイツを護れる?

キミは…っ!

このシューラーの煽りに、殺せんせーの身体が漆黒に変色。

普段のニヤけた表情も、怒りの権化の様に変化した。

 

「…待てよ、タコ。」

 

ぐぃ…

 

「にゅ?」

しかし今度は、響が殺せんせーを押し退ける。

 

「俺が先にケンカ売られたんだ。

生徒(ガキ)同士のケンカに、教師が出しゃばんなよ。

ほら、掛かって来いよ…3流。」

「ちょ…吉良君?」

 

チョイチョイ…

 

貴ッ様ァッ!

響の指招きしながらの挑発に、シューラーは両腕の、幾本に分かれた触手を放つ。

先程同様、刺突狙いの触手だ。

 

バシュゥッ!

 

何…だと…?!

しかし その攻撃は、響のカウンター、左右の正拳連打で全て迎撃された。

 

な…何だよ…何なんだよ、お前!?

 

ドロ…

 

そして響の両拳は、対せんせーグローブ着用。

特殊素材武器による攻撃で、反物質生物の触手がドロドロに溶ける。

尤も それは、即座に再生されるが、 

お前、どうして僕の触手に、反応出来てんだよ?!

 

バシュゥッ!

 

何が起きたのか、理解が追い付かないシューラーは再度、無数の触手を放つが、

「そりゃ俺が お前よりも、速く動けるからに決まってるだろ!」

 

バギィッ!

 

ガッ…?!

響は其れ等 全て躱すと光速移動、シューラーの懐に飛び込み、顔面に左の正拳を炸裂させた。

 

あがあぁぁああっ?!

顔半分を溶かされ…その痛み(ダメージ)以上、自分にとって知識外常識外の、響の動きに狼狽えるシューラー。

 

「ば、馬鹿な!? ヤツは、一体…!?」

そして それは、柳沢も同様。

しかし それも、当然な話。

暗殺者としては、精々がアマチュアより一歩先に足を進めた程度な筈の中学生が、音速(マッハ)のスピードを見切り、況してや それと同等以上の速度での攻撃を繰り出したのだ。

 

「まだだ、まだ終わらんぞ!」

「い、いけません吉良君! それ以上は…!」

その一撃だけで終わらせず、更にラッシュを仕掛けようとする響に対し、殺せんせーは自分の教え子に殺しをさせる訳には往かずと思ったのか『待った』を掛けるが、

「いや、ダメだ! もう直ぐ 皆、此処迄やって来る!

…ついでに烏間先生とビッチ先生も別方向からな!

だから皆が揃う前…これ以上ややこしい展開になる前に、コイツは確実に屠る!!」

響は殺せんせーの申し出を完全却下。

 

ふふふ…巫山戯るなよ! お前 一体、何者なんだよ?!

僕の攻撃スピードは、先生の倍…マッハ40なんだぞ!?

「答える義理も義務も無い!

敢えて1つ言うなら…俺にスピードで張り合いたいなら、最低でもマッハ88万と1742に到達してからにしろ!!」

 

ズガァッ!

 

が…?!

それは舐めプ無き一撃。

クラスメートや副担任達が駆け付ける前に、全てを終わらせる為のマッハ88万1742…即ち光速の手刀が、シューラーの胸元に突き刺さり、其の儘に心臓を貫いた。

 

シュゥヴ…

 

そんな…僕は…

正しく()()となったのか、響がシューラーの胸から手刀を引き抜いたと同じタイミングで、その身は穿かれた穴を中心に、その細胞を黒い粒子に変えられ、周囲に撒き散らしていく。

 

 

体が…崩れていく…?!

そんな…

み、認めないぞ!

僕は最強の殺し屋、『死神』なんだ!

それを、こんな…

い、イヤだ、死にたくない死にたくない死にたくない!!

新たに得た この体! このチカラ!

それで僕は もっと、沢山 殺していんd

 

 

体が崩壊して行く中、それを受け入れられないシューラーが、心の中で未練無念の言葉を繰り返す。

 

「 」

そして最終的には、身体全身が黒の粒子となり完全消滅。

 

「成る程…あんな感じ…なのですね…。

どうやら痛みは無さそうなので、安心しました。」

反物質生物が その特効特殊素材で心臓(きゅうしょ)を打たれた時の様を見た殺せんせーが、感想を呟く。

 

「ば、馬鹿な…!?」

そして柳沢は その光景を、顎が外れたかの様に口を大きく開き、呆然と、そして何か信じられない物を見る様な顔で凝視する。

 

「貴様ァッ、一体 何者なんだァ??!

()()を生身で殺るなんて、貴様、本当に人間か?!」

そして狂気を孕んだ凶相で響を問い詰めるが、

「それも答える義理も、義務も無い!!」

 

パシィッ!

 

それに対する響の答えは、右掌打。

 

「ぎゃんっ!?」

「まさか この、最終局面に のこのこ顔を出してくるとはな…

しかも あんな、ラスボス(笑)も連れてくるなんて…

俺が甘かった…マジに ()()()、殺しておくべきだったぜ。」

ひぃっ?!

そして殺気全開。

腰を落とし身を震わせる柳沢に、ゆっくりと距離を縮める響。 

 

「く、来るなぁっ!!」

 

ガタガタガタガタガタガタガタ…

 

その圧倒的な殺意に、柳沢は身体全身を恐怖で震わせながらも、

 

ス…

 

袖の中から、ショットガンライフルを取り出し、その銃口を響に向けた。

 

「今更、そんな物を!」

しかし響は、それに動じない。

聖闘士(セイント)…しかも その最高峰の黄金聖闘士(ゴールド セイント)に、実弾銃が通用する筈も無く。

しかし柳沢は、そんな事実を知る由も無く、 

「死ね…死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」

 

バァンッ!!

 

ショットガンの引き金を引いた。

 

にゅ…

「何やってんだ、オメーッ!?」

そして その銃弾…散弾を浴び、倒れたのは響で無く、殺せんせーだった。

   




 
シューラー…小説オリジナル設定の2代目死神の本名。
元ネタは schūler(ドイツ語)。
  
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