暗殺聖闘士   作:挫梛道

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黄金の時間

にゅ…

「何やってんだ、オメーッ!?」

柳沢の放った散弾銃(ショットガン)

その銃口は、響に向けられた物だったが、殺せんせーが彼を庇う様に見て前に出て、無数の凶弾を全身に まともに浴び、倒れてしまう。

  

「俺なら あんなの、簡単に避けられるって分かっていただろうが?!」

「ヌルフ…それは生徒を守るという、先生の本能とでも言うべきでしょうか? 思わず体が…」

「ふっふっふ…狙い通り、正にプッワァーフェクツッ!!

「はぁ!?」

響が殺せんせーを問い詰める中、柳沢が感情を昂らせた様に叫ぶ。

このライフルから撃ち出た弾丸。

実は これは実弾で無く、対せんせー弾だったのだ。

 

「心優しい殺せんせーなら、絶対に生徒の危機には その身を呈して庇うと信じていたよ!

結果から言えば余りにも計画通り過ぎて、何か不測の事態(イレギュラー)が起きてしまわないかと、不安な位だ!」

「…どういう意味だ?」

得意気どや顔で話す柳沢に、厳しい表情で問い掛ける響。

 

「ふっふん! 最初はなぁ、このタコと2代目が戦っている途中で小僧、貴様を狙って撃つ予定だったんだよ!

勿論、そっちのタコが それに気付く前提でな!

…その辺りは少し段取りが狂ったが、最終的には計画通り!!」

「テメェ…!」

「そして! このタコに使った弾は、通常(ノーマル)な対せんせー弾で無く特別製強化弾!

まさか このタコも、お前に放たれた弾が普通の鉛玉で無く対せんせー弾だったとは、思いもしなかっt(バキッ!)あじゃぱー!?」

「もう良い…。お前は もう、何も喋るな…」

そして続く、過去最高な悪人面を見せる柳沢の御講説の途中、響の右上段蹴りが顔面左半分に直撃。

 

「お前…殺せんせー殺れて安心して(まだ殺りきってない)、お前と俺の実力差を忘れたのか?

…期待通り起きてるぜ? 不測の事態(イレギュラー)だ。」

「ひぇっ?!」

この響の一撃と一言で、悦に浸っていた柳沢は()()()()が一気に醒め、思い出したかの様に、再び その顔を恐怖に歪ませる。

 

「ぅ…わぁあッ!?」

 

バァン!

 

そして また撃ち放たれるショットガン。

柳沢の言う『特別製強化弾』は、殺せんせーの様な反物質生物だけで無く、普通の人間に対しても十分に殺傷能力は有る。

 

ドスッ!

 

「ごぶ…っ!」

しかし それも、当たればの話。

響は それを難無く躱すと、今度は柳沢の鳩尾に左膝を突き刺し、

ぼ…ぇえええぇぇぇ…

これにより、柳沢はリバース。

 

「お前は、とりあえず、死ね!!」

「い、いけません、吉良君!」

止めを刺しに掛かる響を止めようとする殺せんせー。

しかし特別製強化弾は、本当に通常の対せんせー弾よりも殺傷効果は有るらしく、確かに致命傷には至らなかったとしても、まだ十分に動ける程の回復が出来ずにいた。

 

「迸れ、俺の小宇宙(コスモ)!」

そして1本立てられた響の右人差し指に集約された小宇宙(コスモ)が燐光へと変換され、

「行ってこい黄泉平坂! 積尸気冥界波ァッ!!

そこから放たれたのは肉体から魂を引き剥がす、強制幽体離脱技。

 

「…からの、積尸気閻熱波!

 

ボボォオッ!

 

更には間髪入れず、今度は左の五指から同時、5つの巨大火焰弾を撃ち出す響。

積尸気閻熱波。

積尸気冥界波を繰り出した後、その引き剥がした魂を滅却する蒼い炎が積尸気鬼蒼焰なら、此方は残された肉体を燃やし尽くす紅蓮の炎。

これにより柳沢の体は巨大な火柱となるが、それは刹那の間。

次の瞬間には、柳沢が立っていた地面が少し黒く焦げているだけで、其処に柳沢は…肉も骨も、灰すらも、何も残っていなかった。

 

「吉良君…君は…」

躊躇無く『人殺し』を執行した響に、掛ける言葉が浮かばない殺せんせー。

殺人行為を咎める心算は無い。

自分に、何の説得力も無いのは承知しているから。

先程のシューラーに対しては、自身と同じく既に人間を棄てた異形の存在だからと、まだ言い繕う事は出来る。

しかし、柳沢は人間だ。

だからこそ教師として、この己の手を汚した自分の教え子に対し、何を言えば良いのか分からずにいた。

 

「殺せんせー、俺は聖闘士(セイント)だ。

殺せんせー程じゃないだろうけど それなりに、屍の山は築いているぜ?…今更だよ。」

「………。」

それを察したのかな響の台詞(フォロー)

事実 響は前世にて聖闘士(セイント)として、途中脱落したがアテナとハーデスとの聖戦を基、幾多の戦いを経験しているのだ。

斃してきた敵も、決して少なくない。

 

「そして柳沢は危険だと判断した…それだけだよ。」

この響の言う『危険』とは、柳沢という科学者としての有能さである。

昨年の夏、殺せんせー抹殺の為とは云え、E組生徒の半数以上の巻き添え…死傷者が出る事も辞さずな、歪み狂った行動力。

そして それだけの事を犯しても囚われる事無く、こうして新たな反物質生物を造り連れてくる…それだけな自由が許されている事を危険視したのだ。

この場を逃がしたら、また今度は自分や その周りで無いにしろ、その狂った才能により、新たな被害者犠牲者が出る…と。

 

「そして更なる先の憂いも、完全に断つ!

…そんな訳で、ちょっと逝ってくる。」

「はい?…って、き、吉良君ん?????」

そして響は音も無く、殺せんせーの前から その姿を消した。

 

 

 

▼▼▼

幾千幾万幾億の行列。

その誰もが虚ろな顔で、無言無気力に歩みを進めていた。

此処は冥黄泉平坂。

死した者の魂が辿り着く場所。

この死者の行列の先頭に ぽっかり空く巨穴は、真なる死の世界への入り口。

 

「え~と、さっき殺ったばっかだから、それなりに後ろの方に…あ、居た居た。」

積尸気の技を操る蟹座(キャンサー)黄金聖闘士(ゴールド セイント)の権能で、生きた儘に黄泉平坂への出入りが可能な響。

亡者の葬列の後方の中から柳沢を探し、そして見付けると、

 

どんっ!

 

「ぐぇっ!?」

その列から外す様に、真横からケンカキックを脇腹に ぶちかました。

 

「な…何なのだ…一体…?」

この一撃が原因か、意識を取り戻したかの様な柳沢。

 

「よ♪」

「な…お、お前は?!」

そして直後、その原因である響を見て驚愕。

 

「お前からすれば久し振り…な、懐かしい光景だろ?」

「何だと?…!?」

この響の言葉には、最初は何の事か、理解が追い付かなかったが、改めて周囲を見渡すと、

ひぃえぇえっ!??

何かを思い出したかの様に、恐怖に狩られた悲鳴を上げた。

それは確かに、柳沢にとって覚え有る光景だった。

去年の夏、プール爆破による殺せんせー暗殺を狙ったが結果は失敗。

その時の逃亡の際、今 目の前に立っている追跡者の拳により見せられた世界に違い無いからだ。

尤も その時は柳沢は直ぐに魂を肉体に戻されたので、自分が死んだという自覚も無く、それは夢か幻かと思っていたのだが。

 

「な、何なのだ?! 此処は、一体!?」

「フッ、知りたいなら教えてやる!

此処は黄泉平坂! 死した者が最初に辿り着く、現世と あの世の境の場所だ!」

「な…?」

響の解説に、柳沢 再び驚愕。

 

「ふ…ふはははははは!

何を馬鹿な事を?! そうか、コレは夢だな!

そうとしか考えられん!

成る程、コレが明晰夢というヤツか! 初めて見たぞ!」

「……………。」

しかし柳沢は、それを笑いながら否定。

普通に考えると、この柳沢の反応は別に可怪しくは無い。

己の死という現実逃避だが、現実離れした方法で此の地に送られたのだ。

寧ろ この様な反応の方が、普通と言って良いだろう。

 

バキッ!

 

「ぎゃぴりーん!?…い、痛い?!」

「夢じゃない事は理解出来たか?」

「な…な、な…?」

しかし それを響の拳が、物理的に現実に引き戻す。

 

「な…お、お前は、一体…

だ、だが、此処が本当に死の世界と言うなら、何故お前も此処に居る!?

まさか お前も、死んだとでも言うのか?!」

「違うさ。全てのネタばらしをする心算は無いが、俺は この世と あの世を行き来 出来る能力持ちなんだよ。」

「はぁあ??!」

自分が積尸気の技を自在に操る、蟹座(キャンサー)黄金聖闘士(ゴールド セイント)だという事は伏せて、要点だけを響は伝える。

 

「う、嘘だ! そんなのが信じられるか?!

やはり これは夢だ! そうだ、そうに決まってる!」

…え~と、こんな時は確か、ところが どっこい! 夢じゃありません、現実です!!…だったよな?

「な…!?」

「何なら もう1回、夢じゃないって確認してみるか?」

「っ…!?」

しかし それでも それを受け入れようとしない柳沢に、響は拳を突き出して黙らせた。

 

「な、ならば! お前が言っているのが本当の事だとすれば、俺をまた、元の世界に戻す事も可能なのだろう?

今直ぐ、俺を戻せ!」

話半分位は現状を現実と認識する柳沢。

だが それと同時、響の台詞と(夢だと思っていた)実体験から、まだ現世への生還も可能だと分析した この男は、響に それを要請するが、 

「あー、無理無理。

だってオマエの肉体(からだ)、既に()()してるから。」

「はぁあああぁっ??!」

しかし此処で、響は更なる現実を伝えるのだった。

因みにだが…黄泉平坂で彷徨う魂を、現世の別人の死体に移し還す事は、響なら…蟹座(キャンサー)黄金聖闘士(ゴールド セイント)なら、実は可能である。

その場合の残りの寿命は、移された体の若さや健康状態で決まる。

 

「普通なら お前は今から、黄泉平坂の果ての奈落の底から地獄に堕ち、其処で閻魔様や補佐官様から裁きを言い渡される事になるだろう。…普通ならな。」

「…?」

「しかし、貴様をそんな『普通』で済ませるのは、この俺が赦さん!

先に言っておく。コレは決して、正義の執行では無い!

あくまでも、俺個人の感情による私刑だ!!」

そして小宇宙(コスモ)を高める響。

 

ぼわぁ…

 

右人差し指に集約された小宇宙(コスモ)が燐光を放ち、

積尸気冥窮波ァ〜ッ!!

 

ゴォォッ!

 

撃ち出された それは長く尾を引く人魂の如くに形を変え、大きな螺旋を描きながら、柳沢に直撃。

 

「ぐゃぁーーーーーーっ!!?」

 

どんっ!

 

この冥窮波に柳沢は縛られる様に絡み憑かれ吹き飛ばされ、頭だけを残し、体は地面に埋められた形に。

そして その場所は…

 

グシャ…

 

「ぇ゙…」

丁度 死者の葬列の道だった。

 

グシャ…

 

「な…止めr…?!」

奈落へと歩む死者達に、次々と顔を踏まれる柳沢。

制止の訴えも死者の耳には届かず、自分の頭を避けて歩いてくれる様な、気を利かする素振りも無い。

元より、柳沢という存在を認識していないのだ。

  

グシャ…グシャ…

 

「クソ…! 出られん!」

そして柳沢には、自力で地中から身体を抜け出せる程の、力も術も持っておらず。

 

グシャ…グシャ…グシャ… 

 

「クソ! 止めろ、屑共が! この俺を誰だと思っt…」

この死者からの終わる事無い踏み付けに、抗う事は不可能だった。

 

 

 

「お前は未来永劫、そうやってろ!」

 

 

▼▼▼

「き、吉良君??!」

「…ただいま♪」

響が冥界から旧校舎に帰還。

殺せんせーからすれば、急に姿が消えた思えば、また いきなり姿を見せた響に、驚きを隠せない。

しかも5分足らずの出来事。

そして響は移動先で何が有ったのか、凄くスッキリした顔を浮かべているのだ。

 

「吉良君…キミは…?」

「さて…とりあえずの仕上げだ。」

心配そうな殺せんせーを尻目に、響は上空を見上げる。

視線の先は、先程 殺せんせーが作り出した黒霧の暗幕(カーテン)の向こう側、微かに見える、黄橙の光。

 

「あれ、か…」

対せんせーレーザー衛星、【天の矛】だ。

 

「…吉良君?」

「アレからレーザーが放射されるのは、0時ジャスト。

しかし その前に…!」

 

ボォォワッ!!

 

響が左右の両手首を重ね合わせた形で右脇に構え、小宇宙(コスモ)最大限に燃焼させる。

 

ピカァッ!

 

「これは…!?」

…すると それに呼応する様に、首に掛けていた巨蟹宮を象った金色のペンダントも輝き始めた。

それに伴い、まるでペンダントが増幅器の様に、響の小宇宙(コスモ)も高まっていく。

小宇宙(コスモ)が高まればペンダントが輝きを増し、ペンダントが輝きを増せば小宇宙(コスモ)が高まる。

  

「おぉ…コレは…!」

その光景に、殺せんせーも小さな目を大きく見開き刮目。

それは響の身体全体が、眩き煌めく黄金の光に包まれるかな様だった。

 

「ぅおおおおおぁーーーーーーーーっ!!」

そして響が雄叫びを挙げ、 

「迸れ! 研ぎ澄ませ! 唸れ! 轟け!

…そして吼えろ! 俺の小宇宙(コスモ)!! 」

最高潮に小宇宙(コスモ)を昂らせ、両手首を重ねた儘に双掌を上空…【天の矛】に向け、其処から繰り出されるのは、

プレペセ·ディアマンテ!!

黄金の光。純粋な破壊のエネルギー弾。

単純な破壊力ならば、聖闘士(セイント)達の技の中でも1、2を争う…その威力故に地上での使用は基本禁手とされていた…響の最大必殺拳だ。

そして光弾は黒霧を掻き消し、【天の矛】目掛けて天に昇り、

 

カッ…

 

黄橙の光は その色を、一瞬 赤に変えると、夜空に消えていった。

 

「良かったな、殺せんせー。

これでレーザーでの消滅は、免れたぜ。」

「ぁ、ありがとうございます…」

 

≫≫≫

「「「「「「「「「「殺せんせー!!」」」」」」」」」」

「「…って、き、吉良ぁっ!?」」

E組の面々が旧校舎に姿を見せたのは、その数分後だった。

  




  
積尸気閻熱波…小説オリジナル技。
見た目は五指爆●弾(フィン●ー·フ●ア·ボムズ)な感じの技です。
 
積尸気冥窮波…アニメ『黄金魂』でデスマスクが使った技。
因みに このアニメ、黄金(ゴールド)聖闘士(セイント)12人の中で、新技を貰えたのはデスマスクのみ。
製作スタッフ、皆デッちゃん大好き過ぎだろ?www
 
プレペセ·ディアマンテ…小説オリジナル技。
ぶっちゃけ言えば、か●はめ波をイメージして下さいwww
  
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